ソードアート・オンライン フェイタルバレットー切札の弾丸ー   作:トライダー

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 紅葉

⭐︎

 

 

 

 

 

 

 

 遼の背中を抱きしめバイクに揺られる、彼の大きな背中から熱が伝わり心が満たさる。

 

 ギュウゥゥ……

 

「ん? 怖いか?」

 

「う、ううん、大丈夫よ」

 

 つい腕の力を強くしてしまい遼が心配そうな声を聞かせる。

 しかし怖い訳ではない、ついこの温もりをより求めてしまっただけ。

 

「うっし到着!」

 

「運転上手いじゃない、カッコよかったわよ」

 

 駐輪場にバイクを止め遼の腰に回した腕を解く、少し寂しさを感じるのは秘密だ。

 

「本当か! いや〜それほどでも……あるけどな!はっはっはっは!!」

 

「もう、調子良いんだから……そんなんだといつか悪い女に騙されるわよ?」

 

「女の子に騙されるなら本望さ、相手がヤロウだったら地の果てまで追いかけてぶっ飛ばすけどな!」

 

 顔つきははそこまで変わってないけど、中身はだいぶ変わったみたいだ、昔は泣き虫だった癖によく笑うようになった。

 

 遼のバイクから降りると商店街の中を歩き出す。

 

「どうだ懐かしいだろ? 昔より店は減ったけど殆ど変わって無いだろ?」

 

「うん懐かしい、昔はよく一緒にここで遊んだっけ?」

 

「そうそう! 紅葉に腕を引っ張られてな、俺は家に居たかったのに無理矢理引っ張り回して」

 

「なによ、あんただって楽しんでたじゃない」

 

「まぁ実際楽しかったから良いんだけどさ〜。最初の頃は紅葉が怖くて隠れたり逃げ回ったりしたっけ」

 

「そ、そこまで?!」

 

「そうさ、強引だし我が儘だし喧嘩になると勝てないしで、外に出たくないのに逃げるために結果的に走り回る事になったんだよな。紅葉足が速いからすぐに捕まったけど」

 

「そう考えるとよく仲良くなれたわね……」

 

 確かに少し強引に連れ出した記憶はある、しかしそれは遼が家で寂しそうにしてると思ったから

 悪気が無かったとはいえよく仲良くなれたものだ。

 

「覚えてるか? 俺たちが仲良くなったキッカケ」

 

「うーん遊んだ記憶はあっても、どうなって仲良くなったかあんまり覚えてないわね……」

 

「俺が上級生に虐められていたのを紅葉が助けてくれたんだよ。あの時の紅葉は自分よりも体の大きな男子をちぎっては投げちぎっては投げ」

 

「そ、そうだったかしら?」

 

 全く覚えていない、自分がお転婆だった事は覚えてるけどそこまでとは、昔のあたし凄すぎでしょ。

 

「ああ、あの時の紅葉は俺にとってのヒーローだった。それから紅葉の後をついて行くようになったんだよな」

 

「なんだか照れくさいわね。ふふっ、そうね〜あの時の遼は可愛かったわ〜」

 

 自分の後ろをついて来る遼の姿はよく覚えている、あの時はあたしより背も低くてまるでヒヨコみたいにトコトコついて来てたのよね。

 あたしが少し歩くのを速くするだけですぐ泣いちゃって、そのくせ手を握ったら途端に泣き止んじゃって可愛かった。

 その姿が見たくてワザと速く歩いたりした事もあるのは秘密だ。

 

「ま、あの時のプリティさは失ったが、その代わりハードボイルドな渋い男へと……」

 

「あ! あれ懐かしい!」

 

「聞けよオイっ!」

 

 遼の長くなるナルシズムな発言を無視して商店街の薬局の前に置いてあるカエルの人形の元へ駆ける。

 

「覚えてる?よくこの人形と背比べしたの」

 

「まぁな、紅葉が追い抜いたのに俺だけ小さいままでさ」

 

「そうそう! それであんたまた泣いちゃって、慰めてあげたのよね〜」

 

「改めて思い出すと泣いてばっかだな俺……」

 

「あははっ!」

 

