ソードアート・オンライン フェイタルバレットー切札の弾丸ー   作:トライダー

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 加速vs切札

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『ぐあっ!?』

 

 一人の少年がコンクリートの床の上を転がる。

 背丈こそは大きいが、学ランを着ていることから高校生くらいだと思われる。

 

『どうした遼、もうおしまいか?』

 

 その少年は学生時代の遼だった。

 まだ師匠に弟子入りしてから間もない間の記憶。師の氷室だけではなく兄弟子である炎刃からも教えを受けていた頃。

 

『ぺっ! ざっけんな!!』

 

 口の中の血液を吐き出し再び炎刃へと立ち向かう。

 しかしどれだけ素早いジャブを繰り出そうとも、どれだけ鋭いストレートをかまそうとも、利き腕をポケットに突っ込んだ状態の炎刃に擦りすらしない。

 学生時代無類の強さを誇り敵のいなかった遼も、師匠と兄弟子には手も足もでなかった。

 

『なかなか、やるようになったんじゃないか?』

 

 立ち上がる力を失い仰向けに倒れる遼に賞賛の言葉を投げるが、彼が欲しいのはそんな言葉では無い。

 

『はぁ……はぁ……。なめてんじゃ……ねぇぞ!』

 

 手足に力が入らずも睨みつける力だけは弱めず首を向ける。

 彼にとって師匠は"こうなりたい存在"、しかし炎刃は"負けたくない存在"。大人自体を嫌っていた遼は師匠以外の大人を認めていなかった。そのせいかこんなふうに口が悪くなってしまう。

 

『舐めてないさ、だから全力で相手しているんだ』

 

 正直言ってこの時期の遼と炎刃の力の差はまさに子供と大人。兄弟子に対する態度すら悪い遼の事などいくらでも放っておく事が出来た。

 だが炎刃は何度理不尽に勝負を挑んで来ようとも全力で叩きのめした。

 

「"約束だ"。いつかぜってぇ超えてやるからな……」

 

「ふん、待っているぞ」

 

 それは彼が遼の素質を感じていたからだ。

 彼の諦めの悪さ、何度も立ち上がる気合と根性。

 探偵としても警察官としても実力はまだまだだったが、彼の中に眠る"熱い想い"と想いを実行しようとする行動力に希望を抱いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「「おおおおおおおぉっ!!!」」

 

 人気のない砂漠の中央で二つの"光"がぶつかり合う。

 一つは赤、もう一つは紫、といった真逆の色だが、どちらの光も熱い炎のように燃え上がり輝いていた。

 

「はあっ!」

 

「おらっ!」

 

 エースが銃光剣、リョウが両光剣を振るう。衝撃と共に火花が激しく散る。

 つば競り合い弾かれたように離れた後二人の姿が消えた。

 いや消えたと言う表現は正しくない。砂漠の中には二色の光のラインが後に残る。

 二人は消えたのでは無く、カメラにも映らない程の速さで動いているのだ。

 

(コイツ……ジョーカーのスピードについてくるなんて……)

 

 ジョーカーによる身体能力の強化と、それについてくるアクセルのスピード。恐らくアクセルの能力もジョーカーと同じく身体能力の強化なのだろう。

 

(いや、スピードは向こうのほうがうえか……?)

 

 同じ能力強化系のスキルでもその上がり方はまるで違う。

 ジョーカーはバランスよく全ての能力を上昇させ、前に戦ったスカルは攻撃と防御を主に上昇させていた。

 そしてこのアクセルは攻撃と速さ、特に速さを主に能力を上昇させているようだ。

 

「ぐっ、いくらなんでも速すぎだろ!」

 

 エースの速度が急に"加速"する。

 既に先程乗っていたバイクの速度など超えている。もともとエースはAIGにステータスを振っていて一般のプレイヤーよりも速い。ステータス+スキルによる強化、それでも理由がつかない速度だった。

 

