ソードアート・オンライン フェイタルバレットー切札の弾丸ー 作:トライダー
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「うし、今日は余裕だな」
立ち合わせ場所に時間よりも十分以上早く到着する。
前に遅刻してしまいシノンを怒らせてしまったし、流石に今日遅刻するわけにはいかない。
「やぁ初めまして」
「ん?」
アイとシノンが来るのを待っていると長い白髪のプレイヤーが話しかけてくる。
「僕は『シュピーゲル』、君が道化師だよね?」
「んな名前しらねぇよ、俺はリョウだ」
少し警戒を強くする。
シュピーゲルと名乗った男は一見笑顔のように見えるが目が笑っていない、しかもその視線からはドス黒い感情を感じさせているからだ。
「道化師君って随分と運が良いみたいだね?」
「まぁな」
嫌みったらしい言い方に対し短く返す。
するとその視線がより鋭いものへと変わる、その目からは憎しみのようなものを感じる。
「チッ、お前のような奴が居るから僕が……その上朝田さんまで……」
小さな声でそう呟いているが聞こえる。
普通なら聞き逃してしまうぐらい小さい声だったが、普段から探偵業で聞き耳を得意とする俺の耳にはハッキリと聞き取れた。
「気をつけた方が良いよ、デスガンは君のような運が良いだけのプレイヤーが大嫌いだからね……」
「何?、おい!」
聞き逃さない名前を出され、何かを言い返す間もなくシュピーゲルは走り去ってしまう。
(何なんだ?あいつ……しかし『朝田』か、世間は狭いものだな)
前に喫茶店でオッサンと話して居たときに二人の会話は聞こえていた、その時から想定していたがどうやらシノンはあの時助けたお嬢ちゃんのようだ。
そしてあのシュピーゲルと言うプレイヤーは恐らく新川という少年だろう、声のトーンがまったく同じだったからだ。
(だがあの時とは様子が違ったな……それにデスガンの話、少し警戒した方が良さそうだな)
考えを巡らせ気を引き締める。
シノンたちがやって来たのはそれから数分後だった。
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「おっと!」
足元に有る岩を踏み台にし、回転しながら向かって来るバレットラインを避け弾丸を回避する。
リョウは逆さまのその体制から銃を構えるプレイヤーの頭部目掛けてマグナム弾を3発放つ。
急所である眉間を撃ち抜かれた3人のプレイヤーは一瞬にして消滅する。
「くそぉっ!」
仲間をやられた敵プレイヤーの1人がリョウへと銃口を向ける。
リョウは空いた左腕にUFGを取り出すとボウガンモードへ切り替え、その男の手元へと光の矢を放つ。
「ぐぅ……ぐえっ!?」
銃を弾かれ腕を押さえる男の首へとウィップモードに切り替えたUFGを括り付け、自分の方へと引っ張る。
「うぉらっ!」
光剣を取り出し引き寄せた男の胴体を突き刺す、そのまま斬り上げる、紫の刃が敵プレイヤーの体を二つに切り裂いた。
「「うおぉぉぉっ!!」」
側面から二人のプレイヤーが挟み撃ちの形で此方へと向かって来る。
その手には光剣、装備と速さから見てもAGI型だと察する。
リョウは光剣を両光剣へと切り替え、その2つの斬撃を受け止める。
4色の光の刃がぶつかり合う。
リョウは2人の素早い太刀筋を両光剣を巧みに扱い捌いていく。
「おらっ!うぉらっ!」
向かって来る突きを受け流すと体制の崩れたその背中を蹴り飛ばし、もう1人の斬撃をパリィで弾き、ガラ空きの胴体へと後ろ蹴りを放つ。
「ぐ……アレをやるぞ!」
「分かった!」
蹴り飛ばされた2人は縦一列となって此方へと向かって来る。
統率の取れたその動きにリョウは警戒を強める。
すると後ろの男がその背を踏み台にして高く飛び上がり全体重を乗せ剣を振り下ろそうとし、手前の男がそのまま剣を突き出し突撃してくる。
「「うおぉぉぉっ!!!」」
上空と地上からの時間差攻撃、普通なら驚くだろうがリョウは至って冷静に対処する。
「そらっ!」
両光剣の接続を外すと片方を飛び上がった男へと投げ付ける、投げられた光剣は赤い円を描きながら男の脇腹に減り込む。
