呪詛師殺しの僕(完)   作:藍沢カナリヤ

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第61話 呪詛師殺しー弐ー

ーーーー回想ーーーー

 

 

ばあちゃんも。

霞も。

紡ちゃんも。

大切な人を全員失って、僕は自暴自棄になっていた。

 

「さてさて、長月ちゃん……私とおいで」

「紡ちゃんを蘇らせたいんだろう?」

 

その言葉に僕は縋った。

僕がもつ呪霊を『うずまき』で集めた呪力と紡ちゃんの筆。

そして、『降霊杖』があれば、僕が殺した紡ちゃんを蘇らせることができる。

それが空っぽになった僕にとっての希望になった。

 

呪霊を集めるのと同時進行で極ノ番『うずまき』を使えるようにするための訓練として、まずは複合呪霊を作っていった。

その途中でできた呪霊『宿夢』。

他人の夢ーー正確には『生得領域』に入り込む術式をもつ呪霊で偶然、僕は霞に入り込んだんだ。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

「霞……?」

 

「……お姉ちゃん……?」

 

 

 

「っ、かすみっ!!」

 

 

 

気づいたら僕は霞を抱きしめていた。

目の前の彼女が本物かどうかなんてその時は考えてもいなかった。

抱きしめずにはいられなかったんだ。

 

 

「お、おねえちゃん……くるしいよ……」

 

「っ、ごめん!」

 

 

霞の訴えに、彼女の体を離す。

少しだけ冷静になった僕は、霞の前に座る。

 

 

「霞、なんだよな。本当に」

 

「うん。そうだよ、お姉ちゃん」

 

「…………っ」

 

 

無言で、ペタペタと彼女の頬を触る。

くすぐったそうにしながらも霞はにこりと笑いかえる。

あぁ、霞だ。

本当に、生きてた。

しばらくの間、霞を近くに感じて、それから僕はそれを切り出した。

 

 

「…………霞、教えてくれ。何があったんだ」

 

「うん」

 

 

僕は霞からすべてを聞いた。

針倉がばあちゃんを殺したこと。

僕に成り代わった『無常』が針倉と結託して、シャーロット術師を殺し、紡ちゃんの別人格を目覚めさせたこと。

霞を『無常』が逃がしたこと。

霞が見たという『無常』の手記に記された内容のすべてを。

 

 

「そっか……それが真実なんだな」

 

「うん」

 

「…………」

 

「……あ、あのね、お姉ちゃん」

 

 

緊張した面持ちで、霞は僕を呼ぶ。

少し俯いてから霞はそれを口にした。

 

 

「家入さんや七海さんにこのことは伝えてる。上層部?って人たちにも悪いのは針倉って人なんだって分かるはず!」

 

「だから……戻ってきて……」

 

「………………」

 

 

牧さんや黒野堀さん、シャーロット術師、そして、ばあちゃんを殺したのも、すべて針倉だ。

それが濡れ衣であることは間違いないし、家入さんや七海術師が動いてくれているという。

それならば、僕の嫌疑が晴れるのも時間の問題なんだろう。

それでも、僕は

 

 

「戻らないよ」

 

「っ、なんで!」

 

 

 

「紡ちゃんを殺したのは紛れもなく僕だから」

 

 

 

そうなるように誘導された。

針倉によって、僕と紡ちゃんはお互いを憎み、殺し合うように仕向けられた。

僕の意思ではない、と言われればそうかもしれない。

 

けど、彼女を殺したのは僕の意思だ。

僕が紡ちゃんを殺した。

 

その事実は変わらない。

例え、僕に被せられた全ての濡れ衣が晴れたとして。

例え、僕が再び高専に受け入れられたとして。

それでも僕の心に『それ』は残り続ける。

『大切な人』を殺してしまったという罪は。

 

 

「っ、お姉ちゃん」

 

「ごめんな、霞」

 

「いやだよぉ……お姉ちゃん……」

 

 

また霞は僕の胸に顔を擦り付け、泣いている。

ごめん……ごめんな、ダメなお姉ちゃんで。

でも、ここで戻ってしまったら、僕はきっと自分で自分を許せなくなる。

 

これは僕のエゴだ。

 

『大切な人』のための戦いなんかじゃ決してない。

霞は泣かせるし、ばあちゃんにもきっと怒られる。

紡ちゃんには……ううん、きっと怒られるな。

 

 

「霞」

 

「っ、うんっ」

 

「針倉を祓う(殺す)。それが今の僕にできる贖罪だ。そしてーー」

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

「針倉、お前の目的は知らないし、興味もない」

 

「僕は僕のために、お前を祓う(殺す)

 

 

「あぁ、構わない。私も同じだよ」

 

「私は私のために、生きとし生けるものを終わらせるだけだ」

 

 

 

そう言って、針倉は空を仰ぐ。

空っぽの笑顔を携えながら。

 

 

「霞、危ないから……」

 

「!」

 

 

