ソードアート・オンライン フェイタルバレットー切札の弾丸ー   作:トライダー

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ついに原作主人公とオリ主の対決です。
人気の高い主人公だけあってバランスを考えるのが大変でしたが、どうぞご覧ください。

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 道化師 対 黒の剣士

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「はあっ!」

「………!」

 

 紫の刃と赤い刃が弧を描き衝突し合う。

 

「……っ!?」

 

 弾かれたのはリョウの方だった、地面を削りながら後退し体制を立て直そうとする、そんなリョウへとキリトの連撃が容赦無く襲い掛かる。

 

(っ!……相変わらずの馬鹿力だな…… チャンバラは専門外、それにステータスの差もあるしこのまま剣をぶつけていれば不利なのはこっちか……)

 

 光剣を構えキリトの素早い連撃を後ろに下がりながら捌く。

 キリトのステータスはALOにて剣を振るう事に特化したアタッカー型、対してリョウはGGOであらゆる距離で戦うオールラウンダー型、正面からぶつかれば器用貧乏なリョウが不利なのは当然。

 

(とは言ってもUFGや両光剣を使う訳にもいかないし、ましてや特殊弾なんてな……)

 

 UFGと特殊弾は使用者が少なく両光剣に至ってはリョウの自作である、使用している所を見られれば正体をバラしているようなもの。

 先程ペイルライダーを助ける為《サイクロン弾》を使ったがなるべく使用は控えたい。

 しかも相手は護衛対象であるキリト、下手にダメージを与える訳には行かない。

 

(やり辛いな……)

 

 自業自得とは言えやり慣れ無い戦いを強いられ、面倒くさそうにしながらもキリトの攻撃を捌いていく。

 

 

 

 

 

 

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「あー!もう!さっきキリトが映ったのに何処映してんのよ!」

 

「り、リズさん落ち着いて!」

 

 ソファーから立ち上がり、モニターに対して講義をしているリズをシリカが抑える。

 

「でも確かに不自然なぐらい切り替わりが早かったですよね?」

 

 リーファの言う通り、先程森の中を走るキリトが映り皆が盛り上がっていたのだが、一分もしない内に別のプレイヤーの戦闘に切り替わってしまった。

 

「キリトくん……」

 

「心配しないでママ。わたしに任せてください」

 

「え?」

 

 不安げな表情を見せるアスナを心配したユイがモニターに触れる念じる。

 すると一瞬砂嵐が起き、モニターが別の場面へと移り変わる。

 見覚えのある森と黒い中性的なプレイヤー、キリトの姿だった。

 

「え!何したのユイちゃん?!」

 

「BOBのカメラをすこし弄ってパパの映像が見えるようにしてみました!」

 

「そんな事出来るの!?」

 

「てか、それって犯罪なんじゃ……」

 

「全ては無理ですがわたしたちだけ観れるようには……いけなかったでしょうか?」

 

「ううん!ありがとうユイちゃん」

 

 親としては本当は叱るべきかも知れないが、デスガンとキリトの事が気掛かりだったアスナは素直に受け入れる事にした。

 

「お、キリトの野郎戦ってやがるな!」

 

「相手は……よく顔が見えないわね」

 

「やっぱり剣を使ってるわね。銃の世界なんだから銃使いなさいよ」

 

「あはは!まぁキリトさんらしいと言えばらしいですけどね」

 

 光剣を振り回しているキリトの姿に笑い合いながらもその戦いぶりを観戦する。

 笑ってはいるが彼の剣技を知っている彼女達にとっては安心感すら感じる光景、しかも既に剣の間合いへと入っており勝利を確信していた。

 

「………随分と粘るわね」

 

「でもキリトさんが押していますし時間の問題ですよ!」

 

 キリトの怒涛の剣撃に対して敵プレイヤーは倒されずにいる、だがそれでも防戦一方。

 その光景にリズとシリカは何の心配もしていなかったが、アスナとクラインそしてリーファは別だった。

 

「おい、キリトの野郎ヤバくないか?」

 

