呪詛師殺しの僕(完)   作:藍沢カナリヤ

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i=虚数:存在しえない数あるいは世界線
※百合苦手な方は見ないことを推奨します。



じゅじゅさんぽi Lily-Triangle

ーーーー狗巻家ーーーー

 

 

「任務の指名、ですか?」

 

 

狗巻家に届いたのは、呪術高専からの任務の指令書だった。

その内容は、とある呪霊を祓霊すること。

しかも、僕を含め2人でとのことである。

で、そのもう一人をどうしようか、紡ちゃんに相談したんだけど……。

 

 

「仕方ないですねぇ」

 

 

そう言いつつ、満更でもない表情でエプロンを脱ぐ紡ちゃん。

行く気満々である。

 

 

「いや、別に紡ちゃんには……」

 

「ん? 何か言いましたか?」

 

「だから、紡ちゃんと行くとは言ってないから」

 

 

そもそも呪霊退治なら別に適任はいるだろうし。

そう思ってのことだったんだけど、紡ちゃんはさっきまでの表情から一転して、怒ったような顔で何故か迫ってくる。

 

 

「長月ちゃんっ!」

 

「は、はい」

 

「いいですか……最近、私とどこか出掛けましたか?」

 

 

どこかって……。

遊園地とか、水族館とか色々行ったよね?

 

 

「ち・が・い・ま・す!!」

 

 

僕の言葉を若干キレ気味に詰め寄ってくる紡ちゃん。

捲し立てるように続ける。

 

 

「いいですか? 遊園地も水族館も確かに行きました」

 

「じゃあ」

 

「でも、それは『私とだけ』じゃあありませんよね?」

 

「…………あー」

 

 

そこまで言われて、やっと察した。

紡ちゃんは……。

 

 

「2人で出掛けたいってことか」

 

「………………は、はい」

 

 

そこで急に紡ちゃんはしおらしくになる。

今まで迫ってきたのを恥ずかしがるように、少し顔を赤らめる。

同性の僕から見てもかわいい。

そういう関係ならば尚更であった。

 

 

「じゃあ、支度してきますね!」

 

 

そう言って、わたわたと紡ちゃんは自室へ戻っていった。

任務をデート代わりに考えるとか舐めていると、有島さん辺りには言われそうだし、シャーロットさんは囃し立ててきそうではあるけれど。

たまにはこんな風に一緒に出掛けるのもいいだろう。

場所からして、どこかに一泊することになりそうだし、僕も少しだけ準備をしてこよう。

そう思った時だった。

 

 

「お姉ちゃん」

 

 

声をかけられた。

妹の霞である。

僕が実家を出ると伝えたらわたしも行くと着いてきて、2人でこの狗巻家に居候になっている。

だから、霞がここにいることに違和感は何もないんだけど。

 

 

「霞?」

 

「紡さんとどこか行くの?」

 

「う、うん……呪霊狩りの任務だから」

 

「ふーん」

 

 

ジト目で僕を見てくる。

 

 

「……どこなの?」

 

「えっと、Y県のO市だけど……」

 

「!!!!」

 

 

目的地を伝えると、霞は目を見開いて固まる。

えぇと……?

どうかした?

そう訊ねると、

 

 

「泊まり? 紡さんと? 温泉あるとこだよね?」

 

 

矢継ぎ早に質問をしてくる。

本当にどうしたんだ、霞は?

 

 

「まぁ、うん。泊まりだね」

 

 

詳しくは調べてないけれど、どうせなら温泉がある宿に泊まりたいとは思う。

そこまで言ったところで、霞が僕のことを拘束してきた。

いつも通り、後ろから霞が抱きついてくるような形だ。

 

 

「霞?」

 

「ヤダ……」

 

「ヤダって……任務だよ?」

 

「じゃあ、わたしがいく」

 

 

一応資格はある。

僕はこの間無事準二級に昇級したし、僕が実家を出ると同時に霞も呪術を学び出し、三級に上がった。

術式こそないけれど、彼女は、

 

 

「紡さんよりもいいでしょ! 『黒閃』だって出せるようになったし!」

 

 

対呪霊に関していえば、確かに霞の方が適任だろう。

体術は圧倒的に霞の方が上だ。

 

 

「…………えぇと……どうするかな」

 

「……ね? お姉ちゃん、霞の方が強いよね?」

 

「まぁ、それは……」

 

 

 

「表に出てください、霞さん」

 

 

 

僕の背中にくっついていた霞の方から、視線を前へ。

そこには鬼のような笑顔を浮かべる紡ちゃんがいた。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

この間、牧さんから教わったばかりの『帳』を、こんなことで下ろすことになるとは……。

 

 

「今日こそハッキリさせましょうか、長月ちゃんに相応しいのはどちらかということを!!」

 

「紡さんは弱いんだから、ここはわたしに任せておけばいいんだよ!」

 

 

舌戦である。

怖い。

普段はそうでもないのに、一度火がつくとこうだからなぁ。

 

 

「手加減はしませんよ?」

 

 

いや、手加減はしてよ。

 

 

「殺す気でどうぞ」

 

 

やめて。

そんな僕の願いとは裏腹にその戦いは幕を上げてしまった。

 

 

吹き飛べ(フキトベ)

 

 

開幕と同時に、紡ちゃんが仕掛ける。

『呪言』の呪符を使って、霞を飛ばしにかかる。

けれど、

 

 

