ソードアート・オンライン フェイタルバレットー切札の弾丸ー   作:トライダー

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 ミステリアスなお姉さん

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「お待たせ〜」

 

「お久しぶりですツェリスカさん」

 

「デイジーこんにちはなのです!」

 

「こんにちはレイちゃん」

 

 とある日曜の昼間、リョウ達は久しぶりに休みの取れたツェリスカ達とフィールドへと行くために待ち合わせをしていた。

 

「久しぶりだなお姉さん♪、会えなくて寂しかったぜ」

 

「あら、嬉しい事言ってくれるわね。お世辞でも嬉しいわ」

 

「お世辞じゃ無いっすよ、何度もデートに誘ってるのにリアルが忙しくて会えないんですから」

 

「ごめんなさいね、昨日で一区切りついたから当分は大丈夫な筈よ」

 

「本当か! なら今度二人っきりで……」

 

「リョウく〜ん?」

 

「むぅマスター!わたしと言う者が居ながら他の女性を誘うなんて!」

 

 目の前にいる女子二人を差し置いてデレデレしているリョウにそれぞれ怒りを見せる。

 

「えー、だってお前らとはいつも一緒に居るじゃんか、俺だって偶にはこう大人なデートをだな……」

 

「鼻の下伸ばしながら何言ってんだか……」

 

「大人のデートがしたいならわたしに任せるのです!わたしの優秀なプログラムで、大人のレディとしてきっちりとエスコートされてみせるのです」

 

「いや無理だろ、てかされるのかよ」

 

「ふふふっ♪」

 

 そんなやり取りをツェリスカは微笑ましそうに見ていた。

 彼女はこの雰囲気が好きだった、アイやクレハは当然としてリョウの存在も彼女にとっては癒しとなっている。

 

「あ、あれってツェリスカさんじゃね?」

 

「ん?」

 

「うおっ!本当だ無冠の女王だ!」

 

「嘘!本物じゃない!」

 

 一人のプレイヤーがツェリスカの存在に反応するとドミノのように周りのプレイヤー達へと話しがひろまっていく。

 

「ツェリスカさん、この間ニュース見ましたよ!高難易度ダンジョンをソロ攻略した話し!」

 

「わたしツェリスカさんに憧れてるんです!良かったら今度一緒にフィールドに行きませんか?」

 

「ツェリスカさん!是非オレたちのスコード・ローンへ来て下さい!絶対に嫌な思いはさせませんから!」

 

 一人がやって来るのを皮切りに先程まで離れた距離で様子を伺っていたプレイヤー達も次々とツェリスカへと群がって来る。

 しかしツェリスカはそんな彼らを邪険に扱う事なく一人一人丁寧に接している。

 男性だけでなく女性プレイヤーにも慕われているのが彼女が本当に人気があるのが分かる。

 

「凄い人気だな……」

 

「そりゃそうよ、強くて優しい、それにあの美貌で男性プレイヤーはメロメロよ、しかもあれだけ人気なのに普段何をしてるかが一切不明なの、そう言った謎がより人気を引き立ててるのね」

 

「ミステリアスなお姉様かぁ………確かに良いよなぁ。でもそんなに凄いと高嶺の花って感じるなぁ」

 

「はい、なので言い寄られる事はあまり無かったのですが最近リョウさん達と一緒に遊ぶ事が多くなりましたから」

 

 トッププレイヤーの実力を持っていながら誰とも組まず大会やクエストに参加しない無冠の女王、そのミステリアスさは一見近寄り難い雰囲気を出しているが、リョウ達と一緒にいることが増えその雰囲気は取り除かれているみたいだ。

 しかしそのせいで言い寄られる事が増えたのは少し罪悪感を感じる。

 

「そうか、少し悪い事したかな?」

 

「いえ、最近のマスターはとても楽しそうです。わたしも友達が増えて嬉しいですし、マスター共々よろしくお願いします」

 

 そう言い笑顔で頭を下げるデイジー、彼女もまたアイのように感情が豊かになって来ているみたいだ。

 

 

 

 

