ソードアート・オンライン フェイタルバレットー切札の弾丸ー   作:トライダー

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 偽りの自分

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「よし、デバフだっ!」

 

 相手の防御力を下げるウイルス弾を撃ち込み、左手の袖から赤い光剣を取り出すとエネミーへと向かって行く。

 

「バフを入れるわ!」

 

「サンキューツェリスカ! うぉらぁっ!!」

 

 ツェリスカのバフによって攻撃力と素早さを上げるとそのままの勢いで光剣を振るう、赤い刃が煌めきエネミーの体を豆腐のように簡単に切り裂いてしまう。

 

 そんな俺を別のエネミー達の銃口が狙をつける。

 

「やらせないわ!」

 

 しかし俺との間に割り込んだツェリスカが引き金を二度引き、放たれた銃弾がエネミーの体を貫く。

 

「これで終わりだっ!」

 

 ツェリスカが背後のエネミーに対処してくれている間に、ベルトから炸裂弾を複数取り出し装填すると正面に並ぶエネミーの頭部へと撃ち込んでいく。

 撃ち込まれた炸裂弾は着弾の後、小さな爆発を起こしエネミーの体の内部を粉砕し消滅させる。

 

 

 

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「討伐終了おつかれ〜」

 

「お疲れさま、そろそろ帰りましょうか」

 

 数時間によるツェリスカと二人っきりのレベル上げ、彼女のサポートもあって既に数十体のエネミーを倒した。

 流石に疲労を感じた俺たちは少し名残惜しいが帰る事にする。

 

「………………」

 

「ん?どうしたツェリスカ?」

 

 装備をしまっていると、ふと隣から視線を感じた。

 

「ねぇ、わたしがあげた光剣使ってくれてる?」

 

「え? まぁたまにはな……」

 

「そう?リョウが使ってる所あまり見ないけど?」

 

「そりゃこっちをメインで使ってるしな」

 

 基本的にはクレハから貰った方をよく使う、理由は特にないが何故か青い方を使っているとクレハの機嫌が少し悪くなるからだ。

 

「そうなの……もしかしていらなかった?」

 

「とんでもない!ただ大事にしてるだけさ、雑に使いすぎると壊れちゃうし……」

 

「そんなの気にしなくて良いのよ、多少壊れたって貴方のスキルで修復出来るでしょ?それに使ってくれた方がわたしも嬉しいわ」

 

「そ、そうか?ならもっと使おうかな?」

 

「ええ、是非そうして頂戴」

 

 俺が青い方の光剣を軽く振り回すとツェリスカは嬉しそうに笑顔を見せる。

 まぁツェリスカが喜んでくれるなら別に良いか。

 

 

 

 

 

 

 

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「クレハ右だ!」

 

「了解!」

 

 俺たちの右側へと回り込もうとするプレイヤーの存在をクレハに伝える、その一言で俺のして欲しい事を察したクレハは瞬時に対応する。

 

「後ろよっ!」

 

「カバーする」

 

 今度はクレハからの指示が聞こえる。

 敵の増援だ、数が丁度6人だと気づいた俺は素早くコルト・パイソンを取り出し、彼らが構えるよりも早く引き金を引き全員の頭部を撃ち抜く。

 

 増援を全滅させた事で敵の士気が下がっている、今がチャンスだ。

 

「突っ込む、援護を頼む」

 

「任せて!」

 

 光剣を取り出し駆け出すとクレハがスモークを投げる。

 相手の視界を覆うと距離を詰め敵プレイヤーへと青い光剣を突き刺さす。

 一人の胴体へと突き刺すと隣にいたプレイヤーがサブマシンガンを向けてくる、そのプレイヤーへともう片方の腕でコルト・パイソンを取り出し相手の銃を撃ち落とす。

 無防備となったプレイヤーは直ぐにサブアームを取り出そうとするがそれよりも早く青い光の刃が彼の首を斬り飛ばす。

 

 

 

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「お疲れさん」

 

「ええ、お疲れさま」

 

 別の日、今日はクレハとのレベル上げ、途中でプレイヤーと出会ったが俺たちのコンビネーションで倒し切る事が出来た。

 やっぱりクレハと一緒だとやり易い、互いに一言言うだけでして欲しい事が手に取るようにわかる。

 こう言うのを阿吽の呼吸って言うのか、やっぱり幼馴染だからだろうか。

 

