ソードアート・オンライン フェイタルバレットー切札の弾丸ー 作:トライダー
まさかの一万字越え……長くならないように控えていたのに……
戦闘までの繋ぎ回ですがやりたい事を詰め込んだせいで少し長くなってしまいました。
ファントムバレット編も後二、三話で終了致します、次章の構成も思い付いているので早めの投稿を心がけます。
よろしくお願いします。
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「これは……どう言う事だ?」
シノンと協力しデスガンを倒そうと奴の背後に回ったのはよかった、しかし途中で気づかれてしまいそのままの勢いで斬り伏せた。
その瞬間デスガンの体が橙色の炎に包まれたかと思うと全然違うプレイヤーに姿が変わったのだ。
「まさか偽物?だとしたら……シノンが危ない!」
最悪の状況が頭をよぎったオレはすぐさまシノンの元へと戻ろうとする。
そんな時上空から此方へと落下してくる緑色の影を見つける、よく目を凝らすとそれは人影に見えた。
「あれは………」
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《ちょっとリョウ!まだ細かい座標が指定出来てないわよ!》
「構わない、街にさえ飛ばしてくれれば後はこっちで修正する!」
翠子の抑制を振り払って無理矢理BOBへと侵入する、その代償としてか地上では無く上空千メートル程の高さからへと転送されてしまった。
(シノンは……………あっちだ!)
しかしこれは寧ろ好都合、俺はUFGを取り出し近くの高い塔に括り付け振り子のように体を吊る。
殆ど勘に近かった、しかし己の運と勘の良さを信じ、その勢いのまま体をスイングさせその地点へと飛ぶ。
(………ビンゴっ!愛してるぜ女神様!)
飛んだ先に黒い人影が水色の髪の少女へと銃を向けているのが見える、幸運の女神に感謝しながら光剣を抜き黒い人影へと向かって落ちて行く。
その娘に手を出だすなっ!
「うおおおおおおおおぉっ!!!」
デスガンのクソ野郎の注意を引く為敢えて雄叫びを上げる、思惑通り声に反応したデスガンのライフルを斬り裂いた。
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(何なの?この男……)
狙ったかのような完璧なタイミングでデスガンのサイレントアサシンを切り裂いた緑服の男に私は戸惑いを隠せないでいる。
緑服の男はまるで私を守るかのようにデスガンとの間に立ち塞がり光剣を構える。
『キサマ……何者だ!』
「……………」
デスガンの質問に無言を貫く、痺れの抜けてきた首を動かし顔を覗き込もうとするがフードで目元を黒いマスクで口元を隠している為表情はよく分からない。
ただフードの隙間から僅かに見える紫色の瞳が彼と重なって見える。
「も、もしかして……リョ「はあぁぁっ!」」
「………っ!?」
その時スタジアムから戻って来たキリトが緑服の男へと斬りかかる、現状から見て私が襲われていると思ったのかもしれない。
キリトの接近にいち早く気づいたその男は、赤い光剣でキリトの光剣を受け止める。
『フンッ!』
「…………っ!!」
それによって出来た隙をつきデスガンは再び私へと黒星・五十四式を向けバレットラインを照らす。
しかしバレットラインに割り込んだ緑服の男はもう片方の手に青い光剣を持つと、私に向かって来る弾丸を斬り落とす。
「二刀流?それにさっきのは……」
私を守るように銃弾を弾いた男の姿にキリトも疑問に思ったようだ。
「…………」
しかしそれも束の間、私を守ったかと思いきや光剣をしまうと今度は緑服の男が私の方へとリボルバーを向けてくる。
「くっ、シノン逃げるぞ!」
「え?、ちょっと!」
攻撃が来ると判断したキリトはスモークグレネードを投げつけデスガン達の視界を奪う。
そのあと近くにあるバイクに私を乗せると、二人から逃げるように廃墟の街を後にした。
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(シノンを頼むぜキリト……)
