ソードアート・オンライン フェイタルバレットー切札の弾丸ー   作:トライダー

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 大変お待たせしました。
 久しぶりの投稿になります。

 シンウルトラマン凄く面白かったです!

 他にもエピソードZ・ULTRAMAN・タイバニ2 ・ドクターストレンジ、今年は面白いヒーロー作品が多くて自分も大満足です。

 後数ヶ月の風都探偵も楽しみ!

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 道化師とピンク兎と毒鳥

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「んあ?……バニーからか?」

 

 数日かけた依頼がやっと片付き体に鈍い疲労感を感じる。

 とりあえず昼寝でもと目を閉じ数分が立った頃、いい感じに眠りに落ちかけたところでプライベート用のスマホに着信が入り、遼はダルそうにしながらも電話に出る。

 

「なんだよチビ助、くだらない用事なら切るぞ?」

 

《うわガラ悪!?》

 

「ふぁ〜あ……眠たいんだよ……んで? 何のようだ?」

 

《あ、うん。良かったらこれから会えないかな〜って思って》

 

「パス」

 

《早く無い?!》

 

「面倒くせぇ……疲れてるんだよ」

 

《私だってさっき帰ってきたばかりだし》

 

「俺達社会人には仕事があるの、学校で遊んでるお嬢ちゃん達と違ってな」

 

《むぅ……女の子から誘ってるんだよ? ちょっとぐらい考えてくれたっていいじゃん!》

 

「はん、チビ助が色気ついてんじゃねぇよ」

 

 寝ていたところを起こされ半分寝ぼけている遼は、思わず素が出てしまい口調が荒くなってしまう。

 

《…………ふーんそうなんだ。じゃあリョウさんは来ないんだ。いや〜残念だな〜勿体無いと思うんだけどな〜》

 

「……何だよ、ガキのくせに駆け引きのつもりか?」

 

 すると突然、先程までお願いしていたレンが、今度はワザとらしいぐらい棒読みで煽るような話し方に変わる。

 

《いや別に来ないなら良いんだよ? ただ最近出来た友達がリョウさんに会ってみたいって言ってたから誘ったんだけどな〜》

 

「友達ぃ〜?」

 

《うんリョウさん好みの長い黒髪で背が高くてスタイルの良い綺麗なお姉さんなんだけどーー》

 

「今行こうすぐ行こう、どこに行けば良い?」

 

 それを聞いた瞬間、先程までの眠そうな声が一変し、キリッとしたテンションの高いものへと変わる。

 

《…………面倒くさいんじゃ無かったの?》

 

「はーはっはっはっ! そんなわけ無いじゃないか〜せっかくのレディからのお誘いを断るわけがないだろぅ?」

 

 調子のいい遼の姿にレンは少しの安心感を感じながらも、呆れたため息を吐く。

 そしてボソッと呟く。

 

《……わたしだって本当は……》

 

「あん? なんか言ったか?」

 

《な、何でもない! それじゃあいつもの場所で待ってるから!》

 

 消え入りそうな声を遼は聞き取り切れず、一方的に電話を切られそれ以上を聞けなかった。

 

「何か悩みでもあるのか?今度それとなく探ってみるか……いやそれよりも俺に会いたいなんてどんな可愛子ちゃんかな〜。いや〜楽しみだな〜!」

 

 レンの事を心に留めつつ、完全に眠気の飛んだ遼はレンの言っていた女性に心躍らせ、浮かれながらもログインの準備を進める。

 

「待っていてね〜、お姉様〜!」

 

 

 

 

 

 

 

 

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「あっはっはっはっ!!!久しぶりお兄さん!」

 

「お前かよ……」

 

 数分とせずに鼻の下を伸ばしたリョウさんがログインしてくる。

 しかしわたしの隣にいるプレイヤーを見た瞬間、そのだらしなくニヤけていた顔が無表情のものに変わり、次の瞬間膝から崩れ落ちる。

 地面に両手をついて落ち込むリョウさんからドヨーンと負のオーラが見える気がする。

 

