ソードアート・オンライン フェイタルバレットー切札の弾丸ー 作:トライダー
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『ひっぐ……ぐすっ……』
一人の男の子が泣いている。
大きなトラックと一台の車、それらを囲うように大勢の人が集まっている。
皆が笑顔でいる中、彼だけは泣きじゃくっている。
『もう!何泣いてるのよ、これはおめでたい事だって何度も言ったでしょ?』
『で、でもぉ〜……』
そんな少年に気の強い少女が呆れた様子で話しかける。
『でもじゃないの! お姉ちゃんの学校の為の事なんだから、喜ばないとダメなの!』
そう言う少女の瞳は何処か悲しそうにみえる。
『い、嫌だ……』
『え?』
『お姉さんの事なんでどうでもいいよ!僕はもみじと離れたく無い!もみじとずっと一緒に居たいよぉ!』
『あんた……』
弱々しいように見えて力強い言葉と共に少女を抱きしめる。
わんわん泣きながらも力一杯抱きしめられ少し痛みを感じるが、そんな事がどうでも良くなる程心に温かいものを感じた。
このままでは出発する事が出来ない、そう思った彼の両親が少年を引き剥がそうとする。
子供とは思えない力でしがみつく少年に驚くが、父親と母親の力には逆らえず引き剥がされてしまう。
『あ……』
少年が離れた事で温かさが失われ寂しさだけが残る。体以上に心が寒さを感じる。
引き剥がされた少年は両親に説得され、再び少女の元へとやって来る。
『もう!相変わらずカッコ悪いんだから。あんたが泣いちゃったらあたしが心配するでしょ。こう言う時は笑顔で見送って再会した時にそれ以上の笑顔で迎えるものなのよ』
『……本当にまた会えるの?』
『当たり前よ、死ぬ訳じゃ無いんだからいつかきっと会えるわよ』
『それっていつ?』
『いつって……そうね、あんたが強くてカッコよくて良い男になったらあたしの方から会いに行くわ』
『本当?』
『ええ、女の子を疑うような男は最低よ』
『わかった約束する。僕強くなるよ、もみじが居なくてもやっていけるように強くなる。それで今度会った時にカッコ良くなった僕を見てもらうんだ!』
『ふふっ、期待してるわよ遼……』
鼻水を出しながらそんな事言う少年の姿につい吹き出してしまう。
一見格好の悪い姿だけど、その少年の瞳には強い意志が垣間見れた。
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「んあ?………あぁ寝てしまってたのか……」
顔を照らす朝日を鬱陶しく感じ目を覚ます。
机に突っ伏して寝ていたあたり書類の整理中に寝落ちしてしまったようだ。
俺は体を起こし目覚ましがわりのコーヒーを淹れにいく。
「懐かしい夢だったな……」
お気に入りのコーヒー豆を挽きながら夢の事を思い出す。
もう十年になるんだな、何故今になってそんな昔の夢を見たのか理由は簡単だろう。
今日俺は彼女と再会する。
その為に昨日は急いで仕事の資料の整理をしていた。
「やっぱりコーヒーは自分の手で挽くのに限るな」
窓からの朝日を浴びながらコーヒー豆を潰している自分の姿を鏡で見てそう思う。
今の俺は水彩画のように美しく絵になっているだろう。
面倒くさくなった時に機械を購入しなくて良かった。
「ズズッ………」
お気に入りのレコードを回し淹れたコーヒーを片手に所長の席に座りコーヒーを一口、これまたハードボイルドな探偵の姿、自分のハードボイルドっぷりが怖いぜ。
「……………ぶっ?!」
吹き出しそうになるのを何とか堪える。
……おかしいなこの街一のコーヒー豆を使ってるのに何でこんなにマズイんだ?
師匠も淹れるの下手だったもんな、やっぱりこの味を楽しめてこそ真の漢なのだろうか?……深いものだ。
「…………ぶはっ!? き、気持ちの良い朝だぜ……」
脂汗をかきながら泥水のようなコーヒーを無理矢理流し込み感想を一言、こうやって俺の毎日が始まる。
正直キツイがこれも真の漢への試練なのだろう
ジリリリリリンッ!!!
