ソードアート・オンライン フェイタルバレットー切札の弾丸ー 作:トライダー
次回からは《ファントム・バレット》編へと突入し、その為の前日談へとなります。
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「クレハちゃんお願い!」
「はいっ!」
ツェリスカがPKMの引き金を引く、100発近い弾丸に相手プレイヤー達は慌てて近隣の岩場に隠れる。
それでも連射をやめず撃ち続けプレイヤー達をその場に足止めさせる、クレハはその集まった地点へと集団戦を想定して持ってきたGL6グレネードランチャーを放つ。
「ぐあっ!」
放たれたグレネード弾が放物線を描き岩場を超えて後ろのプレイヤーを吹き飛ばす。
逃げ切れなかったプレイヤーが外へと放り出されたその隙を見逃さず、ツェリスカが撃ち抜いていった。
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「ぐあああっ!!」
「ちっ、オレがカバーする! 撃ち続けてグレネードを投げさせるな、衛生兵はすぐに回復をしろ!」
バレット・ワークスの一人が目に見えづらいスイッチのような物を踏んだその瞬間、地面から強力な電気が流れ出しスタン状態となる。
ジョーが盾を構え倒れた仲間と衛生兵を背後に隠し治療をさせる。
「スタントラップか、イツキの奴だな上手い隠し方をしやがる」
倒れた仲間を盾で庇いながら他の仲間に治療をさせる、イツキは《エンジニア》のスキルを持っておりトラップなどのガジェットの扱いに長けている。
イツキの設置したトラップの数々に、ジョーの部隊は慎重に進むのを強要されていた。
「ほらっ、いつまでも倒れてんじゃねぇ!」
「す、すみませんジョーさん、助かりまし……」
痺れが取れ立ち上がろうとした男の頭が吹き飛ぶ。
「ちぃ、狙撃か! 2時の方向だ!」
「おっと、危ないな危ない」
後方に待機させている狙撃隊へと連絡を送り攻撃を開始させる。
自分へと銃弾が向かって来るとイツキは慌てて身を隠す、先程男の頭を射抜いたのはイツキのドラグノフによる狙撃だった。
狙撃に気付き飛んで来たであろう方角へと攻撃を開始するが、イツキはすぐさまスモークを焚き身を隠す。
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「アイ!あれをやるぞ!」
「了解ですっ!」
カバー・ヴィジョンを展開し身を隠す、リョウが指示を出すとアイは向かって来る複数のプレイヤーをジッと見つめる。
ホログラムの壁に攻撃するのは無意味と判断したプレイヤー達は数を生かし回り込み攻撃をしようとする。
「させるかっ」
両光剣を展開して全神経を集中させる、頭の中から雑音が無くなり周りがスローモーションのように感じる。
両光剣を振り回し自分とアイを撃ち抜こうとするライフル弾を弾き飛ばして防ぐ。
「アイ、下がれ」
「はいっ!」
銃弾を弾く姿に驚いた表情を見せるが、焦らす数を生かし扇状に展開して三方向からの射撃をしようとするが死角となる背後をカバー・ヴィジョンに防がれているため攻めきれずにいる。
「マスター、ロックオン完了です!」
「分かった」
アイからの合図に頷くと両光剣を投げつける、銃弾を弾きながら丸鋸のように飛んで来る両光剣に反応出来ず隣に居たプレイヤーと共に胴体を切断される。
アイを抱え射線から離れるとコルト・パイソンを取り出し弾丸を装填する。
黄色くLのと描かれた弾を5発、青くTと描かれた弾を1発装填すると全弾丸を纏めて斉射する。
「《トリガー・フルバースト》!」
コルト・パイソンが青く染まり5発の黄色い弾丸が光を浴びて放たれる、その弾丸は空中で3分裂し計15発まで数を増やす。
それだけ無く放たれ弾丸は弧を描き、避けようとしたプレイヤー達を追尾するように襲った。
「やったのですマスター!成功ですよ!」
「ああ、良くやったなアイ」
「えへへ〜」
リョウが使った特殊弾は、弾が分列する《ルナ弾》とバフを掛け銃の攻撃力を上げる《トリガー弾》の二つ、しかしそれだけでは追尾などしない。