「甘いっ!!」

 

 

霞は軽々とそれを避け、距離を詰める。

速い。

 

 

「らぁっ!!」

 

 

あっという間に紡ちゃんの懐に入った霞はそのまま呪力を帯びた拳を振り抜く。

 

 

「ッ、まだですっ」

 

 

それをしゃがんで避ける紡ちゃん。

体勢を崩しながらも、右手の筆で霞の腕に何かを書き込んだ。

 

 

「っ、離れてよっ!」

 

「おっ、とと……」

 

 

紡ちゃんは霞の蹴りを後ろに飛び退けて距離を取った。

霞は腕に書かれたそれを消そうとしている。

よく目を凝らすと、霞の腕には『呪言』がはっきりと書き込まれていた。

 

止まれ(トマレ)

 

そう書かれた『呪言』は霞の右腕に作用して、紡ちゃんに当たる前に止まる。

直接書かれたものだから、術式効果も上がっているはずだ。

 

 

「流石は紡ちゃんだ」

 

 

20年間弱、呪術の世界で生きてきたんだ。

僕や霞とは、その経験値が比べ物にならない。

呪力出力は霞の方が上でも、戦闘経験で紡ちゃんに軍配が上がる。

 

 

 

「~~~~っ、もうっ!!」

 

「!?」

 

 

癇癪を起こしたような霞の声。

それと同時に、霞から感じる圧力が跳ね上がった。

 

負の感情の爆発。

本来、呪力のコントロールのためには感情を制御して常に一定に保たなくてはならない。

それができなくては、大きく感情が振れた時に呪力を無駄遣いすることになるからだ。

けれど、一時的であればーー

 

 

 

「お姉ちゃんと一緒に出掛けるのはーー」

 

「ーーわたしなんだからッ!!」

 

 

ーードゴォォォッーー

 

 

 

地面を割るほどの蹴り。

紡ちゃんは避けたみたいだけど、空中に飛び上がったせいで身動きが取れない。

次の霞の攻撃は当たる。

下から霞が迎撃のために左拳に呪力を込める。

そして、落ちながらも拳に呪力を込める紡ちゃん。

恐らく、これがぶつかればどちらもただでは済まないだろう。

 

 

「はぁ……『廻入道(かいにゅうどう)』」

 

 

「「え?」」

 

 

僕の呼び出した呪霊が二人の間に入る。

2人の攻撃は『廻入道』に当たり、衝撃が呪霊の中を廻り、2人とは別の方向へ逃がしてくれた。

はぁ、流石にこれはやりすぎだ。

 

 

「……2人とも」

 

「な、長月ちゃん」

「お姉ちゃん……?」

 

 

「3人で行くか、それとも2人で留守番をするか決めてくれる?」

 

 

「「……3人で行きます」」

 

 

ーーーーーーーー

 

 

任務も終わり、旅館に着く。

任務自体は本当に簡単なものだった。

さて、問題はここからだ。

僕は1人で入るから。

そう言って、僕は大浴場に向かったんだけど。

 

 

「……なんで2人ともいるの?」

 

 

大浴場の中に入って、最初に目に飛び込んできたのは、タオルで身体を隠した紡ちゃんと霞の姿であった。

 

 

「お背中、流しにきました」

 

「あわよくばお背中以外も洗ってあげるよ、お姉ちゃん♪」

 

 

後から聞いた話だけど、どうやら脱衣場の入口に紡ちゃんの作った『呪符』が貼ってあったようで。

霞の発案だという話だけど、それを実行に移した紡ちゃんも紡ちゃんで……。

してやられたわけだ。

 

 

「はぁ、勝手にしてくれ」

 

 

ちなみに、何もなかった。

何もなかったからね。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

夜。

また揉めるかと思いきや、どうやら2人で取り決めをしたらしく、3人で布団を並べて寝ることにしたようだった。

疲れていたようで、霞はすぐに眠りについて。

 

 

「ねぇ、長月ちゃん」

 

 

右側から紡ちゃんの声が聞こえた。

寝ている霞に気を遣って小声。

 

 

「なに……?」

 

 

目を閉じたまま、答える。

 

 

「……ごめんなさい、わがまま沢山言って」

 

「…………」

 

「霞さんと喧嘩するのも、その……つい……」

 

「…………いいよ。分かってる」

 

 

分かってる。

そう言って、軽く笑う。

紡ちゃんらしいな。

でも、そうだね。

口に出さなきゃ分からないこともあるか。

 

 

「……大丈夫。僕もちゃんとーー」

 

「ーー分かってます」

 

 

それを言葉にしようとして、遮られた。

そして、

 

 

 

「おやすみなさい」

 

 

 

言葉と同時に、何かあたたかいものが頬に触れる感触があった。

それが何か聞くのは野暮、かな。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

その翌日、3人で帰ったわけだけど。

紡ちゃんはどこかよそよそしくて。

終始赤い顔をしていたのを、霞にしつこく問い詰められたのだった。

 

 

ーーーーーーーー




本編でこそ霞は穏やかですが、本来は相当なシスコンです。
紡が刺激となることでこうなる未来も存在しえます。

次作でもアンケートとってますが、主要キャラ落書き(デフォルメ絵)してもいいですか? ※未経験者なので雰囲気だけ伝わればよいものとする

  • よい・やってみせよ
  • 完結したんだからNG
  • いや、むしろ私が書こう(有能絵師)
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