「くそぉっ!こんなの詐欺だ!コイツのどこが俺好みなんだ、ええ?!バニーぃっ!」

 

「そんな目で見ないでよ……」

 

 血涙でも流しそうな凄まじい形相でわたしを睨みつけてくるが、そのあまりの哀れな姿に恐怖よりも申し訳なさが出てくる。

 

「最近どぉう?元気してたぁ?」

 

「ええい鬱陶しい! 近づくじゃねぇ『ピトフーイ』!」

 

 肩に手を回そうとしたピトさんをリョウさんは振り払う。

 

「リョウさんピトさんと知り合いなの?」

 

「少し前に知り合ってな、なんかある度に絡んで来るんだよコイツら」

 

「だってお兄さんと遊ぶの楽しいんだもん」

 

「遊ぶのはいいけど、毎回毎回暗殺仕掛けてくんなよ!? この間なんかRPGぶち込みやがっただろうが!」

 

「あの時のお兄さんカッコよかったわよ〜。レイちゃんを庇いながら飛んでくるRPGを撃ち落としてさ〜。お兄さんどんな不意打ちも対処しちゃうから面白いのよね〜」

 

「こっちは毎回心臓に悪いんだよ。わかったろ?バニーもこんなやつと付き合うのやめとけって」

 

「えーでもピトさんいい人ですよ? 色々親切に教えてくれるし。それに襲われるって言っても所詮ゲームの中でのことでしょ?」

 

 わたしも初めてピトさんを見た時は露骨に警戒してしまったけど親切な同性のベテランプレイヤーでわたしと同じ可愛いものが好きとなれば仲良くなるのに時間は要らなかった。

 と言うかぶっちゃけリョウさんより丁寧でわかりやすく教えてくれるし……

 

「さあ親睦を深める為にも三人で買い物でも行きましょうか。実は良いガンショップ見つけたのよね〜」

 

「本当ですか!ちょうどお金も貯まったし新しいの欲しかったんですよね」

 

「おいこら、放って行くなよ!」

 

 まだブツブツ文句を言ってるリョウさんが慌てて追いかけてくる。

 普段あの人の無茶に振り回されているわたしとしては少しだけ気分が良かった。

 

 

 

 

 

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 二人がピトフーイに連れられてやって来たのは、SBCフリューゲル内の裏路地のさらに奥、大通りの光が差し込まず唯一の光源はランタンの火のみの薄暗い場所だ。

 

「おいくっつくなよバニー」

 

「だ、だって〜」

 

 GGOを始めて結構経つが未だにこう言った場所には慣れないレンはリョウの背中に隠れその小さな体を震わせていた。

 リョウもそれが分かっているからか口はガサツになっているが、無理矢理振り解こうとはしなかった。

 

「ほら、ここよここ!」

 

 その状態のまま数分間歩き続けると薄汚れた看板の掛かったガンショップへと到着する。

 ピトフーイが店の扉を開くとさまざまな種類の銃が店の壁一帯に掛かっているのが見える、それ以外にもより高級そうな銃がガラスケースの中に大切そうに並べられている。

 その中のどれもがレア度の高い銃でありしかも表通りの店よりもずっと安い値段である事が分かった。

 

「へーこんな所があるんだ」

 

「俺も初めて来たな」

 

「お兄さんはどこで道具揃えてんの?」

 

「俺はいつも同じ所だよ。あんまり高いの買うとクレハが怒るからな」

 

「へー今度紹介してちょうだいよ!」

 

「へいへい……」

 

 二人の雑談を聞き流しながらレンは店の中を見渡す。

 しかし未だ銃の知識に乏しいレンにはどれに目をつけて良いかわからず店内をキョロキョロしている。

 

「ねぇねぇレンちゃん、この子なんてどう?」

 

「え? これって……」

 

 そんなレンを見たピトフーイが店の壁に架けられた銃を指さす。

 商品の名札には『FN P90』と書かれていた。

 

「なにこれぇ小さくて可愛い! こんな銃があるんだ〜」

 

