ソードアート・オンライン フェイタルバレットー切札の弾丸ー 作:トライダー
⭐︎
眩しさについ目を閉じてしまう、数秒後に光が収まると同時に目を開けてみると。
「こ、ここは?」
今まで歩いて来た部屋とはまるで違う異質な空間へと転送されていた。
先程の部屋よりも更にSFチックになっており、まるで宇宙船の中のようだ。
そんな空間に人一人入れるぐらいの大きなカプセルが壁を覆うよう設置されている。
「中は……何も入っていないな……」
探偵としてのサガか好奇心に身を任せ中を覗いてみるがどれも空である、開ける手段も方法も分からない以上余計な事をせずただ見て回るだけにする。
「ん?……」
そうしながら歩いているとより広い空間へと辿り着く、恐らくここが最奥なのだろう他に道らしいものない行き止まりだ。
だがその一番奥に一際大きいカプセルが設置されており、リョウはその中に小さな人影を見つける。
「子ども?」
その中に入っていたのはSF映画に出てくるような白と紫色のスーツに身を包んだ一人の『白い少女』、背丈から見てもクレハよりもずっと小さく幼い容姿をしていた。
何故こんな所にいるのかわからなかった、だが頭で考えるよりも先に体が動きリョウの指先がカプセルへと触れる。
まるで引き寄せられるように
「うおっ!?」
触れた瞬間カプセルが青白い光を放ち、驚いたリョウは咄嗟に手を離しカプセルから離れる。
プシューと音を立て、白い煙を噴射しながらカプセルの蓋がゆっくりと開いた。
「ん……ぅん……」
少女の目蓋がゆっくりと開くと集点のあっていない幼い紫色の瞳がリョウを見つめる。
「あ……」
ねぼけた表情でリョウに手を伸ばし近づこうとするが脚に力が入らないのか転びそうになる。
「お、おい大丈夫か!」
思わず体が動く、彼女が何者なのか何故ここに居るのか、そんな事を考えるよりも早くを少女を抱きとめる。
「っ!?」
その瞬間背中から殺気を感じた。
少女を抱きしめたまま両足で転がるように横へとジャンプする。
先程までいた地点が爆発を起こし辺りに黒煙が立ち込める。
距離をとっても背中に爆発の衝撃が伝わってくるが、少女を庇うため抱きしめる力を強くする。
「う……くっ……、無事か?」
腕の中の少女は弱々しい瞳でコクリと頷いた。
どうやら無事のようだ、彼女に怪我がない事が分かると安心したように息を吐く。
「くそ、俺とした事が……」
驚きの連続のせいでつい大会中である事を忘れてしまっていた事を後悔しながら立ち上がる。
すると自分が来た入り口の方から二人の男の声と足音が聞こえる。
現れたのは如何にも柄の悪そうな大柄な男プレイヤーの二人組であった。
「おい、兄ちゃん。そいつを渡しな」
「そいつはオレたちのもんだ、大人しく渡したら見逃してやるぜ?」
脅すように互いの武器を構える、二人が持つ獲物の迫力に少し物怖じしてしまう。
状況は最悪だった。
今はクレハもいなく自分一人、しかもGGOのプレイヤーは初期装備で対光学兵器用のバリアーが支給されており光学兵器のダメージを殆どカットしてしまう。
つまりリョウにはまともな攻撃手段さえ無い。
(くっそ、どうする?)