光剣の突き刺さった男は勢いを無くし墜落した。
「兄弟!」
「よそ見してんなよ」
気を取られた隙をつきウィップモードのUFGを振るい男の顔をはたく。
「おらっ!」
その衝撃に足を止め顔を押さえる男の首へと光剣を振るう、横薙ぎの青い一閃が一瞬にしてプレイヤーのHPを削り取った。
そんなリョウを狙い背後から別の敵プレイヤーがスコープを覗きライフルを構える、カーソルを合わせて引き金を引こうとした瞬間リョウは身を屈めた。
その瞬間リョウを狙っていたプレイヤーの頭部が吹き飛ぶ。
「おいシノン、いまちょっと危なかったぞ?」
《そう? あんたが射線上に立つからでしょ?》
「いや、言ってくれればどくっての! 何で何も言わないで撃つの?! 凄え心臓に悪いんだからな!」
《はいはい、それよりも向こうから大物が来てるわよ》
「え?」
シノンにそう言われて彼女の視線の先を見る、すると砂煙を立ち上げながら巨大な影がリョウと相手プレイヤー達の戦闘区域へと向かってくる。
「うわあぁぁっ!!《アビスガイド》だ!」
やって来たのは頭部に牛のような角を付けた巨大な爬虫類型のモンスター《アビスガイド》。
その凶暴性と適正レベル詐欺とまで言われる程の強さによって一部のプレイヤー達からは嫌われているネームドエネミーだ。
「逃げろ……うわぁっ!!」
「ぐわぁぁぁ!!!」
その姿を見た瞬間何人ものプレイヤーが逃げようとするが、その姿が寧ろアビスガイドを刺激してしまう。
その強固な角を地面へ添わし、ブルドーザーのように砂をかき上げながら突進してくる。
ショベルが砂を捨てるように振り上げられたプレイヤー達はたちまちに消滅する。
「噂どおりの強さだな、まぁ手間が省けて良かったけどよ」
《呑気な事言ってる場合じゃ無いわよ。他の敵プレイヤーは全滅したわ、残りは私たちだけよ?》
「分かってるよ、いつも通り俺が囮になる。シノンは援護、アイはスピードのバフを頼む」
《了解よ》
《了解です!》
『ウオォォォォォッ!!!』
周りのプレイヤーを倒したアビスガイドは近くにいるリョウへと視線を向ける。
アビスガイドは先程同様、角で地面を削りながらリョウへと突進を開始する。
アイからのスピード上昇のバフを受けたリョウは懐からデジカメを取り出す。
「頼むぜバットちゃん!」
リョウがスイッチを押すとデジカメがコウモリを模した小型のドローンと変形し空中を漂う。
「よっと!」
リョウは空中で停止しているとドローンとUFGを放ち、真上へと上昇するとアビスガイドの突進を回避する。
『ウオォォォォォッ!!!』
己の渾身の突進を避けられイラついたのか、振り返ったアビスガイドは丸太のような太い両腕を振るう。
威力の有る一撃、しかし動きは単純、その大振りの動きを予測して体をずらす。
凄まじい風圧と共に地面が抉られるが大振りの上、アイによる素早さな上昇とUFGによる立体起動による身軽さに掠りすらしない。
そんな中、アビスガイドの腕へとシノンのヘカートによる狙撃が放たれた。
いくら剛腕のモンスターであれど対物ライフルの衝撃には流石に怯まずにはいられない。
その隙を見逃さず両光剣を構え、アビスガイドへと向かって行く。
《ヒート弾》
「お熱いの食らわしてやる!」
ヒート弾を差し込んだ両光剣の二つの刃が炎に包まれる。
リョウは炎を纏った両光剣を手に持ち、円を描くように回転しその遠心力のまま上段から振り下ろした。
激しい火花と共に紅蓮の刃が強固な右の角を切り落とす。
『ウォォォッ!?』
「どんどん行くぜっ!!」
そのままアビスガイドの攻撃を避けながら連続で斬りつける、片角を失った影響か体力の減りが大きくなっている。
もがくように両腕を振り回すアビスガイドから距離を取る、すると彼の後方からシノンのヘカートとアイのEMPランチャーによる援護射撃がアビスガイドを襲う。
その爆発に大きな黒煙が立ち上った。
しかしアビスガイドはまだ消滅していない。
「え………」
黒煙の中から一本のバレットラインがシノンへと伸びる、その後煙を突き破り火球が彼女へ向かって飛んでくる。
「しま……ぐっ、きゃぁ!?」