アファシスのパーツを全て集めてパワーアップしたアイのレーダーとロックオン機能を合わせて初めて使える技だ。
何度かエネミーには使った事があるがプレイヤー相手の実戦は初めて、技が成功して駆け寄って来るアイの頭を軽く撫でる、リョウに褒められたアイは目を細めて嬉しそうにしている。
「あれ? マスターもう終わりですか?」
「まだ戦闘中だ、また後でな」
「分かったのです約束ですよ!」
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リョウとアイはクレハ達と合流し残りのプレイヤーの相手をする。
既に3人の健闘もあり数は半分に減っている。
「まだ結構残ってるな」
「数は減らしたけどまだ衛生兵が残っているわ、持久戦になると厳しいわね」
向こうの回復係は未だ数人残っている、対してこちらはアイ一人だけ、ツェリスカも回復弾を持ってはいるが衛生兵では無い為回復のスキルは低い。
持久戦に持ち込まれると不利になって来る、その時通信機からイツキの声が聞こえる。
《リョウくん、ボクに提案があるんだけど》
「何だ?手短に言ってくれ」
《バレット・ワークスはバザルト・ジョーのカリスマ性に惹かれて集まった彼を中心にしたチームだ。それ故にチームワークはGGOでもトップクラスだ、しかしそれが弱点でもある。彼が指示を出せなくなれば総崩れになるはずだ》
「誰かがオッサンを部隊から遠ざけるって事か?」
《そういう事。彼は一対一を好む男だ、キミが挑めば間違いなく乗ってくるだろう》
「……分かったその作戦でいく。クレハはグレネードランチャーをアイに渡したら俺と一緒に突っ込んで援護してくれ、アイはスモーク弾に切り変えて目隠しを頼む、ツェリスカとイツキは他のプレイヤーの牽制だ」
「分かったわ」
「了解です!」
「了解よ〜」
「分かったよリーダー」
「誰がリーダーだ。まぁ良いや、んじゃ行くぜ」
イツキの軽口にツッコミながらも両光剣とUFGを取り出し駆け出す、自分たちへと向かって来るリョウへ攻撃を集中させようとするが数が減ったおかげで火力が低下しているのとアイ達の援護のおかげで弾幕が薄い。
集中して自分たちへと向かって来る弾丸を手堅く弾きながら真っ直ぐに突っ込みクレハもその背中に隠れるようについて行く。
「にしても凄いわね、理論上出来る様に作られてるとはいえ、あそこまで銃弾を弾けるなんて」
「マスターの《ハイパーセンス》は最強なのです!」
「ハイパーセンス……?そんなスキルあったかしら?」
「わたしが名付けたのです! 分かりやすい方が良いですから。マスターが言うには集中すると周りが遅く感じたり感覚が鋭くなって相手の動きが分かるらしいのです」
「それって本当?」
「マスターに聞いただけなので分かりませんが、現にマスターの被弾率は一割以下ですから」
「あの闇風と同じなんてそれが本当なら凄いわね、システム外スキルってやつかしら? でもそんな事が出来るなんてリョウって一体………」
《攻撃が休んでるけど、どうかしたのかい? 弾が無くなったなら貸そうか?》
「む……余計なお世話よ、レイちゃんがいるから弾は足りてるわ」
《それは残念、キミに借りを作れるチャンスだったんだけどな。ならさっさと攻撃してくれるかい? ボクばかり仕事するのは癪だからね》
「言われなくてもやるわよ、急かす男はモテないわよ」
「喧嘩はやめるのですー!」
通信越しに嫌味を言い合う二人にアイはたじたじになる、しかしそれでもしっかりとキルを取り仕事をする辺り流石の実力だ。
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「うぉらぁっ!」
「うおっ!?」
煙を突き破り現れたリョウに驚きながらも盾を構え両光剣による攻撃を防ぐ。
「へへっ、腕を上げたじゃねぇかリョウ!」
「そりゃこんだけレベル上げればな」
「いいや……明らかに初めて戦った時よりも動きにキレが良くなった。ステータス以上にVR世界に慣れてきた証拠だ」
「褒めてくれてありがとうよっ!」
ジョーの盾を足場にして逆上がりのように回転しながら蹴り飛ばす。
突然力が抜けやって来る蹴りの衝撃に、流石のジョーも体制を崩してしまう。
(ここだ!)