 とは言え流石に疲れ、帰り支度をしていると視線を感じる。

 

「…………………」

 

「ん?どうしたクレハ?」

 

「ねぇ、何でアタシがあげた方使わないのよ……」

 

「え?いや、いつも使ってるだろ?」

 

「今使って無いじゃない……」

 

「たまにはこっちも使おうと思っただけさ」

 

「そう………もしかして要らなくなっちゃったの?」

 

 声が沈み恐る恐る聞いて来る。

 いつもの元気なクレハの姿では無い、俺が初めて見る姿だった。

 

「バカな事を言うな、お前がくれたおかげで戦略に幅が出来て何度も救われたんだからよ」

 

「そ……そう?」

 

 そう言うと一瞬声に張りが戻るが直ぐにまた沈んでしまう。

 

「クレハ?」

 

「うん……ごめんね変な事聞いちゃって、忘れて!」

 

「………どうしたんだあいつ?」

 

 無理矢理話を切り上げ背を向けるとズンズン歩いて行く。

 少し元に戻ったがその姿は俺には無理をしているようにも感じた。

 

 

 

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「マスター!わたしは怒っているのです」

 

「どうしたんだいアイちゃん」

 

 さらに別の日、クレハとツェリスカと待ち合わせの為に喫茶店で知恵の輪を弄りながら二人が来るのを待っているとアイが頬を膨らませる。

 どうやら怒っているようだが子供のように頬を膨らませている姿は、可愛さは感じても怖さは全く感じ無い。

 それに俺の膝の上に座り、子犬のように頭を擦り付けながらそんな事を言われても説得力が無い。

 

「マスター、最近UFGを使ってくれて無いのですー!」

 

「う……そ、そんな事ないだろ?」

 

「あります!わたしのコンピューターで調べた所、ここ最近使う頻度がめっきり減っているのです!」

 

「それはまぁ、ほら最近アイテムが充実して来たしクレハ達のサポートもあって無理に距離を詰める必要が無かったからなぁ」

 

「そんなぁ……」

 

 怒った顔からシュンと分かりやすく気を落とす。

 

「そ、そんな顔するなって!別に忘れてた訳じゃ無いよ。それに最近素材が揃ったおかげで面白い改造が出来たからな、これからも大事に使うよ。アイからのプレゼントだしな」

 

「本当ですか!やっぱりマスター大好きなのです♪」

 

「よしよし、いい子いい子」

 

 頭を撫でてやると機嫌を良くし、より強く頭を擦り付けてくる。

 実は使わなかったのは改造の途中で一度ぶっ壊してしまい、修理をしていたからと言うのは内緒にしておこう。

 

 しかし、最近貰ったプレゼントの話になる事が多い、クレハもそうだがツェリスカも少し機嫌が悪そうに感じた。

 

「なぁやっぱり女の子ってプレゼントした道具は使ってもらった方が嬉しいのか?」

 

「それはそうです、贈り物は自分の分身みたいな物です。使って貰った方が大事にしてくれてる、必要とされてると思うのです」

 

「そ、そうなのか……」

 

「乙女心は複雑なのです!」

 

 しかし、もしクレハとツェリスカの機嫌の悪さがそれが原因で起きているのだとしたら男として何かしない訳にはいかないな。

 

「しっかしどうするか、俺の両手じゃ三人を抱き締める事は出来ても三つの武器を使うのは無理があるし……」

 

「なら口を使えば良いのです!」

 

「やだよ、んな下品な」

 

「二刀流と口に咥えたUFGで最強なのです!」

 

「やらねぇっての、てかUFGをくわえるのかよ! かなりシュールな絵面になるだろそれ!」

 

 口にUFGを咥え立体機動をしている自分を想像する、ダサすぎる姿に絶望すら感じる。

 アイも同じような想像をしたのか笑いを堪えている、少しムカついた俺は彼女の頬を思いっきりこね回してやった。

 

「しかし二刀流ってのは悪く無いかもな、だが常にその状態で居るのは……だったらこうして………こうなるように……よしっ!」

 

 頭の中で考えを巡らせると一つ面白い考えが思いついた俺はメニューを操作し整備や改造に使う器具をテーブルの上に置く。

 

