ソードアート・オンライン フェイタルバレットー切札の弾丸ー 作:トライダー
《残影の荒野》GGOの中に存在するステージの一つ、緑の少ない荒野とかつてはあらゆる兵器や生物の実験を行なっていた研究施設があったとされるステージ、その為未だ発見されていないお宝やレアアイテムがあると言われている。
「レイちゃん!そっちに行ったわよ!」
「はいなのです!」
そんな荒野の中クレハが一体のエネミーを追い詰める。
クレハのスピードとサブマシンガンの連射を嫌がって距離を取ろうとする巨大なサソリのエネミー、しかしその先には光線銃を持ったアイが居る。
アイが構えた光線銃からサソリの尾を狙って三発放つ、一発二発は外れるが三発目が尻尾の先端に当たりエネミーを怯ませる。
「マスター!チャンスなのです!」
「わかった、クレハっ!」
「了解、グレネード!」
リョウの合図と共にクレハとほぼ同時にグレネードを投げる、プラズマグレネードでは無く爆発と衝撃をより強くしたものだ。
ほぼ同時に真逆の方から投げられたグレネードの強い衝撃はエネミーを挟み込むように押し潰した。
爆発の後にはエネミーの姿が残っておらずリョウ達の経験値だけが増えていた。
「討伐終了、だな」
「マスター、クレハすごいのです」
「ありがとう、レイちゃん。結構狩ったしそろそろ戻りましょうか」
現在クレハ達は残影の荒野にてリョウのレベル上げと資金獲得を目的としたエネミー狩りをしていた。
「そう言えば結構貯まったんだしゃないの?」
「ああ、これとこれ……あとこれがクリアしたからな」
サブクエストを受ける事によって金策も順調に進んでいて銃一つなら買えるぐらいには貯まっている。
「今度は服に全部突っ込んだりしないでよね」
「わ、わかってるよ!」
「マスターのレベルも着実にアップしています。これも優秀なわたしのナビゲートのお陰なのです!」
「いやどっちかって言うとナビゲートしてたのはクレハだろ? 優秀って割にはステータスは低いし」
「それは仕方がないのです。アファシスはサポートAIなのでマスターより強くなれません、つまりわたしが弱いのはマスターがヘナチョコだからなのです」
「生意気言うんじゃねぇーよアホシス!」
「ふえ〜ほっへをひっらないへふはさい〜」
生意気な事を言うアイのほっぺを掴みこねくり回す。
アイの言う通りここ数日のエネミー狩りでリョウのレベルは少しずつだが上昇している、ちなみにアファシスのステータスはプレイヤーと比例して上昇していくようだ。
「ステータス振りはどうするの?AGI型?それともSTR?アタシとしてわね……」
「おい、ちょっと待てよ。んな専門用語色々言われても分かんねぇよ」
ゲームの知識に疎いリョウからすれば普段使わない英単語を並べられても訳が分からない。
「まぁそうね。せっかくだし武器を見てから決めましょう」
GGOではSTR(筋力)がある程度高くないと武器が装備出来ない。
強い武器であればある程必要とされるステータスは高くなり、STRに振りすぎると他のステータスが低くなり、だからと言って少ないと強い武器が装備出来なくなる。
振り直すことが出来ないのでステータスの割り振りはかなり重要である。
クレハから話を聞いたリョウは彼女がオススメする武器屋に着くまでに考えを巡らせた。
⭐︎
「ここよ!」
「んだこりゃ、随分古い店だな……」
クレハを連れられやって来たのは彼女のお気に入りのガンショップ、
「分かって無いわね〜こう言った古い店にこそ素人には分からない掘り出し物があるのよ」
「いやGGOって最近のゲームだからこの店開いて数年もたってないだろ? そもそもVR空間で店が劣化していくかよ」
リョウの言う通り現実とは違いデータなので劣化するはずがない、恐らく古いのは店主の趣味だろう。
「こ、細かい事は良いのよ! アタシが言いたいのはこの店は安くて質の良い銃が多いって事よ」
「まぁそう言うなら任せるけどよ」
「じゃあ此処で待ってて、店主と話をつけてくるから」
そう言うとクレハは店の奥へと入っていく、その間リョウとアイは話でもしながら待つ事にする。
「しかしいっぱいあるな、この中から一つ見つけるなんて大変だろ?」
