ソードアート・オンライン フェイタルバレットー切札の弾丸ー 作:トライダー
黒い探偵
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『お願い!付き合って!』
スマホから聞こえる懐かしい声、昔よりも少し大人らしく低くなった女性の声からの突然の告白……では無い、もしも相手が彼女でなかったら俺も動揺していただろうが
「あのな〜いきなり勘違いされるような言い方すんなよ」
『あっはは!大丈夫だってば誰も聞いてないわよ』
俺の悪態に笑って返す幼なじみ、こんなやり取りも懐かしい
「ったく、……んでGGO……だっけ?それの大会に付き合って欲しいって話だったよな?」
『そうそう!二人一組のチーム戦でさ、まだ誰も持っていない超レアアイテムがダンジョン内に隠れているらしいのよ!それを手に入れたら一気にトップランカー入り間違いなしよ!』
GGO…荒廃した世界を銃や爆弾で生き残る血生臭いVRゲーム。
とても花の19歳の女性から聞くような話題では無い、だが彼女はそのゲームをとても気に入っておりトップランカーも間近の実力らしい。
俺も何度も誘われているがゲームに興味の無い俺はその誘いを断り続けて来た。
「んなもん初心者の俺がいきなり始めて勝てるかよ」
彼女に誘われて調べてみたが、GGOは数あるVRゲームの中でも特に殺伐としておりPV(プレイヤーバトル)が推奨されている上ゲームのお金を現金に移せれる為プロゲーマーも多く敷居が高い。
彼女の話を聞く限りそんなレアアイテムがある以上一流プレイヤーが集まっているだろう、そんなゲームに俺が入ってしかも大会に出るなど命知らずもいい所だ。
『大丈夫よ!目的はアイテムだけだし手に入れたらすぐ棄権すればいいわ、それに何かあってもアタシが守ってあげるって!』
「つか俺じゃ無くて他のゲーム友達とやれば良いだろ?」
『そ、それは……アタシ基本ソロでやってるし、学校の友達はGGOって言うと嫌がるし』
聞こえないように小声で呟いているんだろうが全部聞こえている、彼女のプライドの為に聞かなかったフリをしてあげよう。
『そ、そんな事より一回でいいからやってみない?絶対気にいるからさ!』
「興味ねぇって、てか《SAO事件》なんてもんがあったのによくやる気になるよなぁ」
SAO事件…とある研究者によって行われたデスゲーム、4000人近くの死者を出した最悪の事件、とあるプレイヤーにより攻略された事により収束したが大勢の人に大きな傷を残したのを仕事柄よく見てきた。
『うっ……それはそうだけど、でもやっぱりあの感覚を味わっちゃうと他じゃあ満足出来ないのよ、アンタも一度味わってみれば分かるって!』
だがそれによりVRゲームが廃止になるかと思われたがそんな事はなく、人々は戻ってきた、彼女のいう通りそうさせる何かがあのゲーム……いやあの世界にあるのだろう。
「はぁ〜……分かったよ、手伝ってやるよ」
『ホント!ありがとう恩にきるわ!やっぱり持つべきものは幼なじみね!』
「はいはい分かったから日にちや準備するもの教えろ、仕事に時間空けるからよ」
『分かったわ少し待っててね、えーと確か〜……』
彼女の声が遠くなりカチリカチリとマウスをクリックする音が聞こえる、恐らくパソコンでGGOの事を検索しているのだろう、彼女の心を表すかのようにマウスの音も弾んでいるように思えた。
とは言え俺もゲームに興味は無く断ってはいたが、これ程までに皆を惹きつけるVRという《世界》には興味があった。
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「はぁ、マジか……」
住み込みで働いている事務所に届いたダンボールを開けながら軽く後悔する。
VRゲームをする為に必要なハード《アミュスフィア》を購入したがこれが結構な値段をした。
ずっと遊ぶならともかく友達に付き合って大会に出るだけならば大きな出費だ。
俺一人で切り盛りしている貧乏事務所にはかなり痛手となった。
「つまんなかったら直ぐに売り払って現金にしてやるからな」
そう言いながらアミュスフィアを説明書どおりに接続すると帽子を掛けベットに横になり意識を落として行く。
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ほんの数秒後真っ暗な世界が光に照らされる、思わず目を閉じると次の瞬間風を感じた。
「ん……え?」
ゲームの中であるにもかかわらず体に風の当たる感覚に驚き目を開けると自分でも間抜けだと思うほど気の抜けた声が漏れた。
目前に広がっていたのは街であった。
茶色いビルが数多くたたずむ、まるで世紀末のような世界を何人もの軍人のような風貌の男達が歩いている。
驚きながらも近くの壁や手すりや床などを手で触ってみるゲームとは分かっているが感覚は本物に近かった。
「これがゲーム……なのか?」
次に自分の身体を触ってみた。
今自分はベッドで横になっているはずなのに肌の感覚が伝わる、ゲームをしていると言うよりは別の世界に来たような感覚だ。
「あっはは!ニュービーまるだしね」
「え?」
そんな俺に笑いながら近づいてくる少女、キリッとした瞳にピンク色のサイドテイルの髪と同じ色の衣装
ぶっちゃけめっちゃ可愛い、この世界に驚いていなかったら直ぐに口説きに行っただろう。
「まぁおかげで探しやすかったけどね」
「えーと……君は一体?」
「え?ああ、こっちで会うのは初めてだもんねアタシよア・タ・シ」
「え……ま、まさか……」
嫌な予感がする……
