呪詛師殺しの僕(完)   作:藍沢カナリヤ

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第62話 呪詛師殺しー参ー

ーーーーーーーー

 

 

『領域展開』

無常さんに聞いてはいた。

それは必殺の術式を必中必殺にする結界術だって。

 

それが今、わたしの目の前でお姉ちゃんを呑み込んだ。

 

 

「っ」

 

ーーバギッーーバギッーー

 

 

呪力で強化した攻撃でも割れない。

なんで……?

『領域』は閉じ込める結界だから、外からの攻撃には弱いって話だったのに。

わたしの力じゃ足りないってこと……?

 

 

「っ……お、ね…………ちゃ……」

 

 

ううん。

お姉ちゃんなら、きっと大丈夫。

大丈夫だから……。

 

 

「っ」

 

 

 

ーーーー領域内ーーーー

 

 

「残念だったな、菅谷長月」

 

 

無数の針の花。

あれは薊の花だろうか。

針薊に光が反射し、周囲を不気味に照らす。

これが『領域展開』。

一握りの術師のみが使えるという呪術の境地。

 

 

「綺麗だろう?」

 

 

そう訊ねる針倉。

言葉とは裏腹に、彼から感情を感じ取れない。

 

 

「これが私の『針筵大叫喚』」

 

「この領域内では呪力の所在はこちらの思うがまま。君の体で私の呪力を爆発させることも、逆に君の内にある呪力を吸い尽くすこともできる」

 

「そしてーー」

 

 

ーーバヂッーー

 

「ッ!?」

 

 

激痛が走った。

まるで僕の内側から喰い破ってきたかのように、左腕に一輪の針薊が咲いていた。

僕の血と呪力を吸って、赤暗く輝いている。

 

 

「君の呪力を糧に咲く薊。さっきのお返しだ」

 

「何がお返しだ……そっちは『反転術式』があるから実質無傷だろ」

 

「それでも呪力は使う。本当はそんなことに呪力を消費するのも勿体ないんだが」

 

「っ、『毒蟲』っ!」

 

 

ーーゾゾゾゾッーー

 

 

「蟲か。無駄なことを」

 

 

会話の途中に不意打ちで放つ『毒蟲』。

だが、それも消されてしまう。

 

 

「言っただろう。この領域内では呪力は私の支配下にある」

 

 

……なるほど。

僕と独立して存在する呪霊は、自身の呪力で存在を確立している。

そのせいで呪力のみの存在である呪霊は、この『針筵大叫喚』の中では存在することすらできない。

本当に、僕の『呪霊操術』とは相性が最悪だ。

 

 

「『呪霊操術』では敵わないか」

 

「そういうことだ。諦めて死を受け入れろ」

 

 

そう言って、針倉は一歩近づく。

このままでは負ける。

………………なら、やっぱりこれしかないんだろう。

 

 

「…………何を笑っている」

 

 

僕の表情を見て、針倉がそう訊ねてくる。

笑ってる?

たしかに勝算がないわけではない。

けれど、今の僕にいっぱいいっぱいで、そんな余裕はないはずだ。

なのに、笑ってるなんてな。

 

ーーイカれてなきゃ呪術師はできないよーー

 

それはいつだったか、目の前のこの人に言われたことだった。

 

 

「……僕もしっかりイカれてる訳か」

 

 

こんな博打にしか頼れない状況で笑えてるんだからな。

その呟きは針倉にはきっと聞こえない。

僕の声には触れず、針倉はまた一歩こちらへ歩を進めた。

そして、告げる。

 

 

「時間もない。これで終わりにしようか」

 

 

僕の方へ掌をかざす。

領域の中だからその術式は必中。

きっと針薊が僕の全身から咲き乱れ、僕の息の根を止めるだろう。

 

 

 

「さようなら、菅谷長月」

 

 

 

 

 

 

「………………」

 

「……なぜ、だ?」

 

 

数秒後。

僕の体に針薊が咲くことはなかった。

 

 

「何をした」

 

「………………」

 

「答えろ、菅谷長月ッ!」

 

 

霞からすべて聞いた。

それは針倉の『領域展開』のこともだ。

『領域』を使われたら僕は確実に死ぬことは分かっていた。

だから、その対策をしない訳がない。

 

 

「対策……? 『簡易領域』か」

 

「違う。覚える時間も教えてくれる人もいなかったから」

 

「……ならばーー」

 

「そう。こっちも『領域』を展開する。それがお前の『領域』を攻略する方法だ」

 

「何かと思えばハッタリか? それは無謀というものだろう。君に『領域展開』は使えない」

 

「…………」

 

 

針倉の言おうとしていることは分かる。

僕が『領域展開』できるわけがない、と。

そう、その通りだ。

今の僕にはそれができるほどの力はない。

だからーー

 

 

『モういイ? オネえちャん?』

 

 

声。

僕に寄り添うように『それ』はいた。

奴の領域内でも存在できる呪霊の少女ーー『紫鏡』。

 

 

「『紫鏡』か」

 

『オネえちャん、イい?』

 

「あぁ、頼む」

 

 

『あハはッ』

 

 

 

 

『『領域展開』ーー『金輪紫鏡合(こんりんしきょうごう)』』

 

 

 

 

針倉の『領域』を押し戻す鏡面の結界。

薊の針を砕きながら、紫色の鏡はその体積を広げていく。

やがて、『領域』の侵掠は針倉のそれを半分ほど覆ったところで止まった。

 

 

『あ~ァ、サンねンじゃあ、こノくらイかぁ』

 

「十分だ。これで奴の術式は必中じゃあなくなったんだろ」

 

『うン』

 

「これでまともに戦える」

 

 

『紫鏡』。

いつか裏側の東京駅で僕に入り込んだ呪霊。

……そう。

取り込んだのではなく、入り込んだ。

『呪霊操術』で取り込んだ呪霊とは違い、こいつだけは独立して存在できない。

僕の呪力に依存する呪霊。

言い換えれば、僕の呪力の一部。

だから、針倉の『針筵大叫喚』の中でも僕の術式として発動できた。

 

 

ーーズキッーー

 

「っ」

 

 

頭に痛み。

針倉の攻撃によるものではない。

それはきっと急激な呪力消費の結果なんだろう。

 

 

『だいジョウぶ? オネえちャん』

 

「あぁ……これが『領域展開』か。かなり辛いけど……」

 

 

領域同士がせめぎ合って拮抗している状態。

向こうは針倉自身が、こちらは『紫鏡』がその維持をしているのだ。

針倉は『領域』を解除できない。

もし解除してしまったら、その瞬間に『紫鏡』の領域で殺される。

勿論、こうしている間にも、僕もかなりの呪力がもっていかれてる。

けれど、僕が攻撃に集中できる分、こちらが有利なのは変わらない。

 

 

「面倒なことをっ!」

 

 

針倉の表情が変わる。

初めて見たな、怒りの感情が表に出ているのは。

正真正銘、これがーー

 

 

 

「これが最期の殺し合いだ」

 

 

 

次作でもアンケートとってますが、主要キャラ落書き(デフォルメ絵)してもいいですか? ※未経験者なので雰囲気だけ伝わればよいものとする

  • よい・やってみせよ
  • 完結したんだからNG
  • いや、むしろ私が書こう(有能絵師)
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