ソードアート・オンライン フェイタルバレットー切札の弾丸ー   作:トライダー

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 一ヶ月以上空いてしまい申し訳ございませんでした。

 エヴァにハマりモンハンにハマりとしている内に過ぎていってしまいました。
 楽しみにしてくれている人のためにも早めの投稿を心掛けます。



 祝 風都探偵 アニメ化!
 メチャクチャ楽しみです!


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 BOB決着

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『フンッ!』

 

 風のような速さでリョウへと距離を詰めエストックを振るう、フェンシングのように手首を上手く使い隙の少ない連撃を繰り出す。

 だがリョウは鋼鉄棍を肩に担いだまま足捌きだけでその連続の剣技を避ける。

 

「うぉらっ」

 

『グホッ……!』

 

 顔面へと向かって来る渾身の突き、それを後ろにのけぞり回避し代わりにカウンターの蹴りをデスガンへとおみまいする。

 

『キサマァッ!!!』

 

 切先を向けリョウへと体ごと突き出す。

 ソードスキルで言う《スター・スプラッシュ》と呼ばれるレイピア系武器による8連撃を再現したもの。

 だがリョウは最小限の動きで8連撃の内7つを避け残りの1撃を掻い潜り鋼鉄棍を胴へと振るう。

 

「技のセンスも仮面のセンスもスカル以下だな。ホラーマン」

 

『ぐっ……オオオオオォッ!!!』

 

 自慢の剣技を貶され怒りに満ちたデスガンは戦法を変える。

 己の技を防いだ憎き鋼鉄棍を叩き斬ろうと力任せにエストックを振るう。

 大振りの攻撃だがリョウは敢えて受け止める。暗い砂漠の中で金属がぶつけ合う音が響く。

 

『グゥ……なぜ斬れない!』

 

「おんなじ素材使ってるんだ、当たり前だろう?」

 

 リョウは以前ピトフーイとの戦いでこのタイプの武器との戦いを経験しており、以前のように遅れを取ることは無い。

 例え宇宙船の装甲を使っていようとも同じ素材を組み込んだ鋼鉄棍(メタルシャフト)はびくともしない。

 

「おらっ!うぉらっ!」

 

 切ると言うより叩き付けるに近い。リョウは雑になってきたその斬撃を受け流し、頬とふくらはぎを叩きバランスを崩させると鋼鉄棍を胴に突き刺し持ち上げ後方に投げ落とす。

 

「うぉらっ!」

 

『ゴハッ!!』

 

 前転するように背中から落ちたデスガンへと鋼鉄棍をバットのように持ち替えると野球のスイングのように顔面へと振るった。

 

「どんどん行くぜっ!」

 

 

 

 

 

 

 

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「はあぁぁぁっ!」

 

 所変わってキリトと闇風の戦場。

 闇風の愛銃である超軽量短機関銃のキャリコM900Aから放たれる弾幕を掻い潜る、そして足元の砂が水飛沫のように舞い上がる程の脚力で闇風へと突っ込み光剣を振るう。

 

「チィッ……ぐっ!」

 

 しかし闇風はキリト以上の速度で後へと下がるとそのまま機関銃を連射する。

 キリトは避けられた事に舌打ちしながらも体勢を立て直し向かって来る弾を斬りながら弾幕が薄くなる場所まで下がろうとする。

 

「逃がさん!」

 

「くそっ!」

 

 だがキリトが安全な場所まで下がろうとすると、今度は闇風が距離を詰めて来る。

 

 キリトの戦法は至ってシンプルだ、光剣で弾幕を掻い潜り高いSTRとAGIにより一撃で相手を倒すと言うもの。

 しかしキリトには唯一の弱点が存在する、それは射撃が得意では無い事、つまり剣の届かない距離に対する攻撃方がほぼゼロという事だ。

 そして闇風はキリト以上のAGI特化型であり、常に付かず離れずの一定の距離をキープし射撃を行って来る。

 