 大型のライフルやマシンガンと並べられたP90はよりその特徴的な姿をより小さく見せる。

 小さい物が好きなレンにとってはまるで小動物でも見るかのように目を輝かせる。

 

「う……でも高いな。貯金全部使っちゃうよ」

 

「えーでもこの銃掘り出し物だよこのチャンス逃したら他の誰かに買われちゃうよ?」

 

「うーん、そうだけど……」

 

 P90のレア度は最高ランクより一つ下のものであり他の店より圧倒的に安いが、それでも初めて日の浅いレンにとって気軽に出せる値段では無かった。

 

「ほらほら〜今なら塗装も無料だよ? お揃いの色にしたこの子を持ったレンちゃんきっと可愛いだろうな〜」

 

「うーん」

 

 ピトフーイにそう言われてピンク色に染めたP90を抱えて可愛くポーズをとるレンの姿を想像する。

 その愛らしい姿に何としてもこの銃を手に入れたいという意欲が強まるのと同時に、ここまで死に物狂いで稼いで来た全財産を使い果たす名残惜しさが天秤に掛けられる。

 そんなレンは最後の手段に出る。

 

「いいな〜、欲しいな〜。この子を抱きしめたら可愛いだろうな〜。誰か買ってくれないかな〜」

 

「そうだね〜。太っ腹で漢気のあるカッコイイお兄さんが買ってくれないかな〜」

 

「…………………え、俺?」

 

 甘い猫撫で声を出しながらチラッチラッとリョウの方を見る二人。

 二人のやり取りをボーと見ていたリョウは突然巻き込まれ呆気に取られる。

 

「いや買わねぇからな?」

 

「えー!ここでサッと出すもん出すのが男の甲斐性ってやつでしょ?」

 

「そうだそうだー!」

 

「何でお前らに甲斐性見せなきゃいけないんだよ……」

 

 ぶーたれる二人にため息を吐きながら肩を落とす。

 

「だいたい無駄遣いなんてしたらまたクレハに何で言われるか……」

 

「え?なにそれ、お兄さんもしかしてクレハちゃんに財布握られてんの?」

 

「ゔっ……」

 

 図星を突かれたリョウの顔に汗が滲み出る。

 先日リョウは浪費癖があまりにも酷いため、ついにクレハにスコードローンの予算の管理を取り上げられてしまった。

 現状はクレハとツェリスカの二人で管理しており、リョウが使用できるのは二人から貰った小遣い分だけである。

 

「「ダッサ」」

 

「ぐへぇっ!?」

 

 もっとも言われたく無かった一言を言われリョウは溝内を押さえて蹲る。

 『ダサい』師匠のようなシブイ漢を目指すリョウにとってこれ以上プライドを壊す言葉は無い。

 

「や……やってやろうじゃねぇか! お前らに見せてやるわ俺の漢気をよぉっ!!」

 

 

 

 

 

 

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「………やっちまった」

 

 GGOの夕日に照らされながら小さく呟く。

 

「今月始まってまだ数日だぞ……あと数週間これでもたせんのか」

 

 目の前のプレイヤー画面の残高は三桁を切っていた。

 

「本当に買ってくれるとは思わなかった……」

 

「いやー凄かったわね! あの後すごい形相で私たちが止めるまもなくサッサっと買って塗装までして! 店員もビビってたし」

 

「やっぱりお兄さんは見てて楽しいわ〜」

 

「でも流石に悪いような……」

 

 あっはっはっと笑うピトフーイとは逆にレンは申し訳なさそうにP90を抱きしめている。

 悪ノリで煽ってしまったとは言え、まさかあんなに簡単に乗ってくるとは思ってもいなかったレンは流石に罪悪感に苛まれる。

 

「リョウさん、やっぱり返してきましょうか? 何だかんだリョウさんには色々貰ってばかりだし……」

 

「うん?……………ばーか、女の子にあげたもん返して貰うなんてカッコ悪い事出来るかよ」

 

「でも……」

 