どうやってシノンを避難させようか悩んでいたがキリトが来てくれて助かった。
敵であるムーブをかました事で戦闘経験の多いキリトは不利を察し逃走を選択してくれた。
『逃がさんっ!』
デスガンは近くに置かれていたロボットホースへと跨りキリト達を追おうとする。
「くっ!……こっちのセリフだ腐れガイコツ!」
立ち塞がる俺を轢き殺そうと向かって来るのをローリングで避け、回避と同時にマグナム弾を数発撃ち込む。
機動の要である脚と動力源である脇腹を撃ち抜き、ロボットホースの動きが止まり巨大な爆発を起こす。
《………倒したの?》
《いいえ、まだ脱落のマークが付いていない。生きているわ》
「ああ知ってる。この程度で終われば苦労しないさ」
爆炎と煙で姿は見えないが俺の感が奴の生存を告げている、奴が何処から仕掛けてきても良いように集中する。
「…………気配が消えたか、意地でもシノン達を追うつもりみたいだな」
辺りから奴の気配が消える、どうやらイレギュラーである俺との戦闘は避けるつもりのようだ。
しかし機動力は奪った、奴がシノン達の元へ着くにはかなり時間があるはずだ、それまでに状況を整えよう。
「にしても、奴はどうやって現れたんだ?」
《その事を教えるの忘れてたわね。説明するよりさっきの映像を見てもらった方が早いかも》
バイクに乗っていたのとシノンが危ないと思い慌てて来たからどうやってデスガンがシノンを襲ったかを知らない。
身を隠しツェリスカから送られてきた先程の映像を確認する。
「これは……そうか、奴の能力は……」
カメラに映らない、煙のように姿を消す、姿を変える、分身、そして奴の背後に現れる"D"の文字。
複数のキーワードが一つに重なり答えを導き出す。
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「ここで良いわ」
「いいのか?こんな砂漠の真ん中で」
デスガンから逃げおうせたシノン達は、街から遠く離れた砂漠にある洞窟へと身を隠す。
「奴のライフルは壊れたからもう狙撃は来ないはずよ。ならもう近づくしか無い、ここなら砂のおかげで足音や足跡で居場所を探りやすいわ」
「なるほどな」
砂漠や荒野での戦闘の経験の少ないキリトはシノンの考えに純粋に感心する。
「それよりも……あんた本当に本物でしょうね?」
「?、どう言う意味だ?」
「さっきあんたの偽物に撃たれたのよ」
「え?」
先程の一連の流れにすっかり混乱している二人は、冷静さを取り戻す為互いに起こった出来事を話し合った。
「おかしく無いか?」
「そりゃおかしいわよ!キリトだと思ったらデスガンでデスガンだと思ったら全然関係ないプレイヤーなんだもの!どんなアイテム使ってるのよ、チートもいいところだわ!」
「ああいや、勿論その事もなんだけど、オレがおかしいと思ったのはシノンに撃ったのがあのスナイパーライフルだって事さ。言っちゃ悪いが油断してるんだからさっさと黒い拳銃で撃てば早いのに」
「む……確かにそうね……」
言い方に多少イラっとしたがキリトと言ってる事は分かる。
さっさと撃ってしまえばシノンは死んでいたのに、デスガンはわざわざ取り回しの悪いライフルの方で麻痺させると言った二度手間なことをしている事になる。
「一応もう一度聞くけどあんた本当に本物でしょうね?」
「本物だよ、なんだったらあの時の下着の色でも言おう、ぶっ!?」
完全に言い切る前にシノンの拳が頬へと直撃する。
「ブン殴るわよ?……でも確かに本物みたいね」
「殴ってから言うなよ……」
夕暮れの砂漠が真夜中へと変わる。スキャンを見ると残りのプレイヤーは5人だけとなっていた。
洞窟の入り口で見張りをしているシノンへとその事を伝える。
「残り5人……デスガンがやられたって可能性は?あの緑服のプレイヤーと戦ってたみたいだし……」
「いや、確かにアイツは中々の腕前だったけど相手はあの《ラフィン・コフィン》だ。いくらあの男でも勝てないと思う」
正直今のオレが戦ってもデスガンに勝つのは難しいと思っている。SAOの頃と比べて腕は鈍ってるし、逆にデスガンはあの頃よりもずっと腕を上げている筈だ。
あの男は確かに強かったが《ラフィン・コフィン》は一般プレイヤーが勝てるような相手では無い。