(くっ……速すぎる。何とか距離を詰められれば……)

 

「休んでる暇はないぞ!」

 

「チィッ……!」

 

 剣の届かない距離でありながら弾幕を防ぎ辛い、その為キリトは予想以上の苦戦を強いられていた。

 

 

 

 

 

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「すぅ………はぁ…………」

 

 対してシノンと銃士Xの戦いは至って静かなものだった。

 先程の狙撃で互いの位置がバレた以上、バレットラインが見えてしまい狙撃は通用しなくなる。

 ならばスナイパー同士がするのは一つ、互いに息を殺し姿を隠す事。

 移動が完了し丁度前回の狙撃から60秒が経つ、これにより再び互いの位置が分からなくなりバレットラインは消失する。

 

 AGI型の激しい動きの戦いとは逆にスナイパー型の戦いは冷静な読み合いだ。

 先に獲物を捉えた方が勝つ。シノンは銃士Xの移動先をある程度予測し暗視スコープを覗く。

 

(いたっ!)

 

 同性でありながら見惚れてしまうほどに美しい女性が側面を見せている。

 絶好の狙撃のチャンス、後は引き金を引くだけで勝負がつく。

 

(………待って、何かおかしい)

 

 しかし引き金に指をかけそうになるのをギリギリのところで止める。

 

(確か前にもこんな事が……)

 

 シノンの脳裏に映ったのは初めてリョウと戦った時の状況。あの時も完璧な狙撃チャンスにも関わらず手痛いカウンターを食らったのを思い出す。

 苦い経験を思い出したシノンは一旦狙撃を止め状況判断に徹する事にする。

 

(よく見たら狙撃を狙ってるにしては体勢がおかしい……それにここまで生き残ったスナイパーがこんな簡単に隙を見せるとは考えずらい)

 

 狙うのは簡単、だがそれ故に誘われているようにも感じる。

 普通狙撃をするのならもっと体勢を低くし銃身を安定させる、立って撃つ人もいるがこの状況では珍しい、特に彼女の持っているライフルは反動が高くあの体勢で狙撃を狙うには不適切だ。

 そして銃士Xは両足で立ち上がってスコープを覗いている、まるで狙撃の安定性よりもいつでも回避出来るようにしてあるように見える。

 

(睨み合っている時間が惜しいここは賭けに出よう……)

 

 銃士Xの考えている事は分かった、しかしキリトとデスガンの方も気になる以上早く加勢に行きたいシノンは敢えて誘いに乗ることにした。

 彼女の美しい横顔へと照準を合わせ引き金に指をかける。

 だが引きはしない、あくまで指をかけるだけ、それにより弾は発射されずバレットラインだけが彼女へと向かって行く。

 

「……っ!」

 

 その瞬間、先程まで正面を向いていた銃士Xがシノンの方へと振り向くと直ぐに飛び退き射線から離れM14EBRを向ける。

 

(やっぱり罠!)

 

 予想通り既にシノンの位置はバレていたようだ、狙撃を誘い次弾を放つ為の隙をついて確実に仕留める算段だったのだろう。

 

(けど、分かっていれば!)

 

 それを予測していたシノンは横に転がるようにして相手の狙撃を回避し再び照準を向ける。

 バレットラインがフェイントだった事に驚きの表情を見せながらも銃士Xはもう一度狙撃を試みる。

 

「……っ!」

 

 しかし引き金を引いたのはシノンの方が一瞬早かった、ヘカートの威力により胴体を吹き飛ばされ照準がズレた銃士Xの弾はシノンでは無く彼女のヘカートのスコープへと当たる。

 

「危なかった……もし一瞬でも遅かったら……」

 

 砕かれた自分のスコープを見ながらそう呟く。

 作戦は読んでいた、だがそれでも予想以上に次の狙撃が速かった。

 もし少しでも遅れていたなら代わりに自分がこうなっていた、そう思うとゾッとする。

 

