ソードアート・オンライン フェイタルバレットー切札の弾丸ー   作:トライダー

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 死の銃痕

 

 

 

 

 

 

 

 

 リョウたちがピトフーイたちと出会っていた丁度その頃……

 

「薄塩タラコさんありがとうございました! それでは次のコーナーです!」

 

 白く開けた部屋の中に六人のプレイヤーが椅子に座っている。

 一人はMC、そして他の五人は全員前回のBOBで結果を残したトッププレイヤー達だ。

 その中にはバザルトジョーとイツキの姿も見える。

 

「ったく、いつまで続くんだよ……」

 

「まぁまぁバザルトくん、もうすぐ終わるさ」

 

 それはGGOの中でも人気の番組MMOストリーム(通称Mステ)による『今日の勝ち組さん』と言うBOBで上位に入ったプレイヤー達を集めてのトーク番組である。

 こう言った会合が苦手なバザルトジョーは悪態付き、それをイツキが宥めていると一人の派手な格好をしたMCプレイヤーがどんどん進行させて行く。

 

「では視聴者からの質問です! えーと『ズバリ今注目していプレイヤーは誰ですか』という事です〜。ではBOB3位の薄塩タラコさんは現在目を付けているプレイヤーは居ますか?」

 

「そうですね、やはり自分は『ツェリスカ』ですかね。前にフィールドで彼女と遭遇しましてね、昔戦った時よりもずっと強くなっていましたよ。もし彼女がBOBに出場していたなら結果は変わっていたでしょう」

 

「なるほど〜確かにあの《無冠の女王》の実力は注目ですよね〜。そう言えば闇風さんは昔チームを組んでいたそうですが?」

 

「ええまぁ、ほんの一ヶ月ほどですがね」

 

「と言う事はやはり闇風さんもツェリスカさん推しですか?」

 

「いえ、私としてはやはり『クレハ』と言うプレイヤーを推しますかね」

 

「おー! 最近闇風さんが絶賛していると噂の《紅い稲妻》ですね?」

 

「ええ彼女の動きにまだ粗は多いですが、それが寧ろ伸び代を感じさせます。それに結果こそ13位とトップ10入りは逃しましたが、もし彼女が万全の状態なら私としても危なかった。次のBOBではより上位に組み込むと思われます」

 

「成程!それは注目ですね〜。それでは今大会4位に入賞したイツキさんは如何でしょうか? 確かお二人と交流がありましたよね?」

 

「ボクかい? そうだね……ボクとしては彼女達よりも、彼女達のリーダーである彼を推すかな」

 

「オレも同感だな。アイツがBOBに出てたら優勝を掻っ攫ってたかもな! あっはっはっはっ!!」

 

「はははっ、それは言い過ぎじゃないかい? でも少なくともここに居る誰かは居なくなっていたかも知れないね」

 

「おお! 最近評判の《道化師》ですね? 確か今回のBOBでは未出場でしたが、お三方はどう思われますか?」

 

「そうですね。彼の情報は少なく実力は未知数ですが、先程話に出た二人を率いている以上実力者であるのは間違いないでしょう。私としても戦うのが楽しみなプレイヤーでもあります」

 

「自分も闇風と同感ですね。彼がどう言う人物かは分かりませんがあの無冠の女王がスコードローンに入ったんです。実力以上に人を惹きつける何かがあるのかも知れませんね」

 

 

 

 

 

 

 

 

「おおっ! 流石はわたしのマスターなのです! 時の人という奴なのです!」

 

「うふふっ良かったわねレイちゃん」

 

「マスターも上位二人に認められてるんですから流石です」

 

「ありがとうデイジーちゃん」

 

 ホームへやって来たツェリスカ達と一緒にテレビを見ているアイとアルゴ。

 内容が《R・A探偵事務所》の面々の内容へと変わっていき得意げにするアイとデイジーも落ち着いては居るがマスターを褒められて嬉しそうだ。

 

『ナンセンスだね』

 