「は?何言ってんのよ、どう見てもキリトが押してるでしょうが」

 

「ううん、クラインさんの言う通りよ。あの人強い……」

 

「はい、あのお兄ちゃんの攻撃を無駄なく受け流してる。わたしも剣道で経験あるけど、ああ言うタイプの人ってこっちの動きを学習する為に様子見する人事が多いの」

 

「多分キリトも気づいてるな、だから攻め崩そうと手数を増やしているんだ。それなのに崩せないって事はあの野郎かなり出来るぞ……」

 

 キリトの攻撃力はここに居る全員が知っている、数々の頑丈なモンスターを何体も葬って来たのだから、だからこそ防御しているとは言えあれだけ受けて倒れない事に驚いている。

 

《うおおぉっ!!》

 

 体ごとぶつかるように光剣を叩きつけられ一瞬動きの止まる緑服の男。

 

《はあっ!》

 

《………!?》

 

 キリトはその隙を見逃す蹴りを放つ、その蹴りは男の腕によりガードされるがキリトはその腕を足場にしもう片方の足で胸へと蹴りを入れるとバク宙しながら距離を離す。

 

《でやぁぁぁぁっっ!!!》

 

「よっしゃ!決まったっ!!」

 

 蹴りにより体制の崩れた緑服の男へと光剣を突き出しながら突っ込んで行く。

 《ヴォーパル・ストライク》キリトが得意とするソードスキルの一つ。

 その威力を知っているクラインはガッツポーズを取るが……

 

《なにっ!?》

 

「な、防いだ!?」

 

 完璧な距離、完璧なタイミング、必殺の一撃だったにも関わらず緑服の男は上体を逸らし向かって来る突きを側面から叩き軌道をずらした。

 技のキレの良さにガッツポーズこそしていなかったが、同じく勝利を確信していたアスナとリーファも驚きを隠せないでいる。

 

 

 

 

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「………!」

 

「チィっ!」

 

 光剣を弾きそのままこちらへと向けて来るのを、キリトは舌打ちしながらも転がるようにそれを避ける。

 

(ふぅ、今のはビビった。訓練の時に見てなかったら少し危なかったかもな……)

 

 確かにキリトの剣の腕はかなりの物、しかしリョウは訓練の時にその太刀筋を学習している。

 一度見た技を何度も喰らうほど甘くはない。

 

 そしてリョウはキリトの弱点を見抜いた。

 

「うおおおっ!」

 

 自慢の一撃を防がれた事に焦ったキリトの攻撃を状態を逸らして躱し、避けられない攻撃は側面から叩き軌道をずらして回避する。

 

(確かに力は良い……だがっ!)

 

「なっ!?」

 

 連撃を見切り、下からかち上げるように剣を逸らしすとキリトの懐へと潜り込む。

 

「がはっ!」

 

(無駄が多いぞっ!)

 

 そのまま空いた左手で肘鉄を胴へと打ち込む、その衝撃に怯んだキリトを蹴り飛ばす。

 キリトは蹴りを左腕でガードし後ろへ飛んで勢いを殺す。

 

「くっ!……コイツっ!」

 

(力は強いが少し力み過ぎだ。それに防御も甘い、あまり人間との戦いは慣れていないようだな)

 

 彼らのホームであるSAOもALOも対モンスターがメインのゲームであり、その上SAOでの経験上人と戦う事に少なからず抵抗が現れたせいか対人戦は最小限にしている。

 対人戦に必要なのは脱力と隙の少ない動き、しかし彼らの戦い方は防御よりも回避や攻撃を優先し、膨大なモンスターの体力を力押しで削り切る戦い方が染み付いていた。

 一般プレイヤーならそれでも構わないが仕事の都合対人戦に手慣れたリョウには通用しない。

 

「ぐぅっ!」

 

 斬撃を逸らしたリョウは肩からぶち当たると再び蹴り飛ばし距離を離す。

 距離が離れた事を確認したリョウは背を向け森の奥へと身を隠そうとする。

 