        ⭐︎

 

 

 

 別の日、リョウはSBCグロッケン内部の服屋へと来ていた、アイはクレハのホームへと遊びに行っている為一人でだ。

 

(ま、まぁ一流の男には一人になりたい時もあるもんだ)

 

 誰かが聞いている訳でもないのに心の中で謎の言い訳をしているリョウ、いつもは隣にいるアイや引っ張り役のクレハが居ないのが寂しかった。

 

「おっ!この帽子イカしてんな、それにこの靴セールじゃん!………」

 

「でも少し地味かな?やっぱ俺みたいな良い男にはこっちの方がイカすよな!はっはっはっ!!!………………………………帰ろっかな」

 

 無駄に大きい声で独り言を言うが相手にしてくれる人は居ない。

 ついに寂しさがMAXになり、クレハ達に混ぜて貰おうと帰ろうとしてると

 

「やめて下さい!」

 

「ん?」

 

 店の前が騒がしい事に気付いた。

 聞き覚えのある声、それはデイジーのものだった。

 

 

 

 

 

 

 店の前ではツェリスカともう一人、ウェスタンハットを被り腰にホルスターを付けた西部劇のガンマンのような風貌の男が言い争っている。

 

「通してくれないかしら?」

 

「そう言うなよツェリスカ、昔はコンビを組んだ仲じゃないか」

 

「一回一緒にクエストに行っただけでしょ? それだけで彼氏ヅラしないで欲しいのだけど」

 

 ツェリスカが通ろうとする道を遮り馴れ馴れしく近づいて来て、肩に手を回そうとする男の手を叩き落とす。

 そんな言い争いを周りのプレイヤーは困惑しながらも見ているだけであった、その中にはツェリスカのファンの子達もいた。

 彼らが見ているだけなのには理由がある、ツェリスカに言い寄っている男の名は『ガイ』、西部劇が好きなのかハンドガンのみを愛用するというプレイヤーで、前回のBOBで16位入賞の強豪プレイヤーである。

 懸賞金ランキング自体は特別高い訳ではないが早撃ちの腕はGGOのランキングで一位を獲得するほど、ついたあだ名が《早撃ちのガイ》

 しかしそれ以上にプライドが高く悪い噂の多い男でもある、気に入らない相手はしつこく追い回して自分の得意な決闘へともっていくという噂だ。

 そんな彼の邪魔をして矛先が自分へと向くのが怖かった、だからと言って憧れであるツェリスカを放っておくこともできない状況。

 ツェリスカもそんな彼らの心境を察していた、だから彼らに助けを求めるつもりはない、現にガイのそのやり口でGGOを辞めたプレイヤーもいるからだ。

 

 そうしている間も二人の口論は続く。

 

「ランキングが下がったからってわたしに擦り寄らないで自分で何とかしてくれないかしら?」

 

「何だと……」

 

「聞こえなかったの?悪いけどあなたのような下品な格下には興味が無いの、とっとと視界から消えて欲しいのよ」

 

「あんまり調子に乗るなよ、このアマぁ!」

 

 彼にとってランキング低下の話は禁句で合った、実力派ではあるが最近ニュービーが増えた事によるランキングの変動について行けず10位以上も落としてしまている。

 その上、数日前にニュービーの女スナイパーに負けたと言う事実が彼のプライドをより傷つけていた。

 彼の逆鱗に触れたのか怒りの表情へと変え、ツェリスカに掴み掛かろうとする。

 それを遮るようにデイジーが間に入る。

 

「マスターに近づかないでください」

 

「邪魔なんだよアファシス風情がっ!!」

 

「う……」

 

「デイジーちゃん!」

 

 しかし怒り心頭の男は止まらず、そのままデイジーの胸ぐらを掴みあげると右腕を振り上げる。

 

 

「汚ねぇ手で(デイジー)に触んな、汚れたらどうする」

 

 

 だがその腕がデイジーへと振り下ろされる前にリョウが掴み捻りあげる。

 

「う……ぐぅ………」

 