「……ねぇキリト?あの緑服の男の事どう思う?」
「そうだな、よく分からないとしか言いようがないな。一瞬シノンを助けたように見えたけどその後直ぐに銃を向けて来たし……よくある自分の獲物を取られたくなかったって奴じゃ無いか?マックス・キル賞だってあるし」
「そう……よね……」
少し様子のおかしいシノン、もしかするとあの男に心辺りでもあるのだろうか。
「あ、あれって!……」
「どうしたシノン?」
「デスガンが二人、こっちに向かって近づいているわ!」
「なに!?」
シノンに入れた方向を双眼鏡で確認する。すると彼女の言う通り二人のデスガンが物陰に隠れながらゆっくりと此方へ向かっている。
「恐らく片方は偽物だ。きっとさっきみたいに姿を変えているんだろう」
「でもどうして二人のプレイヤーが一緒にこっちに向かっているの?」
「別におかしく無い。チームを組んだんだろう、オレ達みたいに」
露骨に二人のプレイヤーが固まっている事に疑心に思割れてもおかしく無い。デスガンがそこをついて他のプレイヤーに結託を持ちかけた可能が高い。
「どっちが本物だと思う?」
「恐らく手前の方だと思う、シノンは?」
「私もよ、スナイパーライフルを二つ持ってるとは思えない。サブに持つとしてもあの短機関銃を持つはずよ」
シノンの言う通り片方は長いライフル銃を持ちもう一人と離れて移動している、シノンと同じスナイパーなのだろう。
「そうか……なら手前の方はオレがやる! 君は後方のスナイパーを頼む」
「ちょっと待って!本物だって分かって挑むの? せめて片方を倒してから二人で一緒に……」
「ごめん。でも奴とはオレ一人で決着をつけたいんだ。これは……オレの責任だから」
「責任って……」
「あの時オレが見逃したレッドプレイヤーが殺人を起こし既に二人が犠牲になってる。ならオレの責任だ。オレが奴を斬らないといけないんだ。SAOはまだ終わっていないんだ……」
「キリト……」
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「クリスハイト! もう、遅いわよ!」
「こ、これでもセーブポイントから超特急で飛んで来たんだよ。ALOに速度制限があったら免停確実だよ」
「何が起きてるの?」
わたし達の元にやって来たのは菊岡さんのALOの姿クリスハイト。
キリトくんが何故BOBに出場したのか心当たりがありそうな人物を考えたどり着いたのが彼であり、今何が起きているのかを聞き出す為呼び出した。
「何から何まで説明するとちょっと時間がかかるかもしれないなあ。それにそもそもどこから始めていいものか……」
「ごまかす気!」
「落ち着いてくれ、この後に及んでごまかす気はない。一から話すよ」
そしてクリスハイトは話しだした。
先月デス・ガンを名乗るプレイヤーがガンゲイルオンライン内でモニターに銃撃を行い、同日中野区のアパートでフルダイブ中の変死事件が発生している事とそれの調査を先週キリトくんに頼んだ事。
そしてGGOに存在する『死のスキル』の噂を。
「おいクリスの旦那よ! てことはてめえ、その殺人事件の事を知っててキリトをあのゲームにコンバートさせたのか!?」
「ちょっと待った、クライン氏。殺人事件ではない」
「んだと!?」
熱くなりそうなクラインさんを制する。
「アミュスフィアではどんな手段を用いようとも毛ほどの傷もつけられない。ましてや機械と直接リンクしていない心臓を止めるなど不可能だ。僕とキリト君は先週リアルでたっぷり議論し最終的にそう結論付けた。ゲーム内からの銃撃で現実の肉体を殺すすべはないと」
「クリスさん、ならあなたは何でお兄ちゃんにGGOに行くように頼んだんですか?あなたも感じてるんでしょ? あのデス・ガンってプレイヤーは何かすごく恐ろしい秘密を隠してるって」
「それは……」
リーファちゃんの質問を黙秘するクリスハイト、理由は気になるが今はそれ以上に話すことがある。
「クリスさん、デス・ガンはわたしたちと同じSAO生還者よ。しかも最悪と言われたレッドギルド《ラフィン・コフィン》の元メンバーだわ。名前までは思い出せないけど、わたしとクラインさんはラフコフ討伐戦に参加してるから……」