 昔の事を思い出したのか落ち込む遼、あの泣き虫がこんなナルシストに変わるなんて分からないものね。

 まぁ確かにカッコ良くはなったけど渋くは無いわね、ナルシストな言動をやめて服装ももう少し最近のファッションにすればモテそうなのに。

 

「お、遼じゃないか。なんだもう振られたのか?」

 

「よぅおっちゃんさっきぶり! 今デートの最中だよ」

 

 薬局の隣の魚屋から店主が顔を見せる、この人の顔はよく覚えている。

 

「あら?遼ちゃんもう帰って来たの? やっぱり振られちゃったの?」

 

「お!遼やっぱ振られて帰ってきたか! はっは〜!この賭けは俺の勝ちだな!」

 

「大丈夫よ遼、女なんて星の数いるしきっと良い人が見つかるわ。今日は好きなだけ飲み食いして良いのよ?」

 

「大丈夫だよお兄ちゃん、将来あたちのお婿さんにしてあげるからね♪」

 

「違うって言ってるだろうが! 何で振られるの前提なんだよっ!! 後誰だ、賭けてたのは!」

 

 その声に皆が反応するとこちらへとやって来る、花屋のおばちゃん酔っ払ったおじさん居酒屋の女将さんやその娘さんまで色んな人が遼を取り巻く。

 やっぱり遼は変わった、昔はあたしの後ろに居たのに今では真逆となっている。

 正直人混みは苦手、あたしは遼のせにかくれようとするが周りの人はあたしの存在に気づいた。

 

「何だ途中だったのか、しかしデートの場所にこんな場所を選ばなくても」

 

「この街の案内も兼ねてるからな、ほら覚えてるだろ? 昔よく俺と一緒にいた幼なじみの!」

 

「ど……どうも……」

 

 か、顔が強張る。

 知らない人……って訳じゃ無いけどやっぱり緊張する。

 それにきっとこの人たちはあたしの事を覚えていない、たとえ高峰を覚えていたとしてもそれはきっとお姉ちゃんの方だろう。

 

「ん? 幼なじみ……ああ!もしかして高峰さんの所の娘さんか!」

 

「は、はい……お、お久しぶり……です………」

 

「いや懐かしい〜あれだろ? 確かあのなんとかって有名な大学に入ったって……」

 

「………いや……あの……それは姉の方で………」

 

「おっちゃんそれは桜さんの方だろ? そうじゃ無くて妹の方だよ、ほらお転婆ガキ大将の!」

 

「あー!紅葉ちゃんか! いや〜美人さんになったわね〜」

 

「え? あ、あの覚えてるんですか?」

 

「そりゃそうよ。君が居なくなってから遼ちゃんたら紅葉ちゃんの話ばっかりするんだもの」

 

「遼が……?」

 

「そうよ〜。紅葉ちゃんにもう一度会うために強くてカッコいい男になる〜って毎日毎日走ったりボクシング始めたり」

 

「そこの本屋でファッション雑誌とかよく立ち読みして怒られてたっけな〜」

 

「高校だったかな? 携帯を買って連絡がついたのは、その日からまた紅葉ちゃんの話ばっかりしてたっけ?」

 

「そうそう!嬉しそうに話してたわね〜」

 

「あーもう!やめろって恥ずかしい!」

 

「いやしかし相手があの紅葉ちゃんとは、これは遼にもついに春が来たって事かね〜」

 

「散々振られ続けた事にも意味があってよかったわね遼」

 

「余計なお世話だよっ!」

 

「紅葉ちゃん遼ちゃんの事よろしくね、この子変な所あるけど良い子だから」

 

「知ってます」

 

「俺の親かっ!! てかそこはフォローしろよ……」

 

 遼と話している皆んなはとても楽しそう、彼が皆から好かれている証拠だ。

 嬉しい反面少し寂しくもある……もうあたしが居なくても大丈夫なんだなって。

 

「ああもう連れて来るんじゃ無かった。ほら行こうぜ紅葉」

 

「あ!ちょっと! そ、それじゃ失礼します!」

 

 ヒュー!ヒュー!