 リョウに掴まれている腕を振り解こうと力を込めるが、リョウは合気道の要領で少し力の入れ方を変えるだけで彼の動きを抑える。

 

「うおっ?!」

 

 そのまま体制を崩しクルッと回す、すると男の体は一回転し、情け無い姿で背中から倒れる。

 

「な、何だテメェは!」

 

「なぁに、麗しい花を害虫から守る唯のナイトさ」

 

 地べたへと倒れ自分を見上げる男へと帽子のツバを指で弾くとキザったらしくポーズを決める。

 

「リョウ!」

 

「大丈夫かい?デイジーちゃん」

 

「あ、ありがとうございます……」

 

 リョウは地面に座り込んでいるデイジーを助け起こすと彼女の服の汚れを払ってやる。

 

「レディに手を挙げるとはな、見てくれは良いが随分と性根の腐ったガンマンだな」

 

「お前は……最近ツェリスカと一緒に居る……アファシスを手に入れたニュービーか?!」

 

「振られたくせに騒いでんじゃねぇよ、これ以上ダサくなる前にとっとと帰りな」

 

「うるせぇ!邪魔すんじゃねぇ、レアアイテムを手に入れただけのニュービーが!」

 

「野郎の嫉妬は見苦しいぜ? そんな三下ムーブしてるから幸運の女神が振り向かないんだよ」

 

「三下だと……オレを三下だと!このオレ、早撃ちのガイをよぉ!!」

 

「早撃ち?手打ちの間違いじゃねぇの? それに肩書きを自分で語ってるようじゃたかが知れてるな」

 

「貴様ぁ……… 決闘(デュエル)だ!!ガンマンらしく早撃ちで決めようぜ!」

 

 煽られたガイは拳を震わしながら物凄い形相でリョウを睨みつける、その表情に怯えるギャラリーも居るがリョウは全く怯んでいない。

 本来SBCグロッケンでは撃たれてもダメージがゼロになる、しかしデュエルシステムを発動した時だけはその制約が外れる。

 

「構わないぜ、レディを殴るような腐った腕の男に負けるかよ」

 

「リョウ!」

 

 ガイの実力を知らないリョウは彼からの挑戦を軽く受ける、ツェリスカはそんな彼を引き止めようとする。

 

「リョウ、彼は人間性は兎も角早撃ちの腕だけは本物よ、だから………」

 

 気に入らない男ではあるが一度は一緒に戦ったこともある、なのでガイの実力を知っているツェリスカは心配そうに声をかける。

 たがリョウは悠々とした顔を崩さない、彼女達を心配させないように笑顔で接する。

 

「そんな顔するな美人が台無しだぜ?」

 

「でも……」

 

「心配するより、応援してくれないか? 男ってのは女の子に応援されると何倍も強くなれるんだからよ。そいつが美女の笑顔なら尚更な」

 

「……………ふふっわかったわ、頑張ってリョウ」

 

「頑張ってくださいリョウさん」

 

「ふっ………お任せくださいお嬢様方♪」

 

 帽子の内側に軽く息を吹きかけ被り直すと二人にウィンクを返してガイへと向き直る。

 メニューを操作し決闘のボタンを押す、その瞬間二人の間でだけHPが減るようになる。

 それを確認したガイは懐から大きなコインを取り出す。

 

「ルールは簡単だ、互いに背を向けこのコインが落ちた瞬間に銃を撃ち合う、いいな?」

 

「古臭いルールだな。だが嫌いじゃない、構わねぇよ」

 

 一歩、そして二歩、西部劇のように距離を取り背を向けるとガイは後方へとコインを投げる。

 手慣れた動きで放られたコインは二人のちょうど真ん中で勢いを止め落ちていく。

 残り数秒もたたず勝負は一瞬で決まる、緊張感溢れる光景に野次馬達を含めて全員が息を呑む。

 

(ニヤッ)

 

「っ!? リョウ気をつけて!」

 

