ソードアート・オンライン フェイタルバレットー切札の弾丸ー   作:トライダー

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スクワッド・ジャム

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 凄まじい閃光の後、光が収まり視界が開けていく。

 

「森だ……」

 

 視界に広がるのは一面の『緑』

 葉、草、木に生えた苔、緑いっぱいに囲まれた森の中にわたし達は転送されたようだ。

 

「ああ、森だ……良くないな」

 

「だな、ここじゃエムの狙撃が狙えない。俺もバニーも相性は悪くないが、悪目立ちしてしまうな」

 

「うん、そうだね……」

 

 自分の体を見下ろして頷く。

 茶色いポンチョのリョウさんと全身ピンクのわたしはこの森の緑の中では丸見えだ、少しでも相手の視界に映ってしまえばたちまち狙われてしまうだろう。

 唯一緑色のエムさんもこの木々では狙撃がし辛いし。

 

「まずは景色に溶け込むぞ。レンはこれを使え、リョウは大丈夫か?」

 

「ああ、問題ない」

 

「ありがとうエムさん」

 

 エムさんが渡してくれた緑色のポンチョを羽織る。

 リョウさんのポンチョはリバーシブルになってるらしく、着ていたポンチョを裏返すと緑色の生地へと変わり、たちまちに背景に溶け込んでしまう、

 

「さて着替えた後はフィールドの確認だ」

 

 エムさんが端末を操作すると、わたし達の目の前にフォログラムのマップが出現する。

 マップの中にわたし達の反応が見える、どうやらここはマップの北東の端っこらしい。

 

「えっと、はじめは各チーム最低1キロは離れるんだよね?」

 

「この状態なら俺達の北と東には敵がいない事になるな。どう動くエム?」

 

「兎に角不利な森を出よう。最初のスキャンまでに間に合わないだろうが出来るだけ都市部に近付いておきたい」

 

「なら真南だな。バニー先行してくれ、気をつけて進めよ?」

 

「わ、わかった!」

 

 目元をポンチョで隠しながら、二人を置いて行かない程度に飛ばして走る。

 リョウさんに言われた通り敵が出てこないように警戒して辺りを見回す。

 しかし見回せば見回す程敵はどこからでも出て来そうな錯覚に陥る。

 

「落ち着けバニー、キョロキョロしすぎだ」

 

「で、でもリョウさんが気をつけろって……」

 

「それは転ぶなよって意味で言ったんだよ。始まったばかりで精神的に疲弊してどうする。なんかあったら直ぐにフォローする、安心して進め」

 

「う、うん!」

 

  焦りによりボヤけていた視界が、リョウさんの指摘のおかげで冷静さを取り戻し開ける。

 森を出るまで敵と遭遇しない事を祈ってると、木々がなくなり緑色以外の色が目に飛び込んでくる。

 

『よし、止まれ。警戒待機』

 

 エムさんの通信が聞こえブレーキを掛けると、一番端の木に身を隠しながら辺りを見回す。

 

「んー? 人影は見えないよ、無事に森を抜けたみたい……ってあれ? リョウさん?エムさん?」

 

 安心して後ろを振り向く、しかしリョウさんとエムさんの姿が見えず二人を呼ぶ。

 

『安心しろはぐれてねぇよ。300メートル程離れた場所で待機してる』

 

「え? そんな遠く?」

 

『これから最初のスキャンだ。レンの位置はバレる、だから距離を空けた。もし集中砲火を受けたら派手に撃ちまくって後退しろ、追ってきた奴をおれとリョウで処理する』

 

「そ、それってわたし囮って事!? いきなり?!」

 

 基本的にわたしが囮役なのは分かっていたけど、こんなにも早くやる事になるとは思ってなかった。

 リョウさんに何かアドバイスを聞きたかったけど、既にスキャンまで一分を切った。

 スキャンの確認はエムさんがやってくれるだろうから、わたしは残った時間で周囲の警戒を続ける。

 

「っ!? リョウさんエムさん、敵だよ!」

 

『数と距離は?』

 

「え、えっと多分200メートル以上。瓦礫の中に最低5人居るよ」

 

『獲物は何を持ってる?』

 

「えっと、全員大型の銃、多分マシンガンかな?」

 

『5人全員マシンガン? 後方にスナイパーでも居るのか?』

 

『いや恐らく《ZEMAL》の奴らだろう』

 

『ZEMAL?』

 