 

「やめんかっ!!」

 

 恥ずかしくなった遼はあたしの手を掴むと急いで商店街を駆け抜けた。

 

 

 

 

    ⭐︎

 

 

 

 

「ほらっ! ここだ此処!」

 

「うわっ! 懐かしい〜!」

 

 遼に手を引かれながら今度は公園へとやって来る。

 十年も前のことなのにピッタリと記憶の中の風景と重なる。

 

「紅葉ここ好きだったろ?」

 

「覚えていてくれたんだ……」

 

「当たり前だろ?」

 

 ニカッと微笑む遼、その笑顔に頬が熱くなってしまう。

 

 ……今ならあたしの事を話せる気がする。

 

「ねぇ遼……あたしの話を聞いて欲しいの『本当のあたし』の事を」

 

「………それがお前の悩みか?」

 

「うん……」

 

「分かった………ほらここに座りな、飲み物を買って来るよ」

 

「うん、ありがとう遼……」

 

 遼は近くのベンチに落ちている葉っぱを払い座ることの出来るスペースを作ってくれる。

 あたしがベンチに座ると遼は少し離れた場所にある自販機へと走っていった。

 遼が帰って来るまでに覚悟を決める、もしかしたら気を遣ってくれたのかも知れない、まだ少しだけ迷いがあったのを読み取ったのだろうか

 

「あっ……」

 

 掌を見ながら心を落ち着けていると掌の上に紅葉の葉が舞い落ちる。

 自分の名前の元となった紅色の葉、あたしはこの葉が好きだった。

 その葉はまるで元気付けるかのように紅く色鮮やかであった、あたしはその葉を握り潰さないように両掌で包み込み大きく深呼吸する。

 

「よし!」

 

「ほら、メーカーはこれで良かったか?」

 

「うん! ありがとう遼」

 

 まるで測ったかのような丁度いいタイミングで遼がコーヒーを渡してくれる。

 遼が自分の分のコーヒーを開け隣に座るのを見てると葉を隣に置きコーヒーを飲む。

 

「ねぇ、久しぶりにあたしに会ってどう思った?」

 

「ん? 女の子らしくなったよな、可愛いよ」

 

「そ、そう言う事じゃなくてっ! GGOのあたしとの違いって言うか……」

 

 ほんとコイツはこう言う事をサラッと言ってしまう。

 可愛いなんて誰にでも言う男なのは分かっているけど、それでもやっぱり嬉しくなってしまう。

 

「そう言われてもな、さっき紅葉が俺に言ったようにいつも会ってるから違いなんて……」

 

「うそ、遼鋭いから気づいてるでしょ? 最近あたしの様子がおかしい事」

 

「まぁな、だから何か悩んでたんだろ?」

 

「ううん違う、悩んでたんじゃ無くてあれが本当のあたしなの」

 

「……え?」

 

「『クレハ』はあたしの理想、本当のあたしはお姉ちゃんの影に隠れてるような存在……」

 

 ベンチに両足を乗せて膝を抱える、こうしてないと凍えてしまいそうだから。

 先日ツェリスカさんに話した内容を遼にも伝える、弱々しく情け無い姿だっただろうけど遼は何も言わずに聞いてくれた。

 

「……でも何で今まで黙ってたんだ?」

 

「怖かったの……遼があたしの側から居なくなるのが……」

 

「居なくなるって、そんな訳……」

 

「お父さんもお母さんも学校の先生も皆んなお姉ちゃんの事しか見てない、でもあんただけはあたしを見てくれた。唯一の味方を失いたくなかったGGOに誘ったのだって優越感に浸りたかっただけなのかも……」

 

「紅葉……」

 

「GGOで一緒に居るうちに昔のあたしに戻った気がして今なら会えるかもって思ったんだけど……やっぱり何も変わっていなかった」

 

 足を抱える腕の力を強くする。

 

「ガッカリしたでしょ? あたしはもうあんたの知ってる紅葉じゃ無いのツェリスカさんが言った様な明るくて元気な優しい子じゃない、暗くて笑顔の少ない自分の事しか考えてない弱い人間で……」

 

「まったく……ほらっ」

 

 溢れ出しそうになるあたしの弱音を遮るように、遼はあたしの頭を抱え自分の胸元へと引き寄せる。

 

「ちょ!ちょっと遼!」

 

「確かにお前は変わったかもな……」

 

「う……」

 

「でも俺はそれを少しだけ嬉しく思った」

 

「……え?」

 

「紅葉は昔から強くて優しくていつも俺を守ってくれた、でもそれと同時に俺に一切弱さや心の内を見せてくれなかっただろ? だから話してくれて嬉しかった」

 