 だがガイはコインが落ちる前に拳銃を引き抜く、リョウに煽られ既にプライドを傷つけられたガイに正々堂々と言う言葉はなかった。

 ツェリスカの声も虚しくリョウはまだ背を向けている。

 ガイはリョウの背中を撃ち抜こうと勢いよく振り向く、コインが地面へと落ち軽い金属音を響かせたのは彼が振り向き終わる瞬間だった。

 

「馬鹿が……………なっ!?」

 

 しかしガイの視界に映ったのは既に此方へとコルト・パイソンを構えているリョウの姿だった。

 

 二発の銃声がグロッケンへと響き渡る、しかし倒れた男は一人。

 

「がはっ、ごほっ!ごほっ!」

 

 倒れたのはガイだった。

 無傷なリョウに対しガイは帽子に銃痕を残し、左胸を押さえながら悶えている。

 

 二つの銃声、それはどちらもリョウが放ったものだった、真ん中を撃ち抜かれたウェスタンハットが地面へと落ちる。

 

「お前に帽子を被る資格は無い、そいつは真の漢が被るもんだ……」

 

「がふっ!がふっ!ごほっ!」

 

 急所を撃たれ悶えている、しかし心臓付近を撃たれたにも関わらずガイの体力は殆ど減っていない。

 

「ごほっ!ごほっ!……貴様ワザと………」

 

「お前のハートなんざ射抜きたくないんだよ。とっとと持って帰んな」

 

 そう言ってリョウは自分の足下へと転がって来た『へし曲がった拳銃』を蹴り返す。

 

 リョウが撃ったのは心臓では無くガイが構える時に胸付近を通過した彼の拳銃であった。

 拳銃が盾となった事でデスは逃れたがマグナム弾の衝撃を肺へと食らいHP以上に痛覚と精神にダメージを受けていた。

 

「うぐ……お、覚えていろ……」

 

「ああ、覚えていてやる。だから次ツェリスカに手を出す時は、俺を通してからにしな。その時は容赦しないけどな」

 

「くぅっ……!」

 

 ガイの呪うような目にも怯まず、それ以上に鋭い眼光で彼を睨み返しながら銃をホルスターにしまう。

 得意の早撃ちそれも反則をしてまで負けたガイは、そんなリョウの視線に気落ちし胸を押さえながら去って行った。

 

「ありがとうリョウ、助かったわ」

 

「カッコ良かったですよリョウさん」

 

「ありがとうデイジーちゃん♪」

 

 さっきとは真逆の柔らかい笑顔を二人に返す。

 

「本当にありがとう、何かお礼がしたいのだけど……」

 

「じゃあデートしようぜ、一度もしてなかったろ?」

 

「そんなので良いの?」

 

「俺にとってはそれが一番さ、美女と過ごす時間、これに勝る幸運は無いよ」

 

「ふふっ、なら行きましょうか」

 

 軽いお誘い、だがガイとは違い純粋な笑顔を見せるリョウの姿につい頬が緩む。

 

「ではマスター、わたしはレイちゃんの所に行きますね」

 

「え? ええ行ってらっしゃい」

 

「アイならクレハのホームに居るぜ」

 

「はい、それではリョウさん本当にありがとうございました」

 

 お手本のようなお辞儀を深々とするとクレハのホームの方へと向かって行った。

 後に残ったのはリョウとツェリスカ、そして様子を見ていた野次馬達。

 

「もう、デイジーちゃんたら……」

 

「気を遣ってくれたんだな。美少女二人に囲まれてのお出かけてのも悪くないけど、やっぱデートと言えば二人っきりだよな」

 

 デイジーの気遣いを察したリョウはツェリスカへと左腕を差し出す。

 

「さ、どうぞお嬢さま」

 

「ふふっ、ありがとう」

 

 差し出した左腕にそっと自分の右手を絡めると二人揃って歩き出す。

 そんな様子を羨ましそうにみている者も居たが先程のやり取りを見て文句をつけられる者は一人として居なかった。

 

 

 

 

       ⭐︎

 

 

 

 

 それからわたし達はグロッケン中を歩き回った。

 服屋、アクセサリー、武器屋、数あるお店を回った後、彼がお気に入りの喫茶店へと入り一息つく。

 

