ソードアート・オンライン フェイタルバレットー切札の弾丸ー   作:トライダー

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 鉄の城

⭐︎

 

 

 

 

 

 

「ふんふふん、ふふ〜ん♪」

 

 気分良く鼻歌を歌いながらレンは水辺沿いを歩く。

 

「随分と機嫌が良いなレン」

 

「とおーぜん!プロの人に勝ったんだよ? これが喜ばないでいられないよ! しかも残り4チーム。ベスト4確定だよ!」

 

「浮かれすぎるなよバニー」

 

「大丈夫だって、ほらわたしラッキーガールだし? 次の戦闘もチャチャっと楽勝って感じ?」

 

「お前が調子に乗ってる時は嫌な予感がするんだよ」

 

「ぶー! そんな事言わないでもっと褒めてくれたら良いじゃん」

 

「さっきあんなに褒めてやったろ?」

 

「頭撫でただけじゃん! 子供じゃ無いんだからそれで納得する筈ないでしょ」

 

「そ、そうか? ならお菓子を……」

 

「もー良いよ!」

 

 そう言いレンは頬を膨らませ先々と歩いて行ってしまう。

 何故レンが怒ったのか分からないリョウは首を傾げながら頭の後ろをかく。

 

「お、おかしいな? アイならあれで満足してくれるのに……」

 

「なぁリョウ、お前レンが何歳か聞いた事あるのか?」

 

「え? そりゃ……あれ?そういえば無いな。まぁ小学生ぐらいだろ?」

 

「このゲームの対象年齢は中学生以上だ。小学生は遊べない」

 

「あーそうだったか、んじゃあ……うん?」

 

 エムと並んで歩きながらそんな話をしているとリョウの耳に不自然な音が流れる。

 

「だいたいリョウさんは……」

 

「バニー伏せろ!」

 

 リョウに対しての愚痴を吐き出しているレンを、突然リョウがうつ伏せに押し倒す。

 

「ちょ、ちょっとリョウさん!? 子供じゃ無いって言ったけどそういうのは……」

 

「頭を上げるなバカ。敵だ、水辺の方から来てる」

 

「え?」

 

 ふと見ると自分達と同じようにエムも地面に伏せているのが見える。

 レンは頭を上げないように首を回して二人と同じように水辺の方へと視線を向ける。

 そこには高速で接近する大きな影が4つ。

 

「な、何アレっ!?」

 

「ホバークラフトだ。水陸両用で障害物のない場所なら車並みの速度で走ることができる乗り物だ。対岸に設置されていたのを奴らが手に入れたのか」

 

「何それズルイ!」

 

「れっきとしたルールだ。『設置されてる乗り物や道具は好きに使っても良い』アイツらの運が良かっただけの話だ」

 

「うう〜……」

 

 実際自分達も運の良さを売りにしている以上何も言えなくなるレン。

 

「来るぞ!」

 

「バニー左だ!」

 

「うんっ!」

 

 そうしている内にホバークラフトの面々が近づいて来る。

 同時にバレットラインが飛んで来るが、リョウは右にレンは左に転がり、固まるのを止め的を散らす。

 

「このぉっ!」

 

 お返しとばかりにP90を向けるが、ホバークラフトは既に弾の当たらない地点まで離れていた。

 

「やめておけ無駄だ」

 

「エムさん無事?!」

 

「ああ、くらってない」

 

 身軽な自分達は兎も角エムが避けられたか不安だったが、特に問題の無さそうな彼の声を聞き安堵する。

 

「でもどうしよう? 一旦住宅地まで避難する?」

 

「いや、奴らは適正な距離を保ってる。いわば『攻撃も回避も出来る』距離、この距離を保って俺たちが痺れを切らして背中を向けるのを待ってるんだ。もし背を向ければ一気に加速して来て直ぐに追いつかれる」

 

 それに素早いレンや立体機動の出来るリョウなら兎も角、重装備のエムが逃げ切る事は不可能に近い。

 

「ならどうしよう?」

 

「……リョウ、特殊弾で奴らを狙撃出来るか?」

 

「あん? 出来なくはないけど、この距離はお前の仕事だろ? そろそろ働けよ、荷物持ちしに来た訳じゃ無いだろ?」

 

 サイクロン弾を使えばこの距離でも撃ち抜く事は可能、しかし本来ならこの距離はライフル銃を持つエムの適正距離だ。

 

「……ふぅ分かった。サポートを頼むぞ」

 

 エムは背中に背負った彼の胴体ほどもある大きなリュックを開く。

 そしてその中から巨大な鉄の塊を取り出した。

 