「大事にしてくれるんだろ?」

 

「それは……うん!」

 

「ならいいさ」

 

 口ではそう言いながらも、レンがP90を大事そうに両腕で抱える姿から彼女が本当に嬉しかったことがわかる。

 そんな姿を見たリョウは先程までの落ち込んだ顔をやめ微笑みながらそう言う。

 

「そうそう!それにお金が減ったなら稼げばいいんだってー! って事でお兄さんにいい話があるんだけど?」

 

「いい話だぁ?」

 

「そ、この間いい稼ぎ場を見つけたのよね〜。これから三人で行ってみない?」

 

 

 

 

 

 

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 一面に広がる砂場、崩れた廃墟の街並みが障害物となっているフィールドをリョウは走る。

 その背後には反発もの赤いバレットラインが放たれていた。

 

「うおおっ!?」

 

 背後から放たれる弾丸の雨を掻い潜りながら近くに散らばっている崩れた廃墟の壁をベリーロールで乗り越え、背中から落ちながらも安全地帯へと逃げ込む。

 

「あっははははっ!! たっのしい〜!」

 

「ざけんなピトフーイ!!」

 

 少し遅れてやって来たピトフーイが、高笑いをしながらマシンガンのリロードをする。

 文句の一つでも言ってしまいたかったが、二人のいる壁に複数のプレイヤーからの集中放火が飛びそれどころではない。

 二人は慌てて駆け出した。

 

「ここの何処がいい稼ぎ場なんだよー!」

 

「えー?だって()()()()()()()狩ったほうがお手軽じゃない?」

 

 今リョウ達が居るのは、《砂に覆われた孤島》に存在するプレイヤー達が根城にしているとあるアジト。

 しかし唯のアジトではなく、複数のスコードローンが集まった《連合スコードローン》のアジトである。

 

「今日三つのスコードローンが同盟を組む為集まってるって情報本当だったのね、来てラッキーだったわ〜! お兄さん連れてきて正解ね」

 

「ざけんなコラ!」

 

 調子のいいピトフーイにリョウは激怒する。

 そんな二人に側面から複数のバレットラインが当てられる。

 

「ち、下がれ!」

 

 リョウは素早く自らの体でピトフーイとバレットラインの射線を遮ると、両光剣を取り出し向かってくる弾丸を弾き落とす。

 

「はいはいっと!」

 

 その隙をついてピトフーイは手に持っていたサブマシンガンを《ウェポンマスター》のスキルによりアサルトに持ち替え、腰駄目に構え攻撃してきたプレイヤー達を次々と撃破していく。

 

「結構私らっていいコンビじゃん?」

 

「ぜってーヤダね!」

 

 ピトフーイが撃つ瞬間、リョウは背中に殺気を感じ 超直感(ハイパーセンス)が発動していた。

 もしリョウが素早く避けていなければ敵プレイヤーと一緒に蜂の巣にされていただろう。

 

「あっはははっ! 毎度毎度どんなに不意打ちしても絶対に避けちゃうんだから、本当お兄さんって面白い!」

 

「いつもいつも心臓に悪いんだよ! だからお前とフィールドに行くのは嫌なんだ!」

 

 そんなやり取りをしながら銃弾の雨の中を二人で駆け抜け、岩場へと身を隠す。

 

「にしてもプレイヤーの数が多すぎないか?」

 

「そりゃそうよ。三つとも中堅のそこそこ大きなスコードローンだもの。でも最近同盟組むスコードローン増えたわよね」

 

「そういやアルゴもそんな事言ってたな……」

 

「やっぱり近々来る大型アップデートとイベントが関係してるのかしらね?」

 

「かもな。そんな事よりバニーと逸れちまった。何処に行ったんだアイツ? 泣いてないと良いんだが……」

 

「そこまで子供じゃないでしょ〜。あ、お兄さんあそこ」

 

 ピトフーイが指さした方を見ると、リョウ達が隠れている岩よりも二回りほど大きな岩の影に小さいピンク色の影が見える。

 

 