全日本マシンガンラバーズ(ZEMAL)、マシンガン銃をこよなく愛する男達が集まったスコードローンだ』

 

『うへぇ〜いかにも暑苦しそうな奴らだな』

 

『奴らは全員で5人、拘りがあるからスナイパーは居ないだろう。スキャンが始まる、レンは身をかがめて木の影で待機しろ』

 

「りょ、了解!」

 

『………………確認した。レンが見つけた連中以外、ひとまず戦闘になりそうな距離には居ない』

        

「はぁ〜よかった……ん?」

 

 少なくとも最悪の事態は避けられた。

 そう思い一息ついついていると、何やら赤いものが視界の端に映る。

 

 それは"バレットライン"だった。

 

「わひゃっ!?」

 

『どうしたバニー?!』

 

「リョウさーん! 狙われてるよっ!?」

 

 二人に助けを求めるももう遅い、わたしの周囲に無数のバレットラインが出場する。

 相手のプレイヤー全員が此方を狙っているのだ、5つのマシンガンからのバレットラインはたちまちにわたしの周囲を赤く染めてしまう。

 

「きゃあっ! う、撃ってきたよ!」

 

 凄まじい轟音と共にわたしの周りの木々が破裂するような音が響く。

 撃ち返してやろうにもピーちゃんじゃ届かない上に火力が段違、わたしには身を縮こまらせ隠れるしかできない。

 狙いは雑で適当に撃ち込まれているだけだけど、わたしの恐怖心をくすぐるには十分だった。

 

「うひゃぁっ!? 助けてー!何とかして!! リョウさーん!エムさーん!」

 

『今無事ならそこに隠れていれば大丈夫だ。じっとしていろ』

 

「ちょっと!助けてくれないのー?!」

 

『そのまま下手に動くな』

 

「人でなし〜!!」

 

 わたしの真横の木が破裂する。

 恐怖のあまり二人に助けを求めるもエムさんから帰って来た返事は冷く、言われた通り隠れているしかできなかった。

 

 

 

 

 

「おいおい、バニーの奴大丈夫か?」

 

「おれの読み通りならこのまま隠れていれば問題ない。寧ろ下手に助けに行けば余計にリスクが上がる。此処でジッとしてるのが得策だ」

 

「いや、そうなんだけどよ……」

 

『リョウさーん!助けてー!! リョウさん!リョウさーんっ!!』

 

「……やっぱ行ってくるわ」

 

「危険だぞ? それにレンの事なら後数十秒で助かる」

 

「その数十秒間アイツは怖い思いしちゃうだろ? 心配するな手は出さない、側に居てやるだけだ」

 

 

 

 

 

 わたしから遠く離れた木の影からリョウさんが飛び出す。

 リョウさんはUFGを巧みに使って木から木の間を高速で飛び回り、飛んでくる弾を体を捻って躱しながら、わたしが隠れている木へと辿り着く。

 

「無事かバニー?」

 

「リョウさ〜ん! 遅いよ〜怖かったんだから!」

 

「泣くなって、ほらもう少し近づけ」

 

 リョウさんはわたしを抱き寄せると、自分のポンチョの下にわたしの体を隠す。

 

「リョ、リョウさん!?」

 

「心配すんな、俺のポンチョは防弾素材で出来てる、数発ぐらいなら受けても問題ない」

 

「そ、そうじゃ無くて!」

 

「こら動くな、木から出たら本末転倒だ」

 

「あ、あうぅ……」

 

 距離が近くなり慌てて離れようとするけどリョウさんに力強く止められ、彼の胸に頬を押し付けるような形になり声がうまく出なくなる。

 VR世界なのにリアル以上に彼の温度を感じる。

 集中砲火を受けた時以上にドキドキが止まらなくなるけど不思議と嫌じゃない、それどころかずっとこんな時間が続けば良いのにとすら思ってしまう。

 

「……にー……ばにー……バニー! おい聞いてんのか?」

 

「ふえ?……あ、あれ?」

 

 心地よさに目を閉じていると、リョウさんの声が聞こえ気の抜けた声が出てしまう。

 いつの間にか無限に続くと思われた銃声が止んでいて、

エムさんも此方へと来ていた。

 

「レンはどうしたんだ?」

 

「な、何でもないよエムさん!」

 

 こんな状況で惚けていた自分が気恥ずかしくなり、慌ててリョウさんから離れる。

 幸いにも二人はよく分かっていない様子、質問される前に話を変える。

 