「え、エムさん? 何それ?!」

 

「フンッ!」

 

 鉄塊の両端を掴み力いっぱいに開き地面へと叩きつける。

 鈍い音と共に鉄塊の尖った部分が地面へと大きく突き刺さりアンカーへと変わる。

 

「チキンなおれの用のチキン過ぎる装備さ」

 

 それは鉄塊では無く盾だった。

 小型ではあるが扇状に広がりエムの巨体を隠すその強固な姿は、一瞬『城』とすら錯覚するほどだった。

 

「っ!? 来たよ!」

 

「狙いはおれか」

 

 盾を設置すると同時にホバークラフトの一つが此方へと向かって来る。

 狙いはエムだ、おかしな行動をされる前に彼を潰してしまおうと言う算段なのだろう。

 鉄の城塞に籠り身動きの取れないエムは回避出来ず銃弾の雨に晒される。

 

「エムさん!?」

 

 フルオートで放たれるマシンガンの勢いに土煙が立ち登る。

 

「心配すんな、あの程度じゃ()()は壊れねぇよ」

 

 リョウの言う通り、土煙が晴れた後に居たのは体力ゲージを1ミリたりとも減らしていない無傷のエムの姿。

 彼だけで無く彼を覆っていた盾にも汚れやかすり傷はあるが、大した損傷は見られずほぼ無傷であった。

 

「バニー、弾をばら撒け。当たらなくても良い、アイツが嫌がるように広がるように撃て」

 

「わかった!」

 

 リョウの指示通りP90の弾を振り回すように撃つ、残弾など考えず50発フルオートで全てだ。

 狙いもつけず一発の威力は低い、しかし向かって来るバレットラインと50発の弾幕を嫌がりホバークラフトは弾の届かない距離まで退避する。

 

「エムさん凄いよその盾! でもあんなに撃たれて耐久値は大丈夫なの?」

 

「問題無い。コイツはリアルには無い宇宙戦艦の装甲板で出来た『GGO最強の材質』の盾だ。7.62mmまでの弾なら例え目の前で撃たれても弾く。よって耐久値にも変動は無い」

 

「凄い凄い! でもそこからじゃ狙撃出来ないよ?」

 

 GGOのシステムでは姿が見られている状態では狙撃が出来ない。

 システムアシストであるバレットサークルを使うと相手にバレットラインとして狙っている事がバレてしまうからだ。

 

「まあ見てろ」

 

 しかし不利な状況にも関わらずエムは落ち着いた様子でスコープを覗く。

 退避して行ったホバークラフトが他の3機と共に時間差で突っ込んで来る。

 一人ではダメだと判断し、数で撹乱しながら強引に制圧する作戦に変えたのだ。

 

「こ、こっちにも撃って来た!」

 

「バニー下がれ!」

 

 防具を持たないレンとリョウを狙い、先頭のホバークラフトが射撃を開始する。

 リョウはレンの前に躍り出るとメニューを操作してホログラム状の盾『カバー・ヴィジョン』を出現させる。

 

「くっ! エム格好つけてないでさっさとやれ!」

 

 レンと共に盾の後ろに隠れるが所詮はホログラム、エムの盾とは強度は雲泥の差、破られるのは時間の問題だろう。

 

「……………」

 

 しかしエムはリョウの叱咤にも表情を変えずスコープを覗く。

 そして慣れた動作で銃身をずらしながら引き金に()()()()()()()

 

「がふっ!?」

 

「何!? な……んで?」

 

 その瞬間リョウ達を狙っていたホバークラフトに乗っていたプレイヤーの一人の頭が撃ち抜かれる。

 バレットラインは見えず、何が起こったか分かっていない仲間のプレイヤーが混乱している。

 

「バレットラインは見えなかった筈……があっ!?」

 

 再びバレットラインの見えない謎の攻撃に撃ち抜かれた運転手のプレイヤーの体が糸の切れた人形のように崩れ落ち、操作の切れたホバークラフトが水の上で転がる。

 

「まずは二人……」

 

「凄いよエムさん! この調子なら一人で6人全員倒せるかも!」

 

「バカ言うな、盾が壊れないと分かったらアイツらがする事は分かってる。サポートするぞ!」

 

「う、うん!」

 

 リョウの予測通り残りのホバークラフトが一斉に距離を縮める。

 盾が壊せないのなら『盾を無視してプレイヤーを攻撃すれば良い』、敵プレイヤー達はホバークラフトを展開して側面から回り込もうとする。

 

