呪詛師殺しの僕(完)   作:藍沢カナリヤ

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最終話 あの日の貴女へ

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頬を伝う暖かな雫を感じ、目が覚めました。

 

 

「泣いて、たんですね……」

 

 

夢を見ていたような気がする。

夢の内容はあまり覚えていなくて、でも、懐かしいという感情だけは残っています。

 

 

「…………」

 

 

枕に顔を埋める。

夢の続きが見れるようにと。

けれど、私のささやかな願いは叶いません。

微睡むあの感覚はなく、どうやら私の頭は完全に覚醒してしまっていたようでした。

 

 

「二度寝、好きだったんですけど」

 

 

あの日以来、私は睡眠時間が減ってしまっていた。

だからと言って、寝つけない訳でも目覚めが悪い訳でもなく、単に体がそこまでの休養を求めてこないという感覚で。

 

 

「こうして、生きているだけでも奇跡みたいなものなんですから」

 

 

贅沢は言えない。

人よりも1日を長く過ごせると考えれば、むしろ得。

最近はそんな風に考えるようになっていた。

 

寝る前に充電していたスマホを見ると、メッセージ受信の通知がきていました。

1件。

私の交遊関係は広くないから、相手はなんとなく想像がつく。

アプリを起動して、メッセージを確認すると、やはり相手は予想通りの人でした。

 

 

「…………もう起きてるかな」

 

 

改めて時計を見ると、朝の6時前。

7時には動こうと話をしていたから、そろそろ起こしに行ってもいいでしょう。

そう思い立った私は、着替えをして部屋を出ました。

 

 

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部屋に入ると、彼女はまだ寝ていました。

穏やかな寝息を立てていて、少し前までの取り乱した彼女の姿は夢幻だったんじゃないかとさえ錯覚してしまう。

けれど、それを乗り越えて今の彼女があるのだから、そんな風に思うのは失礼なんでしょう。

 

 

「朝ですよ」

 

 

軽く揺する。

反応無し。想定内。

 

 

「朝ですよ!!」

 

 

少し声を張っても、反応はありません。

今日はいつも以上に深いですね。

その後、何回か起こそうと試みますが、結果は変わらず。

仕方ありませんね。

 

 

起きろ(オキロ)

 

 

そんな風に書いた呪符を彼女に張り付けます。

呪力が流れ、

 

 

「ッ!?」

 

 

彼女は飛び起きました。

 

 

「おはようございます、霞ちゃん」

 

「……おはようございます……紡さん」

 

 

彼女ーー霞ちゃんは不服そうにあいさつを返した。

何もそこまでしなくても、と言いたげですが……。

 

 

「7時に出かけるって言ったのは霞ちゃんですよ?」

 

「うぐっ……」

 

 

そう言うと、彼女は口をつぐんだ。

どうやらそれには自覚があるらしい。

私とは対照的に、彼女はあの日以来目覚めが悪くなったと言う。

たぶん夢の中で『彼女』と会っているせいなんでしょう。

……それについては、私には何も言えない。

霞ちゃんから『彼女』を奪ってしまったのは私だから。

こうして起こしに来るのも罪滅ぼしのつもり、なのかもしれない。

そんな感傷に浸っていると、

 

 

「紡さん?」

 

 

霞ちゃんが心配そうにこちらを見上げていました。

やっと聞き慣れてきた声。

呪力で補っているとはいえ、『彼女』とどこか似た雰囲気の声。

やっぱり姉妹なんだと実感します。

 

 

「っ、すみません。なんでもないです」

 

「?」

 

「ともかく準備をしてください」

 

 

私達の任務は一応8時からの予定だけど、少し早く動き始めるのには理由がある。

 

 

「お墓参り、行くんでしょう?」

 

 

今日は『彼女』の月命日。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

「………………」

 

「………………」

 

 

2人で静かに手を合わせる。

そこは呪術高専の敷地内にひっそりと建つ『彼女』のお墓。

正直、作りは粗末で、こんなんじゃ供養できないよね。

 

でも、10月31日に起きた『渋谷事変』と呼ばれる騒動で、今、日本中が混乱に陥っている。

そのせいで、ちゃんとしたお墓も建てられなかった。

この混乱が落ち着いたら、『彼女』の家があった場所にちゃんとしたお墓を建てようと話はしていました。

 

 

「…………」

 

「…………」

 

 

しばらく2人で手を合わせた後、どちらともなく立ち上がる。

そろそろ時間ですね。

 

 

「行きましょうか」

 

 

ーーーーーーーー

 

 

呪いは待ってはくれません。

世界が混沌としている今ならば尚更。

それでも、私達は日常を大切にしようと誓い合いました。

『彼女』が守った『彼女』の『大切な人』(わたしたち)の日常を。

だから、2人で手を繋ぎ、祓いに向かう。

 

 

「霞ちゃん、準備はいいですか」

 

「もちろん、紡さん」

 

 

繋いだ手にぎゅっと力を込めます。

この手は離さない。

 

 

 

今度は私が貴女の『大切な人』を守りますから。

あの日の貴女の選択が間違っていないと証明しますから。

 

ね、長月ちゃん。

 

 

 

ーーーーーー終ーーーーーー




以上をもちまして、『呪詛師殺しの僕』完結となります。

拙い作品にお付き合いいただき、ありがとうございました。
完結させられたのも読んでくださった皆様のおかげです。
評価や感想等励みになりました。

もし、完結に際して、感想や評価していただけたら泣いて喜びます。返信もさせていただきたいと思います。
また次も何か書いていきたいと思いますので、お付き合いいただけたら幸いです。
では、また。

次作でもアンケートとってますが、主要キャラ落書き(デフォルメ絵)してもいいですか? ※未経験者なので雰囲気だけ伝わればよいものとする

  • よい・やってみせよ
  • 完結したんだからNG
  • いや、むしろ私が書こう(有能絵師)
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