「そ、それよりさっきの人たちは?」

 

「もう終わったよ」

 

 リョウさんが指を刺した方を見ると、先程わたしが発見した5人内3人のプレイヤーが倒れている。

 

「凄い、二人がやったの?」

 

「いや俺たちじゃ無い。それよりもう少し身を隠せ」

 

 リョウさんとエムさんが木の影に身を隠してるのを見て、わたしも同じように隠れる。

 

「それで何があったの?」

 

「さらに南の都市部中心部にいた別のチームが、こちらを撃っていた奴らを背後から襲ったんだ」

 

「迂闊にこっちだけを見て撃ちまくってたのが奴らの敗因か」

 

「そう言う事だ」

 

「むー! じゃあエムさんはそれを分かっててわたしを囮にしたの?」

 

「そうだ。文句なら安全になってからだ、しばらくここで様子を見る」

 

 作戦なのは分かっているけど、やっぱり囮にされるのは気分が悪い。

 頬を膨らませ文句でも言おうかと思ったけどリョウさんに宥められ抑える。

 エムさんが寝そべってスコープを覗くのを合図に、わたし達も望遠鏡を覗いて残りの2人の様子を見る。

 瓦礫の向こうからわたしを狙っていた2人は、今度は逆にわたし達の方に体を投げ出し向こう側の敵を警戒している。

 

「今ならこっちを見てないし、エムさんなら狙えるんじゃない?」

 

「その必要は無い。ほっといても奴らは倒される」

 

「誰に?」

 

「アイツらだよ。左側の黄色いバスに4人、奴らに近付いてる」

 

 リョウさんに言われて左側に置かれている横転したボロボロのバスの方に視線を向ける。

 そこに居たのは4人のプレイヤー、全員が同じヘルメットゴーグルマスクの軍人らしい格好をしている。

 そのプレイヤー達は一斉にバスから飛び出し、鮮やかな動きで周囲を警戒しながら付近の瓦礫をつたい、マシンガンの2人に近づいていく。

 グレネードで隠れている2人を炙り出し、4人で囲んだ後たちまちに制圧してしまう。

 素人目に見ても完璧なチームワークだ。

 

「あのチームは4人だけ?」

 

「いや、それにしては動きに迷いが無い。誰かが見晴らしのいい場所から指示を出しているんだ」

 

「恐らく2人。少なくとも1人は狙撃銃を持っているはずだ、先に3人をやったのもそいつらだろう。僅か6人しか居ないチームを分割する作戦は難しい、それを躊躇なくできると言うことが奴らの強さを物語っている」

 

 エムさんの言う通り、あの人達はスキャン開始からたった5分で敵チームを制圧してしまった。

 おまけにあの鮮やかなチームワーク、もしわたし達に同じ事をしろって言われても絶対に無理だとわかる。

 

「ん? て事は次のスキャンまで5分。相手は丸見えだし向こうは気がついてないよね? エムさんやっちゃえば?」

 

「駄目だ。1人なら倒せるが残りには隠れられる、そうなればまた森の中に逃げ込むしか無い。奴らはおれ達が森の中に撤退したとよそうするだろう、ここはやり過ごして様子を見よう」

 

「ぶ〜、了解」

 

 始まって15分が経つと言うのにまだ1発も撃てていない。

 とは言え全チームの中で自分達が不利なのはよく分かっている、不満に思いながらもじっと様子を探る。

 

「居たぞ、残りの2人だ。二番目にでかいビルの真ん中だ」

 

「え? あ、ほんとだリョウさんよく分かったね?」

 

 リョウさんが言った方を見てみると確かに2人のプレイヤーの姿が見える。

 しかも服装は下にいる4人と全く同じ、間違いなくあの6人で一つのチームなのだろう。

 ビルの上にいる2人はロープのような物を窓側から垂らすと、それをつたって下へと降りていき他の4人と合流する。

 

「凄い動きだね、登山家かなにかかな?」

 

「いや、それにしては動きにキレがありすぎる。普段から細かく訓練しないとあんな動きは不可能だ」

 

「つまり奴らは普段から()()()()()()()()()()事になる。多分アイツら戦闘のプロだ」

 

「え? プロ?!」

 

「動きから見て警察か自衛隊……いや上官らしき男が指示を出してる、自衛隊で間違い無いな」

 

「な、なにそれー! ズルイ!遊びにプロの参加禁止!」

 