「バニーさっきと一緒だ、倒す事よりも近づかせない事を心掛けろ!」

 

「了解!」

 

 レンは先程同様フルオートで弾をばら撒きホバークラフトを牽制する。

 こちらからの射撃は避けながら、高速で跳び回り弾幕を散らすレンに鬱陶しそうにする。

 とは言えP90の威力は低い、プレイヤー達は弾幕を受けながらもホバークラフトの機動力を生かし強引に突っ込んで来る。

 そしてその速度を利用し複数の球体を山なりに投げ飛ばす。

 

「グレードっ!? エムさん!」

 

 敵が投げたのは『プラズマグレード』に『デカネード』どちらも威力が高く爆破範囲も広い強力なガジェットだ。

 山なりの角度からして、エムの盾を超えて彼の体を直接破壊することが可能だ。

 

「やらせねぇよ」

 

 だがそれをただ見てるリョウでは無い。

 素早い動作でホルスターからコルト・パイソンSH・Rを抜き、6度引き金を引き6つのグレードを撃ち落とす。

 数秒経たずに時間差で更に6つのグレードが降って来るが、リョウは素早くリロードを終え一切の無駄弾を使わずに12発全てのグレードを破壊する。

 

「があっ!?」

「ぐがっ……!」

 

 その隙に更に二人のプレイヤーをエムが撃ち抜き、合計で4人のプレイヤーの排除に成功する。

 

「くそっ! 奥の手だRPGを使え!」

 

「おう!」

 

 残った一機のホバークラフトに乗ったプレイヤーがRPG-7を取り出しエムの方へと向ける。

 

「む……」

 

 流石のエムも目の色を変える。

 いくらこの盾でも対戦車ロケット弾を受けてはタダでは済まない。

 たとえ盾が耐えられても真後ろにいる自分は決して無傷では無い、吹き飛ばされて身を出せば一気に危険度が上がる。

 

 しかしそれは彼が一人だったらの話だ。

 

「そいつは無粋だろ?」

 

 エムの方に向かって行くRPGへとリョウはコルト・パイソンを向け引き金を引く。

 リョウの放ったマグナム弾とRPGの弾頭が重なり大きな爆発を起こす。

 

「なにぃっ!? そんな馬鹿……がっ!」

「ぐあっ!?」

 

「よそ見し過ぎだ」

 

 RPGの弾頭をハンドガンで撃ち落とされた事に驚き気を取られた二人のプレイヤーの脳天へとエムの放ったライフル弾が撃ち込まれる。

 6人のプレイヤー全員が敗れた事でホバークラフトに乗ったプレイヤー達の姿が消滅して行いった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「凄い凄い! ホバークラフト4機に勝っちゃったよ!」

 

 先程とは違い圧倒的に相手側が有利な状況にも関わらず、無傷で6人のプレイヤーを退けた事にレンは飛び跳ねながら喜ぶ。

 しかしレンには一つ疑問に残る事がある。

 

「でもあの人達、なんで狙撃避けなかったんだろ?」

 

「いくら速くても速度は一定だった、なら狙撃はしやすい。普通に考えて弾が発射されてから避けるのは不可能だからな」

 

「でもバレットラインを見れば避けるタイミングは分かるよ?」

 

「だからラインを発生させなかった」

 

「え?どうやって? 引き金に指を掛けたらライン出ちゃうよ?」

 

「だから掛けなかった」

 

「???」

 

 エムの言っていることの意味が分からず?を浮かべるレン。

 

「小出しにせずハッキリ言えよエム。ようはコイツはシステムアシストを使わずに射撃したんだよ、指を掛ける時間を極力少なくして直接狙ったんだ。引く瞬間に一瞬ラインが出るだろうが一瞬過ぎて分からないんだよ」

 

「へ〜そんな裏技があるんだ。あれ?じゃあ何で皆んなやらないんだろ?見えない射撃なんて強い筈なのに」

 

「普段から銃に慣れても無い限り出来るもんでもねぇよ。意外と当たらないもんなんだぜ銃って」

 

「ああ距離や風は勿論、弾の弾道相手の速度自分の動きや体勢狙う部位、考える事は山ほど有る。慣れるには知識以上に経験による勘が必要だ」

 

「うへ〜聞くだけでも頭が痛くなるよ」

 

 普段から細かい計算をせず短機関銃で戦う事を基本とするレンには、何が何やら考えるだけでも頭痛ものだった。

 

「あれ?って事はエムさん普段から銃を撃ってるって事?……えっと何に使ってるの?」

 