「ふぅ……美味しいわね、ここのコーヒー」

 

「だろ? ブラックが一番良いんだよな」

 

 少し苦いけど後味が良い、これからもご贔屓にしようかしら。

 

「今日は楽しかったわ、これじゃお礼にならないかも」

 

 それは本心だった。

 わたしが歩いていると自然と歩幅を合わせてくれたり、手を握る時も強過ぎず弱すぎず優しく包み込んでくれたり、他にもさりげなく車道を歩いてくれたりエレベーターで扉を押さえてくれたりなど

 意外にもリョウはただの女好きではなく、ちゃんと女の子の扱いを理解している紳士的な男性だった。

 お礼である以上本来なら彼を楽しませる必要があるのだけど、それ以上にわたしの方が彼との時間を楽しんでしまった。

 

「なぁに、俺はそれ以上に楽しんだから十分さ。おかげて寂しさも払拭出来たしな」

 

「そう言えばなんで一人で居たの?」

 

「今日は二人で女子会だってさ。この前ツェリスカにデレてたのが気に入らなかったみたいだ。別にあいつらを雑に扱ってる訳じゃねぇのによ」

 

「そうなの、でも二人の気持ちも分かるわ」

 

 わたしだってレイちゃんみたいに甘えてみたいし、クレハちゃんみたいに旧友の仲のやり取りをしてみたい。

 それはわたしにはしてくれない接し方。

 確かに二人はわたしを羨ましく思ってるみたいだけど、わたしからすれば距離の近い二人の方が羨ましく思う。

 

「でも本当に楽しかったわ、こんなちゃんとしたデートなんて初めてだし緊張もしたけど……」

 

「そうなのか?ツェリスカならてっきり慣れてるのかと……」

 

 彼が意外そうな表情をみせる、そう言う経験が豊富だと思ってたのだろうか。

 嬉しい反面、複雑な気持ち。

 軽い女だと思われたくない、そう思ったわたしは少しだけ自分の事を話す事にした。

 本当の自分の事を……

 

「……………わたしは皆んなが思っているようなお嬢様じゃないわ。毎日毎日仕事に追われる唯の会社員よ。仕事仕事でまともに恋愛もしてない、良い人も居たけど仕事ばっかり優先してる私に嫌気がさしてまともに付き合う前に別れてしまったわ。『僕と仕事どっちが大事なんだ』って………」

 

「勿体無いな、こんな良い女性を振るなんてよ」

 

「幻滅した? ミステリアスなお姉さんの正体は何処にでもいる仕事狂いで疲れてしまったただのOLよ」

 

 自分でも声が少し震えてるのが分かる。

 謎の多いわたしの正体が何の変哲も無いただの会社員と知ってガッカリしてないだろうか。

 

「まさか、意外な一面知れてラッキー!って感じ。俺そう言うギャップに弱いんだよね〜」

 

 でもわたしが好きな笑顔を彼は崩さない。

 

「それに仕事に一生懸命なのも悪い事じゃない。何かに誇りを持って全力で取り組めている、それを尊敬することはあっても幻滅なんてするかよ」

 

「ふふ、ありがとう。やっぱりちゃんと仕事してる人は違うわね〜」

 

 彼の言う通りわたしは自分の仕事に誇りを持っている。

 例え忙しくて私生活が荒れてしまっても、上司が無茶振りばかりの無能でも、わたしにとっては大事な仕事。

 だからこそ一切手を抜くなんてしたくない、でも今までの彼らはそれを分かってくれず自分の事ばっかりでわたしも自分を曲げられず、そのせいで上手くいかなかった。

 だからこそ今こうしてリョウが理解してくれるのが嬉しかった。

 

「でも何で俺に話してくれたんだ?」

 

「それはわたしが貴方の事を知りたくなったから……かしら」

 

「俺のことを?」

 

「ええ、なのに自分の事を喋らないなんて失礼でしょ? ねぇ貴方はどんな人なの?」

 

