ソードアート・オンライン フェイタルバレットー切札の弾丸ー   作:トライダー

13 / 51
 赤と青

⭐︎

 

 

 

 

 

 

「クレハ弾は足りるか?」

 

「ええ、大丈夫よ。アンタこそアイテムの予備は大丈夫?何か渡そうか?」

 

「いや、まだ余裕がある。ありがとうな」

 

 現在俺たちはアファシスの最後のパーツがあるダンジョンへと来ている。

 アルゴから聞かされていた通りエネミーのレベルはかなり高く、この数日間のレベリングと準備が無ければやられていたかもしれない。

 お礼もかねて約束通りこのダンジョンの情報を持って帰ってあげよう。

 

「しかし、話に聞いてた以上だったな」

 

「本当ね、アタシたち三人だけじゃ厳しかったでしょうね。ツェリスカさんが一緒で良かったわ」

 

「……………」

 

 声のトーン、目の動き、表情、首の動かし方、その動き全体を見てクレハがまだ無理をしているのが分かってしまう。

 こういう時だけは師匠に鍛えられた事が少しばかり嫌になる。

 いや、例え俺が探偵で無くとも彼女の変化なら直ぐにわかっただろう、それだけ彼女の存在は大きい。

 

「なぁクレハ、リアルで会うって話だけどさ……」

 

「っ!!………ごめん!当分は無理かも、多分来月とか……」

 

「………来月なら会えるのか?」

 

「う、うん……多分………」

 

 どんどん声を弱くするクレハ、何とか笑顔を作ろうとしているがそれが逆に痛々しい。

 

「その『来月』は本当に来るんだよな?」

 

「え? えっと……それは………」

 

 俯き声に覇気をなくす、普段の彼女なら『当然じゃない!女の子を疑うなんて男として最低よ』ぐらいは言うだろう。

 

「……………わかった、お前の気持ちが落ち着くまで『来月』を待つよ」

 

「う……うん、ごめんね……」

 

 ありがとうでは無くごめんね、クレハから出たとは思えない弱々しいセリフ、彼女の心に整理がつくまでかなり時間がかかりそうだ。

 

「「……………」」

 

 俺たちにしては珍しく喋ることがなくなり互いに無言になる、再会してから初めてのことで俺もどうすれば良いか分からなかった。

 

 そうこうしていると先行して様子を見に行ったツェリスカとアイが戻って来る、二人と合流しさらにダンジョンの奥へと歩みを進める。

 

 

 

 

      ⭐︎

 

 

 

 

「さぁさぁ!ドンドン進むわよ!」

 

「待ってくださいクレハ!一人では危険ですよ」

 

 クレハちゃんは大きく腕を振り大きな声でズンズンと進んで行く、でもその声に覇気はない、先程の事を引き摺っているのでしょうね。

 リョウと二人で話せば少しは気が紛れると考えたのだけどあまり効果はなかったみたい。

 

 まったくイツキも余計な事をしてくれたものね。

 

「ねぇリョウ?わたし少し疲れちゃったわ〜。悪いんだけど少し休憩しても良いかしら?」

 

「え? ああそうだな、じゃあさっき索敵して貰ったし今度は俺が行ってくるよ」

 

「マスター、わたしはアファシスですから疲れていませんし、お手伝いしますよ!」

 

「そうか?なら頼む、アイが居た方が敵の位置を正確に探れるしな」

 

「はい!お任せください!」

 

「あ、だったらアタシもさっき休んだし……」

 

「クレハちゃんは悪いんだけど話し相手になってくれないかしら? 一人で待つのも暇だし」

 

「え?でも……」

 

「気にするなよクレハ、ダンジョン内で孤立させるのは危険だろ? それに次の索敵はお前に頼むだろうからその為にもゆっくり休んでくれ」

 

「……分かったわ、いってらっしゃい」

 

「おう、行くぞアイ」

 

「はいなのです!」

 

 リョウ達が行ってから暫くして壁を背に座り込む、隣をぽんぽんと軽く叩くとクレハちゃんもその場所に座りこむ。

 

「あの……ツェリスカさん」

 

「何か悩み事があるんでしょ? お姉さんに話してみない? 少しは気が紛れるかも」

 

「……………」

 