 

 

 

 

 ピンク色の迷彩のおかげか相手のプレイヤー達はまだわたしに気が付いていない。

 しかもリョウさん達が注意を引いてくれているおかげもあってか無造作に背中を晒している。

 正直言って少し怖い。

 対人戦の経験は少なく、ここまでの数を相手のにはした事がない。

 でも今日のわたしにはリョウさんが買ってくれたP90(この子)がいる、それだけで勇気が湧いて来る。

 わたしはリョウさんが買ってくれた帽子と愛銃に手を掛け、心を落ち着けるとガラ空きの背中を目指して駆け出した。

 

「ぐわあっ!?」

「く、速い!?」

「コイツ! ぎゃあっ!?」

 

 一人の悲鳴と銃声に反応して他のプレイヤーが此方へと銃口を向けて来る。

 でもわたしは冷静にバレットラインの一本一本を見極め、射線を避ける。

 数こそ多いけど前に戦ったエースって人の精密な射撃に比べれば、闇雲に撃たれる弾幕なんて怖くない。

 ピトさんのアサルトライフルとリョウさんのUFGの援護射撃もあって、混乱している敵プレイヤー達へと距離を詰め次々と撃ち抜く。

 

「当たら……ガアッ!?」

 

 リョウさんに教えてもらった通り、兎に角走り続ける。

 最後の一人の真下に潜り込み、上体へ乱射しながら股下を潜り抜ける。

 

「男の股座撃ち抜くなんてやる事がエグいねぇ〜。お姉さん将来が楽しみだよ」

 

「か、からかわないでよ〜! こっちは必死だったんだからー!」

 

 ある程度プレイヤーを倒すと流石に相手も体制を整えてきたので、リョウさん達が隠れている岩場へと戻るとピトさんと軽口を交わす。

 

「おいおい、あんまりウチの子に変な事教えんなよな。……でもさっきは凄かったなバニー。エースとの一件から強くなったな、偉いぞ」

 

「え、えへへ〜♪」

 

 そう言うとリョウさんはわたしの頭を撫でてくれる。

 大きなその手にわたしの小さな頭が置かれて、心がポアポアした気持ちになる。

 わたしはこの感触が好き。

 まるで暖かい光に包まれている様な感覚、現実では味わえないからだろうけどきっとそれだけでは無い。

 リョウさんは普段はだらし無く、わたしを小馬鹿にしたりもするが、時よりこうやって褒めてくれるのが本当にずるいと思う。

 

「ほらほらイチャイチャしない。まだ敵はいるわよ?」

 

「は、はい!」

 

「あいよ」

 

 ピトさんが隣にいたのを思い出し顔を赤くしながらリロードする。

 リョウさんもわたしから手を離しUFGで他プレイヤーの牽制を始める、少し寂しさを感じるのは秘密。

 

「くっそー!」

 

 かなりの数を倒したとはいえまだ敵プレイヤーは30人以上残っている。

 対して此方は3人、弾も手数も少なく徐々に追い込まれて行き、つい汚い言葉が出てしまう。

 でもピトさんとリョウさんは余裕があるみたい。

 

「レンちゃんも対人戦に慣れてきたし、そろそろ次のステップいってみない?」

 

「次って?」

 

「《BOB》って知ってる? GGO最強のプレイヤーを決めるイベント何だけど、今度それのチーム戦バージョンの《SJ》が開催されるのよ」

 

「《スクワッド・ジャム?》」

 

「要するに『少数チームのバトルロイヤル』って大会。それに出て欲しいんだレンちゃん」

 

「はいぃ?! わたしが?! ピトさんと組んで?!」

 

「おいピトフーイ、いくらなんでもバニーには早いだろ?」

 

「うん、だからお兄さんも一緒に参加して欲しいのよ」

 

「嫌なこった。んな大会興味ねぇよ、大体なんでお前の言うことなんか……」

 

「いいの〜お兄さんそんな事言って、お兄さん私たちに借りがあったよね?」

 

「借りだぁ?」

 