 しかしその楽しそうな雰囲気は一人の男の声でかき消される。

 

 

 

 

 

 それはスタジオの方も同様、プレイヤー達について熱く話し合っていた男達の声はその一言に静まり返る。

 

「えっと……ゼクシードさん? 何か気に触ることがありましたか?」

 

「大ありさ、注目のプレイヤー? そんなのは第三回BOB優勝者の僕以外に考えられないじゃ無いか……それなのに一向に話題が出ない。僕としてはこの場にいる上位五人だけは認めていたのだけどね。まさかここまで見る目がないとはトッププレイヤーの名も落ちたものだね」

 

 サングラスを掛けた青髪のプレイヤーが髪をかき上げオーバーリアクションで肩をすくめている。

 

「はぁ、始まったか……」

 

「…………チッ」

 

 その姿を見たジョー達はまたかとでも言うような呆れ顔を見せ、イツキに関しては聞こえないように舌打ちまでしている。

 スタジオの壁には彼を中傷するようなコメントが怒涛の勢いで流れ出す。

 

「はぁ、ゼクシードさん今は隠れた実力プレイヤーの話をしているんです。優勝者や入賞者の話をしてるんじゃない」

 

「それがナンセンスだと言ってるんですよ闇風さん。BOB本選に出場していない時点で底辺プレイヤーなんです。隠れた名プレイヤー? そんなもの居ません、ならば入賞者トップ10を話題に出すのが常識でしょうに!」

 

 その中で闇風が代表としてゼクシードを抑えようとするが、冗長してしている彼は聞く耳を持たず一人で話を進める。

 

「百歩譲って決勝に進出したクレハは良しとしましょう。でも予選にすら姿を現さないツェリスカや、ましてや《道化師》如きが注目など考えられませんね……」

 

「如き……だと?」

 

 身内を貶され流石のジョーも苛立ちを見せる。

 

「彼はただ運が良いだけのプレイヤー。運良くアファシスを手に入れ運良く大型スコードローンと同盟になり、運良くランキングを上げているそれだけのプレイヤー。これまではうまくいったかも知れませんが、どうせ長く持ちませんよ」

 

「そうかな? 少なくともボクやバザルトくん、そしてツェリスカくんは彼の実力を認めて同盟を組んでいるんだ。運だけなんてボク達にも失礼じゃないかな?」

 

 いい加減耳障りだと言わんがばかりにイツキが噛みつくが、ザクシードの耳には入らない。

 

「はははっ! 君たちの考えは分かってるつもりだよ?」

 

「考え?」

 

「おおかた目的はアファシスだろ? その内アファシス関係の大型イベントがあるって噂だからね。彼と一緒に居れば美味しい思いが出来ると考えたんだろ? 運だけは良いからね彼は」

 

「なっ!? んだとぉっ!!」

 

 怒りを露わにしたジョーが立ち上がろうとするのをイツキが抑える、そんな二人を無視しながらゼクシードは長々と語り続ける。

 

「ツェリスカに関してもそうさ美味しい思いをしたいだけ。それか彼女も女と言う事さ、男にうつつを抜かすなんて《無冠の女王》も落ちたものだね。それとも運良く彼女を落とした道化師の手腕かな?」

 

「あいつのこと何も知らねぇ癖に偉そうなことを……!!」

 

「ではバザルト・ジョー、何故道化師はBOBに出場しなかったのかな?」

 

「GGOにいる全員が暇人じゃないんだ、リアルの用事と重なって出場出来ない者も居るんじゃないかい?」

 

 熱くなりそうなジョーを抑えながらイツキが皮肉混じりに言う。

 しかしザクシードはそれでは止まらない。

 

「リアル? ははっ! その時点でナンセンスだよイツキ。僕達はGGOに全てを捧げている! だからこそ上り詰められるんだ、リアルを優先している時点でたかが知れているよ」

 

「ま、まぁまぁ! で、ではゼクシードさんは何故彼が参加しなかったと?」

 