リョウは両光剣を紫色の極光剣へと切り替えアダプターを取り出し差し込む。
より強い輝きを放つ光剣を構え体制の崩れたジョーへと突っ込む、その光で危険を察したのかジョーはその大きな体を盾の中へと隠す。
だが無意味だ、アダプターによって強化した極光剣は宇宙船の装甲すら斬り裂く、そしてジョーのステータス配分では此処からの回避は不可能だ。
ドクッン
(……え?)
……の筈なのに鼓動が強くなる、最早将棋の詰みのように勝利は目の前。
にも関わらずリョウの本能は危険を告げている。
「くっ……おおっ!!」
一瞬の戸惑い、しかし勝利は目の前、リョウは己の本能より目先の勝利を選んだ。
「へっ!掛かったな!」
「なっ!?」
リョウの光剣はジョーの盾を豆腐でも切るかの如くアッサリと切り裂いた。
しかしそこにジョーの姿は無かった。
ジョーは自分の体を盾を囮にして隠れながら後ろへ下がり、開いた左腕にもう一丁のライトマシンガンを構えていた。
(ライトマシンガンの二丁持ち!? 不味いっ!)
すぐさま後ろへと下がり光剣で防ごうとするがもう遅い、両丁から放たれる無数のバレットラインは既にリョウの全身を捉えていた。
集中しハイパーセンスを発動させる、しかしいくら辺りが遅く感じようが、いくら感が働こうが、体が間に合わなければただ弾丸を迎え入れるだけ。
トッププレイヤーとしての経験の差、レベルが上がった故の驕り、速攻でリーダーを倒さねばと言う焦り。
しかしそんな物は関係無い、彼は選択を誤ったのだ。
『人生の八割は選択、後はおまけみたいな物だ。そして俺たちの生きる世界はそんな選択が命運を分ける、もし誤れば……死だ』
かつて師匠に耳が痛くなる程聞かされた事を思い出す。
『マスター!ハイパーセンスのコツを教えて欲しいのです!』
『は?コツ?何だよいきなり』
『あれはとても凄い技術なのです、皆んなが出来る様になれば凄い有利ですよ!』
『コツねぇ……しいって言えば、自分の直感を信じる事だ』
『信じる……ですか?』
『直感てのは本能、本能てのは自分自身だ。極限的な状況では考えるよりも直感の方が大事になる。それなのに自分が自分を疑ってしまったら意味がないだろ? 直感でこうした方が良いって感じたならその通りに動かなくちゃいけない』
『なるほどぉ……』
『自分を信じれない者は未熟者だ、他人を信じきる事も出来ないからな』
『おー!なんだかカッコ良いのです!』
『そうだろう!そうだろう!師匠の受け売りだけどな』
何日か前にアイとそんな話をした事を思い出す。
あれだけ師匠が言った事を、アイに言った事を自分から選択を誤ってしまった、彼もまた未熟なのである。
下唇を噛み締めながら光剣で弾き落とす。
しかしこの距離この連射、防げても三割ほど。
直撃する弾丸だけを瞬時に選び計算して弾く事で即死はまのがれるが、徐々に体力バーが減少する。
ハイパーセンスを発動しているリョウはよりその恐怖を味わう。
死……とは言えゲームのもの、別に命を失うわけでは無い。
ここはSAOでは無いのだ、たとえ負けようとも彼のスコードローンに入るだけで大したデメリットは無い。
(違う……俺は死ねない!)
確かにゲームなのかも知れない、仮想なのかも知れない、しかしそれでも彼は負けられなかった。
『いやです!わたしはマスターが良いのです、マスター以外のアファシスにはなりたくないのです!』
かつてツェリスカと出会った時にアイが言った事を思い出す。
リョウ達にとっては仮想でも彼女にとっては此処こそが本物の世界、彼女の想いを踏み弄るようなことはしたく無い。
そして何より負ければ死、彼はそう言う世界で生きているのだ。
その意思は
(絶対に死ねるかっ!!)
