ソードアート・オンライン フェイタルバレットー切札の弾丸ー   作:トライダー

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 恐怖と約束

⭐︎

 

 

 

 

 

 

「ぐっ……あぁ……」

 

 荒野に銃声が響き渡り大男が膝をつく。

 腕を押さえて跪いたのはエムだった、その足元には彼の愛銃であるHK45がバラバラに砕かれていた。

 

「何のつもりだ、エム?」

 

 そんな彼へとコルトパイソンを向けるリョウ。

 その銃口はエムの頭部へと向けられ、一切の動きを見逃さないかのような鋭い視線を放つ。その鋭い眼光に、エムはその大きな体を蛇に睨まれた蛙のように震え縮こまらせていた。

 

「俺に不意打ちが通用すると思ってたのか?」

 

 有利な状況にも関わらず決してエムとの距離を詰めず、2メートル弱の距離を保つ。エムが襲い掛かって来ようとも逃げようとどちらでも対処出来る適切な距離であり、己の射撃の腕に自信を持っているからこその選択だ。

 自分の質問に何も答えないエムに対し、更に声を低くし引き金に掛ける力を少し強くする。

 

「えっ? え……?」

 

 何が何だか分からないレンがオロオロと二人を見比べる。

 彼女からすればいきなり後ろを向いたリョウが発砲したかと思えば、自分へと銃口を向けていたエムの銃が弾け飛んだという状況だ。わけがわからず戸惑いながらも状況を見守るしか出来なかった。

 

「……………何も言わないんだな。別に構わねぇよ、大した興味も無いしな、ここからはバニーと二人でやるさ」

 

「っ!?」

 

 更に指の力を強くする。

 銃口からバレットラインが自身の頭部へと照らされリョウの言葉が脅しでは無い事を自覚させられる。 

 

「……い……いっ……」

 

 鋭い視線と殺気。普段からとある女に当てられているものに近いが、それよりもずっと鋭く恐ろしく、エムの顔が強張っていく。

 そして……

 

「嫌だあああああっ!! 死にたくないいいいいいいっ!!!」

 

((ビクッ!))

 

「どどどどどうか、ままま待ってくださいいぃっ! どうか!お願いしますぅ! 撃たないでください、嫌だぁ!」

 

 渋く強張っていた顔のあらゆる場所から液を垂らしながら、突然情けない泣き顔へと変わり命乞いをしてくる。

 突然の豹変にレンだけでなくリョウですら呆気に取られてしまった。

 ハッと正気を取り戻したリョウが再び銃を構える。

 

「ひいっ!……やめてください……撃たないでください」

 

「事情を話せ。何でバニーを狙った? ちゃんと理由を言えば見逃してやる」

 

 両手を地面につけ土下座をする形で命乞いをするエムの姿に、流石のリョウも引き金を既に引く気が無くなってしまっていた。せめて理由を聞こうと少し声色を優しくする。

 すると泣きじゃくり鼻声になりがらもエムは話し出した。

 

「死んでしまうんです……」

 

「……何言ってんだお前?」

 

 "撃たれたら死ぬ"そんなのは当たり前の事、特にこのGGOでは。

 なのにそんな当たり前のことをここまで怯えているエムの姿に理解が追いつかない。

 

「違うんです! これからもし僕がSJで死んでしまったら……"リアルの僕も一緒に死んでしまう"んですッ!!!」

 

 厳つい顔つきに似合わない泣き顔を見せながら凄まじい剣幕で叫ぶエムの姿に二人揃って圧倒される。

 

「あ、あたま大丈夫? SAOじゃ無いんだからそんな事には……」

 

「………………」

 

 レンは馬鹿にしたのではなく本気で心配している、そんな事を言い出すなんて何処かをおかしくしてしまったのではいかと本気で思っていた。

 しかしリョウにはエムの姿から彼が嘘をついているようには見えなかった。

 

「……エムさっきの手紙に何が書いていた?」

 

 エムの様子がおかしくなったのは例の手紙を読んでから、だとしたらあの手紙に彼を変える何かがあった事はレンにも分かった。

 エムは震える手で弱々しく手紙をこちらへと向ける。

 リョウはUFGを使って手紙を回収すると、エムから目を離さないままレンに手渡す。

 レンは手紙を受け取るとリョウにも聞こえるように声に出しながら内容を読んでいく。

 