「マスター?何をするのですか?」

 

「いいアイデアが出来たからな、簡単な改造だし二人が来るまでに終わらせてしまおうと思ってよ」

 

「わたしもお手伝いするのです!」

 

「よし、ならまずは………」

 

 膝の上から降りたアイは俺が言う道具を取り出して手渡してくれる。

 最近のアイは少し頼り甲斐ができた、前までなら勝手が分からず邪魔になるだけだったがパーツを集めて知識が上がったおかげか今では立派な助手だ。

 簡単な改造な上アイの手伝いのおかげであっという間に終わる、クレハ達が来たのはその後であった。

 

 

 

 

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「はぁ〜昨日はカッコ悪い所見せちゃったわね……」

 

 GGOへとログインしてグロッケンまでは来たは良いけど昨日の事を思い出し集合場所へと足を進めるのを躊躇っていた。

 今思い出しても昨日の自分は無かった。

 いかにも面倒臭い女、別にリョウが何のアイテム使おうが自由なのに。

 それなのにリョウが光剣を使うのを見てアタシよりもツェリスカさんを選んだように感じてしまった。

 そう考えると胸の奥がキュッとなってその後自分でも分からないモヤモヤに包まれた。

 

 カッコ悪い、せめてあいつにだけはカッコイイ先輩でいたいのに

 

「あら?クレハちゃん、こんな所でどうしたの?」

 

「あ、ツェリスカさん……いえちょっと考え事を……」

 

 何か理由をつけて帰ろうかとしているとツェリスカさんに出会う、様子から察するに今ログインしたのだろう。

 

「そう? 何か悩み事があるなら相談にのるわよ?」

 

「い、いえ!大した事じゃありませんし。ツェリスカさんの手を煩わせるような事じゃ無いですよ」

 

 こんな事を誰かに話すなんて恥ずかし過ぎる、しかも内容がよりにもよってツェリスカさんに嫉妬したなんて言えるはずが無かった。

 

「そうなの?でも……」

 

「そ、それより!早く行きましょ、リョウ達も待ってるだろうし」

 

 無理矢理話を切り上げて集合場所へと歩き出す、逃げる事は出来なかったけどせめて切り替えよう、あいつにとっての『クレハ』である為に。

 

 

 

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「ごめんっ!遅れたわ」

 

「何やってんだよクレハ、あと十秒遅れたら奢って貰う所だったぞ」

 

「待たせちゃってごめんなさいね〜」

 

「なぁに、レディを待つのも男の役目ですよ。はっはっは!」

 

「ちょっと!扱い違くない!?」

 

 露骨に扱いを変えるリョウにツッコミをいれるクレハ、口調こそは強くなるが怒っている訳では無い。

 そんないつものやり取りをしながら今日行くダンジョンの話をしているとリョウがとある事を思い出す。

 

「そういやクレハ、この前の話どうなった?」

 

「え?何の話?」

 

「この前リアルで会うって話だよ。あれから予定を聞いてなかったからさ」

 

 少し前リョウとそんな話をしたことを思い出したクレハは、メニューのカレンダーを開いてスケジュールを確認する。

 

「えっとそうね〜来月……ううん、今度の土曜……」

 

「ふふっ二人はリアルでも仲良しさんなのね〜」

 

「そ、そんな事ないですよ!会うのだって随分久しぶりですし……」

 

「あらそうなの? にしては「面白そうな話をしているね」」

 

 そんな時割り込む様に男の声が聞こえる、声の主がイツキだと気づいたツェリスカは途端に機嫌を悪くする。

 

「あ、イツキ久しぶりなのです!」

 

「呼んでもいないのに何しに来たのかしら?」

 

「そーだそーだ、帰れこのエセイケメン!」

 

「そう邪険にしないでよ、リアルの話をしてたんだろ? せっかくだから僕も混ぜてよ」

 

 ツェリスカとリョウのヤジを無視してイツキは勝手に近くの椅子に座る、こう言う話が好きなのだろうか、いつにも増して面白そうにニヤニヤしている。

 イツキが割り込んできたのは気に入らないが、クレハとリョウのリアルに興味のあるツェリスカは話を続ける。

 

