ソードアート・オンライン フェイタルバレットー切札の弾丸ー 作:トライダー
「アイ、回復を頼む!」
「了解です!」
「クレハちゃん、バフを入れるわ」
「ツェリスカさん、ありがとうございます」
アイとツェリスカのサポートを得て俺とクレハがボスエネミーへと突っ込む。
巨大なクリスタルが集合したようなボスエネミーは体を光らせると全方位に光の球を放つ。
「一発や二発程度なら耐えれる、アタシの後ろからついて来て!」
「わかった」
部屋全体へと放たれるエネルギー弾、数は多いが一発の威力は低い。
クレハの指示通り彼女の後ろに隠れるようにボスへと距離を詰める。
「く……ぅ……きゃぁ!」
三発までは耐えたが四発目の衝撃で遂にクレハは吹き飛ばされてしまう、だが彼女のおかげでUFGの届く距離へと来れた。
「うぉらぁ!」
俺はUFGをボスへと撃ち込み一瞬で距離を詰めると弱点らしき中央の水晶体へと光剣を突き刺した。
ボスは苦しみながらも俺を振り下ろそうと体を回転さる。
俺はその勢いに逆らず後ろへと跳ぶ、そして右腰のホルスターからコルト・パイソンを引き抜くとエネルギー増幅弾をボスに突き刺した光剣へと撃ち込んだ。
『ジジジジジジジッ!!!!』
エネルギー増幅弾によってそのエネルギーを急激に増幅させた光剣が激しい雷光を起こす。
その一撃を弱点へと受けたボスは激しくノイズを響かせる。
「今よ!」
ツェリスカの掛け声に合わせ、全員の一斉射撃がボスの残りの体力を削っていく。
「これで終わりだ!」
最後の一発を放ち水晶体を完全に砕く、コアらしき場所を砕かれたボスエネミーは糸が切れたようにがくりと崩れ落ちていく。
⭐︎
「マスター!ありましたよ!」
「マスターこちらも見つけました」
ボスを倒し、最後の部屋に入りパーツを見つけたアイとデイジー。
俺たちは今ジョーから貰った情報を元に二つ目のパーツがあると言われているダンジョンへと来ている。
前にデイジーから情報を貰ったお礼としてツェリスカにもメールでこの情報を伝え一緒に行く事になった。
トッププレイヤーである彼女が一緒に来てくれた事もあって、前回よりも楽に来ることが出来たのは良かった。
「良かったわね二人とも〜さっそく試してくれないかしら?」
「はいなのです!」
「了解しました」
前と同じく小さなメモリーチップを口へと含む、食うものなのかと疑問だったがデイジーも同じく食べてる辺りこれであっているようだ。
(てっきりアイがアホだから食べたのかと……)
思いはしたが口には出さないようにしておく。
「おー!来ました!」
「インストール完了です」
「今度は何が変わったの?」
「かわいさが上がりました!マスターどうですか?」
ドヤ顔で胸を張るアイ………確かに可愛い。
つい頭を撫でてしまう。
「ああ、可愛い可愛い、アイは可愛いな」
「えへへ〜♪」
「もう、親バカなんだから……」
「正しくはよりアファシスとしてのカスタマイズ、マスターのメンタルケアや身近のお世話の性能が強化されました」
「そっかアファシスは元々そう言ったサポートがメインのAIだもんね」
「嬉しいわ〜これでもっともっとデイジーちゃんを可愛くして仕事のストレスを癒せるわ〜」
クレハの言う通りアファシスの戦闘よりもマスターのサポートがメイン、戦闘能力の上昇よりこちらが今回のバージョンアップになるのだろう。
アイも喜んでいるみたいだしこれで良いだろう。
「マスターのおかげで80%まで上昇しましたありがとうございます!アップグレードしたわたしの大人の魅力でマスターを癒やしてあげるのです」
「あんた、レイちゃんに何教えてんのよ……」
「俺じゃねぇよ!」
ませたアイの台詞にこちらを見て来るクレハの冷たい視線が痛い。
最近パーツを手に入れたりツェリスカ達と話す機会が増えて来たからか変な知識や言葉を覚える事が多くなって来た。
(う〜ん可愛いが、これからの将来が心配だ……)
こう言うのを親心と言うのだろうか。
⭐︎
次の日、俺たちはとある場所へと向かっている。
ここはグロッケンの中のにある裏路地、荒廃した世界だが科学技術は高く表の街は光に包まれている。
しかし光の裏には必ず影がある、一歩建物の裏に入れば巨大な建物の影は月のない真夜中のように暗い。
「う〜暗いのです……マスター、クレハ離れないでくださいね?」
「大丈夫よレイちゃん。ちゃんと手を握ってあげるからね?」
そんな僅かな街灯しか光が無い場所にアイは怯えてしまっている。
俺とクレハの手を強く握り絶対に離れないように腕にしがみ付く、クレハも強がってはいるが少しだけ声に弱さが聞こえる、早く用事を終わらせてやろう。
勿論そんな場所に居るのはガラの悪い者が多く、ニュービーが一人で入れば直ぐにたかられるだろう。
現に今もアイやクレハを物珍しそうに舐めるように見つめる奴もいる。
「あ"?」
「ひぃ!」
そんな奴らに思いっきりガンをつける、自分でどんな顔をしているのか分からないが相手の反応を見るに相当厳つい顔になってる事だろう。
仕事上こう言う場所に入る事は多くこういうチンピラの対処も慣れているし、昔荒れていた頃はこんなのは日常茶飯事だった。
ガンをつけられた男は化け物でも見たかのように腰を抜かしながら逃げて行った。
「あっはっは!やるねぇお兄さん」
「ん?」
そんな様子を見てたのかタイミング良く影の中から誰かが話しかけて来た、声からして女性プレイヤーだろうと予想する。
「あんたが情報屋の『アルゴ』か?」
「正解ダ、リョウにクレハだね、噂は聞いてるヨ」
影から現れたのは金髪に黄色い作業着の上にフード付きのローブを纏った女性プレイヤー、何より特徴的なのは頬についた猫の髭のようなオレンジの模様。
……何故ヒゲ?