アビスガイドによる遠距離攻撃だ、黒煙により姿が隠れていたせいで一瞬判断が遅れた。
急いで立ち上がり逃げようとする、なんとか直撃を避けるが爆発に巻き込まれ大ダメージを受けてしまう。
《シノン大丈夫ですか?! 今回復を!》
アイが回復弾をシノンへ向けるが間に合わない、既にアビスガイドは第二波をシノンへと放っていた。
「くっ……」
人1人を覆う巨大な火球が再びシノンを覆い尽くそうとしている。
「させるかよっ!」
「っ! リョウ!?」
しかしUFGを使いシノンの元へとたどり着いたリョウが彼女を守るように火球との間に立ち塞がる。
《サイクロン弾》
「《フォトン・ツイスター》!」
サイクロン弾を両光剣に差し込み両光剣の刃に風を纏わせると風車のように回転させその纏った風で炎を吹き飛ばした。
「うちのお姫様に傷を付けるんじゃねぇよ」
両光剣を振るい炎を完全に振り払う。
「大丈夫かシノン?」
「え、ええ……」
「よし、アイに回復して貰ったら直ぐに攻撃に移ってくれ」
シノンの無事を確かめたリョウは再びアビスガイドへと向かって行く。
『ウオォォォォォッ!!!』
「メタル
アビスガイドがリョウへと突っ込んでくる。
その突進をギリギリまで引きつけるとUFGを使い闘牛士のように躱し、それと同時にメタル弾を撃ち込む。
硬く重い鋼鉄の弾丸がこめかみに直撃しアビスガイドは僅かに怯んだ。
「今だ!」
合図を出すと大口径のライフル弾がリョウの横を通過し射線上に居たモンスターの左足の一部吹き飛ばす。
バランスを失ったアビスガイドはその勢いのまま凄まじい勢いで倒れ込んだ。
「シノンは強固な角を狙ってくれ、残りは俺たちがやる。アイ、攻撃のバフを頼む、それと……」
「はい!ロックオン出来てます!」
《了解よ》
アイに攻撃力上昇のバフをかけて貰った後、コルトパイソンに青と黄色の弾丸を込め素早く全弾丸を放つ。
狙いをつける必要はない、それは既にアイが終わらせている。
《ルナ弾》
《トリガー弾》
「《トリガー・フルバースト》!」
リョウが放つとシノンが居る地点からも銃声が聞こえる、黄色い15発の弾と1発のライフル弾が残ったアビスガイドの部位を全て破壊し尽した。
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「お疲れ様なのです!」
強力なネームドエネミーを撃破した俺たちは、バイクを走らせグロッケンへと帰宅する。
今回の戦利品を整理しているとシノンが此方へと近づいてくる。
「あ、リョウ。さっきは助かったわ」
「ん? 何が?」
「モンスターの攻撃から守ってくれたでしょ?だからお礼言っておこうと思って……ありがとう」
「お!シノンちゃんついにデレた? お礼ならほっぺにチューで良いぞ?」
「調子に乗らない!」
「あ痛てっ!」
珍しく素直にお礼を言うシノンを少しからかってやると、シノンにおでこを軽くはたかれる。
「言っとくけど私はこの前の事まだ許して無いのよ?」
ジトーとした目で俺の方を見る。
この前の事と言うのは数日前菊岡さんの依頼を受けて約束を忘れて大遅刻をしたあの日、そのお詫びとして俺は『一週間彼女のわがままに付き合う』事になった。
「この後も付き合ってもらうわよ?」
「わかってるよ。今日はどこに行くんだ?」
「そうね、前のスコードローンで良いガンショップを教えてもらったからそこに行こうかしら?」
「はいはい、お付き合いしますよお姫様。アイも行くぞ」
「はいなのです!」
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前回ギンロウさんに教えて貰ったガンショップでもショッピングを楽しんだ後、私たちは近くにあったオープンテラスのカフェで軽く今日の反省会をしながら一服。
反省会を終えた後は世間話へと変わる。
「………そうなの、クレハは次のBOBに出れないのね」
「ああ、ここ最近まともにログイン出来てないみたいでよ。調整も出来てないし今回は見送るそうだ」
「そう、リベンジしたかったのに残念ね……ゼクシードや薄塩タラコも最近ログインしてないみたいだし、今回はレベルが低そうね」
