呪詛師殺しの僕(完)   作:藍沢カナリヤ

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第8話 毒蟲徘徊ー参ー

ーーーー長月視点ーーーー

 

 

 

ーーバチンッーー

 

 

 

「っ」

 

 

 

三枚目の呪符で蟲を弾く。

音の壁(オトノカベ)

そう書かれた呪符も残り二枚。

枚数には限りがあるから、どうしても避けられない攻撃だけに使っていたけど。

 

 

「流石に厳しいか」

 

「私としては紡ちゃんと合流することをオススメするよ」

 

「……まぁ、そうだよね」

 

 

これ以上続けてもジリ貧だ。

なら、リスクを負ってでも移動する方がいいだろう、

 

 

「……次、避けたら走り出します」

 

「ここから南東に1……2kmといったところだねぇ」

 

 

2kmか。

若干遠いけど、走れなくはない。

 

 

「ふぅ」

 

 

息を一つ吐いて、もう一度相手を見据える。

黒色の影の塊が音を立てて、蠢く。

 

さぁ、菅谷長月ーー

 

 

 

ーーゾゾゾゾゾッーー

 

 

 

ーー走れ!!

 

 

 

ーーーー紡視点ーーーー

 

 

 

ぶっ飛べ(ブットベ)

 

 

 

その文字を杭葉の身体に書き込む。

それと同時に彼が吹き飛び、壁に叩きつけーー

 

 

「なるほど、これは危ないな」

 

 

ーーられません。

壁と杭葉の間には、黒い羽虫が大量にいました。

クッション代わり、でしょう。

 

何度かチャンスはあって、その度に書き込んではいるんですが、攻撃が通りません。

もちろん直接の打撃で蟲に触れるのはリスクが高い。

だから、イタチごっこになってる……。

 

正直、相性が悪い、です。

ただの式神使いなら、式神に呪言を書き込めばよかった。

式神には言葉が理解できなくても、それを使役する術師本人は言葉を理解できる。

だから、式神に刻んだ呪言も有効になるはず、でした。

けど、分散する蟲には書き込むことが難しく、あとは本人に直接書き込むしかありません。

 

でも、それもできない。

 

 

「『毒蟲』」

 

「っ」

 

 

また蟲を飛ばしてきて、距離を取られる。

この蟲自体も呪力を纏わせて弾けばどうにか食べられずに済みますが……。

 

 

ーーウゾッーー

 

「また、呪力がっ」

 

 

呪力を吸われる。

身体が食べられるよりはマシ。

けれど、呪力を吸われる度に蟲が速くなっている気がします。

 

 

「俺の術式は『毒蟲』」

 

「肉食の羽蟲を使役する。肉を喰らった蟲は強くなり、増殖する」

 

「さらに呪力を喰らえば速くなる。ただそれだけの術式だ」

 

 

術式の開示。

内容は聞きつつ、警戒します。

そうしてきたということは、術式効果を上げて攻めてくるはず。

 

 

「だがそれ故にーー」

 

ーーブンッーー

 

 

「!」

 

 

速い!

そして、

 

 

ーーガリガリッーー

 

 

横に飛び退いて正解でした。

私がいた場所のアスファルトは何かが噛みついたかのように抉られてしまっている。

 

 

「ーーそれ故に強力だ」

 

 

「っ」

 

 

呪詛師相手であれば。

そう考えた私の考えは甘かったのかもしれません。

羽虫が厄介すぎます……。

あれのせいで呪言が蟲に阻まれて届かない。

 

せめて、蟲がいなければ……。

 

 

「…………」

 

 

戦闘開始から、どのくらい経ったでしょうか。

5分か、10分か。

あるいはそれ以上か。

どうにか蟲を避けながら、一定の距離を保ちます。

けれど、こちらは生身で、向こうは疲れを知らない蟲。

 

恐らくこのままでは……。

 

 

 

「紡ちゃん!」

 

 

 

敗けを覚悟したその時。

私の名前を呼ぶ声がしました。

そこにいたのは、

 

 

 

「長月ちゃん!!」

 

 

 

ーーーー長月視点ーーーー

 

 

 

「紡ちゃん!」

 

 

息を切らせながらの声。

それでも彼女には届いていた。

 

 

 

「長月ちゃん!!」

 

 

 

合流はできた。

だが、状況は想像よりも悪い。

彼女の方も息が上がっていて、言ってしまえば僕と同じ避けるだけの状況だ。

 

どうする?

どうする?

どうする……いや。

 

 

 

「決まっているんだろう、ねぇ、長月ちゃん」

 

 

 

通話したままのスマホからの声。

 

走りながら針倉術師と話したこと。

提案された最悪の最善策。

 

 

「……あぁ」

 

 

小声で返す肯定。

本当ならしたくはない。

しないで済むのが一番だった。

だけど、ここを打破するにはそれしかない。

 

 

「紡ちゃんっ、そこを退いて!」

 

「えっ!?」

 

 

「早くっ!」

 

 

たぶん僕の考えていることは伝わっていない。

でも、彼女は飛び退いた。

僕を信じて。

 

 

……あぁ、仕方がない。

 

信じられてしまったなら仕方がない。

 

 

 

「…………これで死んだら恨む」

 

「ふふっ、ご自由に」

 

 

 

スマホを落ちるのも気にせず、僕は飛び込む。

彼女が飛び退いた場所に立った僕に、前から後ろから蟲が飛んでくる。

黒が迫る。

 

 

 

「長月ちゃんっ!!!」

 

「さて、どう出るかな」

 

 

 

二人の声が途切れ、僕の世界は黒に覆われた。

次作でもアンケートとってますが、主要キャラ落書き(デフォルメ絵)してもいいですか? ※未経験者なので雰囲気だけ伝わればよいものとする

  • よい・やってみせよ
  • 完結したんだからNG
  • いや、むしろ私が書こう(有能絵師)
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