一瞬でも気が弱くなったもう一人の自分を殴り飛ばし、気合を入れてむかってくる弾丸に集中する。
すると既に体力が一割を割り掛かった瞬間、彼の中に異変が起きる。
(…………………えっ?)
弾が止まって見える、ハイパーセンスを発動しているのだからおかしいことでは無い。
しかしそれだけでは無い、向かって来る
自分のスピードに自分で驚きのながら手元を見てみると、リョウの体は紫色のオーラに包まれていた。
「何ぃっ!?!?」
ジョーが未だ無い驚きの声を上げる。
それも当然だろう、突然リョウ体が紫色の炎に包まれたかと思うと全ての弾丸を弾き落としてしまったのだから。
ジョーだけでは無い、その光景を見ていた全てのプレイヤーがその異質さに目を奪われる。
「な、なに今の……」
「まさかあれが……」
リョウ自身何が起きたのか分かっておらず、怪しく包むオーラに驚いている。
そんなリョウの前に一つのウィンドウが表示される。
『XTRANO.10、ジョーカーが発動されました』
「ジョー…カー…?」
その単語には見覚えがあった、先程手に入れたスキルの名前。
何故このタイミングで発動したのか、どう言った能力なのか、謎はまだ多いが今は後回しだ。
「アイ!持っていろっ!」
「は、はいなのです!」
帽子を脱ぎフリスビーのようにアイへと投げ渡す。
ジョーは驚きながらも切り替え左手のマシンガンを捨て右のマシンガンのリロードしている、両手でのリロードは困難な上時間もかかる故に邪魔だと判断したのだろう。
リョウはエネルギーの切れた両光剣をしまうと代わりに黒い薄皮の手袋を取り出し装着する。
「悪かったなオッサン、たった数回勝った程度で舐めてた。だからこっからはマジの本気で行かせてもらう」
先に準備を終えたのはリョウ。手袋を装着して具合を確かめるように軽く拳を叩き合うと、トントントンと軽くジャンプをしリズムを刻む。
そんなリョウの姿を見て豪快に笑ったジョーはリロードを終えたマシンガンをリョウへと向け引き金を引く。
マシンガンの連射を再びハイパーセンスを発動させ見極める。
リョウは両拳を顔まで上げると再び足に力を入れてステータスの限り走り出す、的を絞らせないようにジグザグに向かいダッキング、ウィービング、ヘッドスリップを組み合わせた動きで弾幕の薄い部分を通り抜ける。
ジョーカーによって強化された肉体とハイパーセンスのお陰か、弾丸の一発一発がパンチの速度にまで低下している、それでも常人なら避けられないだろう。
(集中だ……弾の一つ一つを拳だと思え……)
しかしリョウは現役時代には生粋のカウンターパンチャーとして名を馳せた男だ。
0.数秒の速度で拳が飛び交う世界を見てきたリョウにとっては、面積の少なく速度の死んだ弾など避ける事はそう難しいことでは無い。
「うぉらぁっ!」
「ぶほっ!」
僅かに擦りながらもダメージ判定が出る程では無い、懐へと潜り込んだリョウは左のアッパーを右の肺へと叩き込む。
急所への重い一撃に体がくの字に折れそうになるがなんとか堪えマシンガンを振り回し距離を離そうとする。
「おらっ!」
だがらリョウはダッキングで潜り避けると右のアッパーカットで顎をかち上げる、下からの衝撃に背後に倒れそうになる。
「このっ!」
何とか堪えると負けじとマシンガンを構える、しかしリョウはバレットラインが出るよりも早く距離を詰めると左拳の裏で銃口をパシッと叩き晒す。
「うぉらぁっ!!」
そして隙だらけになった顔面へと右ストレートを叩き込んだ。
先程以上の衝撃に大きく吹っ飛ぶがジョーは地面を削りながらも気合いで耐えた。
「まじか、今のを耐えるのかよ。やっぱり頑丈だなオッサンは……」
「あ、当たり前……だ。伊達にVITに振ってねぇんだよ……それにこちとら仕事柄荒っぽい事には慣れてんだ……」
満身創痍になりながらも意地があるのかその目には未だ光が灯っている。
「でもお陰でこの力を存分に試せる」
「はん……銃も剣も使ってねぇくせによ……」