「武器選びは任せてください、マスターに現実を教えてあげますよ」
「……それ意味合ってんのか?」
すると二人の話を邪魔するかのように顔をゴーグルで隠した怪しげな男が話しかけて来た。
「やや!お兄さんそれアファシスタイプXじゃないか? 超レアアイテムじゃん!」
「……あ?なんかようか」
明らかに怪しい男からアイを隠すように立ち塞がりながら声にドスを効かせ追い返そうとする。
「その通り!わたしはタイプXしかもナンバー00なのです!レア中のレアなのです」
しかし肝心のアイは褒められた事を喜び返事を返してしまう。
「おい! 知らない人に話しかけられても無視しろって教えただろ?」
「あ、そうでした。喋っちゃダメなのです」
まるで娘を叱る親の様に注意されたアイは両手で口を押さえる。
だがゴーグルの男は手応えを感じたのかニヤニヤしている。
「いやいや良い話がありましてね。そのアファシスタイプX、高額で買い取るって人が居るんですよ。なんと700万!入手情報だけでも300万、合計1000万クレジット出しますよ」
1000万クレジット、序盤の金策に困っているニュービーにとっては喉から手が出る程の大金……
「ふ〜ん……」
……がリョウは興味無さそうにクレハが入って行ったショップを見つめている。
「あ、あれ?1000万ですよ……気になりませんか?」
「こいつの価値はそんなに安くねぇよ。それに情報って言っても大会で偶然見つけただけだ、お前に売れるもんはねぇよ」
全くの無反応のリョウに驚いている男にバッサリと言う。
「はい、わたしはマスターの物なのです!」
笑顔で胸を張る彼女の頭を優しく撫でると気持ち良さそう目を細める。
たった数日でもクレハと一緒に同じ時間を過ごしたのだ、子供のように眩しい笑顔を見せる彼女をただの玩具のように扱うつもりはリョウには無い。
「そ、そんな事言わないで今ならこのレア銃を付けますよ!」
「……はぁ、しつこいぞオイ」
だが今日の男はしつこくねだってくる、いい加減にしつこく思い怒鳴ってやろうかと思った時。
「オイ何してるっ!」
リョウよりも数段低い男の声が響く。
表れたのはリョウより一回り大柄の男、左眼には大きな傷がありカタギに見えない厳つい男だった。
「げっ!じ、ジョーさん……」
「強引な交渉はマナー違反だろうが、しかもニュービー相手に詐欺まがいの商談とは運営が許してもこのオレが許さねぇぞ!」
「す、すいやせんでしたー!」
傷の男が一睨みするとゴーグルの男は腰が向けた状態で走って逃げ去って行った。
「ったく、逃げ足の速いやつだ。大丈夫かお二人さん?」
「ああ、助かったよ。アンタのお陰で騒ぎにならずに済んだ」
「気にすんな、せっかくの銃好きが集まるGGOだ、つまんない理由で辞めて欲しく無かったからな」
傷の男はニカッと笑顔を見せる、見た目は厳ついが人の良さを感じる。
リョウはその姿に知り合いの警察官の姿と重なった気がした。
「マスター、このオジサンその2は顔は怖いけど良い人なのです」
「オジサン!?その2!? おいおいそれは無いだろ、オレ様には『バザルト・ジョー』って名前があるんだからよ」
「ああ俺はリョウ、コイツはアファシスの……」
「よろしくなのです! レイちゃんと呼んでください」
恩人な上に先に名乗られた以上リョウ達も簡単に挨拶を返す。
「しっかし、何であんなにしつこかったんだ?」
「ニュービーだからって舐められたんだろうな、ある程度の金を出せば靡くだろうってな」
「? 何で俺がニュービーだって知ってんだ?」
リョウの装備は確かに初期装備だが服装だけは変えていて、見た目だけならそこそこの経験者かと思われる格好だ。
「ああそれは簡単だ、前の大会の動画を見たんだろうぜ。オレもそれでお前達の事を知ったからな」
GGOの大会は不正対策の為に全て録画されており、一部ならば後から動画として観ることが出来るのだ。
「そうだったのか、なら次からはもう少し警戒した方がいいな」
「そう言う事だ、次も助けてやれるとは思わねぇ自分で何とかしろよ。ま、さっきの様子を見るにオレ様が居なくても何とかしそうだったがな」
「なんだ、随分タイミングが良いと思ったが最初から見てたのかよ」