「僕が思うに運だけのプレイヤーだと周りに晒したく無かったのだろう。BOBは正面からの実力のぶつけ合いだ、そこに運の入り込む余地なんて無いからね」

 

 ヒートアップしそうになった場をMCが無理矢理話題を切り替えた事で口論は打ち切られる。

 MCのお世辞にゼクシードは気を良くし、他のメンバーを無視してインタビューをしている。

 そこに他のプレイヤーが入る余地は無かった。

 

 

 

 

 

 

 

「な、何ですか! この人はー!!」

 

「失礼な人です。マスターやリョウさんにあんなに酷いことを……」

 

 テレビの前でその様子を見ていたアイとデイジーは、愛するマスターをこき下ろされ怒り浸透している。

 

「もともと言葉を選ばないプレイヤーだったけどBOBで優勝してからどんどん酷くなってるわね〜」

 

「おおかた自分の策が上手くいって気が大きくなってるんだろうネ。情報屋として気持ちは分からなくないが、過剰な情報を流すのは気に入らないネ」

 

 ゼクシードが流したAGI型最強理論、それによりAGI型が急上昇する。

 しかしゲームとは常にバランスが求められるものBOBの直前に運営からのバランス調整により対AGI型に優秀なレア武器が実装された事でAGI型は一気に産廃と化した、それこそがザクシードの策略。

 それによりBOBは大荒、しかも当の本人がAGIに降らずレア銃を担いで優勝候補の闇風を撃退。

 その上情報を流しまくったゼクシードがAGI型を批判、GGO内はブーイングの嵐となった。

 

「しかし何でお兄さん達は前のBOBに出場しなかったんだい? オイラとしても優勝候補だと思っていたんだけどネ」

 

「し、仕方ないのです!マスターとツェリスカにはリアルの仕事がありますから……」

 

「まぁ出場しなかった事で今二人はダークホース的な存在になってるのサ、あのゼクシードを倒せるプレイヤーかもってサ」

 

「それが気に入らないのでしょうね〜。自分だってレア武器のお陰で勝てた癖にリョウの悪口ばっかり。こうはなりたく無いものね〜」

 

 ツェリスカの予測ではプレイヤーとしての実力は闇風の方が上、ゼクシードが勝てたのはあくまでレア銃のスキルのお陰だろう。

 自分のことを棚にあげ未だにリョウについて辛辣なコメントを述べているゼクシードを冷ややかな視線で見つめる。

 

 

 

 

 

 

 

「これまでは確かにアジをガンガン上げて強力な実弾火器を連射するのが最強のスタイルでした。でもMMOというのは刻々とバランスが……」

 

「はぁ、いつまであの野郎の演説を聞かなきゃいけないんだよ……」

 

 残りの他のプレイヤーを放ったらかしにし延々と理論を語っているザクシードに、プレイヤー達だけでなくMCも疲れた表情を見せる。

 

「流石に堪えるね……彼の自慢話や育成論を毎週聞かされるんだから」

 

「まったくだ、今週で終わりにしてほしいぜ。闇風の奴面倒くさそうにこっち見てるぜ助け舟出してやるか?」

 

「飛び火はゴメンだよ、それに…………うん?」

 

「あん? どうしたイツキ?」

 

 面倒そうにしていたイツキが、一転し真剣な表情でゼクシードの方を見ている。

 

「様子がおかしい……」

 

「え?」

 

 その言葉に反応しジョーもゼクシードの方を見る。

 すると先程まで大きな態度で椅子に座っていた彼が体を押さえ丸くなっている。

 

「ぐ……か………はぁ……っ」

 

「お、おい……大丈夫か?」

 

 そうしてたかと思うと急に立ち上がると天井を見上げ今にも死にそうな表情で手を伸ばす。

 助けを求めるかのように手を伸ばすゼクシードが心配になったジョーが近づこうとするが、彼が触れるより早くログアウトしてしまう。

 流石の異質さに背後のコメントの流れが加速する。心配している者ふざけてるだけだと思っている者など様々であった。

 