「な、なんでアタシたちの事を?」
「にゃははは!君たち二人は結構な有名人だからね、君たちの情報を欲しがるプレイヤーは多いしナ」
「有名人?俺たちが?」
「ああ、クレハの方は色んなスコード・ローンを渡り歩きながらランキングを上げているトッププレイヤー入り間近の期待のプレイヤーって噂ダ。それで無くとも女性プレイヤーは目立つからナ」
「クレハはともかく俺のランキングはまだ五桁台だぞ?」
「いやいや寧ろお兄さんの方が有名なくらいサ、プレイ初日にアファシスを手に入れた幸運のニュービー。それに始めて三ヶ月で五桁は十分さ」
「ジョーのオッサンに俺たちがパーツを探してるって情報を流したのがあんたって訳か……」
「まぁネ、ああ心配しなくてもそれ以外の事は別に教えて無いゾ。オイラが聞かれたのは君たちが今欲しがってる物は何かって事だけダ、プレイヤーのリアルに関する情報や特定のプレイヤーが困るような情報は取り扱ってないからね」
彼女の言葉から嘘は感じない、どうやら信じても良いようだ。
「だがその情報はどうやって手に入れたんだ? 同じアファシスを持ってる俺たちでも分からないのに」
「どうやって情報を手に入れたかは悪いが守秘義務ってやつダ。だがウチはそこらの情報屋より良心的だと思うゾ? ご贔屓にしてくれると助かるんだがナ」
「どうだか」
俺は露骨に警戒を剥き出しにする、経験上情報屋相手にはコレぐらいが丁度良いのだ。
情報屋という人種は弱みを見せるとたちまち付け込み情報を抜き取り自分の商品にしてしまったり、余計な情報を押しつけて金をむしり取ろうとする奴もいる。
だから情報屋を相手にする時は下手にでず、強気でいるのが一番だ。
「警戒心が高いね、まぁ良いことだナ。んじゃ信用を得るためにも早速仕事といきますか、情報はアファシスのパーツの在処だったナ」
「はい、既に二つは見つけました。あと一つなのですが知りませんか?」
「そうだナ……その情報の値段は………これぐらいだナ」
「ん?思ったよりも安いな」
もっと吹っかけられるかと思ったがその値段は想像していたよりもずっと良心的だった。
「まぁ情報の質の問題だね」
「情報の質?」
「ああ、その情報は確実性が低くてナ、ダンジョンの場所もダンジョンの内部もボスの事も合ってるかどうかが半々なんダ。ちなみに君たちが見つけた所の情報はこの情報の50倍の値段だよ」
「情報屋なら情報の裏付けぐらいしたらどうだ?」
確実性が低くて安いのなら自分で様子を探り確実な物にすれば良い筈だが。
「お兄さんの言う通りなんだが、実はオイラはGGOに来てまだ日が浅いんだ。だからレベルが低くてナ……」
フィールドに出て痛い目に遭ったのか、話しながらアルゴはしょんぼりと落ち込んでいる。
「だから君たちに一つお願いがあるんダ」
「お願い?」
「君たちがそのダンジョンに行ってフィールドやボス、そしてこの情報が確実かどうかを教えて欲しいんダ。勿論その分の報酬を出すよ」
「俺たちからの情報を買うって事か?」
「そういう事ダ」
「だが良いのか?こんな情報欲しがる奴は少ないんじゃ無いか?」
確かに俺たちには良い話だがこの情報を欲しがるプレイヤーはアファシスを持っている数少ないプレイヤーだ。
少なくともツェリスカにも伝えるから貴重な客が一人減る、それなのに報酬を出して良いのだろうか?