『やっほーエム奮戦中かね? この手紙は丁度一時間が経過してから読むように言いつけていたけど、破っていたら殺すよ?今すぐしまえ。私の代役なんだからその分しっかりと楽しみなさいよ! これはゲームであって遊びなんだからね! でも一時間以内で不甲斐ない死に方をしたらブチ殺すからね。もし一時間以上生き残っていても、その後死んだらやっぱ殺す、自殺もダメね。何としても生き残りなさいな、バトルは緊張感が無いと楽しめないよね! さあさあ存分に生を楽しめ! 生を感じなさい! いじょー』

 

「……だって」

 

「何だこりゃ? まさかと思うがこんなもん本気にしてんのか?」

 

 確かに物騒な内容だが、普段のピトフーイの言動を知っているリョウ達からすれば別段違和感のあるものでは無い。

 そんな呆れた様子の二人を見てエムは不気味に笑い出す。

 

「ははははっ!あなた達は何にも分かっていないんですよ! ピトフーイの頭のおかしさを! あの女は殺すと言えばリアルで本当に殺すんですよ!!」

 

「ゲームの中の殺し? あはははっ!そんな甘いことのワケが無いでしょう! 一時間楽しめたか言っておいてこの仕打ちだっ! やっぱりあの女はイカれている」

 

SAO(デスゲーム)に憧れているんだっ!」

 

「っ!?」

 

 畳み掛けるように叫ぶエム。

 そんな彼の口から放たれたのは、忌々しいあのゲームの名前だった。

 

「何言ってるの?そんなわけ……」

 

「いや、確かにあの女はSAOに執着していた。案外嘘じゃ無いのかもな……」

 

「そんな……」

 

 初めてピトフーイと出会った時、SAOでの命のやり取りを羨ましがっていたのを思い出す。

 そして彼女から感じる殺気と狂気、それだけでもエムの言う事に説得力を持たせるには十分だった。

 

「話は分かった。それで何でバニーを狙ったんだ? 戦力が減ったら勝てるもんも勝てないだろ?」

 

 エムの話を纏めると敗北=死という事だ。ならば何としても勝たなくてはならないこの状況で仲間割れをする意味が分からなかった。

 

「……SJのルールではリーダーだけが降参の権利を持っているんです。手紙には降参については書いてなかったから……レンがやられれば次に名前を登録している僕がリーダーになるんです」

 

「せ、せこい作戦だな……そんなんであの女が納得するわけねぇだろ?」

 

 降参ならば死なずにゲームを抜けられる。そう考えての行動だったようだが、あの自分勝手なピトフーイがそんな話でOKを出すとは思えない、エム自身も殆ど賭けなのかリョウの指摘に無言で俯いている。

 

「リョウさん、そろそろ行かないと!」

 

「だな」

 

 そんな問答をしているうちに次のスキャンが始まる時間となっていた。まだまだエムには聞きたいことがあったが、この場所がスキャンでバレれば他のチームが一目散に向かって来るだろうし急いで移動する必要がある。

 先に駆けて行ったレンを追おうとしたリョウは、足を止めて未だに項垂れているエムへと声をかける。

 

「エム、俺たちは二人で優勝を目指す。棄権したいなら俺たちが負けた後に好きにしろ」

 

 わざわざエムに倒されなくとも他のチームに負ければ自然とエムがリーダーになる。それまで隠れているようにリョウは促す。

 

「……たったの二人で残り2チームを退けるなんて不可能だ。勝てる見込みがあるならこんな事はしない」

 

 そう言いながら背を向けるリョウへと絞り出すように唸る。

 だがリョウは背を向けながら真剣な声で返す。

 

「男ってのは、"女の子の笑顔"と"約束"を命懸けで守るもんだ。だから負けねぇよ」

 

 リョウはレンの後を追い走り出した。岩場の荒野にぽつんと一人残されたエムは吐き出すようにつぶやく。

 

「……死ぬのが怖くて何がいけないんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

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「エムさん置いてきて良かったのかな?」

 

「あいつもベテランだ。自分の身ぐらい守れるだろう。それに人の心配をしてる余裕はないぞ」

 