 俯き無言になる、しかし否定する訳でも断る訳でも無い。

 やはり誰かに聞いて欲しかったのでしょうね、でもリョウには話せなかった。恐らくは彼が関係している事だから。

 クレハちゃんはしばらくして顔を上げ口を開いた。

 

「あたしにはお姉ちゃんが居るんです、美人でお淑やかで勉強も運動も出来る完璧な人間って感じの凄いお姉ちゃん。少しツェリスカさんに似ているかも」

 

「あらあら、ありがとう〜。それで?」

 

 本当のわたしはクレハちゃんが思うような完璧な人間じゃ無いけど、そう言ってもらえて悪い気はしない。

 

「優しくてあたしも大好きな自慢のお姉ちゃんなんです……でもそれがあたしにはコンプレックスでもありました。どんなに勉強や運動を頑張ってもお姉ちゃん程は上手くいかない、そして褒めてもらう時はいつも………」

 

「『流石あのお姉さんの妹』……かしら?」

 

「はい……大好きなお姉ちゃんでした。でも皆んなお姉ちゃんの事しか見てくれなくて、親も親戚も近所の人も友達も……でもあいつだけはあたしを見てくれたんです」

 

「リョウの事?」

 

「はい、昔お姉ちゃんの受験が受かって学業に専念する為に引っ越す事になったんです、皆が喜んでいました。勿論あたしも嬉しかったけど、でもやっぱり友達や育った街を離れるのが悲しかった、それなのに皆あたしの気持ちなんて無視して……おめでとうって……」

 

「クレハちゃん……」

 

 クレハちゃんの声が今までで一番暗くなる。

 

「でもリョウだけは泣いてくれたんです、あたしが居なくなる事を……お姉さんの事なんてどうでもいい、あたしに居なくなって欲しくないって……あたしはそれが嬉しかった」

 

「クレハちゃんはリョウの事が好きなのね」

 

「好き……大好き……それまでは頼り甲斐のない弟みたいに思ってた、でも別れてからあいつの存在が自分にとって掛け替えの無い存在だって気づいた。何度も会いたいって思った」

 

「なら……どうして?」

 

 先程までの二人の様子を見ると、クレハちゃんはまるでリョウと少しでも会わない様にしているような。

 

「怖いんです、今あいつに会うのが……」

 

「怖い?」

 

「イツキさんの言った事は本当なんです、リアルのあたしはこことは真逆で暗くて自分の事で精一杯の弱い人間なんです……もし会ってしまったらきっとリョウは失望する。唯一あたしを見てくれる人が居なくなる、それが何よりも怖い、だから会わないようにしてたんです。でもGGOで過ごすうちに変われたと思って、今なら会えると思ってたんですけど……」

 

「イツキとの話でまた思い込んでしまったのね?」

 

「はい……」

 

 可哀想に、きっと精一杯覚悟を決めて会うことを選んだのに邪魔されちゃって、わたしは彼女を抱き寄せ力一杯抱きしめた。

 突然の事に驚いている彼女の頭を優しく撫でる。

 

「ツェ、ツェリスカさん!?」

 

「心配しなくても大丈夫よ、気付いてないかも知れないけど彼は貴女が思ってる以上にクレハちゃんを大事にしてるわ」

 

 先程のイツキとのやり取りでリョウが珍しく怒ったところを見た、突っかかる所は見た事はあってもあそこまで熱く怒りを表すのは初めて見た。

 彼が怒ったのはクレハちゃんを傷付けられたから、それだけ彼女を大事に思っているのね、肝心のクレハちゃんはあまり気付いてないようだけど。

 

「でも……」

 

「ねぇクレハちゃん、もしリョウと会うのが怖いならわたしから一つ提案があるのだけど………」

 

「え?」

 

 それでもクレハちゃんは心配そうに弱々しい声を出す、だからわたしは彼女と一つの約束をした。

 リョウとクレハちゃんわたしにとってはどちらも大切な人、だからこそ二人には幸せになって欲しい。

 

 でもわたしも唯のキューピッドで終わるつもりは無いわ♪

 

 わたしの提案をクレハちゃんが呑んでくれると同時に、大きなアラームがダンジョンの中に響き渡る。

 

 

 

 