少女を背中で隠しゆっくりと後ずさる。
この状況でどうするべきか思考を巡らせていると、そんなリョウの手が突然柔らかい感触で包まれる。
「え?……」
リョウのてを少女が握ったのだ。
その小さな手は小刻みに震えていた。
「いや……です……」
少女が弱々しい瞳でリョウを見上げる、その目を見た瞬間リョウの覚悟は決まった。
彼女が何者であれ助けを求められたのだ、探偵として彼女を明け渡すような選択肢は絶対に無い。
「悪いな、この子は渡せねぇよ」
「なんだオレたちとやろうってかぁ?」
「レディの笑顔を守るのはハードボイルドな男として当然だ」
キザったらしく帽子を被り直すと懐から銃を取り出す。
「かかって来なロリコン共、この子には指一本触れさせねぇ」
挑発するように二人へと光線銃を向ける、初期装備の上光学兵器を向けられても二人の男は全く物怖じしない。
「まぁ、別に構わねぇぜ。ここはGGOだ、強い奴が正義の銃の世界だからな!」
「ニュービーだからって手加減はしねぇぞ!」
ミニガンの男がスイッチを入れると、キュイーンと高い音が鳴り砲身が高速で回転し、バレットラインがリョウへと向かう。
「くっ!」
弾丸が放たれる前に少女を抱え横へと回避する、凄まじい連射音と共に先程までいた場所が蜂の巣へと変わる。
ミニガンの男は乱射しながらゆっくりとこちらへと向かってくる、対してランチャーの男は後ろへ下がり武器を構える。
(ミニガンが前衛でタンク……ランチャーが後衛で狙撃……って所か)
「逃すかよ!」
避けると同時に光弾を四発放つがやはりバリアーに防がれ殆ど効いていない、装備と戦法から見て筋力と防御系のスキルを多めに振っているのだろう。
自分を追いかけるように横薙ぎに放たれるミニガンを避けながら思考を巡らせ相手を分析する。
(もう一人の武器はロケットランチャー……ならそろそろ来るな)
リョウの推測通りにもう一人の男が砲身をこちらへと向ける。
ミニガンで相手を牽制しつつロケットランチャーを放つ作戦なのだろう。
いち早くそれを察したリョウはとある地点へと向かう。
「喰らいな」
バシュウッ、と言う音と共に放たれた。
「そいつがなッ!」
だがそれはリョウの計画通りだった、リョウはなるべく相手二人が重なる位置へと移動していた。
そしてミニガンの男の横を通り過ぎようとするロケット弾へと光弾を当てる。
「な!? があぁっ!」
至近距離での爆発がミニガンの男を襲う、仲間であるランチャーの男も予想外のことに驚く。
その隙にリョウは少女を連れ彼女が入っていたカプセルの裏へと身を隠す。
ミニガンの連射やランチャーの一撃を受けても傷を受けていないこのカプセルを、破壊不可能オブジェクトと判断したのだ。
「此処に居ろ、大人しくしていれば安心だ」
彼女を安心させるように隠すと物影から様子を探る。
「くそっ!あの野郎やってくれるじゃねえか!」
「おいお前!どこ狙ってんだ!撃ち落とされてんじゃねぇよヘタクソ」
「何だと!?そっちが射線状に出て来たんだろうがバカ!」
初心者に一杯食わされた事で喧嘩をしているが、ミニガン男は無事のようだ。
「……あれで倒せないのか。どんだけ頑丈なんだよ」
中途半端なステータスなら今ので倒せただろうがよっぽど防御に特化しているようだ。
同じ手はもう通じないだろう、距離が近ければバリアーの効果も弱まり効きやすくはなるが、相手が二人である上リョウには距離を詰める為のAGIが無い。
一応
他の策を考えるがそれができるだけの装備もステータスもない。
「せめて他に『武器』があれば……」
苦渋の末にぼそっと呟く。
「『武器』……承認しました」
すると彼女も同じように何か呟いている。
「どうにかして『素早く距離を詰めれば』」
「『武器』『距離』……承認しました。マスターこれをどうぞ」
「え?」
リョウの言葉に反応する様に機械的な言葉を発した少女が片手サイズのボウガンのような武器を手渡して来た。
「これは?」
「アルティメット・ファイバー・ガン、長いのでUFGとお呼び下さい」
「UFG……何でコレを俺に……?」
「アファシスに備われた機能です。マスターが望む武器を一度だけ渡す事ができます」
マスターだのアファシスだの、知らない単語に何言ってるのか分からなくなるが考えている暇は無い。
(どうせこのままじゃやられるんだ、コイツに賭けてみるか)
「サンキュー、お前は此処に隠れてな!」
リョウは笑顔でお礼を言うと、少女に渡されたUFGを手に物影から飛び出す。
「くらいな!」
「な!?しまった!」
突然出てきたリョウに驚いているミニガンの男へとUFGを構え引き金を引いた。
「くっ………………あれ?」
しかしUFGから出たのは弾丸ではなく光の鞭の様な物、バリアーに弾かれずに男へと直撃するがダメージは殆ど無い。
「あ、あれ?」
「脅かしやがって、オラッ!」
「うおっ!危ね!」
再びリョウへとミニガンを構え放つ、直ぐに彼女を隠した場所と別の物陰へと飛び込み回避する。
「おい!まだリロード終わんねぇのか!」
「もう終わるよ!黙って撃ってろ!」
(何でだ?バリアーに弾かれ無かったところを見るに光学兵器では無いはずだけど……)
物陰に隠れミニガンの乱射を躱すがランチャーの男がリロードを終えれば一撃でやられてしまう。
それまでに思考を巡らせようとすると、リョウは先程彼女が言っていた事を思い出す。
(俺が望んだもの……『武器』……『距離』…… 『ファイバー』そして『光の鞭』…………そうか!)