「《スカル》の件。気絶したお兄さん達を、わざわざグロッケンまで運んであげたのは誰だったかな〜?」

 

「う、あれはどっちかって言うとお前の連れの……」

 

「アイツの物は私の物なの。それにそろそろ返しておいた方がいいんじゃない〜?」

 

「…………はぁ分かった、出るよ。だから二度とその件擦るなよ?」

 

「了解〜。って事でお兄さんも出てくれるからレンちゃんも出てみない? 他のメンバーも私が集めておくから」

 

「…………分かった。わたし出るよ《SJ》に!」

 

「そうこなくっちゃ!」

 

 ピトさんに言われ諦めた様に出場を決めるリョウさん。

 わたしなんかがそんな大きな大会に出ていいのか不安だったけど、リョウさんとピトさんが一緒なら大丈夫だと思い出場を決める。

 それに自分が何処までいけるか試してみたかった。

 

「しかしどうするよ? 流石にキツくなってきたぞ?」

 

「大丈夫大丈夫。あと少しだから」

 

「本当に大丈夫なの?」

 

 SJの話を終えると一層銃撃が強くなる。

 ピトさんの指示でこの岩場まで逃げてきて身を隠しているけど、一向に状況が良くなる気配がない。

 牽制で抑えるのも限界を迎え、このままでは回り込まれ囲まれてしまう。

 

 そう思っていると

 

「な、なに!?」

 

 突然わたしたちの周りで大きな地震が起きる。

 激しい揺れに倒れないようにリョウさんの腕にしがみつく。

 その状態のまま辺りを見ますと、他のプレイヤー達もその揺れに驚いて攻撃の手が止まっている。

 そして地震の後、わたしたちの足元の砂が突然沈んでいく。

 

「きゃあっ!?」

 

 数秒としない内にその辺りにいたプレイヤー全員が大きく窪んだ砂場へと落とされる。

 落ちた砂場は半径数百メートル程広くフィールドとなっていて、まるで巨大な生き物の巣にも見える。

 

「おい、ピトフーイ。まさかこれって……」

 

「ぬふふ、作戦成功!」

 

 どうやらこの現象はピトさんの計画の内らしい。

 でも落ちたプレイヤー達は全員無傷、状況的不利は何も変わっていない。

 その筈なのに周りのプレイヤー達はまるで怯えた様に辺りを見回していて、わたし達の事は気にしていない様だ。

 そして笑っているピトさんに対してリョウさんは冷や汗をかいている。

 

「っ! 来るぞ!」

 

 リョウさんがそう叫んだ瞬間。

 

「うわああああっ!?」

「ぎゃああああっ!?」

 

 わたし達が落ちた砂場から複数の悲鳴が響く。

 

「な、なに?……あれ?」

 

 慌てて振り向くと砂の中からウネウネとした太い物体が出現し、相手のプレイヤーを食べていた。

 そのウネウネの物体は次々と数を増やしていき、その群れの真ん中から人一倍太く大樹のようなウネウネが出現する。

 正直言ってかなり気持ち悪い。

 

「うわあああっ!? サーペントだ!!」

「退避ぃ! 全員逃げるんだ!」

「バカを言うな! 全員攻撃だ。撃て、撃て!」

 

 大量のエネミーの出現に敵プレイヤー達全員が焦る。

 それぞれのスコードローンのリーダー達らしき男の人が指示を出すけど、今日組んだばかりの連合では統率も取れてなくバラバラに動き、次々と数を減らしていく。

 

「やっぱりここは《ボス・エネミー》の沸きポイントか」

 

「そ、《オーバーグロウン・サーペント》。大型ワーム型のボスエネミーよ。他のスコードローンがちょうど12時間前に狩ったって話を聞いたの思い出したの」

 

 ボスエネミーはおおよそ12時経過で復活する、だからピトさんはこの場所に相手を誘い込んだんだ。

 

「まったく、だから最初に言えっての。とにかく今のうちにトンズラここうぜ?」

 