「同じスナイパーとして貴女と戦えた事を誇りに思うわ」

 

 あの日リョウに負けていなければ今回の勝利は無かっただろう。

 同じ性別に同じ戦法、そんな強敵に出会えた事に心からの敬意を払いながらもキリト達の方へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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「はぁ、はぁ……」

 

 全身に血のように赤いダメージラインを残し息を整えるキリト。

 そんな彼の動きに注意しながらキャリコM900Aのリロードをする闇風。

 

「苦しそうだな。自分より速い相手とは戦った事はないのか?」

 

「あるけど、そいつらは銃なんて持ってなかったからな」

 

「それもそうか」

 

「あんたもALOに来てみたらどうだ? 歓迎するよ?」

 

「誘いは嬉しいが、生憎こっちの方が性に合ってる。しかしここまでやるとは驚いた、もっと早い決着を計算していたんだがな」

 

「だったらもっと近づいて来たらどうだ?」

 

「いや、遠慮させて貰う。お前のような強者(つわもの)相手に油断するのは危険以上に失礼だからな」

 

 軽口を交わしながら互いに隙を窺う。

 キリトの予想以上の粘りに予備のマガジンが少なくなっている、その為無駄な弾の消費を抑えたい闇風。

 だが闇風に焦りはない、何故ならばキリトが自分へと向かって来る事が分かっているからだ。

 その証拠は彼が持っている光剣。

 攻撃力は高いがエネルギーは無限では無い、光剣を失えば銃弾を防ぐ術はなくなる。

 闇風の計算ではそろそろエネルギーが尽きる頃、つまりキリトは嫌でも闇風への特攻を余儀なくされているのだ。

 

(くそ、考える時間も無いのか……)

 

 キリトもその事は分かっている、あと数分としないうちに光剣は使い物にならなくなるだろう。

 闇風の射撃が止まっている間に体制を立て直したかったのだがそんな時間は無い、デスガンがシノンの方に行く可能性もある以上次の攻撃で勝負を決める必要がある。

 

「いくぞぉっ!」

 

「来るか」

 

 砂を蹴り闇風へと向かって駆ける、キリトに対し闇風はそれ以上の速度で距離を保とうとする。

 何度も繰り返されたそのやり取り、しかし今回は少し違った。

 

「む?」

 

 強く意気込んだキリトは向かって来ると思いきや直ぐに後方へと下がる。

 

(無駄に弾を消費させる作戦か? そうはさせんぞ)

 

 ここまで追い込んだ獲物を逃すことも他のプレイヤーに譲るつもりも無い、闇風は全速力で逃げるキリトへと向かい照準を合わせる。

 

(掛かった!)

 

 何度も繰り返されたやり取り、だからこそ引っ掛かると確信していた。

 キリトは向かって来る闇風へと背中を向ける。

 急に背中を向けたキリトに闇風は不審に思いながらもこのチャンスを見逃すはずが無く引き金を引こうとする。

 だが引き金が引かれるよりも早くキリトは、己のSTRを全開にし足元の砂を後ろに蹴り上げる。

 

「何っ!?」

 

 キリトの脚力によって蹴り上げられた砂が、巨大な津波のように盛り上がり闇風の視界を覆い隠す。

 

「く!何処に……」

 

 盛り上がった砂が風に舞い砂塵へと変わる。

 こうなっては速さは意味を成さない、先に見つけた方が勝利する。

 

「貰った!」

 

 先に見つけたのはキリトだった、砂を起こした本人である以上一瞬早く見つける事が出来た。

 反応遅れた闇風へと光剣を向ける。

 

「……っ!」

 

 だがその瞬間紫色の刃から光が失われる。

 光剣が消える、何もおかしい事では無いエネルギーがついに尽きてしまったのだ。

 

(くそっ! ここで限界か……)

 