 

 

        ⭐︎

 

 

 

 

 

 

「何だっ!?」

 

「あわわわわ〜!!」

 

 アラームが響いてから数秒、今度はダンジョン内が大きく揺れる、揺れにバランスを崩し転びそうになるアイを抱きとめ膝をつく。

 

「何が起きてるんだ?アイ調べてくれ」

 

「はいっ!……こ、これは……マスター!ダンジョンが移動しています!」

 

「何? どう言う事だ?」

 

 直ぐにアイがアファシスのマッピング能力によって作ったマップを立体化させ見せてくれる。

 彼女の言う通り自分たちのいるエリアが四角いブロックパズルのように移動しながら組み替えられている。

 

「このダンジョンのギミックってところか……」

 

「どうしましょうマスター?」

 

「とにかく今は大人しくするべきだ、下手にエリアの移動中に動けば巻き込まれる」

 

 クレハの事も心配だが彼女にはツェリスカがついているはずだ、焦らず落ち着くのを待とう。

 

 

 

 

 しばらく大人しくしていると地響きはほんの数分で収まった。

 

「終わったみたいだ、大丈夫かアイ?」

 

「はい怖かったです〜」

 

 地震なんて初めて経験したのか腕の中で小刻みに震えている、アイの頭を撫でながら落ち着かせる。

 

「アイ、俺たちのエリアはどれぐらい移動したんだ?」

 

「今調べますね………はい左右には大きく動きましたが少し上昇しただけですね。このダンジョンは地下に落ちて行く形ですので僅かにボスが遠くなりました」

 

「そうか、クレハたちは?」

 

「はい……二人はかなり奥へと飛ばされたようです。この広さから考えてボス部屋かも知れません」

 

「そうか。なら……ん?」

 

 ドクッン!

 

 不意に胸の鼓動が強くなる、俺の感が働いている証拠だ。

 

「アイ警戒しろ、何か来るぞ……」

 

 嫌な予感、俺の経験上こういう時は悪い事が起きるものだ。

 どんな状況でも対処出来るようにUFGを取り出し心の準備をする。

 

「マスター!レーダーに敵エネミーの反応が、どんどん増えています!!」

 

「来たか……」

 

 それから数秒とたたず俺たちの周りに大量のエネミーが姿を表す、その数十や二十どころではない。

 

「マスター!モンスターハウスですっ!!」

 

 モンスターハウス、ダンジョンRPGなどでよくある一つの部屋に大量のモンスターが現れるトラップ部屋の事だったな、GGOにも存在したのか。

 このままでは取り囲まれる、幸いエネミー達はまだ起動していない今がチャンスだ。

 

「分断した状態でモンスターハウスとボスか……アイ突破するぞ!俺の後ろを離れないようについて来い!」

 

「はいなのです!」

 

 俺たちも危ないがそれ以上にクレハたちの事が心配だ、俺とアイはピッタリくっ付きながら出口を目指し駆け出した。

 

 

 

 

      ⭐︎

 

 

 

「きゃあ!?」

 

 爆発の勢いでクレハの体が吹っ飛ぶ。

 

「クレハちゃん!」

 

「す、すみません!」

 

 直ぐにツェリスカの回復弾で体力を回復するが状況は最悪だった。

 

「まさかよりにもよってコイツがボスだなんて……」

 

「ええ……」

 

 開けたボス部屋、本来ならその中央にボスエネミーが現れるが今回は違った。

 真っ直ぐな長方形のエリアの一番端に居たのは、金属の土台と巨大な球体型のエネミー『ペネトレート・アイズ』である。

 金属の球体の真ん中に赤い目のようなものが現れ、二人を睨みつけるように光りだす。

 

「危険よ隠れて!」

 

 ツェリスカの指示で即座に障害物へと身を隠す、その後直ぐにプレイヤーの体の半分を覆う程の極太いバレットラインが現れ青い光線が放たれる。

 

「くっ………」

 

 障害物越しにでも熱が伝わって来る、これが破壊不可能オブジェクトで無ければ即座に溶かされていただろう。

 ペネトレート・アイズの放つ光線は威力が高く、プレイヤー用の光学バリアーを軽々と破り設定上では宇宙船の装甲すら貫く程。

 VITの低いプレイヤーなら掠っただけでやられる事もある、その救済措置としてこのような障害物が設置されているのだ。

 