「あ、あらあら? ログアウトしてしまったようです。あ、もうお時間ですね〜丁度いいので今日はここまで! それでは皆さんまた見てくださいね〜♪」

 

 事情を聞こうとしたジョーとイツキ出会ったが生放送であるこの番組は終了してしまい、謎のまま終わってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

       ⭐︎

 

 

 

 

 

 

「あー!ムカつくっ!!」

 

「ムカつくのです!!」  

 

 肉を頬張りながらテーブルを叩くジョーとそれを真似するアイ。

 

「オッサン飯食いに来といて机叩くなよ、アイもマネすんな」

 

「あいたっ!」

 

 行儀の悪いアイを軽くデコピンをして叱る。

 

「もう! レイちゃんが真似するじゃない行儀の悪い事を教えないで!」

 

「わ、悪いクレハちゃん……でもよぉお前だって分かるだろ?」

 

 そう言うクレハも渋い顔を見せている、ホームへ帰ってきて先程のMストの話を聞いたがやはり気持ちいいものではない。

 

「まぁ確かに酷い話ですよね、リョウや皆んなの事を散々にこき下ろしてしかもテレビの前でなんて」

 

「それだけ焦っているんだろうね。恐らく次のBOBでゼクシードは上位にも入らないだろう。しかもリョウくんとツェリスカくんはAGI型じゃ無い上に実力は未知数、見えない敵に怯えている状態なのさ」

 

「気持ちは分からなくも無いですけど、だからって卑怯じゃ無いですか! こっちが言い返せない状態で……」

 

「まぁまぁクレハ姉さん、前科もあってゼクシードの言う事を信じるプレイヤーなんて殆どいないヨ。寧ろ2人は希望の星サ!」

 

 アルゴの言う通りゼクシードの1人演説中もコメントは彼への非難轟々ばかり同意しているコメントは殆どない。

 寧ろ彼の好感度が低い分それを倒せる可能性の高い2人の好感度は異様に高くなっている。

 

「つか、リョウは悔しく無いのかよ! あんだけ言われ放題で!」

 

「別に〜」

 

「いや別にじゃ無くて……男としてこう……許せねぇ! とか、次のBOBでコテンパンに……とかよぉ」

 

「BOBにもゼクシードにも興味ねぇよ。ま、そんな番組で持ち上げられるような実力じゃ無いのも事実だしな」

 

「そんな事無いのですー!! マスターはもっと強くて優しくてカッコいいのです! それなのに〜〜〜!!!」

 

「どうどう」

 

 ブンブンと腕を回し怒りを表現するアイをリョウ本人が宥める。

 話を聞いてもリョウやツェリスカは特に気にした様子は無く、寧ろクレハやアイや普段怒らないデイジーなどが代わりに怒っているぐらいだ。

 

「言いたい人には言わせておけばいいのよ」

 

「ですがマスター……わたしも悔しいです、お二人は凄い人なのに何も知らない人にいいように言われて……」

 

「ありがとうデイジーちゃん、でも良いのよ」

 

「そうそうデイジーちゃんやアイ達みたいな、分かって欲しい人に分かってもらえてればそれで十分さ」

 

 リョウとツェリスカは互いのアファシスの頭を撫で落ち着かせる。興奮しているアイと拳を握りしめ悔しがっているデイジーは少しリラックスしたようだ。

 

「ふふっ、それにわたしが男にうつつを抜かしてるのは半分ぐらいは合ってるもの……ね、リョウ?」

 

「え? お、おう! うへへへ〜……って痛い痛い! クレハ脛を蹴るな!!」

 

 身を寄せ肩に頭を乗せるツェリスカにリョウは鼻の下を伸ばす。そんな彼の脛を誰かが蹴る、テーブルのせいで見えていないが不機嫌そうな目つきのまま無言でリョウを睨んでいるのですぐに犯人がわかる。

 