「正直、射的やチャンバラより
銃や爆弾がはびこるこの世界ではリスクが高いから余りやりたがら無いが、ボクシングや喧嘩の経験の多いリョウにとっては寧ろこの戦い方こそが本来のスタイルなのだ。
「少しは回復したか?なら攻めさせてもらうぜ。言っておくが舐めてるんじゃねぇ、こいつは俺なりの敬意だ。オッサンのお陰で俺は自分の未熟さに気づけた、そんなあんたを袋叩きにするのは最高に気分が悪い」
「言って……くれるじゃねぇか!!」
気合を入れたジョーは腰からグレネードを取り出し投げようとする。
しかしその動きを予測していたリョウはUFGのウィップモードでグレネードを弾き落とす。
「あっ!、しまっ!?」
手元のグレネードを落とされた注意がそちらへ向かった瞬間、リョウは距離を詰め右手のマシンガンを蹴り飛ばした。
リョウは拳を強く握りしめると獲物を失い丸腰になったジョーへと拳を突き出そうとする。
ドクッン
その瞬間、再び鼓動が強くなる。
先程と同じく本能が危機を伝えている。
しかしリョウは二度とその直感に逆らわない、僅かに上体を逸らし首を捻りスリッピング・アウェーを行う、すると頬を掠りながら一発のライフル弾が通過していく。
横目でチラリと見ると一人のスナイパーがリョウへと照準を合わせているのが見える、もし反応していなかったら頭を撃ち抜かれていたであろう。
そのスナイパーも別の狙撃により倒される、恐らくイツキのものだろう。
「くっ!」
狙撃の回避のために起きた僅かな時間、その間にジョーはハンドガンを取り出していた。
リョウの額へと銃口が突き付けられる、しかしこの距離の射撃は寧ろ避け易い、弾丸では無く
「なにぃっ!?」
敢えて動かず引き金を引かれるのを待ち、指が動いた瞬間頭をずらし銃弾を避ける。
目標を失った弾が顔の横を通過しながら地面へと着弾する。
(これで決まりだっ!)
リョウは突き出された左腕に己の右腕を蛇のように滑り込ませ顎へと叩き込む。
その瞬間リョウを纏う紫のオーラは右腕拳へと集中し、より強い輝きを放つ。
「《ジョーカー・カウンター》!!!」
射撃に対しての完璧なタイミングのクロスカウンターは6割以上残っていたジョーの体力を一瞬にして削り取った。
リョウの必殺の一撃に二、三転したジョーは大の字で倒れる。
「マスター!お見事です!」
「ああ、サンキュー………礼を言うぜ、あんたのお陰で俺はもっと強くなれる」
アイが持って来てくれた帽子を深く被り直し、既に光の粒子となり消滅したジョーへと軽く礼を言う。
その声が彼に届いているのかは謎であった。
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イツキの言う通りオッサンを倒してからはアッサリとしたものだった、リーダーを失い統率のとれなくなった彼らを倒し切るのに数分と掛からない。
決闘を終えた俺たちはホームへと戻ると復活したオッサンと再会する。
「よう!お前さんらお疲れさん!」
「ジョーもお疲れなのです!」
「相変わらず負けたのに元気よね……」
「はっはっはっ!真剣勝負の後は清々しいもんだ! けどよリョウ、あの戦い方だけは無粋だな」
「わ、分かってるよ! ついテンションが上がっちゃってよ……」
確かに此処はリングでもストリートでも無くGGOだ、それなのにあんな戦い方をするのは相手にも悪いだろう。
リスクも高いし、あまりやりたく無いものだ。
「にしてもありがとうなツェリスカ。ついでにイツキもな、今日は助かった」
「ふふっ当然よ、貴方の悩みはわたしの悩みだもの〜いつでも頼って良いのよ」
「ボクにとってもキミをスコードローンに入れるって言う、打算のある行動だし気にしなくていいよ」
「しっかしリョウ戦い方は兎も角、凄かったじゃねぇか完敗だぜ」
「いや運が良かっただけだ、出し抜かれたあの時に俺は死んでる。運良くスキルが発動しなかったら負けていた」