「ハハハッ!GGOのプレイヤーである以上商売の邪魔をする権利は無いからな、悪く思うなよ」
そう言うとジョーは豪快に笑いながら去って行く、それとほぼ同時にクレハが店の中から戻ってきた。
「何かあったの二人とも?まさかとは思うけどプレイヤー同士で売買して無いでしょうね?信頼できる人じゃ無いと危険よ」
「はい今さっきジョーに助けて貰ったのです」
「ジョー……?」
二人はクレハにさっきあった事を簡単に説明する。
「バザルト・ジョーってランキングに載るぐらい有名なプレイヤーよ、顔が怖かったり頭が硬くて面倒臭い人って聞いたけど」
「ジョーは良い人でしたよ?」
「ああ、結構気の良いオッサンだったぞ?」
「そうなんだ、なら今度お礼言っとかないとね」
「〜♪」
クレハがアイの頭を撫でると子犬のようにに目を細める。
⭐︎
「マスター!これなんてどうですか?」
「ん?ん〜違うな〜」
「ではこれなんでどうでしょう!」
「いや駄目だ」
「う〜難しいのです……」
店の中へと入った三人は早速リョウにあった銃を探す。
「アタシのオススメはサブマシンガンよ。取り回しの良さと連射性が魅力的よ足りない攻撃力はスピードと手数で補うわ」
「ならわたしはガトリングです!高い攻撃力と連射速度が特徴です。重量は重く動きが鈍くなりますがそこはわたしがサポートしますよ」
「う〜ん……弾をばら撒くのは俺の趣味じゃ無いんだよな……」
「だったらコレですロケットランチャー!装弾数は少ないですが一発の破壊力が高く纏めて相手を吹き飛ばせるのです」
「ダメだダメだ、爆発物なんざスマートじゃねぇ」
「ならコレなんてどうスナイパーライフル。アタシは苦手だけど高い威力と弾速と射程距離が特徴よ、高ランクの対物ライフルはGGOでも最強クラスの攻撃力だし相手を一撃で倒せるわ」
「う〜ん惜しいな、悪くは無いけど両手が塞がるのはなぁ。UFGが使えなくなるし、じっと待つより動き回る方が俺向きだな」
次々とリョウに武器を持ってくるがどれもリョウの感性にヒットしないらしく首を横に振る。
「もう!我が儘ばっかり!早く決めなさいよ!」
「まぁまぁクレハちゃん彼にとっては初めての愛銃を決める大事な買い物なんだから少しはね?」
何を持って行っても文句を言うリョウにいい加減にイラついたクレハが怒るがエプロンを付けた中太りの男が嗜める。
彼の名はチョウと言いGGOのプレイヤーでありながら戦場に出る事に興味が無く、ただ銃に囲まれたいと言う理由で自分でガンショップを開いている男である。
ただ好きなだけで無く銃の知識も多くその人の戦闘スタイルに合った銃を見繕うのが得意で一部のプレイヤーから人気がある。
「でもチョウさん!」
「まぁ落ち着いて、という事は君はもうステータスの振り方はもう考えているのかい?」
「ああ、全部のステータスを均等に振ろうと思う。何かに特化するより色んな動きが出来る方がやり易い」
「でもそれだと器用貧乏になるんじゃない?」
「ま、そこは技術と頭脳で補うさ。ようは立ち回りとやりようだよ」
「でもそうなると使える銃は限られちゃいますよね?」
満遍なく振ると言うことはあまりSTRは高くならない、なのでロケットランチャーやスナイパーライフルの様な高威力の武器は装備出来ない、でもマシンガン系武器は好みじゃ無いらしい。
「なる程なる程……ならばコイツならどうかな。」
好き嫌いの多いリョウ、だがチョウも何人ものプレイヤーに合った銃を売ってきた男だ、リョウの望む戦闘スタイルと彼の性格を考え店の奥から一つの銃を持ってくる。
彼が持って来たのはハンドガン、黒い銃身に黒い弾倉の回転式弾倉のリボルバー拳銃であった。
その瞬間、リョウの目の色が変わった。
「こ、コイツは……!?」
「《コルト・パイソン》4インチの銃身で取り回しもしやすく、.38スペシャル弾と.357マグナムを使い分けられマグナム弾の威力はライフルにも劣らない、威力も高すぎる訳ではなくコントロールするのに丁度いい反動だ。装弾数が6発と少なめだがそこもまたご愛嬌、そして何よりカッコいい」
「チョウさん……アンタ最高だ!こう言うのが欲しかったんだよぉ!」