自分が言った事と少女が言ったキーワードを組み合わせ、一つの答が導き出される。
それと同時にランチャーの男がリロードを終え障害物の裏側に照準を合わせる。
たとえ直撃せずとも爆風で倒される、だが逃げようにもミニガンの弾幕のせいで逃げる事が出来ない、そんなリョウへと無慈悲にロケット弾が放たれる。
だが着弾するよりも早くリョウは天井へとUFGを向け引き金を引くUFGから黄緑色の光の鞭が放たれ天井へと突き刺さる。
すると自分の体に浮遊感を感じる、推測通りの感覚に口元を綻ばせ浮遊感に逆らわず寧ろ乗るようにジャンプする。
リョウの体は光に引っ張られる様に天井へと引き寄せられた。
「なに!?」
「な、なんだあの装備は!?」
突然天井に張り付いたリョウを見た男達が驚きの声を上げる。
(これなら……いける!)
三次元の機動力を手に入れた事で勝機を見出したリョウはUFGの引き金を離す、すると重力に引っ張られる感覚と共に落下する。
そして地面へと落ちる前にランチャーの男の足下へとUFGを放つ。
先程同様UFGのラインを辿るように一瞬で彼の足下へ移動する。
「うぉっ!?くぅっ!」
男は驚きながらもすぐさまランチャーを捨て背中のサブマシンガンへと変えようとするが、リョウはその一瞬の隙を見逃さず空いた右手にナイフを握ると彼の右の甲へと突き刺した。
「うがっ!」
GGOのアバターには現実と同じ様に急所が存在し他のVRゲームよりも痛覚が感じやすく作られている。
不意打ち気味に突き刺されたナイフについ銃を手放してしまう。
だがそれでもGGOのプレイヤーは伊達じゃない、左手を腰に回しシュウと同じようにナイフを取り出すと降りかかる。
「甘めぇっ!」
しかしゲームは初心者ではあっても喧嘩慣れしているリョウは、その単調なナイフ捌きを紙一重でかわし男の膝の裏を踏むように蹴る。
「うっ……」
ガクンッと体を落とし片膝をつく、その最大のチャンスを見逃さず男の顎を上に引っ張るように上げ、その大きく広がった首へとナイフを突き刺した。
「があっ……あぁ……」
急所への一撃に気を失ったのか抵抗しようと伸ばした左腕をダランと落としデス表示のドクロマークが付く。
「てめぇっ!」
ミニガンの男が此方へと向き直る。
一人を倒したが油断は出来ないこの大会のルールでは両方が倒れるまで何度でも蘇生する事が可能である。
「うおおおぉっ!」
ミニガンの男が此方へと突っ込んでくる、恐らく持ち前の耐久力で無理矢理蘇生するつもりだろう。
(蘇生されると厄介だ……なら!)