 よりにもよってというところで消えてしまい心の中で舌打ちをしながらも光剣を手放し左胸のナイフへと手を伸ばす。

 だがそんな暇を与えてくれる相手では無い、光剣を失い完全な無防備となったキリトへとキャリコM900Aを向ける。

 赤いラインがキリトの体を照らす。

 

「運が無かったな………っ!?」

 

 だがその瞬間、二人の間に割り込むように一本のバレットラインが放たれる。

 

(狙撃だと……銃士Xが裏切ったのか?それとももう一人の……)

 

 銃士Xとはあくまでこの二人を倒すまでの一時休戦だった。なのでもう一人を倒した後闇風を攻撃してもおかしくは無い。

 どちらにせよ身の危険を感じた闇風は回避を選択する。

 

「うおぉぉぉぉぉっ!」

 

 だがキリトは闇風への攻撃を選んだ。

 彼にはこの狙撃がシノンのものだという確信があった。

 理屈や計算では無い、ただ一緒に戦う事を誓った仲間を信じていただけだ。

 

(シノンが放ったこの幻影の一弾(ファントムバレット)!絶対に無駄にはしないっ!)

 

「くっ!」

 

 最大のチャンスを手に入れるべくナイフを持ち闇風へと向かう。

 しかし相手も伊達にトッププレイヤーでは無い、驚きながらもAGIを生かしナイフの届かない所まで距離を取ろうとする。

 ただでさえAGIで劣る上にリーチの短いナイフだ、このままでは届かない。

 

「くっ……逃すかぁっ!」

 

「何っ!?」

 

 だがキリトだって実戦の経験では負けていない、キリトは後ろへと手を回すと腰のホルスターにセットしたファイブセブンを取り出し乱射する。

 射撃は得意では無いがこの距離なら関係無い、細かい照準も付けず放った弾は闇風の体を捉える。

 

「ぐぅ……」

 

「はあぁぁぁぁぁっ!」

 

 予想外の射撃を受けた闇風の動きが鈍くなったところへとナイフを振るう。

 自分が得意とする二刀流ソード・スキル《ダブル・サーキュラー》をナイフとハンドガンで再現したのだ。

 

「うぐ……」

 

「うおぉぉぉぉぉっ!」

 

 ダメージの少ないナイフとハンドガンの攻撃に何とか反撃を試みようとする闇風。

 しかしそうはさせまいとキリトは闇風の腕や足を主にナイフで斬りつけ、その後隙を消すようにファイブセブンを放つ。

 その見事としか言いようの無い太刀筋に闇風は反撃が出来なくなる。

 16もの連撃の後彼の目には二刀の剣を振るう黒い剣士の姿が映ったように見えた。

 

「ふ……この大会でAGI型の有用性を蘇らせるつもりだったんだがな」

 

 そんな彼の呟きは何処か悲しそうに聞こえた。

 

「AGIを高めた者同士の勝負だったんだ。この戦いを見て誰もAGI型が不遇なんて思わないさ」

 

「……そうかも知れないな。……いずれリベンジをしたいものだ」

 

「勘弁してくれアンタとは相性が最悪なんだ。勝ち逃げさせてもらうよ」

 

「……待っているぞ」

 

 砂の上に大の字で倒れた闇風は清々しそうに口元を緩めその姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

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『ウオォッ!!』

 

 飛び上がり全体重を乗せエストックを叩きつけようとする。

 

「うぉらっ!」

 

 しかしリョウは鋼鉄棍を地面に突き刺すと棒高跳びのように体を上げるとそのまま蹴りでデスガンを蹴り飛ばす。

 

『うぐ……オノレぇ!』

 

 砂の上を転がったデスガンは懐から黒い拳銃を取り出す。

 黒星・五十四式、2人のトッププレイヤーを撃ち抜いた銃をリョウへと向け放とうとしていた。

 ターゲットを殺す為の拳銃を使用する事、それは彼の流儀に反する行為だった。

 だがそんな冷静な判断が出来ないほど頭の中が怒りに満ちていた。

 

『グアっ!?』

 