「遼……」

 

「俺だって変わったろ? 初めて会ってどう思った?」

 

「それは正直最初は驚いたけど、もう慣れたわ」

 

「だろ? 人と人の繋がりなんてそんな簡単に途切れるものじゃ無いさ。俺たちは舎弟じゃ無くて友達だ、紅葉が強いから一緒に居たんじゃ無くて好きだから一緒に居たんだ」

 

 泣きそうになるあたしの頭を撫でながらあやすように優しい口調で言う。

 

「それに俺にとっては紅葉もクレハも変わらないよ」

 

「そんな事……あたしはあんたが思ってるような……………ん?」

 

 頭を撫でていた手がゆっくりとお尻へと移動し、円を描くように動いている。

 間違いないこのバカ触ってるわ……人が真剣な話してる時に……

 

「ん〜体つきはクレハの時の方が……」

 

「どこ触ってんのよっ!!」

 

「ぶべっ!」

 

 立ち上がり遼の頬を思いっきり引っ叩くと、頬に真っ赤な手の跡を残し葉っぱの道を散らしながら倒れる。

 

「信じらんない!普通今このタイミングで触る!? 人が真面目な話してる時に!!」

 

「い、ててて……ほら見ろ! 十分明るく元気じゃねぇか」

 

「え?……そ、それは」

 

 遼の言う通り元気は出たけど、もう少しやり方があるでしょうに、遼は真っ赤な手のひらの跡をさすりながら立ち上がる。

 

「今の事だけじゃねぇよ。顔合わせした時や昔の話をしてるときはGGOと変わらない笑顔を見せてただろ? お前は自分で思ってるほど暗い奴じゃねぇよ」

 

「それは遼が相手だったから……あんた以外には……」

 

「なら俺の側に居ればいいだろ? お前が自信を取り戻すまでずっとな。心配しなくても俺は居なくならないよ。弱い俺を助けてくれたように、今後は俺が紅葉の側にいる」

 

 遼が再びあたしを抱きしめる。

 バイクに乗った時も感じた彼の体温をより強く感じる。

 

「そんな事……良いの?あたしなんか側に居て……」

 

「なんかなんて言うな、俺にとって大切な人なんだからな」

 

「遼……」

 

 両腕の力が強くなる、まるで自分を否定しようとするあたしを逃がさないと言うかのように。

 あたしはその気持ちに応えるように遼の背中に手を回し負けないぐらい強く力を込めた。

 

 どれくらいそうしていたのだろう、あたし達はほぼ同時にお互いの力を弱めると見つめ合う。

 

「ははっ! 変わってないって言ったけど、一つだけ変わった所もあったな」

 

「え?」

 

「さっきも言ったろ? 女の子らしくなったって、可愛いよ紅葉」

 

「ば、ばかっ!……」

 

 今日一番頬に熱を感じる。

 きっと今のあたしは紅葉の葉以上に真っ赤になってる事だろう。

 顔が熱い、恥ずかしすぎる、それでも彼の瞳から目が離せなくなる。

 見つめ合ったあたしたちの距離が近づくのはいたって自然な事であった。

 

「紅葉……」

 

「遼……」

 

 顔がくっついちゃうまで後数センチ、背の届かないあたしは目一杯背伸びをし両眼を閉じて彼を迎え入れる。

 視界が無くなるが彼が近づいて来る気配を感じる。

 視覚がなくなった事で他の感覚が研ぎ澄まされ、周りの音が良く聞こえる。

 風の音、水の音、落ちる葉っぱの音、跳ねて転がるボールの音

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……………ボール?