 思えば彼が何をしているのか知らなかった、興味が無かった訳では無い、ただそれを聞いて自分の事を聞かれるのを避けたかったから。

 だから喋っちゃった以上は積極的に聞いてみたい。

 

「俺は探偵さ」

 

「探偵?」

 

「そ、困ってる人の依頼を100%の力で解決するハードボイルドな探偵だ。あ、依頼人が女の子なら120%は出るけどな!」

 

「うふふっそうなの、貴方はリアルでも此処でも変わらないのね」

 

「まぁね。あ、リアルの方が少しだけ男前だとおもうぜ」

 

「あら、それは見てみたいわね」

 

 きっと彼も自分の仕事に誇りを持っているのだろう、今日のように困った人を助け、女の子が相手ならより張り切って。

 裏表の無い彼はいつも本当の自分で接してくれる、だからわたしもいつか彼と本当の自分で会いたいと思った。

 

 

 

 

 

         ⭐︎

 

 

 

 

 

「マスター!コーヒーが入りましたよ飲んで下さい!」

 

「おうサンキュー……………甘くないか?」

 

 俺は銃の整備の休憩がてらアイが入れてくれたコーヒーを飲む、しかしその味はコーヒーとは思えないぐらい甘い。

 

「そんな筈ないのです、しっかり味見をしましたから」

 

「いや、お前の好みだから甘いんだろ?」

 

 アイはコーヒーが飲めない、ブラックどころかカフェオレですら少し苦いらしい。

 そんなアイの味見したコーヒーがブラック好きな俺の舌にに合う筈が無かった。

 

「むーマスターは我が儘なのです! こうなったらマスターの味覚をわたし好みにして見せるのです!」

 

「お前の好みになったら糖尿病になるわ!」

 

 そんなやり取りをしているとクレハがホームの扉を凄い勢いで開ける。

 かなり急いできたのか肩で息をしているようだ。

 

「ちょっとリョウ!これどう言う事よ!!」

 

 そう言いメニューを開くと一つの記事を叩きつけてくる。

 

『無冠の女王熱愛発覚?!相手は幸運のニュービー、馴れ初めはアファシスか!?』

 

 と言う記事に昨日ツェリスカと腕を組んで歩いている写真が大きく貼られていた。

 

「何ってツェリスカとデートしただけだよ、昨日デイジーちゃんから聞いてるだろ?」

 

「そ、それはそうだけど……熱愛って何よ!」

 

「こんなスキャンダルにいちいち騒ぐなよ。それにこうなる事は分かってたしな」

 

 あれだけファンの居るツェリスカとデートすればこうなる事は想像出来た。

 それにこれでツェリスカに言い寄るプレイヤーが減るだろうし、もし出て来てもそのヘイトは俺に向けられるだろう。

 それで彼女の負担が少しでも減るなら十分だ。

 

「む〜ツェリスカばかりズルいのです! マスターとわたしも撮って欲しいです、出掛けましょう!」

 

「あ、アタシも行くっ!」

 

「やだよ、今日は一日中銃の整備するって決めてるんだから」

 

「いいから来なさい!」

 

「行くのです〜!」

 

「あーコラ引っ張るなっ!? コーヒーが……あっつ!!甘っ!? 分かった分かったから!」

 

 断り銃の整備を続けようとするが強引に引っ張られる。

 二人分のステータスで引っ張られて逆らう事が出来ず、引き摺られるようにグロッケンへと飛び出した。

 

「せめて着替えさせてくれ〜〜〜!!!」

 

 結局クレハとアイに両腕を掴まれ、無理矢理に昨日ツェリスカと出掛けた店を歩き回る事になった。

 

 ちなみにクレハ達と出かけた事でスキャンダルになる事はなった、しかし内容は………

 

 『幸運のニュービー三つ股発覚?!女の敵の本命は誰!!』

 

 頭からコーヒーを被り服をシミだらけにして女の子二人に引っ張り回される、何とも情けない姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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第四部 誰のサイドケースから見たい?

  • キリト
  • アスナ
  • クライン
  • エギル
  • シリカ
  • リズ
  • リーファ
  • シノン
  • ユウキ
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