「……お前本当にカタギだろうな?」

 

「……人を撃った事はない……とだけは言っておく」

 

 明らかに素人の銃の腕では無い、謎の深まるエムにレンは恐る恐る聞くがはぐらかされる。

 気にはなるがそれ以上は聞かない方がいいと彼女の勘が働き、これ以上の詮索はやめる事にした。

 

「さて、そんな事よりもそろそろ次のスキャンだ」

 

「あ、そっか。確か前に見た時は残り4チームだったから……3位確定!? やったー!銅メダルだよ銅メダル!」

 

「はしゃぐなっての」

 

 大袈裟に喜ぶレンを制しながらも笑顔で喜ぶ彼女を見てリョウの頬も緩んでいる。

 そんな二人を尻目にエムがマップを開くと丁度スキャンが行われるところだった。

 マップの左上から右下へと白いラインが移動しマップ上のプレイヤー達のアイコンが映し出される。

 

「確か残ってたのは砂漠荒野エリアの二チームだよね?」

 

「そうだ距離も近かったし戦闘になっていると思うが……」

 

「じゃあ少しは疲弊してる筈だよね? もしかしたら漁夫の利を狙えるかも」

 

「ああ、それにもし戦闘中だったとしても内1チームは挟み撃ちに出来るだろう」

 

「そうなれば数の少ないって言う俺たちの弱点も補えるな」

 

 ラインがマップの水辺へと差し掛かると赤いアイコンの白いアイコンの二つが出現する。

 

(この白いのはわたし達で赤いのはさっきの人達だ。問題は他のチームがどれだけ離れているか、砂漠荒野エリアからの距離を考えればまだ砂漠にいる筈。砂漠荒野エリアならわたしの得意なフィールドだし、いっその事ことリョウさんとエムさんのライン無し狙撃の囮をするのも良いよね。何にせよスキャンの後直ぐに作戦を練らないと……)

 

 思考を巡らせるレンと同じようにリョウとエムも静かにマップを見る。

 ピコンッと言う音と共にレン達以外の白いアイコンが出現する。

 

 彼女達の直ぐ100メートル後ろの『市街地エリア』で

 

「「「え?」」」

 

「っ!? バニー伏せろっ!」

 

「へっ?」

 

 普段のレンなら直ぐに反応出来たかもしれない、しかし予想外な事に気を取られた彼女は間抜けな反応を返すだけ。

 その瞬間、レンは脇腹に凄まじい衝撃を感じる。

 横からの強い衝撃に彼女の小さな体がまるで人形のように宙を舞う。

 

(う、撃たれた……)

 

 彼女がその事を認識したのは地面へと堕ち数回転げ回った後だった。

 突如現れた衝撃と回りだした視界、慣れない感覚に思考が乱され息も荒くなる。

 

「レンっ!」

 

 交通事故のように派手に吹っ飛んだレンへエムが心配そうに駆け寄る。

 そんな彼へと赤いラインが伸びる。

 

「オラっ!」

 

 エムへと向かって来る狙撃をリョウが光剣で防ぐ。

 

「エムっ回復は後だ! バニーをそいつに乗せろ、ここを離れるぞ!」

 

 単発を防いではいるが狙撃者以外の後詰のプレイヤー達が来ているのが見える以上、この場でのんびりとしている暇は無い。

 リョウの指示通りエムはレンを抱え3人でホバークラフトへと乗り込みその場を後にする。

 逃げる最中追撃が来たがリョウが防いだおかげで大きな被害は出ていない。

 敵からの銃撃が止んだのを確認すると支給された回復薬(スティム)をレンの首へと打ち込む。

 

「バニー無事か?」

 

「う、うん……ちょっと目が回っただけだから……」

 

 現実なら即死ものだが、レンに撃ち込まれた弾は運良く急所から外れていた為、彼女のHPはギリギリレッドゲージで止まっている。

 少し気分を悪くさせながらもレンは起き上がる。

 

「でもあの人達どうやってあんな近くまで? たった数分で来れるような距離じゃ無いのに」

 

「難しい話じゃ無い。さっきの奴らと同じく『便利な乗り物』を手に入れたのだろう。おそらく残りのチームと挟み撃ちになるのを恐れておれ達を先に潰しに来たんだ」

 

「爆発物も多くて結構派手な戦闘だったからな、それで俺達の居場所もバレちまった訳か……くそ、乗り物を計算に入れてなかったな。悪かったなバニー」

 