 エムから遠く離れた岩場に二人で身を隠し、二人で次のスキャンを確認する。

 

「うわ〜見事に挟まれちゃってるね……」

 

「まあ分かってた事だ」

 

 マップ内には三つの丸い印が直線状に並んでいる。

 現在リョウ達が居るのは荒野ポイントと砂漠ポイントの丁度真ん中、そんな彼らを挟むように二つのチームがそれぞれのポイントに陣取っていた。

 しかも二つの印は徐々にこちらへと近づいている。マップを確認しながらも勝負を仕掛けるつもりなのだろう。

 

「うぅ……どうしよう。エムさんもいないし、やっぱり無茶だよね?」

 

「そう悲観的になるな、あくまで想定内だそれ以上じゃない。それに良いもんも見つけたしな」

 

 そう言いながら隣に立て掛けられているバイクに視線を移す。ここに着くまでに倒れているのを見つけた物だ。

 ボロボロで旧式たが"エンジニア"のスキルを持っているリョウには、そのバイクが使用可能だということが分かった。

 

「俺たちの運もまだ尽きちゃいねぇな」

 

「どうするの? これに乗って安全な場所まで避難する?」

 

「いや、さっきの奴らは車かなんかに乗っているし、残りのチームの速度も速い。恐らくコイツらも乗り物に乗っているんだろうから二人乗りで逃げるのは不可能だな」

 

 いくらサイズの低いレンでも二人で乗れば速度の低下は免れない。その上この型の古いバイクでは距離を取ることすら難しいだろう。

 

「……じゃあどうするの?」

 

「俺がコイツを使って砂漠ポイントに居るチームを抑える。バニーはこのポイントでさっきのチームを迎え撃つんだ」

 

「ええっ!?それって二手に分かれるってことぉ!?」

 

 ただでさえ戦力で劣っているのに更に分散させる策にレンは大きなリアクションを見せる。

 

「この状況では挟み撃ちにされるのが一番最悪だ。だったらどっちかが片方のチームを止める必要があるんだよ」

 

 リョウの言う通り、この狭い地形で2チームからの攻撃を捌くのは得策では無い。

 それならば片方が開けた砂漠で1チームを抑え、もう片方がこの岩場で迎え撃った方が勝機はある。

 とすれば砂漠へと向かうべきはリョウの方だろう。免許も乗り物用スキルも持たないレンではバイクの操作は出来ないし、開けた砂漠よりは岩場が障害物になる荒野で戦う方が適任であるからだ。

 

「で、でもでもぉ……」

 

 作戦は理解できる。しかしこの状況で一人取り残され、なおかつ1チームを迎え撃たなければならない。

 決して大きな大会では無いとはいえ優勝を左右する大一番、GGO経験一ヶ月と少しのレンには荷が重く感じられた。

 

「勝つにはコレしかねぇよ。幸いこの地形はお前の装備と相性が良いし、お前の実力を考えれば分の悪い賭けじゃない」

 

 両手でp90を抱え「うー……」と唸っているレンの頭を、安心させるように優しく撫でる。

 

「約束したろ?優勝したら街を案内してやるって。これでも楽しみにしてるんだぜ」

 

 "約束"と言う言葉にハッと目を見開く。

 そうだった自分には優勝を目指す理由があったのだった。

 

「お前が自分に自信が持てないのは知ってるけどよ、勇気だして一歩踏み出してみな。自分を変えられるのは自分だけなんだからよ」

 

 自分を変えられるのは自分。そうだった、自信の持てない自分が"約束"の為に変わる為にSJの優勝を目指していたのだ。

 リョウは優勝する為の策を考えてくれた。だとしたら自分も勇気を出して立ち向かわなければならない。

 

「わかった。やってみるよ!」

 

 己の頬をパチパチと叩くと迷いのある瞳を強く意志のあるものへと変える。

 

「うし、んじゃ行くか」

 

 その瞳をみて彼女がもう大丈夫なのを察したリョウは、撫でる手を止めバイクに跨る。

 

「……レン、もっと自信を持て。大丈夫お前は良い女だよ」

 

「え?」

 

 その背を黙って見つめていたレンは素っ頓狂な声を漏らしてしまう。

 