前大会トップ3の内二人が出場しないという噂、その上目標であった彼女も出ないとなるとどうしてもモチベーションは下がってしまう。
「別に優勝目指してるなら好都合じゃね?」
「馬鹿な事言わないで。強い人を倒さないと意味無いわ。どこかの誰かさんが出てくれれば少しは面白くなりそうなのに……ねぇ?」
「どこかの誰かさんも忙しいからな〜。まぁ優勝目指して頑張れや、応援には行ってやるよ」
「ふん、言われなくてもそのつもりよ」
遠回しに出場しろと視線を送るがのらりくらりと躱される。
まぁ、嘆いていても仕方がない。
居ないと言うのなら何としても優勝しなくてはならない、ゼクシードと薄塩タラコが居ないのなら一番の目標は闇風だ。
もともとスナイパー型の私にとっては最強のAGI型である彼が一番の天敵、他の3人を無視して対策を練れるなら好都合。
「ならBOBまでの残りの数日、訓練に付き合ってもらうわよ?」
「えーまたアレやるのか〜?」
BOBは基本的に一対一の正面からの戦いになる、つまりどんな事が起きるか分からないのだ、それはスナイパーにとっては鬼門になる。
オールラウンダーでありUFGで機動力の高いリョウはそう言う意味では最高の練習台だ。
この数日間彼に付き合って貰い、BOBを対策とした訓練を行なっている。
「お前の狙撃避けるの毎回心臓に悪いんだからな?」
「掠りすらしない癖によく言うわよ。とにかく明日の6時からよ、良いわね?」
「へーい」
恥ずかしい話だが私はまだ一発も彼に当てたことがない、ある意味優勝以上の目標かも知れない。
「……ん?あれは!…… 悪い、少し先を外すな。直ぐに戻ってくるからアイもここで待っててくれ」
不意にリョウが立ち上がり上の階を見上げる、その勢いに彼が座っていた椅子を後ろに倒れるが、気にせず店を出て走り出して行った。
「どうしたのでしょうか?」
「ふん、どうせ女の子でも見つけたんじゃ無いの? まったくあの男と一緒に居ると疲れるわ」
「そうですか? でも最近のシノンはとても楽しそうなのです」
「……え? 楽しそう?私が?」
「はい!初めて会った時はとてもピリピリしていたので心配してたのです」
確かにレイちゃんの言う通り、あの時の私はヘカートを手に入れたばかりで周りが全て敵に見えていたぐらいだ。
ヘカートを手に入れた後も強くなる事や相手を殺す事しか考えて居なかった。
「……でも確かに最近はGGOが楽しくなってるわね」
スコードローンを渡り歩いている時も基本的にソロとそんなに変わらなかった。
でも
「そう言うレイちゃんはいつも楽しそうね」
「はい! 大好きなマスターと一緒に居られますから!」
「本当にリョウの事が好きなのね」
「はい!シノンもそうですよね?」
「はぁっ?!」
自分でも驚くぐらい間抜けな声が出てしまう。
「いやいやいや! 無いから、誰があんなバカを……」
「そうですか?でもマスターと一緒に居る時のシノンはとても楽しそうなのですよ?」
「う……」
言葉に詰まってしまう、正直言ってリョウの事は嫌いじゃない。
小馬鹿にして来ることもあるが此処ぞと言うときは助けてくれるし、頼りにもなるし何だかんだ言いながらも私の我儘にも付き合ってくれる。
そして何より彼の側は凄く落ち着く。
不思議な事に彼とフィールドに出るようになってから悪夢を見る回数が著しく減った。
彼と話していると自然と心が温まるのを感じる、まるで氷が溶けるように……
「勿論! シノンの事も大好きですよ!」
「ええっ!?」
「マスターもシノンもクレハもツェリスカも、皆んなが大好きなのです!」
「ああ、そう言う意味……」
考えてみればレイちゃんはまだ好きと言う気持ちが分かっても愛や恋なんかと言う感情は分からなかった。
深く考えすぎた自分を恥ずかしく思う。
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店を抜け出しグロッケンの道を走り抜ける。
(あの気配、そしてあの影は間違いない……)
先程シノンたちと話している時に視線を感じた。
ふと上の階を見上げると見覚えのあるスーツと帽子、そして何より特徴的な骸骨の仮面を付けた男が目に入った。