丸くベルのついたアンティークの目覚まし時計が鳴り響く、どうやら予定よりも早く起きてしまったようだ。
彼女との約束の時間はまだかなりある、俺は着替えも兼ねて日課のジョギングに行く為のジャージに着替えた。
「ほっほっほっほっ………」
歩道を走り抜けて近所の公園の中にあるトリムコースを走る、十年間ずっと見てきた景色が俺を迎え入れる。
彼女と別れた次の日からこうやって走るのを始めた、ずっと機械弄りばっかりやってたからか最初は公園に着くまででギブアップしたものだ。
それが今じゃ街中を走り回ってるんだから不思議なものだ。
「ん? ああ、そういやもうそんな季節か……」
ふと見上げると一面の紅が広がっている、考え事をしていて気付かなかったが紅葉狩りの季節になっていたようだ。
風に靡く落ち葉が真っ直ぐ長い道にレッドカーペットを作っている。
そう言えば彼女はこの場所が好きだったな、引っ越す前は半ば無理矢理引っ張って連れてこられたものだ。
この季節になれば特にな
「よし!後で連れてくるか」
もう少し見ていたかったがそれは彼女と二人でだ、パキリパキリと落ち葉を踏み鳴らしながら俺は公園を後にする。
公園の後は商店街へとやってくる、ここも十年間変わらないジョギングのコースだ。
この時間帯の皆は店を開ける為の準備をしているころだ、俺は皆が活気ずくこの時間が好きで最後に廻るようにしている。
「あら遼ちゃんおはよう、今日はいつもより早いね〜」
「おはようおばちゃん、それが仕事してたら寝落ちしちゃってさ」
「あらそうなの?仕事も大事だけどしっかり休まなきゃ駄目よ?」
「大丈夫だよ、普段は暇なくらいだしな。この後予定あるから、急いで終わらせただけさ」
「予定?……あ、もしかして女の子でしょ? 遼ちゃんが仕事より優先するなんてそれぐらいだものね」
「正解♪ んじゃまた後で来るから〜」
花屋のおばちゃんのと話を切り上げると今度は魚屋のおっちゃんが声をかけてくれる。
「おう遼!良かったらうちで飯食って行かねぇか?」
「悪いおっちゃん、これからデートなんだ、また今度ご馳走になるよ」
「遼がデート?!テメェ裏切るのか!」
「悪いな仁志、お前も良い人見つけろよ」
「言ってろコイツ!、さっさと振られちまえ!」
「はっはっは!またな〜♪」
魚屋を通り過ぎると本屋の息子が話しかけてくる、あいつとはよくどっちが先に彼女を作るかなんて勝負をしたものだ。
どっちも全敗だったが……
皆との挨拶を済ましながら商店街を走り抜け事務所を目指す。
約束の時間は迫って来ている。
早くシャワーを浴びて着替えないと、汗臭い状況で女の子とのデートに行く訳にはいかない。
「ん?」
もう少しで事務所と言うところで足を止める。
裏路地の奥の方で複数の男女が集まっているのが視界の端に見える、それだけならばそこまで気にする事ではないかも知れない。
だが気になるのはその男女が制服姿で、しかも女の子一人を複数で取り囲んでいると言う事だ。
「……速攻で終わらせるか」
腕時計を見るとあまり余裕は無い。
とは言え放っておくわけにもいかない、裏路地へと方向を変えスマホを操作しながら向かう。
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「は、離して!!」
「そう言うなよ、へっへっへ〜」
掴まれた左手を強引に振り解こうとするが男子の力には敵わなず押さえつけられてしまう。
「優しくしてあげなよ〜朝田さん初めてだろうしさ!」
「キャハハハハッ!!」
そんなわたしを見て彼女達はニタニタと笑っている、一度は友達だった時期もあったと言うのに
何故こうなったのだろう、昨日家に帰ろうとするとアパートの前で彼女達が待ち構えていた。
怖くなったわたしは漫画喫茶で一晩を過ごした。けれど一晩経っても諦めずに待ち構えていた彼女達に見つかってしまい今に至った。
「や、やめてよっ!」
「うおっ!?」
顔を寄せてこようとする男を力一杯押し飛ばす。自分でも驚くぐらいの力に彼は驚き尻餅をつく。
「ぎゃはっはっ!ダッセー!」