「ううん、わたしも咄嗟に反応出来なかったし。皆んな気づかなかったんだからリョウさんのせいじゃ無いよ」

 

 互いの反省点とこれからのことを話し合いながらレンと、逃げる際に数発被弾したエムの回復を終える。

 

「でもこれからどうしよう? スティムは全部使っちゃったから正面からの撃ち合いは不利だし……そうだ!この水辺で陣取るのはどう? 水の上なら相手も来れないし機動力もあるから有利だよ?」

 

「そうしたいが難しいな。逃げる際に数発撃ち込まれてしまった、正直いつ沈んでもおかしく無い」

 

「そんなぁ〜」

 

 エムの言う通り三人の乗っているホバークラフトは、徐々に速度を落としていて何処からともなく黒い煙を拭いている。

 今までの戦いで運を使い果たしてしまったのかとレンは気を落とす。

 

「とにかく上陸しようぜ、もし沈んでしまったらそれこそ良い的だ」

 

 リョウと言葉に二人が頷くとホバークラフトは陸地を目指す。

 浸水しながらも何とか辿り着いたのは荒野エリアだった。

 

「最悪の状況……だな」

 

 上陸と共に次のスキャンが始まる。

 リョウの呟きに二人も難しい表情を見せる。

 と言うのも現在リョウ達が居るのは砂漠エリアと住宅地エリアのちょうど真ん中に位置する場所だ。

 つまりリョウ達は砂漠エリアと住宅地エリアに居る『二つのチームに挟み撃ちにあっている状況』だ。

 

「砂漠エリアのチームはさっきのチームを警戒して動いてなかったのか。となれば住宅地のチームは確実にこちらへと向かって来る。そうなれば戦闘になりその気配を嗅ぎつけた砂漠エリアのチームも行動を開始するだろう」

 

「わたし達がやりたかった事、まんまわたし達がやられちゃってるね……」

 

「戦力差はおおよそ三倍、ここまで残っている以上烏合の衆とは考えずらい。レンへの狙撃やその後の統率の取れた動きからも実力が窺える、残りのチームが未知数である以上勝てる確率は……」

 

 絶望的な状況に声が暗くなるレンとエム。

 

「あ、そう言えばエムさん時間気にしていたけど大丈夫?」

 

「ああ、15時丁度に読むように手紙を渡されていたんだった」

 

 時計の数字は15時02分となっていた。レンが伝えなければ忘れてしまっていただろう、エムはお礼を言うと袖元から手紙を取り出し内容を確認する。その間レンとリョウの二人で作戦を考える。

 

「とにかく移動しよう。ここに居ても良い事はない」

 

「でもどうするのリョウさん?」

 

「住宅地エリアのチームを迎え撃つ、奴らには乗り物があるし逃げるのは不可能に近い。対して砂漠エリアのチームとの距離は離れているし俺達の戦闘に合流するまで時間がある、それまでに奴らを倒してそのあと砂漠エリアのチームを迎え撃つ」

 

「それってかなり難しい作戦だよね? 回復薬も使い切っちゃったし……」

 

 大会のルールとして三本の回復薬が支給される。

 しかし先程エムと体力を大幅に減らしたレンに使用してしまい既に数はゼロ、数で攻め込まれると圧倒的に不利。

 

「……でもやるしかないよね! わたしだってこのまま終わりたく無いし、どうせやられるなら最後までやり切りたいもん!」

 

「そのいきだ。よし、ならこの地点に移動して迎え撃とう。ここなら岩場が障害物になって俺達でも有利に戦える。俺とバニーで前衛兼囮を、エムは少し離れた此処で……」

 

 マップを指で指しリョウが指示を出しレンも真剣に聞き入いている、ここまで生き残ってきた仲間三人による作戦会議おそらくこれが最後の気の休める時間だ。

 だからだろうかレンは背後からやって来る『敵意』に気がつかなかった。

 背を向けるリョウとレンの死角から拳銃が向けられる。

 その銃口はレンの頭部へと向けられていた。

 

(すまない)

 

 荒野の中に1発の銃声が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

⭐︎







 前回から投稿が遅れてしまい申し訳ありませんでした!
 リアルの仕事にここ最近のゲームの面白さなどで時間が取れませんでした。
 にも関わらず見てくれている方々に勇気をいただきました、これからものんびりですが続けて行きますので応援よろしくお願いします!



第四部 誰のサイドケースから見たい?

  • キリト
  • アスナ
  • クライン
  • エギル
  • シリカ
  • リズ
  • リーファ
  • シノン
  • ユウキ
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