「!! 逃すかっ!」

 

(チッ……)

 

 しかし逃げようとするリョウをすぐさま体勢を立て直したキリトが追う。

 

 AGIの高いキリトからは逃げられず振り向き斬撃を受け流す、受け流しと同時に頭突きをかまし怯ませると後ろ飛び蹴りで距離を離す。

 頭突きを受けながらもキリトは腕を十字に組み蹴りを受け止め、後退しながらも体勢を保つ。

 

「うぐっ!……やるな」

 

(くそ、逃げられないか……)

 

 距離を離したキリトは闇雲に攻めるのを止め攻撃のタイミングを見計らう、リョウもキリトの動きに注意を払いながら逃走のチャンスを見計らう。

 

 互いに円を描くように間合いを測る二人の間に緊張が走る。

 

《リーダー!他プレイヤーの住所が分かったよ》

 

 隙を窺っていると通信機からイツキの声が聞こえて来る、声を出さず通信機に軽く手を立てる動作で返事をする。

 

《キリトくん以外にこの付近に住んでいるのは後一人だけだ。君もよく知っているあのスナイパーの子だよ》

 

(何っ!?)

 

 シノンがこの近辺に住んでいるのは知っている、しかし『後一人』と言うのが予想外だった。

 デスガンが未だにBOBに居る以上まだターゲットが残っていると言う事。

 そしてそれが彼女だけと言う事は既に犯人は彼女の家の近くで待機している事を示している。

 

(詩乃が危ない……!)

 

「はあっ!」

 

「……っ!?」

 

 キリトの光剣が鼻先を掠める、慌てて避けたおかげでダメージは無い、チャンスだと感じたのかキリトは身を屈め一直線にリョウへと向かう。

 

(仕方ないコイツを使うか)

 

 何をするにしてもまずは目の前のキリトから逃げる必要がある。

 リョウは自分へと突っ込んで来るキリトへと同じように突っ込んで行く。

 

「っ!」

 

 先程まで防戦一方だった緑服の男が此方へと向かってきた事にキリトは意外に思いながらも光剣を振り下ろす。

 リョウはその斬撃に対して()()()()()()()光剣を振り下ろす。

 

 紫の刃と赤い刃が再び弧を描き衝突する。  

 

 弾かれたのはやはりリョウだ、同じ速度同じタイミングの振り下ろし、ならば力の弱い方が負けるのは当然。

 だがそれはリョウの計算通りだった、リョウはその弾かれる衝撃に逆らわず利用し後方へと大きくジャンプする、二人の間に10メートル以上の大きな差が出来る。

 

「な!? 逃すか!」

 

 リョウはその間に懐からコルト・パイソンを取り出し構える。 

 

「うおぉぉっ!!」

 

 だがキリトも距離を取られた時点で銃撃が来るのは予測していた、バレットラインの予測に神経を集中させ光剣を振るう。

 コルト・パイソンの全弾倉、計6発の弾丸がキリトへと向かって行く、予選でアサルトライフルやマシンガンと戦ったキリトにとってはその弾幕はあまりにも薄く見える。

 自分を外れた1発以外の残り5発を斬り落とす。しかしその外れた1発が二本の木の幹で反射しキリトへと向かって行く。

 

「なに!?」

 

(リクレクト(バレット)

 

「くっ! はあぁぁっ!!」

 

 だがキリトは持ち前の反射速度を生かし無理矢理振り向くと反射して来た弾丸を斬りつける。

 その瞬間弾が破裂し中から水色の煙が噴射する。

 

「!?、ゴホッ、ゴホッ!これは……」

 

(催涙弾だ。お前のレベルなら効果は薄いだろうが暫く動きが鈍くなるぜ)

 

 キリトが反射弾を斬り落とすのは予想していた。

 だからこそリョウが放ったのは反射弾の中に催涙ガスを含んだ特殊な弾丸。

 効果は薄いが逃げる隙を作るには十分であった。

 まともに吸ってしまったのかキリトは体から力が抜けるのを感じ片膝をつく。

 