霞は首を横に振った。

わたしも戦う、とそう訴えていた。

 

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………分かった」

 

 

僕もわがままを言ったんだ。

最期に霞のわがままだって聞いてやらなきゃな。

その代わり、命に代えても守るよ。

 

 

「始めようか、ご両人」

 

 

ーースッーー

ーーパァァァンッーー

 

 

初撃。

地面に向けて針倉は針を放ち、呪力を破裂させた。

煙幕代わりだろう。

この手は、彼と一緒に任務をする中で嫌というほど見ている。

 

 

「『毒蟲』」

 

ーーゾゾゾゾッーー

 

 

それに対して、蟲を展開する。

煙幕とは言っても、土埃の延長にある。

ならば、僕の蟲で喰い切れる。

その思惑通りに、視界がすぐに晴れた。

それと同時に、針倉は僕の目の前にいた。

 

 

「やぁやぁ」

 

ーーグググググッーー

 

 

呪力を帯びた拳が僕目掛けて放たれる。

だが、

 

 

ーーバキッーー

 

 

それを止めたのは、霞だった。

呪力を纏わせた右手で、針倉の攻撃を受け止めていた。

 

 

「その子も中々、呪力量が多いようだねぇ」

 

 

「『友引腕』」

 

ーーガシッーー

 

 

すかさず『友引腕』で奴の右手を掴まえる。

これでこの一瞬奴は右手で術式発動することができない。

つまり、必然的にーー

 

 

「『針灸』」

 

 

ーー左手で針を持つしかない。

だから、ここを叩く。

 

 

「潰せ、『雨丑(あめうし)』」

 

 

人の腕ほどの大きさのアメフラシ型の呪霊。

術式はないが、人間を攻撃することに特化していた。

『雪鬼』ほどの力はないが、確実に人の腕を吹き飛ばすくらいの力はある。

 

 

ーーバギバギバギッーー

 

「ほう」

 

 

『雨丑』に接触した瞬間に、針倉の左腕は音を立てて壊れる。

その代わりに『雨丑』は自壊する。

普通の術師だったら複雑骨折で使い物にならなくなるはず。

だが、

 

 

ーーポウッーー

 

「この程度で止まるとでも思ったか」

 

 

『反転術式』を回しながら突っ込んでくる。

その腕の勢いは止まらない。

 

 

「っ」

 

「っ、……!!」

 

 

奴の左手の針は僕の腹に差し込まれ、同時に、

 

 

ーーパァァァンッーー

 

 

爆ぜる。

 

 

「~~っ、『蜈蛞(だかつ)』ッ!!」

 

ーーズゴゴゴゴゴゴッーー

 

 

『蜈蛞』を呼び出し、頭は針倉へ向かわせ、尻尾で僕と霞を掴み後方へ投げさせる。

 

 

「っ~~!!」

 

「大丈、夫」

 

 

心配そうな表情の霞にそう告げ、体勢を整える。

傷は深くない。

少し左腹の肉が抉れた程度だ。

 

 

「それよりまだ来るはずだ。油断はーー」

 

 

ーーシュゥゥゥーー

 

 

「!」

 

「『蜈蛞』が消えていく……『吸針』か」

 

 

巨体の『蜈蛞』がみるみるうちに縮んでいく。

針倉の『吸針』。

『針灸』を反転させることで、呪力を吸収する術式。

そして、それを蓄えるという効果を隠していた。

つまり、『呪霊操術』は相性最悪だ。

だが、攻撃の手は止めない。

 

 

「『影踏地蔵(かげふみじぞう)』」

「『嵐獣(らんじゅう)』」

 

 

『吸針』を使う隙を与えるな。

『影踏地蔵』で針倉の動きを止めて、『雪鬼』と並ぶ膂力をもつ『嵐獣』を放つ。

 

 

「まだ、だっ!!」

 

 

これで終わるわけがない。

すべてを出し切るぐらいの覚悟で攻める。

 

 

「『毒蟲』」

「『裏女(うらめ)』」

「『戸潜(とくぐり)』」

 

 

喰い尽くせ。裏返せ。臓物を突き破れ。

僕のすべてで奴を殺せ。

 

 

 

「『呪霊操術』……やはり厄介だ」

 

「…………ここで殺すのは惜しいが、やむを得ないか」

 

 

呪霊に囲まれる針倉。

それでも奴には余裕があった。

体は縛りで動かないはず。

それでも、奴は『それ』を発動した。

 

 

 

『領域展開』

 

 

 

「『針筵大叫喚(しんえんだいきょうかん)』」

 

 

 

 

「っ」

 

「さようなら、長月ちゃん」

 

 

 

次作でもアンケートとってますが、主要キャラ落書き(デフォルメ絵)してもいいですか? ※未経験者なので雰囲気だけ伝わればよいものとする

  • よい・やってみせよ
  • 完結したんだからNG
  • いや、むしろ私が書こう(有能絵師)
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