抱えている男を横へと放るとミニガンの男へと突っ込んだ。
「何!?」
盾にするなり距離を取るなりと予想していた男は多少驚きながらもどっしりと武器を構える。
キュイィィィィと言う砲身の回転の音の後、筒の様なバレットラインがリョウを赤く染める。
「ふっ!」
だがこれまでのやり取りでミニガンは放たれるまでに溜めがあるのを理解している。
弾が放たれる前に左手に持ったUFGを天井へと向け再び空へと飛び上がる。
「くっ!うおおおぉっ!」
天井に張り付いたリョウを見て歯噛みをするがもうミニガンの発射は止められない、気合を入れてミニガンの射角を無理矢理上げようとするが反動と重量のため素早くは上がらない。
「うぉらぁっ!」
「うぅ……」
その間にUFGを男の背後に放ち移動する、その勢いのままナイフを構えすれ違い様に男の右腕を切り付ける。
「うぐぅ……うおおおぉっ!」
UFGの勢いの乗った斬撃は男の頑丈な右腕の腱を切り裂いた。
利き腕に力が入らなくなりミニガンを落としてしまうが残った左腕に全力を込め殴り掛かる。
圧倒的なステータス差による打撃、それだけでも初期値のリョウはやられてしまうだろう。
「これで決まりだ」
だがリョウの頭の中は至って冷静だった。
逆手に持ったナイフを順手に持ち直すと向かって来る拳へと突っ込む、当たる直前頭を晒すと拳が頬を通過する。
太い腕が頬を掠るがその程度ではダメージにならない、そのまま自分の右腕を蛇の様に外側から覆い被せ、
「うぉらぁッ!」
クロスカウンターの要領でナイフを男の首へと突き刺す。
「か……はっ………」
捻り込むようにナイフを喉に突き刺され、先程の男同様デス表示のと共に気を失った。
全てのプレイヤーがデスした事で脱落となった男達はエネミーと同じように光の粒子となり消滅する。
「ふぃ……」
「お疲れ様でしたマスター」
「ん?」
敵がいなくなったことを確認すると武器をしまい一息付く。
すると此方へとやってきた少女が丁寧な口調の後丁寧に頭を下げる。
「つい助けちまったけどアンタ何もんだ?」
「わたしはアファシスです」
「そのアファシス?ってのは、アバターネームか?」
「いえ、まだ名前はありません」
「はぁ?」
彼女の言葉の意味がわからず頭に?が出る。
どういう事なのか深く追求しようとした時、
「リョウ!大丈夫!?」
「ん?」
自分を呼ぶ声が聞こえ振り向くとピンクの髪を振りながら此方へと走って来るクレハの姿があった。
「おおクレハ!遅かったな」
「こっちも大変だったのよ。転送装置は使えなくなるし、他のプレイヤーと鉢合わせするし……でも見つかって良かったわ」
「俺の方もさっき襲われてな。ま、俺がチャチャっとやっつけたけどな!ナッハッハッ!」
「え?本当なの凄いじゃない!……ってあれその子は?」
そんなやり取りをしてるとリョウの後ろにいる少女の存在に気付いたようだ。
「ああ、さっきそこで会ってさ。えーと……何シスだっけ?」
「アファシスですマスター」
「そうそうアファシスだったな」
「え?………」
アファシスという単語の意味がわからずお気楽にしているリョウに対してクレハはポカーンとしていた。
「え?……ええーーーーー!?こ、この子がアファシスなのぉ!!?」
数秒間ぼーとしたあと部屋中に響くほどの驚きの声を上げるクレハ。
「「?」」
何も分からないリョウとアファシスは顔を見合わせ首を傾げてた。
⭐︎
「レアアイテムぅ!?コイツが?」
クレハからの説明を聞いた後同じように驚きの声を上げるリョウ。
つまりはリョウが出会ったこの少女こそがクレハが目標としていたレアアイテムだったのだ。
「どうやらそうみたいね、プレイヤーサポートAI《アファシス》。まさかここまで人間に似てるとは思わなかったわ」
「コイツがAI……人間にしか見えないな」
身長は150センチも無い小柄な背丈に服と同じく雪のように白く短い髪の毛に薄い紫なメッシュの入っている。
指でほっぺたをつつきながらも驚くリョウ。
つついたほっぺたがマシュマロのように沈んでいく、機械のように無表情ではあるがどこからどう見ても人間にしか見えなかった。