「別にズルくはないだろ? GGOにいれば警察だの自衛官だのと戦う機会は少なく無いしな」

 

「リョウの言う通りだ。フルダイブ可能なGGOを訓練に取り入れて、腕試しにSJに参加しててもおかしくない」

 

「まあGGOってSF要素が強いから現実の訓練には向かないと思うけどな」

 

「でもどうするの? あの人達倒せないと都市部にはいれないよ? あんなの相手して勝てるの?」

 

「いや、例えさっき1人減らせていたとしても難しいな」

 

「そっか……」

 

 ふーとため息をつき時計を見てみる。

 次のスキャンまであと1分、ゲームが始まってから20分間打つ手無しの状態。

 

「レン、お前運はいい方か?」

 

「はい?」

 

「今までの人生幸運に恵まれて来たか?」

 

「え? えっと……」

 

 エムさんに言われて考えてみる。

 確かに身長に関しては運は0に近い、けどそれ以外を不幸だとは思わない。

 裕福な家庭、優しい家族、気の合う友人。

 そして……

 

「どうしたバニー?」

 

 初恋の人。

 強くて優しくて、わたしが悩んだ時には真剣に相談に乗ってくれて、ピンチの時にはいつもわたしのそばに居てくれる。

 もし彼に合わなかったら怖くなってGGOを辞めていたかもしれない、彼が居たからわたしはレンであれた。

 彼と周りの人、わたしはいろんな人に恵まれている。

 ならきっとわたしは……

 

「うん! わたしはラッキーガールだよ!」

 

「そうかならその幸運に賭けよう」

 

「任せてよ! それに幸運ならもう1人心強い人がいるし!」

 

「そうだな、リョウの幸運は折り紙付きだ」

 

「いや、それがそうでも無いんだ」

 

 わたしとエムさんが期待の眼差しで見るけど、当のリョウさんは暗い顔をしている。

 あまり見たことのない表情、何かあったんだろうか

 

「何かあったのかリョウ?」

 

「それが聞いてくれよ〜! 最近目をかけてた子に好きな男がいたんだぜ? 超アンラッキーって感じで……」

 

「よし、じゃあ作戦を説明するぞ?」

 

「うん、無駄話してる暇ないよね」

 

「聞けよおいっ!?」 

 

 訂正、わたしの初恋の人は、バカでスケベで女好きでだらし無い男の人です。

 

「あれ? 今すげぇ馬鹿にされたような……」

 

(何でこんな人好きになったんだろ?)

 

 何かをバカなことを言っているリョウさんを無視してわたし達は作戦を話し合う。

 

 

 

 

 

 

 

 

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「ふぅ、走った走った。撃たれなくて良かったね」

 

 スキャンの後プロの人たちを他のチームに任せ、わたし達は住宅地へと移動した。

 ここに着くまでに撃たれないかどうかドキドキしたけど、どうやら最初の賭けはわたし達の勝ちのようだ。

 

「ああ。だが浮かれてる暇はないぞ作戦の次の段階に入る」

 

「そ、そうだね。……リョウさん大丈夫かな?」

 

 次の作戦は至ってシンプル。

 またわたしが囮になって地上班を引きつけ、リョウさんが回り込んでスナイパーと指揮官を倒すと言うもの。

 その為今リョウさんはわたし達から離れ、単独でスナイパー達の居場所を探っている。

 

「心配しなくても奴の実力は本物だ、もし見つかったとしても自力で逃走する事は可能だ。だがその時はこちらの作戦がバレる可能性が高まるがな……」

 

「うぅ……」

 

 エムさんとリョウさん曰く、超近距離の戦闘ならわたし1人でも4人を相手する事は可能らしい。

 でも問題は離れた場所にいる狙撃者だ。

 いくらわたしでも弾丸より早くない、それに隠密状態での狙撃はバレットラインが見えず、回避する事は不可能だ。

 

「でも本当にこんな作戦でいけるの? ちょっと馬鹿馬鹿しすぎない?」

 

 わたしはエムさんが手に持ってる小さなスーツを見て呟く。

 ここに着くまでに見つけてエムさんが拾って来たものだけど、この中に入ってスキャンの反応を囮にして相手を誘い込むつもりらしい。

 

「こう言う緊張感の強い状況では馬鹿馬鹿しい作戦が意外とうまくいくものだ。それに奴らは現実での経験が多い分、こんな小さい物の中に人が隠れられるとは考えない筈だ」

 