(悪いな、次に戦る時は互いに本気でやろうぜ……)

 

「ま、待てっ!」

 

 純粋で真っ直ぐな太刀筋、だからこそ正々堂々の勝負が出来なかったのは心苦しかった。

 しかしリョウにはそれ以上に大事な仕事がある。

 止めようと手を伸ばすキリトを後にし森の中に身を隠す。

 

 

 

 

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「ちょっと!大丈夫キリト?」

 

「ああ、だいぶ力が入るようになって来た」

 

 緑服の男が姿を消して直ぐシノンが合流して来る。煙の効果は一瞬だったらしく体の感覚が戻ってきた。

 

「捕まえられなかったの?」

 

「ああ、でも変な奴だった……」

 

「変?」

 

「オレを斬るタイミングはいくらでもあったのに一向に光剣を使わなかったんだ。まるで戦う気が無いみたいに」

 

 オレに当ててきたのは全部ダメージの少ない打撃のみ。たまに光剣を振るう時はあったがわざと避けられるようにしているようにも見えた。

 

 

 

 

 

「特にあの反射する弾丸には驚いた。次戦う時は気をつけないとな」

 

「反射する弾丸?」

 

「何か知ってるのか?」

 

「……ううん、何でもないわ」

 

 反射する弾丸、そしてさっきの風を纏った弾丸、そんなのをどっかの誰かさんが使っていたのを思い出す。

 でもあいつがここに居る筈がない、出場者名簿を見てみるがやっぱりあいつの名前は無いし気のせいだろう。

 

「とりあえず私たちもすぐにここから動かないと。あんたと私が戦闘中だと思ったプレイヤーが漁夫の利を狙って近づいて来る」

 

 もう直ぐ次のサテライトスキャンが始まる。

 漁夫の利はバトルロイヤルの基本だ、二人まとめて倒そうとするプレイヤーがやって来る前に移動しないと。

 

「そうだな。じゃあここで分かれよう」

 

「え? あんたはどうするのよ?」

 

「オレはデス・ガンを追う。シノン、君は極力やつには近づかないでくれ」

 

「でも……」

 

「約束は守る。次に会った時は全力で君と戦う。さっきは俺を撃たずに話を聞いてくれてありがとう」

 

 キリトは作ったような笑顔を見せるが、それがから元気なのは明らかだった。

 

「ちょっと!……もう、待ちなさいよ!私も行くわ」

 

「え?」

 

「デス・ガンってやつ相当強いよ。あんたがあいつに負けたらわたしと戦えないじゃない」

 

 キリトは強い、こいつに勝たずに優勝などしたく無い。

 それにデスガンの話を聞いた以上奴を放っては置けない。

 あんまり気が乗らないけど一時共闘して先にあいつを本戦から叩き出した方が確実だ。

 

「いや、あいつは本当に危険なんだ」

 

「デス・ガンがどこに行ったのかわからないんだから一緒にいようがいまいが危険度は同じでしょ」

 

「………分かったよ。デス・ガンは川沿いを北に向かったはずだ。これ以上の被害者が出る前にやつを止めたい。アイディアをくれ、シノン」

 

 渋々頷いたキリトが北を指差す。

 デスガンが何者かは知らないが、ここがGGOである以上私の知識の方が有用だと考えたようだ。

 

「いくら妙な力があるといってもデス・ガンは基本的にスナイパーだわ。隠れる場所が少ないオープンスペースは苦手なはず、おそらくあの都市の廃墟に向かっていると思う」

 

 あの地点は入り組んだ廃墟の街並みになっている、私ならあそこで狙撃のチャンスを伺う。

 私の提案にキリトが頷くと、二人で揃って廃墟エリアを目指した。

 

 

 

 

 

 

 

       ⭐︎

 

 

 

 

 

「ぶはぁっ!」

 

「うわっ!?びっくりした!」

 