 だが銃の撃ち合いはリョウの土俵だ。

 デスガンが引き金を引くよりもリョウが懐からコルト・パイソンを引き抜き撃つ方が早かった。

 放たれたマグナム弾は黒星・五十四式の銃口を捉え内部から破裂させ拳銃を破壊した。

 その衝撃にデスガンは腕を押さえる。

 

「剣の腕はそこそこだが銃の腕はイマイチだな」

 

《ダミー》

『クソッ!まだだ……まだだぁっ!!!』

 

「………っ!なんだ?」

 

 吠えると共にデスガンの体が橙色のオーラに包まれる。

 リョウはその光景に見覚えがあった、エクストラスキルが発動される時の姿だ。

 

(奴の能力は幻覚のはず……一体何を?)

 

 オーラは大きく燃え上がった後8つに分かれ人の形を作り出す。

 それはデスガンと全く同じ姿をしていた。

 

(幻覚……なのか?だがそれにしては……)

 

 本体以外の8人に増殖したデスガンが陽炎のように体を揺らしながらゆっくりとリョウを取り囲むように近づいて来る。

 そしてリョウにはその分身達の足元の砂にハッキリと足跡が残るのが見えた、幻覚では無く実体を持った分身だ。

 

『ファントム・ベイン!!!』

 

 円を描くように取り囲んだデスガンの分身達はエストックを構え一斉にリョウへと突っ込んでくる。

 リョウは鋼鉄棍を両手で構えると360°からの一斉攻撃に備える。

 

「くっ……ちっ!……」

 

 8人による同時攻撃、最小限の動きで捌いていくが驚いたことにこの分身達一人一人の速さも力もデスガンと全く同じなのだ。

 流石のリョウも無傷では捌けず体に痛々しいダメージラインを残して行く。

 本体を倒せばいいのかも知れないがシャッフルするようにリョウの周りを回っている為既に本体を探すのは困難である。

 

(どうする?ハイパーセンスで……いや全部が実体を持っている以上あまり意味が無い)

 

 全ての分身が実体を持っている以上、ピンチに対して警告を出すハイパーセンスは意味を成さない。

 たとえ発動したとしてもその攻撃に体が反応出来なければ意味がないからだ。

 剣技は見切れる。しかし数が多すぎるのだ、見切れていても身体が追いつかなければ意味が無い。

 

(少し危険だが確証を得る良い機会か……)

 

 リョウは鋼鉄棍を地面に突き刺し目を閉じ完全な丸腰状態となる。

 観念したように見えたデスガン達はエストックの切先をリョウへと向ける、狙いは全て急所へと向いていた。

 掛け声と共に一斉にリョウへと向かって《スター・スプラッシュ》を放つ、前後左右全てからの同時攻撃だ。

 

「…………」

 

 精神を集中させ心臓が高鳴りハイパーセンスが発動する、周りがスローモーションになったように見え自分にピンチが迫っている事が嫌でも分かる。

 だが身体が反応に追いつかない、64もの剣の弾幕を防ぐ術は無い。

 

 そう思っていた。

 

(っ!?……これは!)

 

 突如リョウの体に紫色のオーラが纏われる、デスガンにはその光景に見覚えがあった、自分と同じくエクストラスキルが発動したのだ。

 その瞬間リョウの体から重みが無くなり力が溢れ出す。

 

 《ジョーカー》が発動したのだ。

 

「っ……はあぁっ!!」

 

 ジョーカーの力により、スローモーションの世界の中自分だけが本来のスピードで動けるような感覚に変わる。

 自分へと向かって来る剣の連撃を避ける。

 肘、膝、裏拳、後ろ蹴り、右ストレート、回し蹴り、左アッパー、8方向からの連撃に対しカウンターを叩き込む。

 ジョーカーのステータス強化とハイパーセンスの反応速度が合わさった動きは既に人間の限界を超えていた。

 

『何だとっ!?』

 