 XTRAスキルは強力だがその分クセも強い、能力の発動や能力の上昇にはなんらかの条件がある。

 ならばアクセルにも能力上昇の法則性があるはずだ。

 リョウが攻撃を捌きながら能力の解析に勤しんでいると、エースが更に加速する。

 

「時間が立つ度に身体能力が上昇する能力か……」

 

「ああ、加速(アクセル)の名の通り、"時間が経つたびに自分の能力を加速させる"」

 

 嘘ではない。

 この男がクソ真面目でくだらない嘘や冗談をつかないことはリョウがよく知っている。

 単に自分だけがリョウの能力を知っているのが不公平だと思ったのだろう。

 

(だとしたら様子見するのは逆効果だ。火力を上げて一気に決める!)

 

 "ヒート弾"

 

 赤い特殊弾を握りつぶすとリョウの拳が炎に包まれる。右拳に宿った炎のエネルギーを両光剣に移すと光の刃に炎が灯される。

 そのまま炎を推進力にしながら、攻撃力を増した両光剣を構え突っ込む。

 

「甘いな」

 

 "スチーム弾"

 

 エースが懐から灰色の弾丸を取り出す、その色合いからリョウと同じ特殊弾だと分かった。装填してショットガンを地面に突き刺しトリガーを引くと、その銃身から水蒸気のような白い煙が辺りに巻き起こる。

 

「熱っ!?」

 

 吐き出した水蒸気がヒートの炎を吹き飛ばし白い煙幕へと変わる。

 

「くっ邪魔だ!」

 

 "サイクロン弾"

 

 ヒート弾をサイクロン弾に切り替え両光剣に宿す力を風属性に変える。両光剣を扇風機のように回し風で水蒸気の霧を吹き飛ばす。

 

 "エレクトリック弾"

 

 視界を開けると跳び上がったエースが、バチバチッと電気を纏った銃光剣を真上から振り下ろす。

 

「しまった!?」

 

 リョウの影を伸ばす程に激しい雷光が辺りを照らす。

 頭上に両光剣を構え受け止めたが、そのパワーとスピード、更に全体重を乗せた一撃に握力が耐えきれず手放してしまう。

 幸いサイクロンの風によって作られたバリアーが、電気を防いでくれた為感電は避けることができたが、手元から離れた両光剣が砂場に突き刺さる。

 

「はっ! ぜあっ!」

 

「うおっ!?」

 

 獲物を失い丸腰となったところを鋭い連撃が襲い掛かるが、リョウは最小限の動きでなんとか光剣を回避する。

 

「このっ!」

 

 空ぶった隙に距離を詰め両腕を盾にして、エースの腕ごと銃光剣を受け止める。

 エースが両腕に力を入れて押し込もうとするのを全力で押し返し、先程までの素速さを生かした戦とは真逆の泥臭い鍔迫り合いとなる。

 

「「ぐぐぐぐぐっ………」」

 

 互いの負けず嫌いな性格も合わさってか、どちらも全く引く事をせず押し合う。

 

 拮抗の後、押し勝ったのはエースだった。

 時間が経過した事によりアクセルの力が更に加速し、ジョーカーの力を上回ったのだ。

 力負けしたリョウは、体勢を崩され蹴りを喰らい仰向けに倒れる。そんなリョウへと銃光剣が振り下ろされる。

 

「ぐぅっ!?」

 

 リョウは残った武器であるUFGを取り出し、反対の手にワイヤーを巻きつけ引き伸ばす。

 弦のようにピンっと張ったワイヤーが光剣を受け止める。

 攻撃力こそは無いがUFGのワイヤーの耐久性を思い出し、咄嗟の判断だったが防ぐ事に成功した。

 流石にこんな方法で防がれるとは思っていなかったエースに僅かながらの隙が出来き、胴体を蹴りつけ距離を離すと転がりながら起き上がる。

 

 獲物を失ったリョウはUFGを腰のホルスターに仕舞ったままトリガーを引き、左手に巻きつけ引き伸ばしたワイヤーを、そのまま両拳から手首にかけてバンテージのように巻き付けた。

 