「もし、もしもだよ? 『あのスーツケースが怪しい』って撃たれちゃったら?」

 

「蜂の巣にされて終了だな」

 

「もし作戦が上手くいったとしてスナイパーが残ってたら?」

 

「4人を倒した後に頭を撃ち抜かれて終了だな。合掌しよう」

 

「だーっ!」

 

 作戦成功の条件が限られすぎている。

 上手くいったとしても、リョウさんとの連携が上手くいかなきゃそこで終わりだ。

 しかも肝心のリョウさんとは居場所がバレる危険性を重視して通信をするのを禁止してあり、連携を取るのが不可能という状況だ。

 

「言った筈だリョウの実力は本物だと、おれ達は奴を信じて自分達の仕事をするだけだ」

 

「信じて……か、エムさんとリョウさんって付き合いは長いの?」

 

「いや数えるほどしかない、なんなら前の会合が2回目だ」

 

「そっか、よーし! ならやってやろうじゃない!」

 

 確かにリョウさんの実力は本物だ。

 だったらエムさんよりも付き合いの長いわたしが信じない訳にはいかない、わたしは自分に気合を入れて両手を突き上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

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 同時刻、レン達が目標としているプロチーム達は住宅地へと進入していた。

 都市部に籠ることも考えたが他のチームとの距離が離れすぎている。

 彼らの目的は『戦闘経験を積む事』その為同じ場所に引き篭もるのは彼らとても不本意であった。

 

「散開!」

 

 リーダーらしき男からの指示が通信では入り、残りの4人全員が同時に散開し、当たりを警戒しながら突き進む。

 

「スキャンまであと40秒……停止、全集警戒」

 

 全員が近場の障害物に身を隠しスキャンを待つ。

 

「スキャン開始……近いぞ、真北80メートル」

 

『見えません』

 

『此方も目視出来ません、広い交差点があるだけです。車両なども見えません』

 

 スキャンによるマップには、自分達のすぐ近くに反応がある。

 しかし目視でもわかる距離にも関わらず人物らしき影が見えない。

 

「スキャンは高さは判別しない。マンホールの下など障害物を発見しろ!」

 

 リーダーの男の指示とは裏腹に部下達の目にうつるのはだだっ広い交差点、そこにはマンホールどころか障害物らしき物は一切ない。

 車のタイヤ、複数の空き缶、小さなスーツケース、スーパーのカートと言った置物が置いてあるぐらい。

 

(スキャンのエラーの可能性は著しく低い。ならば必ずここにいる筈、一体どこに?)

 

 自分の思考と現場からの報告が噛み合わないことに考えを巡らせるが、それが部下達への指示を出すのを一瞬遅くさせた。

 少しの違和感も見逃さないように全周を警戒していたのは良いが、そのせいか4人は自然と交差点の中央へと集まってきてしまっていた。

 

(っ!小型のスーツケース? 確か先程此方へと向かって走るピンク色のチビが……)

 

 リーダーの男は見ていた、自分達が他の3チームと戦闘している時都市部から住宅地へと駆け抜ける『ピンクの兎』の姿を

 

「全員!スーツケースを撃てっ!!」

 

 指示を出した時にはもう遅い。

 全員が振り向き引き金を引いた瞬間、小型のスーツケースが垂直に飛び上がる。

 そしてその中からピンク色の影が飛び出し赤い複数の光を放つ。

 放たれた光は4人の内1人の体を捉えた後、バララっと細かい事を響かせその男の体を蜂の巣へと変えた。

 

「排除しろ!」

 

 しかしリーダーの男の指示も虚しく次々数が減らされていく。

 距離が密集している上に的の小さく小回りのきくレンを捉えられず、最後の1人も援護射撃の狙撃によって排除されてしまう。

 

「あのピンクの動き、人間の素早さじゃ無いな」

 

「……潮時ですか?」

 

「ああ、だがタダでやられる訳にはいかない。俺達にも面子がある、今回の訓練の結果はお偉いさんにも知られるしな」

 

「了解」

 

 訓練が目的である以上、前衛の4人が倒された時点でこれ以上続ける意味は無い。 

 とは言え彼らとてプロとしてのプライドがある、たった1人のプレイヤーに出し抜かれてすごすご帰る理由は無い。

 リーダーからの指示にスナイパーの男がカーソルをレンの頭部へと向ける。

 レンは今全速力で走っているとは言え、同じ速さで走り続けていれば遠距離からの狙撃なら捉える事はそう難しいことでは無い。

 狙撃手の引き金が引かれようとしたその時。

 