 身を隠した後、急いでGGOからログアウトする。

 意識が戻ると同時に無理矢理身体を起こす、いきなり起き上がった俺に紅葉が驚いているが気にしている暇はない。

 

「翠、シノンはどうしている?」

 

「今キリトくんと一緒に居るわ。どうやら協力するみたい」

 

 翠子が見せてくれたマップではキリトとシノンが二人で歩いている。

 その光景に少し安堵する。

 アバターが殺されない限り現実の詩乃に被害が及ぶ可能性も低いし、キリトと二人ならデスガンも迂闊に手を出せないはずだ。

 

「そうか……紅葉、オッサンに連絡出来たか?」

 

「うん、丈二さんが言うにはあの後あの住所から通報があったみたい。誰かに侵入された跡があるって」

 

「そうか、ならペイルライダーは無事みたいだな」

 

 恐らく通報したのはペイルライダー本人だ。計画が失敗した事で協力者は慌てて逃げたのだろう。

 

「どうする?今からこっちに来てもらう?」

 

「いや、それじゃ向こうの犯人を逃してしまう」

 

「え?どう言う事?デスガンはこっちに居るんじゃ無いの?」

 

「いくら狭くても一人で短時間でこの範囲を行き来するのは不可能だ。恐らく協力者は2人以上はいる。向こうを逃す訳にはいかないし、まだオッサンにはあの辺りの捜索を頼みたい」

 

「じゃあどうするの?」

 

「シノンの自宅は知ってる。ペイルライダーの方はオッサンに任せて俺があいつの方に向かう。翠、何かあったら連絡してくれ」

 

「了解よ」

 

 体に付いた医療用の機材を外し上着を着てコートを羽織る。

 

「遼……気をつけてよ?皆んなでクリスマスパーティするって約束したんだから」

 

「そうね、とっておきのプレゼントも用意してるんだから。怪我しないでね」

 

「ああ、分かってる。俺は約束は破らねぇよ、特にレディとの約束はな!」

 

 心配そうに見つめる紅葉達に笑顔で返と必要な道具だけをコートの内側にしまうと、家を飛び出しバイクを走らせた。

 

 

 

 

 

 

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 廃墟の街へとたどり着いた私とキリトは、ビルの影に隠れながらデスガンの姿を探す。

 

「いた、あそこよ!」

 

 遠くを見るスキル《ホーク・アイ》を使いスタジアムの中にガイコツマントの男を見つける。

 キリトに場所を教えると彼も発見したようだ。

 

「間違い無い、あの男だ」

 

「どうする?ここから狙撃してみる?」

 

「いや、もし失敗した時のアフターケアをしておきたい。気配を消して後ろから近づくからシノンは手頃な場所から狙撃体制に入ってくれ。準備できたら合図を出すよ」

 

 失敗するつもりは全く無いけど、キリトの言う事も一理ある為黙って頷く。

 

「合図ってどんな?」

 

「うーん……そうだ!この煙が出る筒を空に投げるよ」  

 

 そう言ってスモークグレネードを私に見せる。

 

(筒って……グレネードぐらい知っておきなさいよ)

 

 実力は知ってるけどこう言うところを見ると、何でこの男が決勝に来れているのかが分からなくなる。

 

「そのタイミングで狙撃してくれ、失敗したらオレが斬りかかる」

 

「分かったわ、まぁこの距離じゃ外さないだろうけど」

 

「期待してるよ」

 

 作戦会議を終えるとキリトはデスガンの姿が見えた建物へと入って行く、数分もしないうちに合図が来るだろう私も狙撃しやすい地点へと腰を据える。

 スコープを覗き込みヘカートの照準をドクロの仮面へと向ける。

 あとは引き金を引くだけであの男を倒せる。

 

 でも何か引っかかる……

 

(あのデスガンがこんなに見つかりやすい場所に陣取るかしら……?)