 最後の1人が再び《スター・スプラッシュ》を放つのを体勢を低くし回避すると右拳に力を込め《ジョーカー・カウンター》をボディへと叩き込んだ。

 

『ゴハッ!……ゴホッ!ゴホッ!』

 

「おっと本体はお前か。運が良いな、ロシアンルーレットとか向いてるかもな」

 

 そう言いながら自分の拳を見てみると既にジョーカーは消失していた。

 

(やはりな、ジョーカーの発動条件は()()()()()()()()()()()()

 

 バザルト・ジョーとの決闘の状況、スカルと言う強敵と出会った時、そして今のタイミング。

 どれだけ練習しても発動しなかった為ある程度は予想していたが、ジョーカーが勝手に発動した理由に確信が持てた。

 ジョーカーの能力、それは己のピンチに反応してステータスを強化する。

 しかもスカルと戦った時よりもオーラが弱い事からピンチの度合いによって出力の高さも変わると言う事だ。

 

「ったく、クセの強い子猫ちゃんだぜ」

 

『何故だ、キサマ何をした!』

 

「大した事じゃねぇ、お前とおんなじ手品さ」

 

『ふざけるな!何故キサマ如きがエクストラスキルを……!あの人はオレを選んだんじゃ無いのか!!』

 

(『あの人』……?)

 

 デスガンはリョウがその誰かからスキルを貰った思っているようだ。

 その誰かが気にはなったが今は考えている暇は無い。

 

『ウオォォォォッ!!』

 

 怒り憎しみ嫉妬の混ざり合った感情をぶつけるようにエストックを振るう。

 だがそんなヤケクソな剣などリョウには通用せず鋼鉄棍で受け止められる、そのまま力任せに鍔迫り合いを始める。

 

『オレは強い!なのに何故……!』

 

「力を求めるのも得るのも罪じゃねぇ。けどな奪うだけの力なんざ、軽いんだよ!!」

 

 前にシノンに言い、そしてかつて自分が師匠から教えられた事だ。

 鋼鉄棍を振るいデスガンを弾き返す。

 

『まだだ、ラフィンコフィンは終わらない、終わらせない!オレ達が!』

 

「いいや終わりだ。ラフィンコフィンもSAOもお前達のくだらない殺しもな! さぁ、お前の罪を数えろ!」

 

 距離が離れた隙をつきリョウは懐から赤色と銀色の弾を取り出す。

 

《ヒート弾・メタル弾》

「はああああああああああぁっ!!」

 

 二つの特殊弾を差し込み鋼鉄棍の両端が炎に包まれる、リョウはファイアーダンスのように豪快に回し火力を高める。

 炎をジェット機のように噴射させるとその勢いのまま砂を削りながら一瞬にして距離を詰め鋼鉄棍を横薙ぎに叩きつける。

 

「メタル・ブランディング!!!」

 

 炎によって推進力と攻撃力を強化された鋼鉄棍による必殺の一撃。

 その衝撃は宇宙戦艦の装甲で作られたエストックを粉々に打ち砕き、巨大な炎の爆発を巻き起こした。

 

 爆煙が晴れるとデスガンが倒れている、その仮面は先程の衝撃で欠け口元が見えていた。

 

「オレを逮捕しても無駄だ……あの人が助けてくれる……」

 

「答えろ、あの人ってのは誰だ? お前に《ダミー》を渡したのは誰なんだ?」

 

 力の抜けたデスガンの首元を掴み喋らせる、この事件に手を貸した人間がいるのなら見過ごせはしない。

 デスガンは力の無い声で一つの単語を声に出した。

 

「……"E"」

 

「なに?」

 

「あの人は王だ。オレ達の……この世界の!」

 

「何を言ってーー」

 

 まるで狂信者のように目を見開き叫ぶ。

 言葉の意味を聞こうとしたがデスガンの体は消滅してしまう、HPが尽きた事でBOBから脱落したのだ。

 最後に言っていた事だけが心残りだが捕まえてから白状させれば良い、非公式で無理矢理BOBにいる以上デスガンを倒した今長居は無用だ。

 リョウは直ぐに翠子に連絡をしBOBからの退出する事にした。

 