「ガキじゃなけりゃ惚れてたかもな」

 

 キザったらしくウィンクするとアクセルを捻り、豪快なエンジン音を轟かせバイクを発進させる。

 オンボロな見た目にそぐわず結構なスピードを出すバイクがリョウの背中を見せなくするまでそう時間はかからなかった。

 

「も、もう……本気にしちゃうじゃん……」

 

 きっと本気では無く緊張をほぐす為のジョークのつもりだったのだろう。それでも彼女の心を強くするには十分だった。より優勝への意気込みを強くし反対方向へと足を向ける。

 勝とうが負けようが次に会う時は勝負がついた時だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

       ⭐︎

 

 

 

 

 

 

 

 無限に広がるとすら思わせる砂漠の上をリョウは走る。

 少しタイヤが砂に取られてはいるが想定以上にスピードか出ている事に安心する。

 

「…………来やがったな」

 

 視線の先に複数人の影が目に入る。

 数は六人、どうやらメンバー全員が生存しておりかつバイクを獲得しているようだ。

 迷いなくこちらを目指しているのが、巻き上げられる巨大な砂煙からよく分かる。

 集団の真ん中には見覚えのある赤いライダースのプレイヤーの姿も確認出来た。

 

「今日こそ勝たせてもらうぜ、炎刃」

 

 それが因縁の兄弟子だと気付いたリョウはアクセルを強める。

 すると横一列に並んでいたプレイヤー達がフォーメーションを変える。中央のエースを隠すように左右のプレイヤーが前方へと躍り出ると、一斉に銃を構える。

 

「ちぃっ」

 

 未だ距離はかなり離れており当たることはない、恐らく威嚇が目的だろう。

 しかし下手な鉄砲もなんとやら。もし弾幕のうち一発でもバイクに直撃し壊れてしまってはマズい。数の不利だけでなく機動力まで奪われてしまっては流石のリョウもキツい。

 舌打ちをしながらもハンドルを右に切り射線から離れる。そしてそのまま障害物の多いエリアへと誘導しようとする。

 

(着いてきてくれよ……)

 

 ここで誘導出来なければこの集団はレンの方へと向かってしまう、そうなれば作戦は失敗だ。

 

 だがその心配は杞憂に終わった。バイク乗りたちはリョウの機動を追うように後ろをついてくる。リーダーは兎も角それ以外のメンバーはスキャンに映らない、ここで見失い後顧の憂いになるのを避ける為だろう。

 

 しかしここからが本番である。これからリョウは六人のプレイヤーを同時に相手をしなければならないのだから。

 

 リョウは距離を離す為にアクセルに力を入れる。

 エンジンを吹かすたびに少し嫌な音が鳴るが、どうせ中途半端なスピードではやられるだけ、ならば壊れるかどうか運に任せた方がマシだと考え容赦なくアクセルを回す。

 

 砂漠の中に突き刺さる宇宙船の残骸、それらを潜り抜ける。

 繰り出されるバレットラインを避ける為に一切のブレーキをかけずにコーナリングを曲がる。

 時折残骸の破片が頬を掠める。しかしリョウの表情には一切の恐怖は無く最小限の動きで障害物を回避する。

 六人のうち前を走っていた二人のプレイヤーがリョウの背後につくと銃を構える。放たれる弾幕を車体を左右に揺らして回避する。

 

「お返しだ」

 

 コルトパイソンを構え素早く引き金を引く。轟く二発の銃声と放たれた弾丸はまるで吸い込まれるように脳天を目指す。

 額を撃ち抜かれた二人の身体はぐらりと崩れると、互いに肩をぶつけ合い転がるように倒れた。

 

(まずは二人)

 

 巻き込まれたバイクが爆発を起こし黒煙を巻き上げる。その煙を突き破り残りの四台のバイクが姿を見せる。

 そのうちの二台がリョウの左右を挟むように陣取る。なんとか振り切ろうにも最高速度では敵わない。

 左右に陣取るプレイヤーが光剣を取り出し横薙ぎに振るう。

 

「くっ……この!」

 

 初撃を屈んで避け、その後の連撃も体操選手も驚きの体勢でよけると、右隣のプレイヤーへとあえて距離を詰め腕の部分を両手で受け止める。そのまま掌底で相手の肘をかち上げ、ガラ空きとなった首へと手刀を打ち込み、胸部に強力な後ろ蹴りをかます。