「かっこ悪〜!」
「うるせぇっ!この女ぁ!!」
「うっ……」
そんな彼の姿を周りの皆が指を刺して笑う、プライドを傷つけられて怒りを表し掴みかかろうとする。
カーンッ
「いてっ!」
「………え?」
恐怖に身がすくみ目を閉じると軽い音が響く。
恐る恐る目を開けると私の足元に空き缶が転がって来た。
「おいたはいけないな坊や」
声が聞こえた方を向くと入り口の方からジャージを着た長身の男性がやって来る。
「な、何よアンタ!」
「それはこっちのセリフだ、その制服この辺の高校のだろ?こんな時間にこんな所で何してんだ?」
「う、うるさい!ほら行こう!」
状況が悪くなったと思った彼女達は男の腕を引き逃げようとする。
彼女達には前科がある、ここで警察に通報されて問題になりたく無いのだろう。
しかし男達はイラつきを押さえられず掴まれた腕を振り解く。
「離せっ!舐められたまま帰れるかよ、テメェらっ!!」
男の合図で他の二人が構える。
「通報される前にテメェをボコってしまえば良いだけだろうがオッサン!」
「クールじゃねぇなぁ、まぁ良いや話が早くて助かる。来いよ遊んでやる」
「舐めてんじゃねぇぞコラっ!!」
ジャージのポケットから片手だけを出すと挑発するように指を動かす。
その仕草に苛立ったのか三人が同時に殴りかかりに行く、狭い通路での三人がかり、しかし彼はポケットに両手を入れたまま上体を晒すだけで全ての拳を避ける。
「何!?」
「その構えボクサーか?にしては動きが素人だな」
「な!なんだとぉ……」
挑発に乗った彼らが再び殴りかかる、しかし今度は避けると同時に軽く足を伸ばすと自分の足を引っ掛け盛大に転んでしまう。
狭い通路で一人が倒れるとドミノのように連鎖して他の二人も倒れる。
「うおっ!?」
「ぐあっ!?」
「ぐえっ!?」
「足元がお留守だぜ?」
「く、くそっ!…」
拳を震わせ悔しそうにうめいている、しかしジャージの男はそれを無視して腕時計を見ながら何かを呟いている。
その仕草が余計に気に障ったのか一人が立ち上がり隙だらけな彼へと殴り掛かる。
「おおおおおっ!!!」
「モーションが大きいガードが低いステップも悪い、そんなんじゃ……」
男の拳が彼を捉えようとした時……
チッ ドサッ!
「……え?」
「カウンターの餌食だぜ?」
何かを擦ったような音の後、殴りかかった筈の男の体が突然糸の切れた人形のように力を失い倒れ伏す。
まるで魔法のような出来事に気の抜けた声が出てしまう。
「な、何をした!?」
「素手の拳が顎を掠った、脳震盪ってやつだよボクサーならそれぐらい分かりな」
見せびらかすようにポケットから左拳を抜き出し説明する。
見えなかった……反射速度には自信がある。それは自分がプレイしているゲームでは何よりも大切なものだからだ。
それなのに距離も離れていて、野球のボールよりも大きな拳が顎を掠ったどころかポケットから出た事にすら気づけなかった。
この人は強い……格闘技なんてした事の無い私でも彼等が勝てない事は容易に想像できた。
「罪が軽い内にやめておきな」
「う、うるせぇ!おおぉっ!!」
頭は避けられると考えたのか今度はお腹を目指して拳を突き出す。
しかしジャージの男はガードをせずにドンと受け止める。
拳が彼のお腹に当たった瞬間鈍い音が響く。
「が……い、痛ぇ……」
しかし痛がったのは殴りつけた男の方だった。
腕を押さえて蹲っている彼に対して、お腹を殴られたジャージの男の方はびくともしていない。
「ちゃんとサンドバッグ叩いてんのか? 殴り方も悪いな、そんなんじゃ手首痛めるだけだぞ?」
「このぉっ!」
「危ないっ!」
腰を落とし倒れ込んだ男に話し掛けていると、残った最後の男か落ちていた鉄パイプを拾い上げると背後から振り下ろす。
彼を助けようと声を掛けるが
「おっと!」
しかし後ろに目でもついているのか完全な死角からの不意打ちにも関わらず軽く避けてしまう。
「へ、へへ……」
「いいぞ!やっちゃってよ!」
武器を手に入れて気が強くなり彼女達も調子に乗る、しかしジャージの男は全く焦らず寧ろ呆れた表情を見せる。