「てかレアアイテムってAIなのか、てっきり銃か何かかと思ってた」
「そう言えば言ってなかったわね。次のアップデートからアファシスが実装されるって話だったの、この大会はそのアファシスが先行で貰えるって言うイベントなのよ」
「なる程……だからまだ誰も持って無いんだな」
「そういう事。でも良くやったわ、アンタホント運だけは良いわね」
「……褒めてんのかそれ?」
「よろしくねアファシス! アタシがあなたのマスターよ」
よくやく念願のアファシスを手に入れたクレハは機嫌よく手を差し伸べる。
しかし対してアファシスは静かに首を横に振った。
「申し訳ございません。既にマスター登録は完了しています」
「え!? だ、誰と?」
「此方にいらっしゃるアバター名リョウ様がわたしのマスターです」
「「ええっ!?」」
「リョウ様がわたしの生体カプセルに触れた時点で、リョウ様のアバターIDとわたしの生体IDが共有されました。変更は不可能です」
「ちょっとどういう事よ!何でアンタがマスターになっちゃってんのよぉっ!」
「ぐえぇ……す、すまんワザとじゃ無いんだよ!」
ネクタイを掴みガクガクと振り回される。
恐らくあの時カプセルに触れたのが原因なのだろうが、アファシスのことを知らなかった上にあんな指先が触れただけで登録されるとは思ってもみなかった。
「ほ、ホントにすまなかった! 手伝うつもりで来たのに邪魔してしまって悪かった。この埋め合わせは出来る事なら何でも……」
悪気がなかった以上、ただ謝るしか無い。
クレハもリョウが悪い訳では無い事が分かっているし、彼がワザとそんな事をするような男では無い事も知っている。
「まぁ元はと言えばアタシのせいだしね……それにアンタが登録して無かったらアンタが戦ったプレイヤーに取られてたかもしれないし」
そうやって自分を納得させたクレハは勢いよく両手を叩く。
「よし! ならアンタの物はアタシの物、アンタのアファシスはアタシのアファシスよ」
「何だよその無茶苦茶な理論。そんな要求通るわけ……」
「かしこまりました。クレハをマスターの上級的存在であると登録します」
「やったぁ!」
「いや、いいのかよっ!?」
意外に甘いセキュリティについツッコミをいれる、どうやらマスターが許可するならば可能なようだ。
「ではマスター、わたしに名前を付けてください。それで登録が完了いたします」
「名前? アファシスで良いんじゃねぇの?」
「ダメよ、これからパートナーになるんだからちゃんと名前をつけてあげましょうよ」
「とは言え、いきなりそう言われてもな……」
面倒くさく思ったリョウはデフォルトでいこうとしたがクレハに止められ頭を捻って名前を考える。
「アイ……なんてどうだ? ピッタリだと思うんだけど?」
「愛……か、うん! 可愛くていいんじゃない? 愛らしいこの子にピッタリな名前だし!」
「え? あ、うん」
AI、だからアイ。
ぐらいの考えで考えたリョウだったが、クレハが勝手に深読みしてくれたのでそう言う事にしておく。
「アイ……はい承認しました。アファシスネイム『アイ』を登録します。アップデートを開始します……………………」
アファシスも気に入ったのか承認してもらえ安堵する。
名前を登録したアイは目を瞑りジーとしているまるで眠っているように、だがしばらくすると目をパチリと開いた。
「アップデート完了しました! これからよろしくなのですマスター!」
先程までの大人しい雰囲気とは真逆の眩しい笑顔を見せながら大声で元気いっぱいの挨拶をするアイ。
いきなりのキャラ変化に二人は驚く。
「あ、あれ?さっきと性格違くない?」
「はい!さっきまではデータがちゃんとインストール出来ていない状態でしたから! ようやく完全なわたしでお二人と会話ができるのです!」
先程までは見た目に似つかわしく無いクールで無表情であったが、今では見た目通りの元気な女の子となっていた。
先程よりも人間らしくなり、より機械っぽさが無くなったのは良かったのだが
「なんつうか、アホっぽくなったな」
「む〜アホとは酷いのです! わたしはアファシス・タイプ00X、レア中のレアの超優秀なAIなんですからね!」