「構わないさ、オイラはお金じゃ無くて情報のやり取りをするのが好きなんダ。それに情報ってのは有ることに意味があるのサ、一見意味の無さそうな情報が回り回って貴重なものになる事もあるんだからナ」
なる程、確かに俺の知ってる情報屋とは根本的に心構えが違うようだ。
コイツのことなら信用しても問題ないだろう。
「話は分かった、その値段で頼む。俺たちが確かめて来て後で伝えるよ」
「助かるよ、お兄さんたちなら信用出来そうダ。じゃあ場所と詳細をメールで送るナ」
アルゴがメニューを操作すると直ぐにメールが送られる。
「場所は……《砂に覆われた孤島》か、確かに厄介な所だな」
「オイラにとったらあそこは地獄サ。隠れて通ろうにも障害物は少なく、プレイヤーもモンスターも多いから直ぐに見つかってしまう」
《砂に覆われた孤島》はGGOの中でも特に広いフィールドで、フィールドの9割が砂漠、障害物が少なく射線が通り易く純粋な撃ち合いが好きなプレイヤーからは好まれている。
その反面身を隠して戦うプレイヤーからは大批判を受けているフィールドだ、アルゴもそのうちの一人なのだろう。
「それにそのダンジョンはかなり高レベルのダンジョンらしい、オイラの見立てだと今すぐは行かない方が良いと思うゾ」
「……かもな」
彼女の言う通り推奨レベルはかなり高く書かれていた、クレハやツェリスカはともかく俺がキツイかもしれない、イベントが起こるまではまだ時間があるだろうし、当分は準備に時間を掛けた方が良いかも知れないな。
「他には欲しい情報はないか?」
「もしかしてBOBの情報も取り扱ってるの?」
「勿論、少し値は張るけどね。そうだね……これぐらいかな」
「う……高い、でも買うわ!」
「毎度あり♪」
そう言って情報の値段を見せて来る、アルゴの言う通り先程の数倍の値段に少し迷うが覚悟を決めたクレハは料金を払い情報を購入する。
「てか、BOBって何だ?」
「通称《バレット・オブ・バレッツ》、GGO最強のプレイヤーを決める最大の大会よ」
「そう言えばクレハは前の大会の入賞者らしいナ」
「本当か? 凄いじゃないか!」
クレハの実力が高い事は知っていたがそんな凄い大会で入賞するとはな驚いた。
「入賞って言ってもブービー賞だけどね……」
「その時オイラは居なかったけどかなり荒れた大会だったみたいだナ」
「うん、アメリカサーバーのプレイヤーが混ざってたらしくて、あっという間に優勝しちゃったのよね」
GGOはアメリカのゲームであり日本のサーバーとは別に分けられている。
理由は簡単、普段から銃に慣れているアメリカ人と日常生活では銃と関わりを持つことの無い日本人では実力に差が付きやすいからだ。
(でもGGOのトッププレイヤーだってかなりの実力の筈だ、そこまで差がつくものなのか………?)
その優勝したプレイヤーが何者なのか少しだけ気にはなったが今は置いておく事にしよう。
「次のBOBも荒れそうだよ、何より『ゼクシード』の問題が特にね」
「誰だそれ?」
「ゼクシードはGGOトッププレイヤーの中でも最上位のランカーだナ、そんな彼が流した『デマ』ってのが荒れる理由だろうネ」
「デマ?」
「確か『これからはAGI型が最強』って言ってたやつよね? でも流行り出した頃に同じように弱点も浮き彫りになって、その時には当の本人であるゼクシードはとっくにAGI型を止めてたから騙されたって感じるプレイヤーが多いって話し」
「は?何だそりゃ、ステータスの振り方に最強もクソもないだろ、結局はプレイヤー次第なのに」
「まぁお兄さんの言う通りだネ、でも当日トップランカーの内上位2人がAGI型だったから騙されたプレイヤーは多いんダ。そんな中で次のBOBでゼクシードが優勝するなんて事があったら……」
「周りにデマ情報を流して自分は優勝を掻っ攫った事になる訳か、確かに荒れそうだな……」
「しかも最近レア武器を手に入れたって噂だ、優勝の可能性はかなり高いヨ」
「そう言えばクレハはどうなんだ?」
確かクレハもAGI型だったな、特化というわけではないが
「アタシも最初はその話を参考にしてステータスを振ってたけど、途中で合わなくなっちゃって他のステータスもあげる事にしたわね」
「その方が良いだろうな、自分に合うのが一番だ」
「うん、そう思う。アタシはまだ被害が少ないけど、もし騙された人がいたら可哀想よね……」
「信じる方もどうかと思うけどな」
他人事ではなく騙されたであろうプレイヤーに同情するクレハに対して俺は厳しい言葉を投げかける。
不穏さを感じさせる第二回BOB、この大会の結果があんな事件を引き起こすとはこの時の俺たちは誰も想像していなかった。
⭐︎
第四部 誰のサイドケースから見たい?
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