「にゃははは! 〜やっぱりお兄さん達は面白いネ♪ そうだ!オイラをお兄さんの仲間に入れてヨ」

 

「それってウチの事務所に入るって事か?」

 

「そう言う事、情報屋としての仕事もあるからあまり顔は出せないけどどうかな?」

 

「ああ構わないぜ、よし!新しい仲間も出来たことだし今日は楽しもうぜっ!!」

 

 リョウとしても探偵業をしてる以上信頼できる情報屋とは良い関係でいたかった。

 リョウの掛け声に全員が一斉に盛り上がり夜遅くまで楽しんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

        ⭐︎

 

 

 

 

 

 

「シッ!シッ!シッ!!」

 

 翌日俺は近所のバッティングセンターへと来ていた、昨日遅くまで騒いでいたおかげでまだ少し眠たいが軽くシャドーをして眠気を無くす。

 

「お待たせリョウちゃん、準備出来たよ」

 

「サンキューおっちゃん! さっそく始めてよ」

 

「あいよ〜気を付けてね」

 

 バッティングセンターの店長に許可を貰い軽く屈伸するとホームを跨ぐように仁王立ちで立つ。

 コインを入れると数秒して白球が凄まじい速度で飛んでくる、俺は顔を少し逸らす事でボールを回避する。

 一発避けただけでは安心出来ない、落ち着く間も無く次の球が飛んでくる、顔だけで無く腕足胴身体全体をバラバラに襲い掛かる。

 

「3!……5!……8!」

 

 ランダムに飛んでくる白球を最小限の動きで避けながら数字を呟く、向かって来る球だけではなく壁に当たり反射する球も避ける。

 

「いや〜しかしこうしてリョウちゃんが特訓してるのを見るのは久しぶりだね〜」

 

「まぁ……2!ね、ちょっと初心を……9!、思い出そうと思ってね……6!」

 

 これは昔俺が弟子入りした時一番最初にした基礎訓練だ、向かって来る150キロのスピードボールを避けながらボールに描かれている数字を見分けると言うものだ。

 書いてある数字は1〜10それがランダムに30球飛んでくる。

 

「10っ!!」

 

 最後のボールを右手で受け止め数字を見てみると黒い字で10と書かれていた。

 

「おー! 全部正解だよ、流石リョウちゃんだ」

 

「へへっ! まぁな!」

 

 この程度ならお手の物、これは一番簡単な訓練それでも最初は見切れずプロテクターやゴーグルを付けてボコボコにされたものだ。

 ちなみにもっと厳しくなれば5メートルの距離でボールを素手で弾き落としたり360°ピッチングマシーンに囲まれたりとやったりもする。 

 それでもバッティングセンターはまだ優しい方、一番キツかったのは山だの樹海だのに連れて行かれた時だ。あの時は流石に死ぬかと思った。

 

「でもどうして今更こんな事を?」

 

「ん?ああ……実は前に負けちゃってよ……」

 

「ええっ!!? あのリョウちゃんが氷室さん以外に?!!」

 

「そこまで驚く事じゃ無いだろ? 別に俺だって負ける時ぐらいあるさ」

 

「いやでも信じられないよ本当に相手は人間かい? 昔グリズリーを素手で殴り倒したリョウちゃんが……」

 

「話を盛り過ぎだよ!? 倒してねぇよ殴って追い返しただけだよ!」

 

「ああ、そうだったか……いや〜歳は取りたくないねぇ」

 

 師匠じゃねぇんだからそんな事出来ないっての、俺は呆れながら手に持ったボールを見る。

 

(10……ジョーカー……か……)

 

 前日のスカルとの戦いを思い出す。

 奴は強かった……銃の腕前も格闘の実力も圧倒的だった、それに俺の予想だがあいつはまだ本気を出していないだろう。

 今のままじゃ勝てない、一から鍛え直そうと思い此処にやって来たがそれだけでは足りない気がする。

 

(あいつの《スカル》の力と俺の《ジョーカー》同じエクストラスキルなのに此処まで差があるものなのか?)