 

 デスガンのスナイパーとしての腕は先程見た通りだ。

 なのに今はお世辞に行っても隠れ方が上手いとは言えない、同じスナイパーとしてそんな疑問を持っていると突如背後に人の気配を感じる。

 

「っ!誰!?」

 

 振り向きグロック18を構える。

 だけどそこに居たのはさっきスタジアムへと入って行った筈のキリトだった。

 

「……ってキリト?戻って来たの? もう、驚かさないでよ。スナイパーは後ろの気配に敏感なんだから」

 

「……………」

 

「ただでさえアンタ……」

 

 バンッ

 

(………え?)

 

 文句でも言ってやろうとした時。

 銃声が聞こえ、体の痺れと共に力が入らなくなる。

 視界の端に映ったのはサイレントアサシンを持ったキリトの姿。

 

(何でキリトがその銃を……)

 

『フン……』

 

 キリトの体から橙色の炎が溢れ燃え上がり姿が変わっていく。

 それは先程見たドクロマントの男、デス・ガンだった。

 

(何で?何で……? デス・ガンはスタジアムにいるはず!)

 

 首は動かず視線だけを動かし先程の地点を見てみる。

 すると確かにデスガンはスタジアムの上で銃を構えている。

 しかしここに居るのも幻では無い。

 

(デス・ガンが二人!?)

 

 驚いている私の事などお構いなしに、先程ペイルライダーにやったように天を仰ぐ。

 まるで私を獲物では無く、ただの生贄としか見てないように。

 

『キリト、おまえが本物か偽者かこれでハッキリする。あの時猛り狂ったおまえの姿を覚えているぞ。この女を仲間を殺されて同じように狂えばおまえは本物だ』

 

(殺す……?私を?)

 

『キリト、さあ見せてみろ。おまえの怒りを、殺意を、狂気の剣をもう一度見せてみろ』

 

 デスガンが懐から黒いハンドガン取り出すと私の頭へと突きつける。

 私はその銃に見覚えがあった。

 

 GGOではなくリアルの世界で………

 

(ヘイシン54式……?!あの銃……なんで……なんで今ここにあの銃が……!?)

 

 あの忌まわしい記憶の中の銃、それが再び私へと向けられていた。

 奴の周りを渦巻く炎がまるで死神の鎌をかたどった"D"の文字を作り出す。

 

 

 

 

       ⭐︎

 

 

 

 

 

《遼!大変よ!》

 

「っ!、どうした翠!」

 

《シノンが狙われたの!》

 

「何だと!?」

 

 バイクを走らせていると耳につけた通信機から翠子の声が聞こえてくる。

 まさか間に合わなかったのか?

 

「シノンは無事なのか?!」

 

《今スタン弾を撃ち込まれて身動きが取れなくなってるわ! このままじゃ!》

 

 まだ生きていることに安堵しながらも油断出来ない。

 ペイルライダーの時の手順を思い出すとスタン弾を撃ち込んだ時点で殺す準備が出来たということだ。

 

「落ち着け、確かこの近くなら……よしっ!翠、BOBに入る準備をしてくれ。ここからGGOにログインする!」

 

《え?でも……》

 

「良いから早く!」

 

《わ、わかったわ!》

 

 今からアパートに向かっても間に合わない。ならばGGOの方のシノンを助けるしか無い。

 俺は大通りから裏路地をバイクで抜け住宅地へと出る。

 目的の民家を見つけるとバイクから飛び降り、近くに置かれたゴミ箱を台にして塀を覗き込み家の人を探す。

 

「あ、居た!爺ちゃん!」

 

「お?おお、遼ちゃんかい。お菓子でも食べて行くかい?」

 

「今仕事中だからまた今度!それよりネット回線借りて良いかい?」

 

「ああ〜この間のね。構わないよ、好きなだけお使い〜」

 

「サンキュー!」

 

 少し前にここの爺ちゃんに頼まれてネットを繋いだことを思い出した。その時の例として俺も回線を無料で使える様にしてくれたんだ。

 

(こんなところで役に立つとはな!)