 しかしこのボスの恐ろしい所はこれだけでは無い。

 

「来るわ! 集中して一体ずつ確実に倒すわよ!」

 

「はいっ!」

 

 ボスの手前にある円状のサークルから複数の人影が姿を表す。

 プレイヤーでは無い、灰色のメタリックなボディに赤いモノアイの頭部を付けた人型のロボット、姿こそは人間に近いが彼らも立派なエネミー『ヒューマノイド・シリーズ』である。

 ボスが赤い目を一瞬光らせると、それに反応し彼らのモノアイの光が灯され武器を手に取る。

 一体はハンドガン、一体はアサルトライフル、それぞれが別々の武器を構えクレハたちが隠れている場所へと乱射しながら距離を詰めて来る。

 

「右から行くわよ!」

 

「わかりました!」

 

 攻撃は激しいが隠れているだけではいつか回り込まられる、エネミーたちの弾幕にも物怖じせず身を隠しながらも一体ずつ確実に倒して行く

 だが一人二人倒すだけでは終わらない、減った分を補充するように別のヒューマノイドが追加される。

 これがこのボスの恐ろしい所、本体は高威力の光線を放つだけ、しかし通常のエネミーよりも強力なヒューマノイド達を先兵のように送り出す。

 しかもヒューマノイド達がいる間は一切の攻撃が攻撃が通らないと言う仕様、本来なら二人で戦うボスでは無く四人以上で臨機応変に対応しながら時間を掛けて攻略するボスなのだ。

 

「彼らが来るまで耐えるのよ」

 

「でも……」

 

「あら、好きな人を信じるのも良い女の条件よ?」

 

「わ、わかりました!」

 

 

 

 

     ⭐︎

 

 

 

 

「アイ! 背中をカバーしろ!」

 

「はいっ!」

 

 クレハたちの居るボス部屋まで駆け抜けようとしていたリョウであったが、そう上手くは行かなかった。

 部屋の脱出までもう少しという所でエネミー達に捕まってしまい対処している。

 まだ数の少ない正面をアイに任せ後方から追いかけて来るエネミーに対処する、リョウは左手のUFGのスロットを親指で回しエネミー達へと向けてトリガーを引く。

 そこから放たれたのは光のロープでは無く緑色の光の矢

 ボウガンのように放たれた光の矢はエネミーの頭部を捉える。

 さらにUFGを放ちエネミーの数を減らしていく、だがそれだけでは一向に尽きる事はない、リョウは右手にコルト・パイソンを構えるとエネミー達が固まっている足元へと特殊弾を複数撃ち込む。

 

「接続弾!(コネクトバレット)」

 

 エネミー達の足元へと放たれた弾丸は地面へ到達すると破裂し、内部から強力な電磁場が発生する。

 その電磁場に金属で出来たエネミー達は逆らう事ができず一箇所へ集められ身動きが取れなくなる。

 

「アイ今だっ!」

 

「はいっ!」

 

 背後の敵を対処していたアイがリョウの合図で振り向きランチャーを発射する。

 放たれた青い光弾がエネミー達を纏めて吹き飛ばした。

 

 これでかなり数は減ったがそれだけでは終わらない。

 

「っ!?アイ伏せろ!」

 

 アイの後ろから複数体のドローンがショットガンを構えながら距離を詰めて来る。

 コルト・パイソンをしまい右手でアイの頭を下げると再びUFGのスロットを回しトリガーを引く、すると通常よりも少し太く短いワイヤーが出現する。

 リョウはそのままUFGを鞭のように振るいドローンを複数同時に叩き落とす。

 

「はあっ!」

 

 更に円を描くように回転し背後から取り囲もうとするドローン達を纏めて薙ぎ払う。

 

 これがUFGに施した改造である。

 リョウの持つコルト・パイソンは高威力のマグナム弾や特殊弾を放つことが出来るがその分連射性や装弾数が悪い。

 それにプレイヤー相手ならともかく雑魚エネミー相手に毎回貴重な弾を使っていれば毎回赤字になってしまう。

 そこでリョウはUFG改造する事によって無駄弾と連射性の悪さを改善した。

 