「リアルのクレハちゃん、きっと変わらず強くて思いやりのある元気な子なんでしょうね」

 

「そ、そんな事……」

 

「はは、そんな訳無いじゃないか」

 

「え?………」

 

「あ"? どう言う意味だコラ?」

 

 別に自惚れている訳ではないがハッキリと否定されてクレハは気が抜けた声が出てしまう。

 その瞬間リョウは声にドスを効かせイツキを睨み付ける。

 

「だってそうだろ?ここはVRMMOの世界、誰もが理想の自分を演じて生きている仮想の世界さ。君のように現実と同じような人間なんてほんの一握りだろうね」

 

「それはあなたが猫を被ってるからじゃないかしら?」

 

「そうかもね、君だってそうだろ?」

 

「否定はしないわ、少なくともわたしはこの世界の役割を気に入ってるもの」

 

「なるほど……クレハくんはどうかな?」

 

 さらりと答えるツェリスカにつまらなさそうにしながら、今度はクレハに視線を向ける。

 しかしクレハはツェリスカと違い、上手く言葉が出せなくなってしまう。

 

「あ、あたしは……アタシは普段とそう変わらないと思います。その……演じるとか、そんな器用な事出来ないと思います……から」

 

「そうかい。リョウくんの事は前に聞いたし、ツェリスカくんは喋らないだろうし、もう用事は済んだかな」

 

「おい、散々人の事探っといて自分の事は喋らないのか」

 

 勝手に割り込んでおいて人の事を聞くだけで席を立とうとしているイツキを睨みつける。

 

「ボクのリアルの事かい?そうだな……IT会社の社長、とかにしておいてよ」

 

「あなた前は証券会社の社員って言ってなかったかしら?」

 

「あれ?そうだったかな。まぁどっちでも良いじゃないか、気に入った方にしておいてよ」

 

「ふざけてんのかテメェっ!!」

 

 怒りを表し掴みかかろうとするリョウをツェリスカが間に入り抑える。

 そんなリョウの姿を見て深みを持たせた笑みを見せるとイツキは去って行った。

 

「あの野郎、言いたい事だけ言って帰りやがって何しに来たんだよ!」

 

「ほんと、いやらしいったらないわ」

 

 自分勝手なイツキに苛立ちを覚えるリョウとそれに同意するツェリスカ、クレハは未だに暗い顔をしている。

 

「……………」

 

「おいクレハ、あんな奴の言う事なんか気にすんなよ」

 

「そうよ、あの人はああやって人の心を掻き乱すのが好きなのよ、気にしちゃダメよ」

 

「大丈夫です……気にしてませんから……」

 

 そうは言うが明らかに声が沈んでおり、無理をしているのが分かる。

 

「あ、あっはっは!さっきのアタシイケてなかったよね、イツキさんに生意気な事言っちゃってさ!」

 

「クレハちゃん……」

 

「そ、そんな事より早く行きましょう!最後のパーツ目指してレッツゴーですよ!」

 

「あ、待ってくださいクレハ!」

 

 

 

 

      ⭐︎

 

 

 

 

 みんなの声を無視して先にフィールドを目指す、こういう時AGIが高いのはありがたい、皆に先に回られる事が無いからだ。

 

 イツキさんが言った事はほぼ当たってた。

 あたしは自分を偽っている、リョウが知っているような『昔のあたし』では無い。

 本当のあたしはいつも凄いお姉ちゃんの存在に気押され暗く、自分の事で精一杯の弱い人間だ。

 でもGGOで過ごすうちに変われたと思っていた。

 だからリョウを誘った、今ならカッコいい自分でリョウと再会できると思ったから。

 でもそれはあたしの勘違いだった。

 イツキさんの言う通りただ自分を偽っているだけ、リアルのあたしは何も変わっていない。

 だからあたしは逃げたくなった、きっと今のあたしを見たら遼は絶対ガッカリする。

 それが何より怖い、あいつにだけは見離されたくない。

 

 唯一お姉ちゃんでは無くあたしを見てくれる、そんな遼にだけは絶対に見離されたくない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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第四部 誰のサイドケースから見たい?

  • キリト
  • アスナ
  • クライン
  • エギル
  • シリカ
  • リズ
  • リーファ
  • シノン
  • ユウキ
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