「な〜に言ってんだ、運の良さはお前の一番の武器だろうが! 寧ろ運の悪いお前に勝ったって素直に喜べねぇよ」
「珍しいわね、リョウが自分の非を認めるなんて」
「俺にとってはそれだけ大事な事なんだよ」
結果的には勝つ事はできた、しかし俺にとっては反省点だらけだ何より師匠からの教えを無視してしまったんだから。
もっと精進しないとな。
「そう言えばさっきのアレはもしかしてエクストラスキルかい?」
「ん?ああ、まぁ今日の礼に教えてやるよ、イツキの言う通りさっきのはエクストラスキル、《ジョーカー》って言うみたいだな」
「マジかよ! 良く手に入れたな!」
エクストラスキルの存在にオッサンが声を上げる、イツキも半信半疑だったのか目を見開いて驚いているのが見える。
「でもそれにしてはキミも戸惑っているように見えたけど?」
「それがよ、このスキルって名前しか書いていなくて効果や発動条件とかが不明なんだよ」
メニューを開きスキルの一覧をからジョーカーの効果を見せる、そこには本来なら書かれているはずの説明文が一切存在しなかった。
「本当ね〜。あの様子なら常時発動型じゃ無くて、条件を満たす必要があるんでしょうけど」
「それすら書いていませんね」
「これってバグか何かか?」
「いいえ、エクストラスキルの発動条件や能力は謎なのです。アファシスの知識にも入っていないのでプレイヤーが自身で見つける必要があります」
「何か面倒くせぇな……」
「でもさっきの戦いを見るに、一度発動さえすれば勝負を一気に決める程の強力なスキルよね」
強力な力にはそれ相応に必要な物があると言う事だろう。
しかし本当にどう言う条件なんだろう、体力の消費かと思ったがオッサンを倒すと同時に効果は消えてしまった。
戦闘中にしか発動しないのかと考えたが残りのプレイヤーと戦った時も発動しなかった。
「て言うかリョウ、スキルの事教えてよかったの? イツキさんは兎も角……」
「なんだよ? 仲間はずれにしなくても良いじゃねぇか!」
「誰が仲間よ」
「まぁ別に良いよ、この人多分知り合いだし……なぁ丈二のオッサン?」
俺は頭の中に浮かび上がった人物、馬場丈二の名前を出す。
オッサンは特に驚いた様子もなく頭をかいている。
「ん?ああ……やっぱお前遼だったのか」
「なんだ気付いてたのかよ」
「当たり前だろ、普段の言動や今日の戦い方で似てるなとは思っていたがまさか本名でプレイしてるとは思わなかったよ」
「ほっとけ、俺だって変えたいんだよ」
やっぱりオッサンも気付いていたようだ。
それもそうだろう、俺もオッサンと話している時はリアルの丈二のオッサンと話している気分になり同じように接していたからな、同じ気持ちを感じていたんだろう。
「えっと……つまりキミたちはリアルで知り合いって事かい?」
「そう言う事だな、ほらクレハとツェリスカも覚えてるだろ? あの厳つい……」
「ええ!? もしかして……アタシお世話になったのに失礼な事を」
「ははっ!気にすんなよ、それに敬語もいらねぇよ此処はGGOなんだから普段通りで良いさ」
以前リアルで世話になったクレハは少し恐縮しているがオッサンの豪快な性格のおかげで直ぐに元に戻りツェリスカと話が盛り上がる。
「みんな仲良しでいい事なのです!」
「ははは、何だか羨ましいねキミたちは……」
「ん?何だったらイツキも会うか?今日の礼に飯でも奢るぜ?」
「……………いや遠慮しておくよ、ゲームとリアルは分けるタイプだからね」
「そうか?」
少し考えた後やれやれと首を振るイツキ、まぁ本人がそう言うならやめておこう、別に無理して会う理由も無い。
「けどよぉ、お前が遼だって分かったら尚更バレット・ワークスに引き込みたいんだがな」
「やめてくれよオッサン、ガキじゃ無いんだからゲームの中でまで保護者代わりはやめてくれ」
「でも彼の言うことも一理あるよ。エクストラスキルにアファシス、ことごとくレア物を手に入れているキミはこれからも狙われる事が増えるだろうし、スコードローンに入って身を守った方が良いんじゃないかい?」