 ワイヤーで保護した両拳をガンガンと叩き気合を注入した後、肩に力が入らない程度に拳を握り締め構えをとると、トントントンと軽いジャンプでリズムを刻む。

 光剣に対して素手で対峙するリョウ、一見ヤケになったのかとも思われる行動。しかしその構えにエースはより警戒を強める。何故なら獲物を持たないこの姿こそがリョウの真骨頂だからだ。

 

「こっからが喧嘩だっ!」

 

 熱くなり口調が荒くなる。

 同時に駆け出し、緑の拳と赤い刃がぶつかる。

 振り下ろされる銃光剣を裏拳で弾き、返しの右ストレートを繰り出すが左腕でガードされる。

 今度はグリップを両手で握り力を込めて振り下ろされるのを、リョウは両腕で受け止めた。

 光剣とUFGのエネルギーが火花を散らす。

 

「ぐぬぬっ……!」

 

 両腕に力を込めて銃光剣を押し返すと、二人の姿が再び砂漠から消える。

 

「おらっ!」

 

「はあっ!」

  

 高速で移動しながらも、すれ違う度に拳と剣が激しくぶつかり合う。

 もし遠目にこの戦いを見ているものがいたとしたら、その目には飛び回る二色の光の軌跡と、その光がすれ違度に散る火花しか見えないだろう。

 

 何故リョウがアクセルのスピードについて行けているのか、それは同じエクストラスキルであるジョーカーのおかげである。

 アクセルが"時間が経過する度に能力を上昇させる能力"であると同時に、ジョーカーにもまた"ピンチの時程能力を上げる能力"がある。

 エースが強くなると言うピンチ、それがリョウの力を上げ天井知らずの戦いを起こしていたのだ。

 

「ぬぅっ!?」

 

 リョウは鋭く踏み込みリバーブローを放つが、折り畳んだ肘でガードされる。

 そしてお返しとばかりに振るわれる斬撃をスウェーでかわし、隙の少ない連打でしつこく攻める。

 獲物を持たないおかげで小回りのきくリョウを鬱陶しく思い、円を描くように回転しながら銃光剣を振るう

 だがリョウは両手を地面について斬撃を回避すると、その状態で体を捻り回し蹴りで銃光剣の側面を蹴り飛ばす。

 

「どんどんいくぜっ!」

 

 好機とばかりに攻める。

 しかし彼はリョウの兄弟子、たとえ獲物を失おうともその実力は折り紙つき。

 拳と拳、蹴りと蹴り、互いの技がぶつかり合う。

 互いに主体とした武術は違えど同じ師から学んだ戦い方。勝敗を決めるのは互いが培ってきた経験。

 ならば兄弟子であるエースの方が有利……

 

「おらぁっ!」

  

「ぐぅっ!?」

 

 しかし互角の競り合いを押し切ったのはリョウだった。

 確かに培ってきた経験ならばエースの方が上、だがリョウとて普段の鍛錬を怠った日は一度もない。元々エース以上に師を尊敬し事務所を託されてからは、名に泥を塗らないようより一層勤しんでいた。

 更にGGO(ここ)での出会いや戦い、それらの経験が彼を成長させ。

 何より"絶対に勝つという想い"それがエースを上回っていた。

 

(コイツ、ここまで強く……)

 

 再び拳同士が衝突する。

 互角の力に弾かれ合うかと思われた……

 

「おおおおおおっ!!」

 

 だがリョウはぶつかり合った拳を更に捩じ込むように押し込み、エースの拳を押し飛ばした。

 

「がっ!?」

 

 そのまま突き進む紫のオーラを纏った拳が、エースの胸を撃ち抜く。

 肺の中の空気を無理矢理押し出されるかのような感覚に、流石のエースも胸を押さえ後ずさる。

 

(ここだ!)