「自分で言うあたり余計にアホっぽいぞ」
「むー!むー! クレハ、マスターが虐めるのですぅ!」
アホと言われ頬を膨らませ必死に抗議をするアイ、その姿はどう見ても唯の子供であった。
「はいはい、やめなさい二人とも。リョウもアイちゃんを虐めないの」
「へーい」
「クレハは優しいのです。そうだクレハも名前を付けてください」
「名前?さっきつけたけど?」
「はい、でもあれはマスターが付けてくれた特別な名前だからマスターにだけ呼んで貰いたいのです」
子供のように甘えてくるアイについ頬が緩むクレハ。
「ふふっ、そうなんだ。そうね……じゃあ、00だからレイちゃんってのはどう?」
「レイちゃん……はいありがとうございますクレハ!」
⭐︎
「よし、無事到着ね」
クレハ達三人は大会のロビーへと転送される。
そこにはデスや棄権のした選手たちが集まっていた。
「でもよかったのか?優勝狙わなくて」
「まぁちょっと勿体無い気もするけど、目的のアファシスも手に入ったし別に構わないわ」
ボスエネミーや分断された所で時間を使い過ぎた上に回復アイテムも尽きている、これ以上やっても装備を無駄遣いするだけだろう。
「クレハの言う通りです。わたしと言う超レアアイテムが手に入ったのですから優勝なんて二の次ですよ!」
両手を腰に当て胸を張りながらドヤ顔をしているアイ。
そんな事を話しているとロビー全体にブザー音が広がった、どうやら大会の優勝者が決まったようだ。
「終わったみたいね優勝者は……あ、イツキさんのチームが優勝ね」
「ち、アイツらかよ」
メニューを開いて見てみるとイツキとパイソンという男が写真に写っているのが見える、それを見たリョウは面白くなさそうに舌打ちをする。
しばらくするとイツキ達がロビーへと転送される。
すると近くにいた女性プレイヤー達が黄色い声援を上げながらイツキの元へと群がる。
「けっ! 面白くねぇ」
「心配要らないのです。わたしの優秀なサポートですぐにマスターをあのランクまで昇らせるのです! ウサギのぼりなのです!」
「ウナギな、ウサギのばしてどうすんだよ?」
「でもウサギの方が可愛いのです!」
「確かに、でも食ったら美味いのはウナ……」
「やめなさいよ二人とも! 恥ずかしいから!」
二人のアホなやり取りに周りのプレイヤー達が、クスクスと声を立てているのが聞こえたクレハは顔を赤らめながら二人を止める。
そんな事を話しているとこちらに気づいたイツキがやってくる。
「やぁお疲れ様お二人さん」
「お疲れ様ですイツキさん。優勝なんて流石ですね」
「はん! どうせ偶然だろ?」
「こらっ!」
機嫌悪そうにしながら失礼な事を言うリョウの頭をパシッと軽くはたく。
しかしイツキは気にしてなさそうに笑顔を返す。
「いや彼の言う通り実際ギリギリだったからね、ルールがゴールへの到達じゃ無かったら危なかったよ」
ギリギリだった、と言う割には余裕のある声色でハハハっと笑うイツキ。
「そう言う君達はどうだったんだい?あの後は」
「おかげさまでレアアイテムが手に入ったよ。ザマーミロこのヤロウ!」
「ざまーみろ!なのです」
余裕の表情を見せるイツキに対して謝ったらしく笑うリョウ。
あっはっはっ!と笑うそんなリョウの真似をしてアイも腰に両手を当て笑う。
「もう!レイちゃんが真似するでしょうが! レイちゃんもこんなのの真似しちゃダメよ」
「えっと……その子は一体………?」
「初めましてイツキ!わたしはアファシスタイプ00X、GGOが誇る最新型の超優秀AIなのです!」
「これがアファシス!? 話だけは聞いてたけどここまで人間に近いとはね」
アファシスの話は運営からの情報である程度聞いていたが、実際のアイの人間らしさに流石のイツキも驚きを隠せない。
「まさかあの後見つけるとはね。やれやれなんでボクの落としたパンはいつもバターを塗った方が落ちるのか……」
自分のくじ運のなさに呆れながらも慣れているのかあまり悔しそうにはしていなかった。
「持ち主はクレハくんかい?」
「ああ、いやマスターはアタシじゃ無くて……」
少し気まずそうに視線をリョウの方へと移す、何故かリョウは腕を組んでドヤ顔を見せる。