「流石だね、そこまで気付くとは」
「ね、ねえアスナ……クリスハイトってSAOの事知ってるの?確かリアルではなんかネットワーク関連の仕事してる公務員さんでバーチャルMMOの研究がてらALOをやってるって話だったけど……」
「その通りなんだが昔は別の仕事をしていたんだよ。僕は総務省のSAO事件対策チームの一員だったんだ、といっても対策らしい対策なんて何もできない名ばかりの組織だったが」
彼が対策チームの一員である事はわたしとキリトくんとユイちゃんの3人しか知らず皆は驚いている。
皆んなには申し訳ないが今はこっちの話を優先させて貰う。
「あなたならデス・ガンを名乗るプレイヤーの現実世界での住所や名前を調べられるんじゃないの?ラフィン・コフィンに所属していた生還者を全員リストアップして今自宅からGGOサーバーに接続しているか契約プロバイダに照会すれば」
「いや、それは不可能だよ。元ラフィン・コフィンという情報だけで現実の住所氏名まではわからない」
「……お兄ちゃんはきっとその名前を突き止めるために今あの戦場にいるんだと思います。昨夜帰って来た時お兄ちゃんすごく怖い顔してた、多分昨日の予選の時点で気づいてたんです。GGOにラフィン・コフィンに入ってた人がいる事、そしてその人がどうやってか本当にまた人を殺してるかもしれない事……」
そんな時モニターの方からキリトくん達の会話が聞こえる、話の内容からデスガンへの対策を練っているようだ。
《奴とはオレ一人で決着をつけたいんだ。これは……オレの責任だから》
《責任って……》
《あの時オレが見逃したレッドプレイヤーが殺人を起こし既に二人が犠牲になってる。ならオレの責任だ、オレが奴を斬らないといけないんだ。SAOはまだ終わっていないんだ……》
「っ!キリトくん……」
「やっぱりお兄ちゃん決着をつけに行ったんだ。昔の名前を突き止めてPKをやめさせるために」
(キリト君……あなたは……あなたって人はいつも……いつだってそうやって………)
「ばっきゃろうが!水くせえんだよ!一言言ってくれりゃあ行き先がどこだろうとオレもコンバートしたのによ!」
「そうですね。でもキリトさんは少しでも危険があると思ったならわたしたちを巻き込もうとするわけない。そういう人です」
「そうよね、昔からそういう奴よね…………でもキリトの言う通りかも知れないのよね……」
「「「「……………」」」」
「み、皆んな……」
リズの一言にリーファちゃんを除いたSAO経験者全員が黙ってしまう。
キリトくんの言う通りSAOは終わっていない……ううん、もしかしたら終わる事なんてないのかも知れない。
SAO生還者……地獄のデスゲームを生き残った者達と言えば聞こえは良いが中には『ゲームにのめり込んだ者がサイバーテロに引っかかって、莫大な税金を使ってのうのうと生きている』と捉える者も少なくない。
実際SAOが始まって一年と半年程の頃、見捨てようと言う話も上がったらしい。
そして現在政府の用意したSAO生還者専用の学校に通っている、そのため好奇な目で見られる事も多い。
既に一年がたっても、わたし達の中では未だSAOから離れている感覚が薄い。
そして今回の事件、まるでSAOを忘れるなとでも言うようにわたし達へとまとわり付いてくる。
「キリトくんの言う通り、この事件はあの時ラフィン・コフィンを生かしていたわたしたちの……」
「だ、だとしたらオレ達にだってその責任はある筈だぜ!それなのに………」
「うん、キリトくんはそれを一人で背負うつもりなんだ……」
だからキリトくんは何も言わずにGGOに行ったんだ、何も出来ないわたし達はモニターの前から見守るしかなかった。
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キリトは砂漠の真ん中で仁王立ち、デスガンが来るのを待つ。
強風が彼の長い髪を靡かせた後デスガンがキリトの前に立っていた。
『ほう、オレが来るのを待っていたのか?』
「ああ、そうだ!ここでお前を止めるっ!!」
