じゅじゅさんぽ 長月と紡
ーーーー氷川市 狗巻家ーーーー
「お出かけしましょう、長月ちゃん」
帰ってくるなり紡ちゃんはそう言った。
任務の詳細を聞きに、針倉術師と待ち合わせをしていたという話だったけど。
「話は終わったの?」
「いえ、バックレられました」
笑顔の紡ちゃん。
ものすごい迫力だった。
知り合ってそこまで経っていないが、針倉術師の適当さは理解したつもりが。
まぁ、流石の紡ちゃんも限界なのだろう。
「分かった。準備してくるから待ってて」
「はい」
そうして2人の休日は始まった。
ーーーー氷川駅前ーーーー
休日とはいえ、もう午後だから出掛けられる範囲は限られてくる。
市内で遊べるところと行ったらこの辺なんだろうか。
……僕も友達と遊ぶことなんてなかったからどので遊べるか分からないけど。
「それで、長月ちゃん!」
「うん」
「どこに行きましょうか?」
「……いや、紡ちゃんが考えているものかと」
「あ、えっと……私、こんな風に……そ、その友達と遊びに来ることなかったので……」
少し頬を赤くして紡ちゃんは呟く。
小声なのは、友達がいなかったことを恥ずかしがっているのかもしれない。
「大丈夫。僕も遊ぶような友達いなかったし」
「あ……は、はい」
沈黙。
しまった。
この空気は友達と遊んだ経験のない僕には厳しいものがある。
「とりあえずどこかの喫茶店でも入ろうか」
駅前ならどこかしらあるだろう。
そう考えた僕はスマホを取り出してーー
「ーーえい」
「あっ」
紡ちゃんに取り上げられた。
「一緒に歩いて探しましょう。きっとその方が楽しいですよ」
「……分かった」
思えば、県内ではそれなりに都会な氷川市に来たはいいけれど、呪術師の任務やら訓練やらでろくに歩いたこともなかったし。
「…………」
「ん? どうしたんですか? 私の顔に何か着いてます?」
「ううん」
友達と遊んだことがない、なんて言っておきながら、僕が少しでも楽しめるように瞬時に考えて、判断するとは。
紡ちゃんの判断力は…………いや、止めよう。
こんなことを考えるのも野暮だ。
今日は、
「今日は楽しもうか」
「はい!」
何も考えずに楽しむことにしよう。
ーーーー氷川駅前ビルーーーー
「タピオカ……」
やってきたのは駅前のビルにあるというタピオカ屋。
というよりも、歩いていて見かけた行列に並んでみたらこれである。
後で調べて分かったことだが、2018年現在来ているという第3次タピオカブームに乗っかってできた店らしい。
ともかく僕もよく分からないし……。
「……紡ちゃん、先に注文どうぞ」
「い、いえ。長月ちゃんがお先に」
「…………」
「…………」
しまった。
分からないのはお互い様だった。
「え、えっと、それじゃあ……コレひとつと」
「あっ、え、えっと、私はこれでっ!」
思っているよりも後ろが詰まっているようで、適当にひとつずつ注文した。
その結果、僕の方はスタンダードなタピオカミルクティー。
……うん、うまい。
そして、紡ちゃんは、
「…………ブルータピオカ宇治抹茶チャイココアティー」
食欲減退色。
しかも、癖のあるメニュー。
その前にこんなのメニューとして並べるなよ。
「あ、あはは……」
「焦って変なの頼んじゃったね」
「は、はい」
せっかくだから、と紡ちゃんは飲んでみる。
だが、
「うっ」
どうやらそれは苦手だったらしい。
いや、苦手ってかそもそもこの商品自体失敗作だろう。
顔をしかめる紡ちゃん。
「……ダメっぽい?」
「はい……」
彼女はあからさまに落ち込んでしまった。
はぁ、しょうがない。
「これ」
「え?」
「僕は大丈夫だから」
「え、でも……」
「はい、交換」
「あっ、えっと……は、はい……」
彼女は俯きながら、僕が渡したミルクティーを受け取った。
遠慮しているのかおずおずとだけど。
「…………」
まぁ、呪霊よりはマシだ。
そのうちこのメニューはなくなるだろうけど。
「あ、あの……長月ちゃん……」
「ん、なに?」
「えっと、それ……」
「?」
「あ、いえ……なんでもありません」
なんだろう。
変な紡ちゃんだ。