 

 ジョーカーが弱いから負けたなんて言うつもりはない、でもジョーカーを発動中の打撃は全く効いてなくて渾身のカウンターも簡単に逸らされた、同じステータス強化にも関わらず実力以上の大きな差を感じる。

 第一エクストラスキルは26個もあるんだ、それだけ有るのに同じ能力が被ったりするのは何故だ。

 

(能力が被るなら25個でもいい筈だ、それなのに……いや、発想を逆転させろ、もしかしてジョーカーとスカルは()()()()()()()()()()()()()()()()なのでは?)

 

 俺は単純にジョーカーがスカルの下位互換なのかと考えたが、そもそも全く別のスキルなのでは無いかと考えた。

 

(……エクストラスキルの能力は一つじゃ無い?)

 

 思えばスカルには謎が多い、ピトフーイ達に見つからない隠密性や痛みを感じていないかのような異様に硬い防御、それがスカルの追加効果の可能性がある。

 

(ならジョーカーにもまだ隠された能力があるんじゃ……)

 

 俺がまだジョーカーを使いこなせていないだけでこのスキルにはまだまだ可能性があるのでは、そう思えば光明が見えて来た。

 

(リアルでの鍛錬、GGOでのレベル上げ、ジョーカーの能力を調べてスカルやデスの調査……やる事は多いな)

 

 これに加え仕事もある、だが俺はこの忙しさに自然と笑顔が溢れ再びコインを入れバッターボックスに立った。

 ゼクシードに何を言われようが気にしないがスカルは別だ、やられっぱなしってのは性に合わない。

 俺が負ける事でおやっさんの名を汚すのだけはごめんだしな。

 

(待ってろスカル、次は絶対に勝つ!!)

 

 

 

 

 

        ⭐︎

 

 

 

 

 

「ふぅ……そろそろ他の客が来るし行くよ」

 

「お疲れ様。またおいでよ今度はもっと難しい奴用意しとくからね」

 

「サンキューおっちゃん。それじゃ……ん?」

 

 礼を言い扉へと向かうと、ふと店長がつけたテレビのニュースに視線が行く。

 内容は一人の成人男性がVRMMOの最中に死亡したと言うものだ。

 こう言う事故は珍しく無い、仮想世界で食事をすると現実世界でも満腹感が発生しそれが原因でリアルで食事を取らず栄養失調になって病院に運ばれたり、最悪の場合死亡するケースはよくあったことだ。

 

「怖いね〜リョウちゃんも気を付けないといけないよ。最近VRゲームやってるならさ」

 

「俺は大丈夫だよ、優秀なAIがついてるし紅葉たちもいるしな」

 

 そう言うと俺はバッティングセンターを後にした。

 アファシスの健康管理システムのおかげでその面については問題ない。寧ろ紅葉や翠子がお隣さんになってからは一緒に食事する機会も多く健康になったぐらいだ。

 

(しかし妙だな、ナーブギアの頃ならともかくアミュスフィアに変わってからこう言う事故は殆どなくなったった筈……)

 

 アミュスフィアはナーブギアよりもプレイヤーの健康を厳しく測定する。それにVRゲームが出てから既に数年経っており、昔ならともかく今時こんな事故は珍しいものだ。

 

(まぁ使い過ぎで健康測定が壊れた可能性もあるか……)

 

 俺は少し不審に思いながらも事務所へと帰って行った。

 

 

 

 

 

《本日自宅にて茂村保さん26歳が自宅にて死亡しているのが発見されました。自宅には鍵が掛かっており、早朝友人が合鍵で開け迎えに行ったところ発見し頭部にアミュスフィアを着けていた所から栄養失調による事故と……》

 

 

 

『我が名はデス・ガン、死の銃痕は刻まれた……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

⭐︎

第四部 誰のサイドケースから見たい?

  • キリト
  • アスナ
  • クライン
  • エギル
  • シリカ
  • リズ
  • リーファ
  • シノン
  • ユウキ
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