先手必勝、AIGを全力にして一瞬にして距離を詰める。長引けば自分が不利だと考えたキリトはこの一撃に全てを込めた。
向かって来るキリトに対してデスガンはバックステップで避けようとする。
「はあぁぁぁぁぁっ!!!」
その回避を読んでいたキリトは横薙ぎから突きへと変える、速く範囲も広く威力も高い必殺の突き技《ヴォーパル・ストライク》を繰り出した。
『ほう、良い突きだな。ALO辺りからのコンバートか?』
「なに!?」
しかしデスガンはその突きを避けた。
AIGの高いキリトの素早い一撃を避けられるはずがないのに。
だが理由は簡単である、その男が
「なっ!?」
デスガンの体が炎を包まれ姿が変わっていく、炎の中から姿を表したのは黒いゴーグルを付けた細身のプレイヤーだった。
キリトはこの現象に見覚えがあった。
「デスガンじゃ……無い!?」
「デスガン?誰だそれは。オレの名は『闇風』お前と戦うのを楽しみにしていたぞキリト」
「楽しみ?」
「ああ、予選の頃から目を付けていた。腕の立つAGI型が居るとな、お前となら最高の決勝戦が出来ると思っていた」
「悪いけど期待には応えられないな、野暮用があるからさ」
「そうか、なら好きにすると良い。しかし……このオレから逃げられればの話だがなっ!」
「くっ!……」
逃げようとするキリトの前に回り込み愛銃のキャリコM900Aを放つ、キリトは転がって弾を避ける。
砂漠の真ん中で黒と黒の影が舞い。最強のAIG型を決める戦いが始まった。
「くっ!……」
それはシノンの方も同じであった。砂漠にある壊れた塔に登りもう一人のデスガンを狙い撃ったのは良かった。
しかし全く同じタイミングで相手も狙撃を行い互いの弾丸がぶつかり合い狙撃は失敗した。どうやら既に互いの姿を認識していたようだ。
反撃の狙撃から逃れる為塔に身を隠す。弾道から逃れながらも《ホーク・アイ》で様子を探る。
するとデスガンの体が燃えて露出の多い服装の女性プレイヤーへと姿が変わった。
(やっぱりこっちはデスガンじゃ無い!)
彼女の名は《
キリト対闇風と同時期、最強の女性スナイパーを決める戦いが始まろうとしていた。
(こっちが偽物って事は………頑張んなさいよキリト)
しかしシノンは知らなかった、彼女達が想定していた二人のデスガンは
そして彼女の背後から死神の鎌が近づいている事を……
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「おいおい、なんだよ今の!?」
「プレイヤーの姿が変わった!?」
モニター越しにデスガンの姿が闇風のものへと変わったのを見たクライン達も驚きを隠せない。
「変身魔法みたいなものなのかな?」
「それより本物のデスガンは何処に行ったんでしょうか?」
「ユイちゃん、モニターをデスガンが映るように操作できる?」
「了解です、ママ!」
先程やったようにユイはモニターに触れ映像を操作する。一瞬のノイズの後モニターに黒いローブを羽織ったドクロの仮面のプレイヤーが映し出される。
「居たっ!」
「あれがデスガンか……しかし不味いね」
「え?」
「彼は今フリーの状態、キリトくんもあの女の子も目の前の相手で精一杯だ」
クリスハイトの言う通り、デスガンはシノンの居る塔の方へと歩みを進める。
デスガンの狙いがシノンなのはアスナ達にも分かった。
「おいあの子危ねぇぞ!」
「ユイちゃん、キリトくんにこの事を伝える事は?」
「さ、流石に無理です。それに今パパは闇風というプレイヤーとの戦闘で身動きが取れません……」
「そんな……」
犯人の姿が見えているのに何も出来ない、自分達のせいで何の罪の無いあの少女が死んでしまう、それは彼女達にとっての最大の絶望であった。
そうしている間にもデスガンがシノンの居る塔へと近づく。
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『今度こそ、殺す……』
黒星・五十四式を握り締めシノンの居る塔へと向かう。
正直デスガンも焦っていた。既に二度の殺人を失敗している、彼らとしてもこれ以上の失敗は許されないのだ。
「おいおい、女の子相手に真後ろから近づくのは悪手だぜ? 間違いなく不審者扱いされるからな」