「こっちでは『クレハ』で通っているわ、よろしくね」
「はぁ?! お前があのガキ大将のも」
「ふんっ!」
「げふっ!」
あまりの驚きにリアルネイムを叫びそうになった俺のボディにクレハの拳が突き刺さる。
「何いきなり大声で本名叫ぼうとしてんのよ!」
「す、すまん……」
見た目は可愛いが男勝りな中身は変わっていないようだ、一瞬でもこのジャイアン系幼なじみにドキマギした過去の自分を殴ってやりたい。
腹をさすりながら立ち上がる、衝撃こそあったがダメージは特に無いようだ。
「でもなんか不思議な感じだな、またこうやって顔を合わせてもみ……クレハと話すなんて」
「本当にね……ってか『リョウ』あんた本名で登録したの?」
「え? 駄目なのか?」
クレハが俺の頭の上に視線を向ける。
よく見るとクレハの頭の上に名札のような物が浮かんでいる、それで俺のプレイヤーネイムを見たのだろう。
最初に名前の登録を求められたがよく分からなかったのでそのままの名前にしたのだが
「駄目じゃないけど、リアルの情報を流すのは危険よ?」
「そうなのか? まぁ後で作り直せばいいか」
「んでどう?凄いでしょVR空間は」
「ああ、正直言って驚いてるよ」
話には聞いていたがそれ以上だった、これは評価を改める必要がある。
俺の素直な感想にクレハは得意げにしている。
「ふふん♪そうでしょ? さぁ!大会まで時間あるからまずは装備を整えるわよ」
「お、おい!引っ張んなって」
腕を掴むと引き摺られるようにGGOの都内《SBCグロッケン》を見て回る。
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「さぁまずは武器よ! 流石に初期装備で大会に行かせるわけにはいかないもの、探してくるからここで待ってて!」
「お、おう……」
時間が無いからと全速力で引っ張り回され既に疲労感を感じている、抵抗しようにも細腕に似合わない怪力であった為無駄であった。
お陰で話が全く頭に入っていない、後で改めて見て回ろう。
「うぉっだっせぇ……」
息を整え立ち上がると等身大の大きな鏡に自分の姿が写る、顔や身長体つきは正直リアルとは余り変わらないアバターを製作する際リアルの身体をスキャンするらしく大きく変わる事は稀らしい。
「うーん、顔はリアルの方がいけてるが、まぁいいだろう。しかしこの格好はな……」
初期装備の服装は色合いも地味でお世辞にも良いとは言えずさっさと着替えたい。
「お?」
ふと武器屋の向こう側にある服屋が目に止まった。
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「お待たせ〜……ってあれ?」
しばらくしてクレハが戻って来る。
しかし先ほどまでいた場所にリョウの姿は無かった。
あたり見渡すが先ほどまでの特撮的なダサい初期装備の男の姿は見えない。
「よう、待ってたぜクレハ」
代わりに上下黒のスーツにハットを被った長身の男が立っていた。
男は気取ったようなポーズで壁にもたれながら帽子にかけている指を持ち上げ顔を覗かせる。
「ってあんたリョウ!? どうしたのその格好!?」
「いやなにすぐそこの店で見かけてな、この世界にもスーツがあって良かったぜ。やっぱりこの格好じゃ無いと落ち着かないからな」
「男を大人に魅せる服スーツと男を数倍ダンディに魅せる帽子……やっぱり俺みたいなシブい男にはこれがよく似合うなぁ」
ガラスに映った自分の姿を舐めるように見回し、酔ったようにウットリとしているリョウの姿に頭を抱えるクレハ。
「アンタもしかして普段からそんな格好してるわけ?」
「おう、イカしてるだろ?」
「アンタって昔から趣味が古いわよね。正直言ってそんなに似合ってないわよ?」
「え?」
クレハの言う通り、
ガタイが良く背も高い為スーツはまだ良いが、問題は帽子の方だ。
一昔前のドラマの探偵の様な帽子はまだ顔付きに幼さの残るリョウには合っておらず、マネキンにかけている様な『着せられている感』が強く出ていた。
「てかアンタもしかしてだけどそれ買ったんじゃ無いでしょうね!」
「当たり前だろ? 服がタダで手に入るなんてあり得ないだろ? 世間知らずのお嬢ちゃんじゃあるまいし」
「武器はどうすんのよ!」
「そんなもんクレハのお下がりでも貰えば……」
「武器にはステータス制限があるの! アンタの初期ステータスじゃアタシの武器装備できないわよ!」
「え?……そうなの?」
「もっと言うなら今回の大会のルールに武器の本人登録があるから自分で買ったかドロップした銃でしか参加できないわよ?」
「……………どうしましょ?」
「はぁ……」
自分の説明不足もあるとは言え、まさか来て早々武器より先に安物の服の購入するとは思わなかったクレハは重だるく頭を抱えた。
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右京 遼 (リョウ)
この作品の主人公、師匠のような真の漢を目指す自称ハードボイルドな私立探偵。
性格はナルシストで女好きな残念なイケメン。
クールぶろうとしているが実際には熱血寄りな性格、その上負けず嫌いで受けた借りは返さないと気が済まない所も。
探偵業で磨いた異常なまでに高い身体能力と直感を生かしてゲームスキルの低さを補っている。
クレハとは幼馴染であり、昔から運がいいことを彼女に羨ましがられている。
第四部 誰のサイドケースから見たい?
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