「………頑張れよ、シノン」

 

 もう直ぐ決着が着く頃だろう、リョウは消える最中彼女が居た塔を見て小さく呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

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「ありがとう。助かったよシノン」

 

「どういたしまして。それよりデスガンは?」

 

「シノンの方に居たんじゃないのか?」

 

「私が戦ったのは女性のプレイヤーだったわ。たぶんデスガンの不思議な力のせいよ」

 

「オレの方もさ。男のプレイヤーだったけど闇風って言う別のプレイヤーだった」

 

 キリトと合流し互いの状況を確認し合う。

 闇風……私もよく知ってる有名なプレイヤーだし彼がデスガンって事は無いはずだ。

 

「ってことは最後のプレイヤーのスティーブンがデスガンか……スティーブンは今どうしてる?」

 

「ちょっと待って、マップを見てみるから……」

 

 自分の中で最高の狙撃戦が出来たのは良かったがデスガンが生き残っている以上油断は出来ない。

 マップを確認して最後のプレイヤーの位置を探ろうとするが

 

「……あれ?」

 

 Sterbenが居ない、マップのどこを見ても3人目のプレイヤーが見当たらない。

 そもそも残りのプレイヤー数の所が"2人"になっている。

 

「これってどういう事だ?」

 

「分からないわ。戦っている最中に高所から落ちたりして脱落したのか、それとも私たちが戦う頃には既にあの2人に負けていたのかも……」

 

(そんな事があり得るのか?あのデスガンが……でもあの2人もかなりの実力だった、2人がかりなら負けてもおかしく無いのかも……)

 

 キリトも驚いているがこのマップのプレイヤー数が間違っている事は考えられない。どんな理由であれデスガンの脅威は一旦去ったと考えてもいいのかも知れない。

 

「てことは残りはオレ達2人だけか」

 

「そうなるわね」

 

「どうする? お互いに装備が壊れてしまったし自爆して同時優勝ってのも考えられるぜ?」

 

 キリトのメイン武器である光剣はエネルギーが切れ無茶な使い方をしたナイフは折れてしまっている。

 私の方もスコープが壊れ狙撃なんて出来ない状態。

 

 でも私の答えは決まっている。

 

「ふざけないで、ここまで来てそんなシラける決着なんかゴメンよ。それにデスガンの件が片付いたら勝負するって約束でしょ?」

 

「ははっ!それもそうだよな」

 

 色々あったが目標としていた優勝まであと少しなのだ。同時優勝などでは無くちゃんとした自分の力で優勝を掴みたい。

 それはキリトも同じみたいで、見た目にそぐわず闘うのが好きなようだ。

 

「じゃあどうする? お互い得意武器は壊れてしまったけど」

 

「メインが切れたらサブで戦う、ガンゲーの基本よ。ハンドガンで決着つけましょ?」

 

「分かった。なら……」

 

 キリトは10メートル程離れると腰からグレネードを一つ取り出す。

 

「こいつが爆発したら開始ってことで!」

 

 私が頷くとキリトはグレネードの栓を抜き遠くへと投げる、数秒後の爆発と共に最後の戦いが始まる。

 私は後方にキリトは前方に走り出す。

 キリトの銃の腕は知っているこの距離でもギリギリ当たるかどうか、だから距離を詰めて勝負を仕掛けるつもりなのだろうがそうは行かない。

 確かキリトは弾道予測線を予測して動いていると言っていた。

 だから私は引き金に指を掛けるだけのフェイント《ファントム・バレット》で動きを牽制させる。

 動きを読み足下へとラインを放つとキリトはジャンプで回避を試みる。

 だけどそれは私の予測通り、キリトのジャンプの速度を計算しその軌道に乗せるように銃口を向ける。

 キリトも私の考えがわかったのかファイブセブンを連射する。

 しかし上下の高低差の射撃は難しいそれも走りながらだ、キリトの放った弾は外れ代わりに私の弾がキリトの急所へと吸い込まれていく。

 