「いや僕もこの渋さが分かる人が来てくれて嬉しいよ」
自分のドスレートのものを出してくれた事と渋い銃の好みの男に出会った事に互いに感動しては二人は抱き合った。
「リボルバー?確かにマグナム弾なら攻撃力不足を補えるかも知れないけど装弾数が心許なくない?せめてデザートイーグルにするとか……」
「はぁ……分かってねぇなクレハ、回転式弾倉のロマンがよう。ま、女には分んねぇよな」
「ミーハーなプレイヤーは実用的な武器ばかり選ぶからね……」
(イラッ)
二人の僅かな冷ややかな視線にイラッとするクレハ。
「とにかく俺はコイツが気に入った。チョウさんコイツをもらうよ」
「毎度あり!大事に使ってくれ」
チョウのお陰でお気に入りの銃を見つけ気分のいいリョウは悠々と購入する。
「あ、そうだチョウさん。ここって銃の整備道具って売ってるか?」
「いや、余り人気が無いから売ってないよ。もしかして欲しいのかい?」
GGOの武器にも耐久力があり無理な使い方をしたり敵の攻撃を武器に受けたりしてしまうと壊れてしまうのだ。
「ああ、こう言った細かい整備が好きだからな。それにせっかく買った相棒だ、なるべく長く使いたい」
それを聞いたチョウは涙を浮かべる。
「感動したよ!何ていい子なんだ!皆んな壊れた銃はすぐに売って、すぐに新しいのを買うんだ!皆んな銃を撃つための道具としか思って無いんだぁ!」
(普通そうでしょ)
「よし!お代はいらない!僕が使っている道具をあげよう」
「本当か!サンキューチョウさん、いや親友!」
「こっちのセリフさ!盟友!」
よく分からないノリのままガバッと抱き合う男2人。
(………何これ?)
クレハはそんな様子を先程の2人以上の冷ややかな目で見つめていた。
⭐︎
「にしても思ったより高いな」
チョウにまけて貰った事でまだマシだが銃とその弾のせいですっかり懐が軽くなってしまった。
「光線銃はエネルギーをチャージするだけで安いけど実弾は一つ一つが結構な値段だからね」
「弾を自作するのって出来ないのかアイ?」
「可能ですよ《鍛治》スキルが必要になりますけど」
「え!そんなのあるのか?」
「はい、《鍛治》のスキルがあればエネミーの素材から作れますし、他にも《改造》や《商売》で自分でお店を開いたりも出来ますよ」
「へーそういうスキルも面白そうだな」
元々機械弄りや細かい作業が好きなリョウはそういったは戦闘スキルに心惹かれ、これからのレベルアップが楽しみになって来た。
「うしっ!とりあえずフィールドに行こうぜ!早くコイツを試してぇ!」
「あ!待ってくださいマスター!」
子供のようにテンションを上げフィールド外へと走っていくリョウとその後について行くアイ。
(アイツが楽しんでくれて良かったわ)
少しムカつきもしたが、彼の笑顔を見てしまうとクレハもまた笑顔を溢しながら二人の後を追うのだった。
「待ってよ二人共ー!」
第四部 誰のサイドケースから見たい?
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キリト
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アスナ
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クライン
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エギル
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シリカ
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リズ
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リーファ
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シノン
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ユウキ