 確かにリョウさんの言う通り、今なら大量のワームに気が取られていて逃げるのは簡単。

 

「なーに言ってんの? こんなチャンス無いじゃない! 大量のプレイヤーとボスエネミーを同時に狩れるなんて最高!!」

 

「あ、おい! ったくしょうがねぇな!」

 

 でもピトさんは少し怖い笑顔を見せるとエネミー達へと向かっていく。

 いくらピトさんでも一人では敵わない。

 わたし達もその後を追いかけ、エネミー達と敵プレイヤー、そしてわたし達の三つ巴が始まる。

 

 わたしがプレイヤーを、リョウさんがエネミーを、ピトさんが両方バランス良く撃退して行く。

 プレイヤーもエネミーも自然と数の多い互いにヘイトを向け合っているおかげが難無く数は減って行く。

 

「これで、最後っ!」

 

 ボスに意識が向いているプレイヤーの背後に回り込み、ほぼゼロ距離で引き金を引く。

 短い悲鳴の後最後の敵プレイヤーが消失する。

 

「はぁ、はぁ……やっと終わった」

 

 辺りを見回すとエネミーの数は残り2体、ボスに関しては完全に姿が消えいて疲れたわたしは、つい足を止めて息を吐いてしまう。

 

「っ!? バニー止るな!走れ!」

 

「え?」

 

 でもそんなわたしを見たリョウさんが、両光剣で残ったエネミーを切り払いながら大きな声で叫ぶ。

 わたしはその声にすぐに反応できなかった。

 するとわたしの足元の砂が勢いよく盛りあがる。

 

「きゃああああぁっ!?」

 

 突如わたしの足元からボスが飛び出し、その勢いでわたしの小さな体は空中に打ち上げられる。

 ボスは倒されたのではない、地面へと潜りわたしへと攻撃を仕掛けていたのだ。

 わたしを打ち上げたボスは大きな口を開け、餌が落ちて来るのを待つ。

 大きな口の中に何列も生え揃った牙と粘膜性の高い舌がわたしを待っている。

 例えどれだけ素早くても空中では身動きが取れず逃げる事ができない。

 

 助けて!

 

「おらぁっ!」

 

 そう叫ぶ前にリョウさんは両光剣を鋼鉄棍に切り替えると、ボスの口を目指して投げつける。

 風車の様に回転した棍はボスの口に挟まり閉じるのを防ぐ、わたしは咄嗟に挟まった棍を両手で掴んで落ちるのを防ぐ。

 

「リョウさん助けてー!! リョウさんリョウさーん!!!」

 

 半泣きになりながら助けを呼ぶ。

 しかしボスの皮膚は厚く、弱点部位である口にわたしがいるせいで二人とも援護射撃が出来ないでいる。

 そうこうしているうちに倒したワーム達が再び出現する。

 どうやらボスを倒さない限り無限に出現するタイプのようだ。

 そしてボスの口も徐々に閉じていく。

 棍のおかげで牙は届いていないが、ブヨブヨとした口の皮膚が伸びていきわたしを包み込む様に閉じている。

 

「バニーっ! ハアアアアアァッ!!」

 

 リョウさんの紫色の瞳がより強く光りを見せると、リョウさんの体から紫色のオーラが溢れ出す。

 リョウさんのエクストラスキル《ジョーカー》が発動したのだ。

 

「このロリコン虫野郎っ!」

 

 《ジョーカー》を発動したリョウさんはワーム達へ駆け出し跳び上がると、そのままワームを踏み付ける。

 ただそれだけの動作で通常のエネミーは破壊される。

 そしてそのままの勢いで他のエネミーを踏み付け、川の上の石を飛んで渉るようにボスへと向かって来る。

 

「ジョーカー・ドライブ」

 

 一番手前のエネミーを両足で踏みつけると高く飛び上がる。

 そして紫色のオーラが集中した右足を突き出しながら、わたしのいるボスの口元目指して降下して来る。

 

「ウチのチビ助に手ェ出すんじゃねぇ!!!」

 