「………ナイスガッツ、シノン」

 

 腕、銃、胸、そして頭を撃ち抜かれたキリトは消滅し広い砂漠の真ん中に私だけが残る。

 

 その瞬間勝利を告げる花火が打ち上がった。

 

 

 

 

 

 

 

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《遼、今さっき決着が付いたみたいよ。シノンの優勝よ》

 

「そうか、そいつはめでたいな」

 

 現実世界に戻りバイクを立て直す。

 そこそこ長い時間放置してしまったが爺ちゃんが上手いこと言ってくれたみたいだ。

 全身にゴミの匂いがするのが最悪だがそうも言ってられない、デスガンの共犯者を逮捕するまでは気を抜けない。

 とは言ってもシノンも無事ログアウトしたみたいだししっかりと戸締りしていれば大丈夫な筈だ。

 

《お疲れ様、遼》

 

「紅葉もサンキューな。助かったよ」

 

《あたしは何もしてないわよ。ただ近くで見てただけだし》

 

「それが助かったって言ってんだよ」

 

 近くで誰かが見守ってくれるそれだけで何倍も力が出るものだ、それが紅葉なら尚更な。

 

「そう言えばお前よくドイツ語なんて知ってたよな」

 

《別に大した事じゃ無いわよ。学校で習ってただけだから》

 

「学校で?」

 

《うん、Sterben(ステルベン)ってドイツ語で〝死〟って意味で患者が亡くなった際に使われる医療用語なのよ》

 

「へーそうなのか。案外直球なネーミングだな、ふーん医療……………」

 

 そこまで声に出した時頭の中に何かが引っかかる。

 何故デスガンはそんな事を知っていたのか、単純に調べただけと言う可能性も高いが俺の直感はもっと別の答えを導き出した。

 

 シノンの住所を知っている、医療関係者、デスガンの事を知っている人物。

 

 複数のキーワードが頭に浮かび上がり、考えるよりも先に直感によってスラスラと記憶が遡る。

 

『犯人は医療関係者かもな……』

 

『うち病院だからね。父さんと医学部に入学するって約束したし』

 

『気をつけた方が良いよ、デスガンは君のような運が良いだけのプレイヤーが大嫌いだからね……』

 

 頭の中に1人の少年の姿が浮かび上がる。

 

 シュピーゲルこと新川恭二の姿だ。

 

「まさかっ!!」

 

 最悪のシナリオが頭に浮かんだ俺は詩乃のアパートへとバイクを走らせる。

 確証も証拠もない。なのにデスガンと戦っている時以上に鼓動が強くなっていく。

 杞憂であって欲しかったがこう言う時の俺の勘は嫌なぐらいに当たってしまうものだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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《ジョーカー》
XTRA NO.10のスキルで《ピンチの時程強くなる》能力。
自動発動型のスキルで自分で発動する事はほぼ不可能な上ピンチ度合いに合わせて力も強くなると言う癖の強い能力、その上ピンチの条件も曖昧でただ体力を減らすだけでは発動せず感情の度合いも必要。
しかし一度発動すれば全ステータスを強化してくれるまさにババにもなり逆転の切札にもなる能力。
 浮かび上がるJの文字はピエロや道化師の靴をイメージしている。


《ファントム・ベイン》
ダミーの能力とソードスキルを掛け合わせたデスガンの奥義。
ダミーのエネルギーを利用して完全なる分身を作り出す。
分身の能力は本人と全く同じで一度に7体まで可能性、普通のプレイヤーなら一撃で終わらせられるほどの奥の手である。





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第四部 誰のサイドケースから見たい?

  • キリト
  • アスナ
  • クライン
  • エギル
  • シリカ
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