 

「「「「ジー………」」」」

 

 チラッと薄目を開けて横を見てみると小学生ぐらいの子供たちがじっと此方を見つめている。

 現在は真っ昼間の公園、よく考えたらあれだけ騒げば人が寄って来るのはおかしい事ではなかった。

 

「ちょ、ちょっと待って遼!? 子供たちが見てるんだけど!」

 

「んあ? そりゃ休日の公園なんだから子供ぐらい居るだろうよ。んな事より……」

 

「ムリムリムリ! 恥ずかしすぎるわよっ!!」

 

「大丈夫だって! ほら俺だって顔赤いし!」

 

「それはあたしが叩いたからでしょうがっ!! とにかく今だけは本当に無理!せめて二人っきりの時に……」

 

「いやいやいや!!これはする流れだろ? ちょっと恥ずかしいぐらいの方がいい思い出になるって!」

 

「なるかっ!!」

 

「いいから良いから、先っちょだけほんの一瞬触れるだけでも……」

 

「いい加減に……しなさいっ!!!」

 

「ぎゃあぁぁぁぁっ!!!」

 

 人の気も知らずにしつこく迫って来る遼の胸ぐらを掴み投げ飛ばす。

 

「ぐえっ!……ガクッ」

 

「「「「おおー!!」」」」

 

 宙に一瞬浮き上がり、一回転しながら紅いクッションに背中から落ちる。

 綺麗に決まった一本背負いに子供たちの拍手が飛び交った。

 

 

 

 

 

      ⭐︎

 

 

 

 

「まったく、本気で投げ飛ばしやがって」

 

「あんたがしつこいからでしょ!」

 

 腰をさすりながら文句を言う遼、だってしょうがないじゃない恥ずかしかったんだもの。

 残念なのはあたしも一緒なんだから

 

「ほんとに駄目?」

 

「ダーメ! まだ人が多いっ!」

 

「ちぇ〜」

 

 時刻は午後一時を回ったところ、あたしと遼はもう一度駅へと集まっている。

 と言うのも『もう一人の大切な人』に会うためにであった。

 

「リョウ〜っ!」

 

「お! このセクシーで美しい声は……」

 

 腰をさすりながらブツブツ文句言っていた遼はその声を聞いた瞬間目の色を変える。

 長いウェーブのかかった長い髪を靡かせながらメガネをかけた綺麗な女性が此方へとやってくる。

 

「ごめんなさい、待たせちゃったかしら?」

 

「えっと…….もしかしてツェリ「初めましてお姉さん!」」

 

 あたしが何か言おうとするのをリョウが遮り彼女の両手を握る。

 このバカはホント……

 

「貴方の様な麗しい女性と出会えるなんて、幸運の女神が使わしてくれた天しっ!!」

 

 遼が彼女を口説く最中、右足を踵で思いっきり爪先を踏み付けてやる。

 

「いででででっ!!何すんだよ紅葉!」

 

「べ〜つにぃ」

 

「あだだっ! なら力強めるの止めろよ!」

 

「ふんっ!」

 

 なによ、さっきはあんなにあたしとキスしたがってた癖に

 

「うふふっ、その様子だと仲直り出来たみたいね♪」

 

「仲直りって別に喧嘩なんてしてませんよ」

 

「そうそう、紅葉が勝手にいじけてただけさ」

 

「何その言い方、ふん」

 

 まぁ事実そうなんだけどさ……。

 結局あたしは遼を信じきれていなかったのだろう。

 昔の記憶が強くて、泣き虫なイメージの方が勝っていた。

 だけどあたしの思っていた以上に遼は大きな男に成長していた。もうあたしが守る必要のないぐらいに。

 だから今度はあたしが遼に甘えよう、そして遼が困った時はあたしが助ける。どちらか片方が守るのではなく、助け合う、そんな関係になりたい。

 

「そういやお姉さんの事は何で呼べば良いんだ?」

 

「そうね、わたしの名前は星山翠子(ほしやま みどりこ)よ。よろしくね二人とも」

 

 そう、あたしが会う約束をしていたのは遼だけではない、翠子……ツェリスカさんとも約束をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

⭐︎




高峰 紅葉(たかみね もみじ)

クレハのリアルの姿で看護専門学校に通う20歳
遼の幼なじみで昔はGGOの時と同じ強気な少女だったが完璧超人の姉からのプレッシャーによりネガティブな性格へと変わっている。
人との付き合いが苦手だが遼と一緒に居る時だけは本来の自分に戻れている、その為少し遼に対して依存のようなものを持っているが遼本人はそんな彼女を受け入れている。
姉の事はコンプレックスには思ってはいるが嫌っておらず自慢の姉と思っているが比べられることを嫌い早く家を出る為バイトを掛け持ちしている。
幼少の頃に姉と共に柔道を習っており実力は折り紙付き。

第四部 誰のサイドケースから見たい?

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