『っ!』
シノンの居る場所まであと300メートルと言った所で突然の突風がデスガンを襲う、砂嵐に対して腕で顔を覆い砂を防ぐ。
砂嵐が収まり視界を戻すとデスガンの目の前に先程自分の邪魔をした緑服の男が居た。
「女の子に話しかけたいならまず顔を見せて警戒心を取り除かないとな。まぁお前の顔面なら結局は同じか」
『キサマ……またキサマかっ!……どけ、キサマと遊んでいる暇は無い!』
「それはあの子を殺すからか?」
『そうだ!あの女だけじゃ無い、黒の剣士を復活させる為の生贄として奴に関わった者は全員無惨に殺してやる!SAO最強のギルドラフィン・コフィンとしてなっ!!』
イラついたデスガンが怒りを見せるが、リョウはそれを無視し思い出を語るように夜空を見上げる。
「…………俺の知り合いにな、昔怖い事件に巻き込まれた女の子が居たんだ。そいつは自分が犯人を殺さなかったせいで関係ない人が死んだと思っている。そのせいで背負う必要の無い罪を背負おうとして苦しんでる。あんなにちっこいくせによ」
『……何の話だ?』
話の流れが掴めないデスガンが首を傾げる。
リョウの頭に浮かぶのはシノンにキリト、そして同じような悩みを抱えているであろうSAO生還者達であった。
「だが人を殺さないのは罪なんかじゃ無い。悪いのは全て奪った者たちだ、何の罪の無いあいつらが苦しむ必要なんか無いんだ」
『何を言っている?』
「その汚ねえローブのせいでよく聞こえないだろうからハッキリ言ってやる。お前は ラフィン・コフィンなんかじゃねぇ、ただのアホな殺人鬼だ! そしてあの少年も黒の剣士なんかじゃ無い、ただの普通の高校生だ。お前達のお遊びもあの子達の悪夢もとっくに無くなった!」
それはデスガンに対してだけじゃ無い、彼らを好奇な目で見る者、菊岡のようにこんな事件に巻き込む者全てに対する怒りだった。
「SAOは終わったんだよっ!もうあの子達を巻き込むんじゃねぇ!!」
『キサマぁ……』
しかしそうとは知らないデスガンは己の存在意義を否定され、仮面の奥からも分かりやすい怒りを見せる。
「なんだ?お得意の死銃で俺を殺さないのか?」
『………』
「まぁ出来ないよな?お前の能力は《
『!!』
「お前の能力は一言で言えば幻覚だ。しかも範囲も広く電子機器にまで影響を及ぼすもの、だが広いって言っても限界はある。宇宙からのサテライトスキャンは誤魔化せないのがその証拠だ。他にも気を張っているプレイヤーには通用しないんだろ? それが出来るならもっと簡単にあの二人を倒せる筈だ」
リョウの推理は概ね当たっていた。
デスガンはそのスキルを使い他のプレイヤーやカメラや電子機器から自分の姿を見えない様にしていた。
街にいた他のプレイヤーをスキルで自分の姿に擬態させ囮とし、シノンを一人にしたところをキリトに擬態して襲ったのだ。
だがリョウの言う通り気を強く張っているものには効果が薄く、警戒心の上がったキリトとシノンには通用しない、だからこそ闇風や銃士Xを囮にしたのだ。
「だからお前は不意打ちしか出来ない。さしずめ《
『フッフッフッ……』
そこまで言うとデスガンは不気味な笑い声をあげる。
「死のスキルの噂を流したのもお前らなんだろ?」
『そこまで気付いていたか。ご名答、
デスガンは黒星・五十四式をしまうと懐から細長い黒い杖のような物を取り出しリョウへと向ける。
リョウも両光剣を取り出すと《メタル弾》を差し込み鋼鉄棍へと変化させる。
「お前をあの少年の元には行かせない。SAOは終わったんだ、あいつがその因果に巻き込まれる必要は無い。それに謎の解かれた犯人の相手は探偵がするってミステリー物なら相場が決まってるしな」
『このオレに勝てると思っているのか?本物の戦場を生き、本物の剣技を得た
「な〜にが本物だよ。モニター越しに銃撃って動けないやつ相手に薬刺してるだけだろうが、このイキリ骨野郎。それともラフィン・コフィンってのは案山子しか殺せないのか?」
『何だとっ!』
「そう言えばお前ゼクシードを偽りの英雄とか言ってたな。俺から言わせればダッセぇ仮面で自分を偽ってコソコソ殺人してるお前らの方がよっぽど偽物だろ?