 片方のプレイヤーがバイクから転げ落ちるのを確認すると、もう片方のプレイヤーへと視線を移す。

 こちらへと距離を詰め振り下ろしてくる光剣をこちらも光剣で受け止め、合気道のように絡め取り光剣を弾き飛ばす。それだけでは無く絡め取る際に腕の内側に刃を差し込み、弾くと同時に腕を切り落とした。

 腕を無くし動揺している相手の胸に柄を向け両光剣のスイッチを押す。反対側から出現した光の刃に急所を貫かれた相手プレイヤーはHPを全て失いバイクから崩れ落ちていった。

 

(これで三人……)

 

 六人のうち半分を倒した事に一瞬安堵した瞬間、リョウの背後から大量のバレットラインが放たれる。

 

「チッ!」

 

 咄嗟にハンドルを切った事で直撃は避けたが、数発がバイクへと当たってしまった。一瞬でも油断した自分に舌打ちをしながら背後を確認する。

 リョウの背後から一台のバイク、しかし乗っていたのは二人のプレイヤー。どうやら転げ落ちた一人を回収していたようだ。二人乗りになった事でスピードは落ちてはいるが、もう一人の両手が開いた事で高火力の武器を使えるようになっていた。

 再びマシンガンの照準がリョウへと向けられる。

 

「そらっ」

 

 リョウは懐からスモークグレネードを投げ捨て視界を塞ぐ。しかし視界を遮られるのも気に留めず、弾幕を貼りながらアクセルを全開にして煙を突き破る。

 

「「っ!? ぐあっ!?」」

 

 そんな二人の視界に映ったのはバイクの後輪。

 スモークによって視界を遮った後リョウは、急ブレーキをかけバイクの後輪を浮かし二人が出てくるのを待ち構えていたのだ。

 全速力を出していたバイクは当然止まられず、二人揃って後輪にぶつかり勢いよく転がり落ちる。

 

「ほらよ」

 

 交通事故も同然の衝撃に半分気絶している二人に、子供とキャッチボールするかのようにデカナードを投げる。

 投げられたデカネードは二人の間に落ちると、通常のグレネードの数倍の爆発を起こした。

 

 これで合計五人のプレイヤーを倒す事に成功した。

 しかしリョウに安心する暇など無い。何故ならばリョウにとってはこのSJ、ここからがら本番なのだから。

 

「…………っ!」

 

 黒煙を突き破り、最後の一台のバイクが姿を現す。

 高音のエンジン音を轟かせウィリーの状態で突撃してくるのを、同じように前輪を持ち上げ受け止める。

 

「……流石だな、リョウ」

 

「ようやく邪魔無しでやれんな」

 

 グググっと押し合った後、弾かれるように互いに距離を取りバイクを走らせる。

 

「「……………」」

 

 互いに睨み合いながらも速度を落とさず走り合う。それはまるでどちらが速いのかを競っているようであった。

 

「おらぁっ!」

 

 チキンレースのように隣り合い走るなかリョウから仕掛ける。

 リョウの裏拳を皮切りに格闘戦が始まる。しかし互いにバイクは走ったまま、ハンドルから両手を離し殴り合う。

 殴っては守り、掴んでは切り、バイク上とは思えない状態での格闘。そのオープニングヒットを獲得したのはエースだった。

 

「くっ!」

 

 頬に肘鉄を喰らい倒れそうになるのを堪えながらも距離を離すと、同じようににエースも距離を取る。

 

「「……っ!」」

 

 二人が同時に銃を構える。リョウはコルトパイソンを、エースはベレッタ、二人が仕事でも使用している愛銃による射撃戦だ。

 一本の柱を中心に回りあいながら互いの速度、風速、距離、動き、癖を予測し撃ち合う。だがお互いをよく知るもの同士の為か弾は一向に当たらない。

 牽制しあいながらも徐々にその円が縮まっていく。

 再び腕が届く距離まで縮まると再び格闘戦が始まる。打撃や組付合いながらも銃口の向きだけは警戒してゼロ距離の射撃を回避する。

 

「「はっ!」」

 

