呪詛師殺しの僕(完)   作:藍沢カナリヤ

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第59話 針壊ー伍ー

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漣さん。

漣さんのおかげで、僕、思い出したんだ。

両親のこと。姉のこと。

 

 

僕には確かに3歳上の姉がいた。

でも、姉はもう亡くなっている。

原因は呪霊じゃない。

 

同級生によるいじめ。

 

顔もよく勉強もできた姉は、同じクラスのリーダー格の女子によく思われていなかったらしい。

教科書や靴を隠され、暴力を振るわれ、髪を乱暴に引き千切られた。

無邪気ゆえの悪意は暴走し、エスカレートしていった。

それを他の同級生は見て見ぬフリをし、大人たちは見ようともしなかった。

 

その結果、姉は死んだ。

偶然いじめの主犯の目に止まり拉致された僕を、蹴り飛ばされ殴られていた僕を、その悪意から庇い切り殺された。

その遺体は惨たらしい状態で、とても見れるような状態ではなかった。

顔も体も痣だらけ。その上、関節は本来曲がらない方向に曲がっていた。

当然、僕の証言から両親は学校に訴えかけ、いじめの主犯も判明した。

だが、主犯の親はその土地の名士らしく、ちょうどその時、他の事件で逮捕された人間を実行犯に仕立て上げ、姉のいじめはなかったといじめの事実自体を有耶無耶にされ、消されてしまった。

 

 

両親は狂った。

父親は酒に溺れ、いじめの主犯を学校帰りに刺し殺そうとした。

それは失敗に終わり、父親は刑務所へ。

その後、僕たちは小学生を殺そうとした異常者の家族というレッテルを貼られ、その村を後にした。

父親の面会の時、母親は後ろ指を刺され続ける生活を嘆き、泣き崩れた。

その数日後、父親は首を吊って死んだ。

 

父親の死後、母親はオカルトに縋るようになり、『呪い』に手を出す。

どの筋から手に入れたかは分からないが、母親は手にした呪物で、いじめの主犯を無事呪い殺し、その後も自分たちにレッテルを貼ったテレビ局や出版社の人間を殺し続けた。

だが、その呪詛はついに本人に返ってきて、負の感情で成長した呪霊に母親は殺された。

 

僕はその後、呪霊を祓いに来た呪術師に保護され、その後、記憶を操作された。

名目は僕の心を守るため。

その実、どうやら母親に呪物を売った呪詛師が、元々呪術界の上層部にいた人間らしい。

だから、その事件自体を抹消するために、僕は記憶を操作され、監視のために呪術師の家に保護された。

 

これが僕が思い出した記憶のすべて。

 

 

 

非術師は嫌いだ。

父親と姉を殺したから。

 

呪霊は嫌いだ。

母親を殺したから。

 

呪術師は嫌いだ。

君を殺したから。

 

 

 

「君は何をしたいんだい?」

漣さんは僕にそう聞いたよね。

決まったよ、僕のやりたいこと。

 

 

僕は全てを抹消したい。

非術師も呪霊も呪術師も。

 

この世界を終わらせたいんだ。

 

 

それが僕のーーいや、私のしたいことだよ。

だから、見守っていてくれ。

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

「私は残るとするよ」

 

 

私は杭葉にそう答えた。

 

 

「おい、何を考えてやがるッ」

 

「何? 私はこの呪術高専に残り、呪術を学ぶとそう言ったのさ」

 

「ッ」

 

 

事件の後、私と杭葉は上層部に呼ばれ、事情を話した。

柳沼が私たちの命を狙ったこと。

それにより、漣幸が殺害されたこと。

そして、柳沼の目的は『分からなかった』こと。

ずいぶん探りを入れられたが、どうにか乗り切り、呪術高専への復帰を許された矢先に、杭葉に今後どうするかを訊ねられたのだった。

 

 

「まだまだ私は弱いからねぇ。ここで学ぶのが一番だろう?」

 

「お前ッ……本気で言っているのか」

 

「あぁ、本気も本気。大マジさ」

 

「…………それを止めろ」

 

「ん? それとは?」

 

 

「漣の真似事を止めろと言ったんだッ!!」

 

 

彼は叫ぶと、私の胸倉を掴んだ。

まったく野蛮だねぇ。

 

 

「離してくれないかな?」

 

「っ」

 

「話が通じたようで助かるよ」

 

 

手を離した彼に、私は逆に問いかける。

 

 

「それで? 君はどうするつもりなんだい?」

 

 

ここを離れるというからには何か考えがあるんだろうね。

その予想通り、彼は話し出した。

上層部を皆殺しにするために、ここを離れて力をつけること。

そのために『毒蟲』に人間や呪霊を喰わせること。

そして、彼女ーー漣幸を蘇らせること。

 

 

「そうか。元気でね」

 

「…………」

 

「どうかしたのかな? 名残が惜しい?」

 

「お前は…………」

 

 

 

「漣を蘇らせたいとは思わないのか」

 

「……思わないねぇ」

 

 

 

それだけを聞き、杭葉は呪術高専を去った。

勿論、彼は呪詛師と認定され、追われることとなったようだが。

それは私には関係のないことだ。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

私の計画は簡単だ。

世界を終わらせる力を手に入れること。

それは兵器でも権力でも呪力でも、なんでもいい。

 

そして、数年後、僕は知る。

 

無限にも近い数の呪霊を従わせ、世界に蔓延る膨大な数の人間を全滅させることができる『呪霊操術』の存在を。

解錠した存在の属する種を絶やし、種全体が子孫を残すことを禁じる特級呪物『ロッポウ』の存在を。

 

それらを手に入れ、世界を終わらせる。

やることは決まった。

 

 

 

「君は何をしたいんだい?」

 

「私は世界を終わらせたいんだよ」

 

 

 

心の中で微笑む彼女に、私は笑顔でそう答えた。

彼女は笑い続けている。

 

 

 

 

ーーーー現在ーーーー

 

 

「……針倉」

 

 

その声で覚醒した。

どうやら少し寝ていたらしい。

 

 

「ん、あぁ、なんだい? 長月ちゃん?」

 

 

彼女が声をかけてきたということは、そういうことなんだろう。

椅子から立ち上がり、鈍った体をバキバキと鳴らす。

 

 

「渋谷に『帳』が降りた」

 

「あちらの計画も順調に進んでいるようだねぇ」

 

「高専にいた呪術師もそちらに向かってる」

 

 

本当に計画通りだ。

後は……。

 

 

「動いてもいいのか」

 

「あぁ、私たちも呪術高専に向かうとしようか」

 

 

高専を襲撃するのは合図があってからだが、いつでも襲撃できる位置には移動しておきたい。

合図があり次第始めよう。

 

 

 

「五条悟が行動不能になり次第、呪術高専を襲撃しよう」

 

「長月ちゃん、悲願達成はすぐそこだよ」

 

 

 

ーーーーーーーー

次作でもアンケートとってますが、主要キャラ落書き(デフォルメ絵)してもいいですか? ※未経験者なので雰囲気だけ伝わればよいものとする

  • よい・やってみせよ
  • 完結したんだからNG
  • いや、むしろ私が書こう(有能絵師)
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