ーーーー氷川駅前アーケードーーーー
「カップルメニューおすすめしてます!」
「「え?」」
2人で入った喫茶店で、店員にそう言われた。
いや、カップルって……。
「いや、僕たちはそんなんじゃ……」
「そんなこと言ってぇ~! 照れちゃダメですよぉ、彼女さん拗ねちゃいますよ」
「…………」
僕、女なんだけど。
図々しいというか、なんかすごい店員だな。
「今、カップルメニュー頼んでもらうと半額で提供させてもらってるんですぅ」
「は、はぁ……」
「いかがでしょうか?」
「……じゃあ、それで」
「はーい」
勢いに押されて頼んでしまった。
「…………」
「…………」
この雰囲気はなんだかなぁ。
別に女同士だからいいけれど。
どうやら紡ちゃんは男に間違われてしまった僕に気を使っているようでなにも話さない。
二度目の沈黙。
……気まずい。
「お待たせしました~~」
そうして運ばれてきたのは、
「うわぁ……」
「こ、これは……よく聞くカップルドリンクってやつですね」
「これをよくオススメできるな」
チラリと店員の方を見ると、なぜかウインクをしてくる店員。
なるほど。
まさにお節介なおばさんだな。
「紡ちゃん先にどうぞ」
「は、はい」
「2人で仲良く飲まないと半額ではなくなりますよぉ」
「「…………」」
その後、どうなったかは想像にお任せする。
ーーーー狗巻家ーーーー
気晴らしのつもりが、中々に大変な休日になった。
まぁ、特に災難だったのは紡ちゃんだけど。
それでも彼女はさっきからーー
「~~♪」
笑顔でキッチンに立っていた。
何故かは分からないが、上機嫌だった。
まぁ、機嫌がいいならいいか。
針倉術師にバックレられた時の圧のすごい笑顔でないなら大歓迎だ。
「よし、できました!」
「あっ、うん」
並べられていく料理はとても美味しそうで、いつもながら感心してしまう。
昼は適当に食べたから尚更紡ちゃんの作った肉じゃがが輝いて見える。
「じゃあ、いただきます」
「はい、どうぞ」
さて、食べようか。
そう思って気づく。
箸がない?
「あっ、これですね」
そう言って彼女はこの間僕用に買った箸を手にしていた。
紡ちゃん?
なぜそれで僕の方に肉じゃがを差し出してくるんだ?
「まぁまぁまぁまぁ」
「……えぇと」
「黙って食べてください」
「…………はい」
いわゆるあーんというやつ。
まさか僕がされるとは。
「美味しいですか?」
「うん」
「♪」
僕の言葉に満足そうに頷くと、紡ちゃんは箸を僕に手渡した。
えぇと、何をしたかったんだろう?
……まぁ、友達の距離感なんてこんなものだろう。
そう考えた僕が間違いだった。
なぜかその夜、僕と紡ちゃんは一緒に風呂に入ったり、一緒の布団で寝たりしたのだった。
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それがその後、僕が『赤マント』関係の任務に行くまで、ズルズル続いた。
そう。
きっとそんな日々が続くんだと思っていた。
距離感に戸惑いながら、でも、どこかあたたかい日々が。
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「…………夢か」
あの頃のことを夢に見た。
まだ少ししか経っていないのに、懐かしい夢。
でも、あの日々は戻ってこない。
「僕は彼女をーー」
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次作でもアンケートとってますが、主要キャラ落書き(デフォルメ絵)してもいいですか? ※未経験者なので雰囲気だけ伝わればよいものとする
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よい・やってみせよ
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完結したんだからNG
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いや、むしろ私が書こう(有能絵師)