間違いない、あれはスカルだ。
「そらっ!」
UFGを使い上のフロアへと向かう。
辺りを見回すとその男が路地裏へと入って行くのが見える、俺は人混みをかき分けながら同じように路地裏へと入って行った。
「くそっ! どこに行った?………」
追いかけたは良いもののそこは壁に囲まれた行き止まり、目的のその影の存在は無い。
直ぐに気配を探るがやはりあの男が相手だと気配を感じない。
『トオッ!』
「!?、くぅっ!」
背後から風を薙ぐ気配を感じ、振り向くと同時に顔の横で腕を十字に組み蹴りをガードする。
ずっしりと重い衝撃が腕を伝わる。
『ほぉ、動きが良くなったな小僧』
「そう何度もやられるかよ!」
その声、この見た目、そしてこの重い一撃、この男がこの前のスカルだと嫌でも体が覚えている。
「そらっ!」
ハイキックの体制のスカルの左脚へ足払いを放つがジャンプして回避される。
「うぉらぁっ!」
しかしそれは読んでいた。
俺を飛び越え背後に立ったスカルへと、振り向きざまの右ストレートをお見舞いする。
『トォッ!』
だがそれは
鈍い音と共に互いの拳が衝突する。
スカルの鋭い正拳突きに右腕が痺れる、以前の俺なら押し負けていたかも知れないが、あれから数週間遊んでいた訳ではない。
あの敗北の後の特訓が功を奏していた。
だが決して喜べる状況では無い。
拳の衝突の後、すぐさま互いに距離を取る。
「おい、手加減のつもりか?」
そう、スカルはまだエクストラスキルを発動していない。
いくら技術で追いつけてもステータス強化をされれば押し負ける、俺がジョーカーを発動してないのにも関わらず互角に戦えているのがその証拠だ。
「手を抜いて情けのつもりか? 互いに長期戦は好みじゃ無いだろ?お互い本気出してさっさと終わらせようじゃねぇか!」
正直言って空元気だった、現実での特訓やキャラクターのレベル上げは成功したが未だジョーカーの能力は分かっていない。
ここまでが互角である以上、スキルを使った勝負では勝ち目は無いだろう。
……だが何故かこの男には手を抜いて欲しくない、負けると分かっていてもそれ以上に手を抜かれる事が嫌だった。
『止めだ』
「なんだと?」
『お前の実力は分かった、これ以上戦う意味は無い』
「どう言うつもりだ!」
構えを解いたスカル、しかし油断はせずに懐に手を伸ばし銃を取り出そうとする。
『止めておけ、
「チッ……」
奴の言う通りグロッケン内で武器を使用してもダメージにはならない、舌打ちしながら獲物をしまう。
「スカル、お前の目的は何なんだ? 何が目的で……」
『デス・ガン……奴はBOBに出場する』
「何? 何故そんなことを知っている?!」
『奴のスキルには気をつけろ。偽物に騙されるな』
「偽物? おい!どう言う意味だ!」
言いたいことだけを言って背を向けるスカルの肩へと手を伸ばそうとする。
「くっ!」
その瞬間スカルの体から紫色のオーラが竜巻のように溢れ出す。
俺はその衝撃に吹き飛ばされそうになるのを何とか堪える。
「……消えた……?」
衝撃が収まり目を開けると既にその場にスカルの姿は無かった。
「デス・ガンがBOBに……」
正体の分からないスカルからの怪しい情報、しかし俺の探偵としての勘があの言葉が嘘では無いと導き出していた。
デス・ガンがBOBに出ると言うことは正体を探る一番のチャンスだ、しかしそれには協力者であるあの少年を出場させる必要がある。
やはりあの作戦で行くしかないか……
「あ、マスター!おかえりなさいなのです!」
「お、遅かったわね……」
考えを巡らせながら元の席へ戻ると何故か分からないがシノンが顔を赤くしている。
アイと何を話して居たのか気にはなったが此処で黙っているのが紳士と言うものだ。
「なぁシノン?今度デートしないか?」
「………え?」
この作戦、彼女に頼むのが一番だろう。
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第四部 誰のサイドケースから見たい?
-
キリト
-
アスナ
-
クライン
-
エギル
-
シリカ
-
リズ
-
リーファ
-
シノン
-
ユウキ