「もしかして……君なのかい?」
「その通り、この俺こそが幸運の女神を落とした超イカした男ってわけだ。ハッハッハッ!」
「照れるのです」
イツキの驚いている姿と、彼が欲しがっていたアファシスを自分が手に入れた事に満足したリョウは気分を良くする。
「ハハハッ! 面白いコンビだね」
「ほんとにすみません……」
調子に乗っているリョウに代わり頭を下げるクレハ。
そんな話をしているとパイソンがイツキの元へとやってくる。
「イツキさん、そろそろお時間です」
「ん? もう少しいいじゃないか、別にこの後用事もないだろ?」
「いえそれが大会の優勝者としてゲーム雑誌からの取材が来ていますので急がねば待たせてしまいます」
「そうなのかい? やれやれ面倒くさいな、これなら途中で脱落してた方が面白かったかもね。それじゃクレハくんにリョウくん、それとレイくんまたね」
楽しい時間を邪魔された子供のように一瞬不機嫌な表情を見せるが、すぐに笑顔を見せパイソンを連れ去って行った。
イツキ達と入れ替わる様に今度は別の男の二人組がとやって来る、リョウとアイはその二人に見覚えがあった。
「よう兄ちゃん。さっきは凄かったな!」
「ん?あれアンタらは……」
「あ、さっきの怖いおじさん達なのです!」
やってきたのは先程リョウと戦ったプレイヤー達である。
先程の凄い形相の二人とは違い、今は気の良い雰囲気を醸し出している。
「さっきは脅かして悪かったな!ついロールプレイに気合が入ってしまってよ」
「しかしニュービーとは思えない動きだったな、これからが期待だな」
「お、おうサンキュー……」
リョウは先程まで銃を向け合っていた相手の変化にどう対応していいのか分からなくなる。
「つか、さっきあんだけ戦っておいてよく普通に話しかけれるな?」
「アッハッハッ!あんなのこのGGOじゃよくある事だっての、一々気にしてたらやってられねぇよ」
「そうそう、撃っては撃たれて終わった後は酒場で一杯。それがGGOってもんだ!」
「じゃあな兄ちゃん、今度オススメの酒場紹介してやるよ」
「次やるときは負けないからな!」
そんな話をした後、二人は豪快に笑いながら去って行く。
「……思ったよりも気持ちの良い奴らだったな」
「お母さんが言ってました、銃好きに悪い人はいないのです!」
「銃好きの時点でかなり物騒だけどな」
そう言いながらもリョウの表情は楽しそうだった。
そんな彼を見てクレハは一つの質問をする。
「ねぇ……リョウ、GGOはどう? 気に入ってくれた?」
クレハのもう一つの目的、リョウにGGOの良さを知ってもらいこれからも一緒に遊ぶ事。
もし気に入らなかったら彼と遊ぶ機会は無くなるだろう。
恐る恐る感想を聞いてみる。
「ん?まぁそうだな。この大会が終わったらアバター売り払ってしまおうかと思ってたけど」
「………」
胸の鼓動が強くなりアミュスフィアの安全装置が僅かに警報を鳴らす、恐らくリアルの自分は冷や汗まみれになっているだろう。
「結構面白いしもう少し続けてみるか、せっかくアイとも出会ったんだしな」
そう言いながらちょうど良い位置にあるアイの頭をワシワシと撫でる。
「〜♪、はい!わたしがマスターをGGO最強のガンマンにしてみせるのです!」
撫でられたアイは子犬のように気持ちよさそうにしている、そんな二人の様子を見てクレハはふっと息を吐いた。
「そっか……うん、アタシもサポートするわ! GGOの面白さをもっともっと教えてあげるんだから!」
クレハの表情が明るくなったのが分かるとリョウも笑いながらアイを連れ今日の打ち上げの為の店を探しに向かった。
⭐︎
アルティメットファイバーガン
通称UFG
GGOオリジナルの銃で殆どプレイヤーに伝わっていないレア銃
小型のボウガンのような形で矢の代わりに光のワイヤーを発射し人を引っ張る事ができる。
小型の割にワイヤーの力は意外と強く、二人まで引っ張りあげる事が可能、しかし威力は低くプレイヤーにもモンスターにも大したダメージにならない。
第四部 誰のサイドケースから見たい?
-
キリト
-
アスナ
-
クライン
-
エギル
-
シリカ
-
リズ
-
リーファ
-
シノン
-
ユウキ