 その光景を最後にわたしの視界は完全にボスの口に隠される。

 きみの悪いウネウネした赤い空間に紫色の光が大きくなる。

 

「ウォラァッ!」

 

 ボスの頭部を蹴りで打ち破ったリョウさんは、その勢いのままわたしを抱え、砂場を削りながら着地する。

 

「これで決まりだ」

 

 リョウさんがフンと鼻を鳴らすと、ボスと他のエネミーは光となって消滅した。

 

 

 

 

 

 

 

           ⭐︎

 

 

 

 

 

「…………」

 

 わたしは見上げる形でリョウさんの顔を見つめる。

 いつも以上に距離が近くドキッと胸が高鳴る。

 お姫様抱っこ補正もあるのか、リョウさんのその姿がまるで王子様の様に見えてくる。

 

「おい……おいバニー! 大丈夫か?」

 

「え? は、はいっ!?」

 

 リョウさんの声が聞こえて我に帰り慌てて降りる。

 暑くなってきた顔を両手で仰いで冷ます。

 

「う〜、わたしってこんなに軽い女だったけ?」

 

「? 心配しなくてもお前は軽いぞ?」

 

「そういう意味じゃありません!」

 

 一瞬でもリョウさんがあの時の王子様に見えてしまった。

 自分のチョロさっぷりが嫌になる。

 

「いやー流石だねぇお兄さん。やっぱりいいな〜《ジョーカー》。ねぇお兄さん、エクストラスキル頂戴?」

 

「あげれるもんじゃないって何度も試しただろ?」

 

「分かってるけどさー! やっぱりズルイって〜!」

 

「知るかよ」

 

 ごねるピトさんを放ってリョウさんはメニューを開いて獲得したアイテムを確認している。

 

「おっ?」

 

 ふとリョウさんが一つのアイテムキューブを取り出す。

 キューブの色は緑、つまり最高レベルのアイテムって事になる。

 リョウさんがキューブを握りしめて開く。

 

「これは?」 

 

 中から出てきたのは一丁のハンドガン、それもリョウさんが普段使ってたリボルバー型の物だ。

 

「《コルト・パイソン SH・R型》?」

 

「それはGGOがとある作品とコラボした時に追加された銃ね。作品が古過ぎてVR世代にはハマらなかったみたいだけど、ファンからすれば喉から手が出るレア銃よ。超低確率であのボスエネミーから取れるって聞いてたけど本当とはね」

 

「へぇ〜」

 

 リョウさんはピトさんの説明を聞き流しながら嬉しそうにハンドガンを見つめている。

 

(そう言えばリョウさん、あれから一回も銃使ってないっけ?)

 

 エースって人に破壊されてからリョウさんが実弾銃を使ってるのを見た事がない、今日だってUFGと光剣でしか戦っていない。

 

(もしかしてわたしがP90(この子)を買ってもらったから)

 

 本当なら今日の買い物で購入するつもりだったのかもしれない、それなのにリョウさんは文句のひとつも言わない。

 それが嬉しいようで申し訳ない様で、でもリョウさんにわたしがしてあげられることは罪悪感を抱く事じゃない。

 

「ん? どうしたバニー?」

 

「リョウさん! わたしこの子大事にするね、今日は本当ににありがとう!」

 

「おう! 俺もおニューを手に入れたし、心機一転頑張っていこうぜ!」

 

 リョウが買ってくれたこの子を大切にして強くなる事、それがリョウさんに出来るわたしのお礼だ。

 

「うん! よーし、ピーちゃんと一瞬にSJ頑張るよー!」

 

「…………ぴーちゃん?」

 

「うん、P90だからピーちゃん。ピトさんが愛銃には名前をつけるんだって」

 

「つけねーよ」

 

「リョウさんもコルちゃんと一瞬に頑張ろうね!」

 

「俺のおニューに変な名前つけんなっ?!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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第四部 誰のサイドケースから見たい?

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  • アスナ
  • クライン
  • エギル
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  • リズ
  • リーファ
  • シノン
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