「よし、先に進むぞ」

 

「はいなのです!」

 

 追いかけて来るエネミーを撃退し歩みを進める、念の為に接続弾をトラップとして入り口に撃ち込んでおく、これで時間稼ぎにはなるだろう。

 

「マスターもう少しです!」

 

「ああ、だが油断すんなよ」

 

 アイの言う通り既に隣のエリアまで来ていた、しかしリョウは警戒を解いていない。

 彼の嫌な予感は終わっていなかった。

 

(まだ胸の鼓動が収まらない、まだ何か来る……」

 

 リョウの予想通り正面から二つの人影が現れた。

 

「プレイヤー?」

 

「いえ、あれはヒューマノイドです、人型のエネミーでプレイヤーに近い動きをします。でも普通のヒューマノイドよりも少し大きいような……」

 

 アイの言う通り彼等はヒューマノイド、しかしそれをより強化した個体『ヒューマノイド・ヘビー』である。

 通常のヒューマノイドよりも攻撃力や体力が高く、一番の特徴はその武器である。

 

「光剣?」

 

 彼等は光剣を取り出すと脱力した状態でゆっくりと歩いて来る。

 

(なんだ?あいつら)

 

 獲物は近接武器の光剣、距離はかなり離れている。

 なのにリョウはエネミー達が持つ赤と青に煌めく刃が不気味で仕方がなかった。

 

「マスター仕掛けましょうか?」

 

「いや………そうだな、睨めっこしてても意味は無い、距離はまだあるし有利なうちに仕掛けるぞ!」

 

「はいっ!」

 

 アイがランチャーを構え、リョウはいつでもサポート出来る体制をとる。

 

「いきますっ!」

 

 放たれた光弾が真っ直ぐにエネミー達へと向かって行く。 

 しかし着弾するよりも早くエネミー達は行動を起こした。

 

「!?、アイさがれ!」

 

 アイがランチャー放った瞬間、ヒューマノイド達は先程までのゆったりした動きを止め、左右に飛び出し光弾を躱すとこちらへと向かって瞬時に走り出した。

 自動車のような速度に一瞬気を取られる、だが直ぐにアイを隠すように前に出てボウガンモードへと変えたUFGを放つ。

 

 しかし……

 

「何っ!?」

 

 ヒューマノイドは自分へと向かって来る矢を手に持った光剣を振るい弾き落としてしまう。

 驚きながらもUFGを連射し牽制する。

 一体は防ぎながらも減速するが、その後ろからもう一体がそれ以上の速度で向かって来る。

 リョウは光剣を取り出し迎え撃とうとする。

 

「くっ!……何!?」

 

 しかしヒューマノイドはリョウをスルーし、そのまま後方で待機しているアイへと光剣を振り下ろそうとする。

 

「させるかぁ!」

 

 素早くUFGをウィップモードへと切り替え、光の鞭をヒューマノイドの右腕を括り付けアイへの攻撃を防ぐ。

 だがそうした事によってもう一体のヒューマノイドが再び速度を上げ突っ込んでくる。

 リョウは素早い動作でコルト・パイソンを引き抜き.357マグナムを撃ち込む。

 

「くそっ!」

 

 しかし大型の獣をも撃退するマグナム弾すらヒューマノイドの光剣は弾き落としてしまう。

 

「スモーク投げます!」

 

 リョウを助ける為アイがスモークを投げ込む、スモークの影響で見失ったのかエネミーの動きが悪くなる、そのままスモークに紛れ光剣を躱すとすぐさま距離を取る。

 

「マスター大丈夫ですか?」

 

「ああ問題ない、助かった」

 

 だが安心したのも束の間、再びヒューマノイド達が煙を突き破りながらリョウ達へ向かって来る。

 

「アイ、UFGを使って避難してろ、回復とバフで援護してくれ」

 

「わ、わかりました!気をつけてください」

 

 アイにUFGを投げ渡すとヒューマノイドへと向かって行く、左手に光剣を持ち右手にコルト・パイソンを構える。

 牽制も込めて数発撃ち込むが……

 

「あぶねっ!?」

 