 互いの拳がぶつかり距離が空くとすかさず同時に蹴りが繰り出され、その衝撃で更に距離が開く。

 

「ぐっ……」

 

「くそ!」

 

 再び同時に放たれた弾丸が交差し、互いの拳銃を撃ち落とした。

 リョウは拾うべきか一瞬悩んだが、答えを出す前にエースは行動を起こしていた。

 バイクを加速させウィリーの状態でこちらへと突っ込んでくる。

 獣の雄叫びのようなエンジン音に恐怖心を煽られるが、リョウは冷静に車体を持ち上げ前輪で受け流す。

 しかしエースも防がれるのは分かっていたのか、流された勢いを利用して今度は後輪を浮かし叩きつけようとする。

 リョウは身を屈めながらアクセルを全開にしてその場から離れる。ある程度距離をとった後、バイクサスペッションを活かしその場で飛び上がりながら強引に反転させる。

 

(そろそろ限界だな……次で決めないとコイツが持たない)

 

 車体に弾丸を数発受け、急加速に急停止、車体のぶつかり合いなどで既にバイクは限界を迎えていた。

 

「「……………」」

 

 睨み合いながら威嚇するようにエンジンをふかし合う。先程までの激しさとは打って変わり、無音の砂漠の上で2種類のエンジン音だけが響く。

 

「「っ!!」」

 

 一斉にバイクを加速させる。距離を詰める度にエンジン音が高鳴り二人の魂を燃え上がらせる。

 二人は同時にバイクごと飛び上がり最高速度の勢いのまま車体をぶつけ合う。

 

「ぐっ!?」

 

「うおっ!?」

 

 高速の質量によるぶつかり合い、襲い掛かるその衝撃により体勢を崩し二人の体がバイクから振り落とされてしまった。

 かなりの高さから砂場へと背中から落ち衝撃に顔を歪める二人のもとへと、もつれあい入れ替わるようにしてバイクが落ちる。

 リョウはすかさずバイクを立て起こしアクセルを回す。エースも自分の方へと落ちてきたバイクに目を向けるが、リョウの乗っていた方は先程の衝撃で完全に大破しており乗れる状態では無かった。

 

(貰ったぜ炎刃!)

 

 最高速度に乗れる距離ではないが逃げられる距離でもない。左手に光剣を構えすれ違いざまに振り払う。

 光の刃によってエースの体が切り裂かれる

 

 

 はずだった……

 

「なにっ!?」

 

 光剣が空をきる。

 空ぶったわけではない、()()()()()()()()()()()()()()()()()

 リョウの目にはその一連の流れが見えていた。

 

 リョウの光剣がエースの胴体を捉えようとした時、彼の瞳に赤い光が宿った。その瞬間エースの体が炎に包まれ目にも止まらないスピードで駆け抜けたのだ。

 

「お前、それは……」

 

 奇妙で摩訶不思議な出来事、しかしリョウはその現象に見覚えがあった。

 

A(アクセル)、これが俺のエクストラスキルだ」

 

 エースの体が炎のように赤いオーラに包まれ、その背後にAの文字が浮かび上がる。

 そう彼もまた手に入れていたのだ。リョウと同じXTRAスキル、Aの力を。

 

「まさかこんな短期間でエクストラスキルまで……」

 

 リョウですら手に入れるのに数ヶ月要したのに、エースはGGOを始めて一ヶ月と少しで手に入れてしまったのだ。

 改めて自分の兄弟子がすごい男なのだと再認識させられる。

 

「これで条件は互角だ。遠慮せず本気でこい!」

 

 背中に背負った光剣付きのショットガンを取り出し地面へと突き刺す。

 「ここに居るぞ、かかって来い」とでも言いたげなその姿に対し、リョウの中には引くという選択肢は無かった。

 バイクから跳び降り、気合を入れる構えと共に「負けてたまるか」と言う感情を爆発させるように叫ぶ。

 

「ジョォォォカァァァァ!!!」

 

 まるで彼の想いに応えるかのように、紫色のオーラが火柱のように天を貫いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

⭐︎

第四部 誰のサイドケースから見たい?

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  • アスナ
  • クライン
  • エギル
  • シリカ
  • リズ
  • リーファ
  • シノン
  • ユウキ
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