「はぁ、悪い事は言わないからやめておけ。そう来るなら遊びじゃ済まないぞ?」
「う、うるせぇ!ビビって適当こいてんじゃねぇぞ!」
悠々とした表情から鋭い眼差しへと変わると鉄パイプを持った男の体が小刻みに震える。
武器を持った方が震え、素手の方が強気でいると言う異質な光景が広がっていた。
私には彼が適当言っているようには思えない、きっと彼はこのような状況に慣れているのだろう。
「このぉっ!」
鉄パイプの大振りを顔色ひとつ変えずに上体をそらし回避する。
「ガードしろよ……」
素人の私でも分かるぐらいゆっくりと右手をポケットから抜くとグッと拳を握りしめる。
「ひ、ひぃっ!?」
殴られる。
そう察した男は鉄パイプを横に向け顔をガードしようとする。
素人同然の姿で顔だけを守る、今なら私でもガラ空きの胴体へと一撃を入れる事が出来るだろう。
だがジャージの男は敢えて顔面を狙い思いっきり殴りつけた。
「ふんっ!」
「がほっ!?」
生身の拳と鉄製のパイプ、本来なら拳が潰れる。
しかし彼の拳は鉄パイプに拳の跡を残し、大きくへし曲げると勢いを止める事なくそのまま顔面へと叩きつける。
殴り飛ばされた男は大の字で倒れ気を失う。
「あそこのボクシング部、俺がいた頃よりも随分とレベルが下がったもんだな」
拳の汚れにフッと息を吐きかけるとポケットにしまう。
「ひぃっ!ば、化け物!」
「に、逃げるわよ!」
人間離れした力を目の当たりにした彼女達は怯え、逃げ出そうと駆け出す。
「おっとそうはいかねぇぞ!」
「あ、あなたは……」
しかし逃げようとする彼女達の前に左眼に大きな傷をつけた警察官が回り込む。
私はこの人に見覚えがあった、以前にも彼女達の事を通報したことがある、その時に来てくれた警察官が彼だ。
「おせぇよオッサン」
「お前が急過ぎるんだよ!いきなり裏路地に来てくれって何だよっ!」
「だから事務所の近くだって言ったろ?」
「それだけで分かるか!今日の所はこれだから良いけどよ……まぁ諦めな、この場所はとっくに取り囲んでるからよ」
「うぅ……」
顔も覚えられている警察官に見つけられ、逃げる事が無理だと察した彼女達は大人しく捕まる事を選んだ。
「はぁ〜………」
危険が去り気が抜け座り込む、まだ心臓がバクバク言ってる早く帰って眠ってしまいたい。
でもその前にお礼を言わないと……
「あ、あの……」
「うげっヤバっ!悪いオッサンその子の事頼んだ!」
「あ!待って!」
「あ、オイコラ遼!……勝手なやつだぜ全く」
しかし私がお礼を言う前に時計を見ると慌てて走り出してしまった。
結局お礼の一つも言うことができなかった。
やって来た警察官が彼女達を補導するのを見た後傷のついた警察官に彼の事を聞いてみた。
「あの……」
「ん?どうした嬢ちゃん」
「あの人も捕まえるんですか?」
彼は助けてくれただけ、それなのに捕まってしまうなど耐えられなかった私は恐る恐る聞いてみる。
「ああ、心配すんな、アイツとは知り合いだ。どうせ正当防衛って事で厳重注意で終わらせるさ。嬢ちゃんの証言もあるしな、手伝ってくれるか?」
「は、はいっ!」
何のお礼も出来なかったわたしはせめて彼を無実にする為、ここで起こったことの一部始終をお巡りさんに話す事にした。
「それじゃまずは名前から教えてくれるか?前にも聞いたが一応決まりだからな」
「えっと、
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「やっべー!思ったより時間かけ過ぎたー!」
事務所に着いた俺は軽くシャワーを浴びて着替えると直ぐに飛び出す。
本当ならもう少し服を選んだり軽い化粧もしたかったのだが遅れるわけにはいかない。
ガレージを開き愛車である《CBR1000RR》にまたがりヘルメットを被るとバイクを走らせる。
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「……………」