 やはり光剣によって弾かれる、それどころかその内の一発が此方へとピッチャーライナーのように返される。

 闇雲な射撃は危険と判断すると銃をしまい光剣のみで迎え撃つ。

 

「うぐっ……」

 

 ヒューマノイドが振り下ろした光剣を左手に持った光剣で防ぐ、凄まじい衝撃に腕が僅かに痺れを感じるが全身に力を入れて武器を手放さないように踏ん張る。

 しかしヒューマノイドはもう一体居る、リョウが防ぐと同時に素早い動きで背後へ回り込み剣を突き刺そうとする。

 

「くっ!」

 

 すぐさま余った右手に光剣を持つとその突きを側面から叩くように弾く、重くは無いがその分速さとキレのある太刀筋だ。

 初撃は防いだが二体の攻撃はそれで終わらない、片方は重くもう片方は素早い斬撃がリョウを襲う、恐らくSTR型とAGI型だろう。

 足を止めての斬り合いは分が悪いと感じたリョウは後方に下がりながら二体の斬撃を捌く。

 

「マスターっ!」

 

「ちぃっ!」

 

 タイプの違う連撃を最小限の動きで躱していく、所々つく擦り傷をアイの回復弾で治しながら隙を見つけ攻撃を仕掛ける。

 時間は掛かるが倒せない敵では無い、しかしリョウ達にはその時間が無かった。

 

「マスター!エネミー達がこのエリアへと向かって来てます!」

 

「わかってる!」

 

 時間をかけ過ぎれば数十体のエネミーとこのヒューマノイドを同時に相手にする事になる。

 

「!? ちぃっ!」

 

 思考を巡らせながら戦った事で僅かに隙が出来てしまう、フェンシングのような鋭い連続突きを捌くがつい大袈裟に避けてしまい体勢が崩れる。

 その隙をヒューマノイドは見逃さない、舞うように回転しその勢いを殺さないまま飛び上がり振り下ろす。

 STR型の渾身の一撃、避けられないと察したリョウは光剣を十字に組み後方に跳びながら受け止める。

 

「ぐあっ!!」

 

 威力を六割程殺す事に成功はしたが、遠心力のついた全体重を乗せた一撃を受け止めきれず、凄まじい勢いで数メートル後ろに飛ばされ地面を削りながら背中から倒れる。

 

「マスターっ!」

 

「来るなっ!アイ!」

 

 心配したアイがリョウの元へと向かおうとするが、それをリョウが止める。

 光剣のスイッチを切り両手に力を入れて立ち上がる、受け止めた両手に痺れを感じるが決して剣を手放さない。

 吹き飛ばされた事で索敵範囲から離れたのかヒューマノイド達はまたゆっくりと歩いて来る。

 

 二体の強力なヒューマノイド、恐らく単純なSTRやAGIではリョウより高い。

 しかも複数のエネミーを同時に相手にする事になる。

 

(何より時間を掛ければクレハ達が危ない……まだ実験してないが『コイツ』を試すか!)

 

 立ち上がったリョウは光剣を回し逆手持ちへと変えると、光剣の柄同時を差し込みカチッと接続させ一つの長いグリップを作り出す。

 

「男たるもの、()のように情熱的に、()のようにクールに、だぜ」

 

 帽子のツバを指で弾くと接続させた長い光剣をバトンのように回しスイッチを押すと両サイドの鍔から赤と青の光の刃が出現する。

 ヒューマノイドが索敵範囲にリョウを捉えたことで突っ込んでくる。

 リョウはクレハとツェリスカ、二人の女性の思いを一つにした両光剣(ダブル・セイバー)を構え迎え撃った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

⭐︎




UFG ボウガンモード

リョウの改造によってワイヤーを圧縮し小さい光の矢へと変え放てるようになった。
矢の威力は低いがリロードの必要がなく連射性も高い、しかし光線銃扱いなのでプレイヤーには効果が薄い。


UFG ウィップモード

リョウの改造によってワイヤーを太く短くする事が出来るようになり鞭のように叩いたり括り付けたりなど多様性が増えた。
しかし威力は低く扱いは難しい。



第四部 誰のサイドケースから見たい?

  • キリト
  • アスナ
  • クライン
  • エギル
  • シリカ
  • リズ
  • リーファ
  • シノン
  • ユウキ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。