「っ!? 2(セカン)下がれ!」

 

 嫌な気配を感じたリーダーが狙撃手の肩を引き後方へと下げる。

 その瞬間、彼の持っていた狙撃銃の銃身が大きく凹む。

 銃声の聞こえた方向に茶色いポンチョを羽織った長身の男『リョウ』の姿、その手には一丁のリボルバーを持っている。

 

「気配は消してたんだがな。流石はプロってところか」

 

「貴様、どうやってこの場所を……」

 

「大した事はしてねぇよ。アンタらが本物のプロのスナイパーとその指揮官なら最も狙撃に適した場所に陣取ると読んだだけだ。あとはここで待ってればアンタらが勝手にやってきただけの簡単な話」

 

 2人は戦慄した。

 目の前に突然現れたこの男は、最初からこの場所に待ち構えていたのだ。

 にも関わらず妨害を受けるまでの今まで全く気配を感じなかった、物陰に隠れている敵の気配を探る訓練を毎日のように行なっているのにだ。

 

「貴様何者だ……?」

 

 立ち振る舞いからリョウの言うことがハッタリでは無いことを感じとり、臨戦態勢を取る。

 正直素人のみの大会勝ち上がるのは簡単だと思っていた。

 しかし先程の少女は兎も角、目の前の男から察せられる気配は決して素人のものでは無い。

 

「あの子の保護者さ」

 

 リョウはそう言うとリボルバーを向けバレットラインを照射する。

 再び攻撃が来ると察した2人は横転するように避けるがそれはフェイント、その隙をつき2人へと距離を詰める。

 部下の男がサブアームのハンドガンを抜き発砲するのを、リョウは大勢を低くし射線から離れ近付く。

 

「うぉらっ!」

 

 その勢いのまま突き出された左の拳を、部下の男は両腕を十字に組んで受け止める。

 リーダーの男が背を向けているリョウへとハンドガンを向けるが、リョウは体を揺らし的を絞らせない、その後ろに部下がいる以上撃つことが出来ないでいる。

 

「クソッ!」

 

 悪態ついたリーダーの男は片手にナイフを持つと、格闘戦へと持ち込んでいるリョウと自分の部下の戦いへと参加する。

 部下と共に左右から仕掛けるが、リョウは2人がかりの攻撃を同時に捌く。

 

「そらっ」

 

 部下の男の膝裏へとローキックを行い体勢を崩させると、腕を掴みリーダーの男へと押し付ける。

 自分と全く同じ体格の男がぶつかった事でリーダーの男に大きな隙ができる。

 

「これで決まりだ」

 

 その隙をつき左手に青い光剣を取り出すと重なった男達の胴体へと突き刺し串刺し状態にする。

 そして離れる間際にマグナム弾を数発撃ち込む。

 至近距離で放たれたマグナム弾は大柄の男2人をいとも簡単に貫いた。

 

「そんな馬鹿な……」

 

 プロである自分達がここまで簡単に倒されるとは思っても無かった、二人の男達は頭の中の疑問に混乱しながらその体を消滅させる。

 

「ゲームと現実は違うんだ、良い勉強になったろ?」

 

 技術は本物だった。

 もし彼らが訓練のついでなどでは無く、本気でキャラを作成してSJに挑んでいたとしたらリョウとて危なかった。

 だがそんなものは言い訳にはならない、本気でこの世界を楽しんでいないような者が勝ち上がれるほどGGOは甘い世界では無いのだ。

 

『やったあぁーーーっ!!! やったよリョウさーん!』

 

「はいはい聞こえてるよ。よくやったなバニー」

 

『うんっ!』

 

 本気でこの世界を楽しんでいる者の喜びの声を聞きながら、リョウは二人との合流地点へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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アンケートの結果

クレハ 35票
ツェリスカ 33票

 となりました。
 思った以上に接戦していて驚きましたが、二人が満遍なく人気で嬉しく思います。
 という事で番外編はクレハ編から投稿します。
 投稿のタイミングは現在検討してますが、なるべく早い投稿を目指します。
 アンケートありがとうございました。




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第四部 誰のサイドケースから見たい?

  • キリト
  • アスナ
  • クライン
  • エギル
  • シリカ
  • リズ
  • リーファ
  • シノン
  • ユウキ
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