駅の中にある大きな鏡、それを見ながら身だしなみを整える。
我ながららしく無い、これがお姉ちゃんならもっと絵になっただろうなぁ……
「やめやめ!覚悟を決めて会うこと決めたんだからせめて笑顔で……」
鏡を見て何とか笑顔を作ろうとする。
しかしこの数年間まともな笑顔なんて殆どしていなかったせいか何処かぎこちない。
「こういう時レイちゃんが羨ましく思うわ……」
ガッカリと肩を落とし、また眉毛がハの字になってしまっている。
本当に自分が嫌になる。
レイちゃんみたいな眩しい笑顔が出来れば良いのに……
「やっぱり帰る………いや!ダメよ! ツェリスカさんにも悪いし、でも……」
帰りたくなる気持ちを無理矢理抑え込み、改札の前を行ったり来たりする。
(大体いつになったらあいつは来るのよ! まぁ確かに予定よりもずっと早く着いてしまったあたしが悪いんだけどさ)
一秒でも長く家を出なければ行く気力が無くなりそうだと思い、早く出てしまったのが災いした。
着いて彼を待つ間ずっと悶々としている。
(勇気を出すのよ、今日だけはクレハじゃ無くてあたしを見てもらうんだから!)
頬を叩き気合を入れる、相変わらず笑顔はぎこちないが心構えは決まった。
たとえどんな形になっても後悔しない、本当のあたしを見てもらうんだ。
そんな時大きなエンジン音が聞こえて見てみると一人の男性がバイクから降りるのが見える。
遼だ、一目でわかる、GGOでの格好とほぼ同じ格好と言うのもあるが何より昔の面影が残っていた。
彼も同じものを感じたのか休日の駅に人が大勢居るにも関わらず一目で此方を見つける。
「悪い!少し遅れた!」
「ちょっと!遅いわよ!」
会ったら何を言おう、どんな言葉をかけよう、昨日からずっと考えていたのだけど自然と言葉が出た。
「悪かったよ、ちょっと人助けしててさ〜」
「何が人助けよ、どうせ女の子の所に行ってただけでしょ?」
「いやまぁ間違っては無いんだけどな……」
「もう! もう少し来るのが遅かったら帰る所だったんだから!」
「いや悪かったって!ちゃんと埋め合わせするからさ! それよりもさ一つだけ言わせてくれないか?」
「な、何よ?……」
申し訳なさそうな顔から一転、真剣な眼差しに変わる。
その瞳に少し胸が高鳴ってしまう。
「おかえり『紅葉』」
「うん、ただいま遼……」
差し出してくれた手を握り返す。
手を握っただけなのに心の奥まで温かくなる、懐かしい感覚だった。
(あれ?)
ふと視界の端に先程の鏡が入る、その中に居るあたしは先程とは違い眩しい笑顔をしていた。
「で? どうよ!」
「何が?」
「何がじゃねぇよ、俺の見た目だよ。カッコ良くなったとかさ、イカしてるとかさ何かあるだろ?」
「いや別に、いつもGGOで見てるし」
「いやいやいや!どう見てもコッチの俺の方がハンサムだろ? 服だって良いの買ってるし……」
「いやそんな変わんないし、て言うか正直言って似合ってないわよ。服に着られてるって感じ」
「ブファッ!?」
お腹を押さえて倒れ込む、ボディブローでも食らったかのように悶えだす。
何かを期待していたのかも知れないけどあたしからすればGGOに居る時と何ら変わらない姿であった。
遼はずっと本当の自分であたしと接してくれてたのが分かる、ならあたしもそれに応えないと
「あははっ………あっ」
「ん? どうした紅葉」
「ううん、何でもない」
「そうか?なら早く行こうぜ案内したい所が一杯あるからな!」
「うん、行こ!」
もう一度鏡を見てみるとやっぱりあたしは笑っていた。
不安だった気持ちも遼に会った途端無くなる、今なら楽しめそうな気がする。
彼と過ごしたこの街を……
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第四部 誰のサイドケースから見たい?
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クライン
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