「う〜んでもな〜……」
「それならマスターがスコードローンを作れば良いのです!」
「俺が?」
「なるほど、その手があったね。キミがリーダーになってボクとジョーくんが同盟を結べば手を出そうなんてプレイヤーは減るだろうね」
「はい、それにスコードローンを作ればアイテムにロックを掛けれるようにもなりますから安心です!」
「いや待てよ、スコードローン作るのって金がいるだろ? 確かホーム一つ分そんな金……」
「それならわたしが出すわ。リョウのスコードローン……とても楽しそうだもの!」
「あ、アタシも少しなら出せるわ!」
「面白そうだしボクも手を貸すよ」
「オレもだ! 遼の晴れ舞台だからな金に糸目は付けないぜ!」
そう言うと四人で固まりスコードローン制作の話を始める。
……あれ?、なんか俺の知らないうちに話が進んでるんだけど、仲の悪いツェリスカとイツキすらウキウキしている。
「ま、待てよ!俺まだやるなんて一言も……」
「マスターは嫌なのですか?」
「嫌っていうか、俺リーダーなんてガラじゃしねぇし……せめてツェリスカがやるとか」
「何言ってるのよ散々アタシたちに指示を出してきたじゃない、しかもそれで勝ってきてるし」
「クレハちゃんの言う通りよ〜。それに此処にいる人はみんな引き寄せられてここにいるの、わたしじゃなくて貴方にね。中心となる人物がリーダーを勤めるべきだと思うわ」
彼女には仕事の事もあるし言っていることは至極真っ当である。
「うーんでもなぁ……」
「わたしリーダーをやってるカッコいいリョウが見てみたいわ〜」
「よっしゃ! やってみるか!!」
「「「はぁ〜」」」
「さっすがマスター、チョロいのです!」
ツェリスカにそう言われてしまっては断る理由は無い、クレハたちが呆れた表情をしたりアイが何か言っているが気にしない。
俺はスコードローン制作のリーダー名の項目に自分の名を登録した。
こうして俺はスコードローンのリーダーとなった。
人数はクレハとツェリスカそしてアイの4人だけ、しかしこれからも俺たちの仲間は増えていくだろう。
銃の世界なのに剣を振るのが好きなやつ、世紀末みたいな世界にも関わらず小動物みたいなやつ、もしかしたら人間ですら無いかも知れない。
俺はまだ見ぬ仲間たちへと心を躍らせる。
そして数ヶ月後、一つの大きな事件をキッカケに俺たちの運命は大きく変わるのであった。
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ハイパーセンス
リョウの持つシステム外スキル、とある事件と師匠に鍛え上げられた探偵としての直感によりあらゆる攻撃を先読みする。
自分や周りに危険が及ぶと心臓の鼓動が強くなる。
更に精神を研ぎ澄ませることで周りがスローモーションのように遅く感じることが出来る。
しかし先読みしようが遅く感じようがその動きに対応出来るかは本人の実力次第である。
ルナ弾
リョウの作った黄色い特殊弾、放たれてから三つに分裂する。
しかし一発の威力は低く、かつ光学銃扱いなのでプレイヤー相手にはあまり有効では無い。
アイのロックオン機能と掛け合わせることで三日月のように弧を描きながら追尾することが可能。
トリガー弾
リョウの作った青い特殊弾、弾自体に威力は無い。
しかし放つことで銃の攻撃力を上昇させるバフを掛ける、味方に放つことが出来ないかわりに上昇値は他のバフスキルよりも高い。
この弾を使用する事で威力の低いルナ弾でもプレイヤーに大ダメージを与える事が可能になる。
特殊弾グローブ
リョウの作った薄い革製の手袋、細かい作業が出来るように生地は薄いが素材に特殊弾を使用している為、防弾性防刃性ともに最高クラス。
第四部 誰のサイドケースから見たい?
-
キリト
-
アスナ
-
クライン
-
エギル
-
シリカ
-
リズ
-
リーファ
-
シノン
-
ユウキ