 

 俺は念の為に持って来ておいたアミュズフィアを取り出すと、コンセントを予備バッテリーに突き刺し装着すると積まれたゴミ袋の中へ背中を預ける。

 

「おやすみっ!」

 

 途中で起こされないように帽子で目元を隠す、これで酔っ払いが寝てるようにでも見えるだろう。

 ゴミ袋のベットとは最悪だが人の命が掛かってるんだ贅沢を言ってる暇は無い。

 無理矢理回線を繋ぎGGOの中へと俺の意識を飛ばした。

 

 

 

 

 

         ⭐︎

 

 

 

 

 あの銃を見た瞬間、身体中の血液が凍ったかのような感覚に陥る。

 自分の体が動かないのはスタン弾の効果なのかどうなのか分からない。

 死のスキル《死神(デス)》の噂は聞いた事があった、デスガンはこの力を使って人を殺していたんだ。

 

 これは罰なんだ、あの日何人もの人を見殺しにした私の罪を償わせる為の……私は死ぬべきなんだ……私も死神だから。

 

 『詩乃が囚われる必要はない、お前がするべきなのはまずその事件を乗り越える事だ』

 

「っ!」

 

 ………違う!

 

 まだ彼からあの日の話を聞いていない。もし彼が本当にあの時のお兄さんならまだお礼をしていない。ありがとうの一言すら言えていない。私はまだあの事件を乗り越えていない。

 

 少し考えてみればやり残した事だらけだ。それなのに死ぬべきなんてふざけるのもいい所だ。

 

 ……私はまだ死ねない!!

 

「う……くぅ!………うぅ……」

 

『無駄だ。逃げる事は出来ん、己の運命を受け入れろ』

 

 体に力を入れ逃げようともがくが私の意思に反して体が動く気配は無い。

 どれだけ歯を食いしばろうともピクリとも動かない、それどころか動こうとすると電気による痛みを感じる。

 

『哀れな。キサマは黒の剣士を覚醒させる為の生け贄、その役目を果たせ』

 

 無駄な努力とでも言うような声を聞かせ、拳銃を向け引き金に指をかける。

 

 『だから一人で抱え込むな。俺ならいくらでも付き合ってやるし、もっと周りを見ろ、お前を大事に思っている奴は確かに居るんだからよ』

 

 あのバカ……偉そうな事言うなら、守ってみなさいよ……

 

(助けてよ、(リョウ)……)

 

『死ね…………む?』

 

 ………おおおおおおおおおおぉっ……

 

 引き金が動く音に混じり遠くから雄叫びが聞こえる。

 敵プレイヤーの反応に気付いたのかデス・ガンも辺りを警戒する。

 

『何だ?何処から……』

 

 黒星・五十四式をしまいサイレントアサシンへと持ち替える。

 しかし前後左右どこを見渡そうと奴は声の主を見つけられない、それもその筈その声は()()()聞こえていたのだ。

 デス・ガンを見上げる形になっていた私にはその姿がよく見えた。

 

 疾風のように私たちの方へと落ちて来る緑色の影が……

 

「おおおおおおおおおおおおぉっ!うぉらぁっ!!!」

 

『何っ?!』

 

 それは先程キリトが追っていたフードの付いた緑色のギリスーツの男だった。

 男の振り下ろした赤い光剣がデス・ガンのサイレントアサシンを斬り裂いた。

 

「レディにそんな粗末なもん向けるもんじゃ無いぜ、ホネ野郎」

 

 

 

 

 

 

 

 

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いかがだったでしょうか?キリトはもっと強いと思った方は申し訳ありません。

でもGGOでのキリトはSAOの頃より腕が鈍っていると本編でも言っていたので二刀流じゃなければこのぐらいかなと思いました。
と言ってもお互いに全力とは言えない勝負だったので完全な力関係とは言えません。

この二人が本気で戦うのはもう少し後のお話です、どうぞ楽しみにしていてください。


⭐︎

第四部 誰のサイドケースから見たい?

  • キリト
  • アスナ
  • クライン
  • エギル
  • シリカ
  • リズ
  • リーファ
  • シノン
  • ユウキ
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