『ッ!!』
己の殺しの流儀を馬鹿にされたデスガンの怒りは有頂天に達した、エストックを突き刺そうと素早い身のこなしで距離を詰めリョウへと突き刺した。
⭐︎
《お前達の遊びもあの子達の悪夢もとっくに無くなった!SAOは終わったんだよっ!もうあの子達を巻き込むんじゃねぇ!!》
「あの人、一体……」
その言葉を聞いた時、心の重しが少し軽くなった気がした。
わたしだけじゃ無い、リズもシリカちゃんもクラインさんもさっきまでと表情が変わっている。
勿論あの人の一言で全てが精算されるわけではない、でも嬉しかった、そんな風に言ってくれる人がいた事が。
(ああ言う人がキリトくんと仲良くなってくれたら……)
背負ってばかりの彼の重しも軽くしてくれるかもしれない、それは同じSAO関係者のわたし達には出来ない事だから。
「で、でもよ、あの
「そ、そんなに強い人なんですか?」
「赤目のサザ……ラフィン・コフィンの最高幹部の一人、素早い身のこなしとその剣技で10人以上のプレイヤーを殺した男よ。わたし達でも勝てるかどうか……」
あのエストックを構える姿を見てようやく思い出す。
正直今の自分の力では勝てる気がしない、クラインさんも同じ気持ちなのか俯いている。
確かにキリトくんに戦ってほしく無い、でも奴は普通のプレイヤーが勝てるような相手じゃ無い。
「勝つよ、彼は」
「え?」
「な、何でそんな事が言えるのよ!」
しかし焦るわたし達とは違い、クリスハイトだけは妙に落ち着いていた。
「あの人の事、何か知ってるんですか?」
「君たちは確かに命懸けのデスゲームを生き延びた、特にその前線となった攻略組は時代が時代なら英雄と言われただろう」
英雄……そんな事を言われるのは不愉快だ、いつもなら否定するなり突っかかるなりしてたかも知れない。
でもクリスハイトの表情は真剣そのものだった。
「でもね、世の中にはSAOなんかよりもずっと命の危険と隣り合わせな世界がある。そしてそんな世界を生きてきた人間も居る」
「それが、あの人だと言うの?」
「ははっ、今のはモノの例えさ……でも彼は僕が知ってる限り
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『馬鹿なっ!?』
素早く鋭い一撃、しかしリョウはその場から一歩も動く事なく鋼鉄棍でエストックの軌道を逸らす。
一般プレイヤーに防がれると思っていたデスガンは驚きを隠せないでいる。
そんなデスガンの顔面空いた右の拳で殴り飛ばす、殴られたデスガンが砂の上を転がり砂にまみれる。
『き、キサマァ………殺す!殺してやるっ!!』
「勝手にキレてんじゃねぇよ……ムカついてんのは、こっちの方なんだからよ」
殺意を強くするデスガン、しかしその程度の殺気など慣れたもの。
狙われ怖い思いをしたシノン、SAO生還者と言うだけで巻き込まれたキリト、そして被害者の二人、彼等のことを思えばまだまだ殴り足りないぐらいだ。
右手で鋼鉄棍を肩に担ぎ左の人差し指を向ける、この世界でこのセリフを言う時が来るとは思わなかった。
だが誰かを笑顔を壊そうとする者がいるならリョウは何処であろうとこの言葉を犯人に突きつける。
「さぁ、お前の罪を数えろ!」
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《ダミー》
XTRA NO.4のDのスキル。
その能力は幻覚。
自分の半径50メートルまで影響し自分の好きな様に姿形を変えることができる、幻覚の力も強く電子機器にまで影響を及ぼすほど。
しかし幻覚とは言っても洗脳の類では無くあくまで自分や他のプレイヤーの見た目を変えるだけ、しかも気を強く張っている者には通じない。
発動と同時に現れるDの文字は一見死神の鎌のように見えるが、実際はその後ろに見える残像のようなDの方が本体となっている。
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第四部 誰のサイドケースから見たい?
-
キリト
-
アスナ
-
クライン
-
エギル
-
シリカ
-
リズ
-
リーファ
-
シノン
-
ユウキ