 

 ようやく出来た兄弟子の大きな隙。

 リョウは右足で地面を強く踏み締める。すると彼の意思に反応した紫のオーラが右足へと集中する。

 

「ジョーカードライブ!」

 

 駆け出しその勢いのまま跳び右足を突き出す。

 先の戦いでエースを打ち破った渾身の蹴りが、再びエースへと向かう。

 

「……それを、待っていた!」

 

 回避も防御も困難な状況。しかしエースは逃げるどころか、蹴りに対して体を捻り力を溜めるポーズで迎え撃つ。

 

「アクセルは加速するだけじゃない。加速の為に高めた力を一気に爆発させる!」

 

 瞬間、エースを包むように炎が爆発的に膨れ上がる。

 エクストラスキルの限界を超えた力。リョウはこの現象に見覚えがあった。

 

(レベル2……だと)

 

 かつてのデスガンもダミー(偽物)のスキルでは説明のつかない能力を発動させていた。

 ツェリスカによるとそれは、スキルを使い続けた者による稀に起きる現象。

 エースもまたスキルを手に入れたこの短い期間でその域へと達していたのだ。

 

「アクセルグランツァー!」

 

 炎を纏った回転しながらの後ろ回し蹴り。

 互いの渾身の一撃がぶつかり合い、凄まじい衝撃が砂を巻き上げる。

 

「「おおおおおおおおっ!!!」」

 

 蹴りと蹴り、意地と意地、プライドとプライドを賭けた勝負。

 "兄弟子を超えたい"、"弟分に負けられない"、そんな想いをぶつけ合う姿は普段の二人とは違い、至って子供な姿だった。

 

「はあああああっ!」

 

「な……ぐぐっ……」

 

 時間経過したことで更にアクセルの力が上昇し、徐々にリョウの方が押されて均衡が破られ始める。

 

「ぐあぁっっ!?」

 

 遂にリョウの蹴りが破られ、空高くへと弾き飛ばされた。

 

「絶望が、お前のゴールだ」

 

 リョウを見上げながら再び蹴りの体勢へと入る。

 放出されているアクセルのエネルギーはまだ残っている。後は重力に身を任せるだけで楽になれる。

 

「く……負けられねぇ」

 

 しかしリョウは諦めない。

 彼の脳裏によぎるのは一人の少女との約束、そして兄弟子を超てみせるといる約束。

 約束に大きさは関係ない、一度交わした以上絶対守るのがリョウの信じる漢の姿だからだ。

 

「漢が"約束"敗るわけには……いかねぇんだよっ!」

 

 《サイクロン弾》

 リョウがサイクロン弾を握りつぶすと彼の体が風に包まれる。

 僅かな浮遊感に身を任せ体勢を整える。

 そして落下する速度と、風の後押しで加速したまま再び右足を突き出した。

 

「ジョーカー・エクストリームッ!!!」

 

 風を纏った紫のオーラと炎を纏った赤いオーラが、再び凄まじい衝撃を作り出す。

 強大なエネルギーが拮抗し砂嵐が巻き起こる。

 時間が経過した事で更にアクセルの力が強まるが、それでもリョウは押し負けていない。それどころか徐々にエースの方が後退していく。

 

(な、なんだこの力は……?!)

 

 いくらジョーカーがピンチの時ほど強くなるとは言っても説明の付かないほどの力、それはまるでリョウの"熱い想いに"反応しているように見えた。

 そしてその姿は、エースやデスガンが見せた"レベル2"の現象と酷似していた。

 

「これで、決まりだぁっ!」

 

 ついにエースの蹴りを弾き、リョウの蹴りが彼の胸を撃ち抜いた。

 

 砂嵐が晴れた後に映ったのは砂漠の真ん中に巨大な隕石の後のようなクレーターを作り、その真ん中倒れる赤い男と、それを見下ろしている男の姿だった。

 

「強くなったな、遼」

 

「いつまでもガキ扱いすんじゃねぇ」

 

 いつかとは真逆の光景。

 死闘の末仰向けで倒れるエースの姿はどこか満足そうに見えた。

 リョウはそんな彼の横に腰を下ろす。

 

「そうだな、もう弟弟子だなんて呼べないな」

 

「い、いやまぁそれは別にいいけどよ……なんだかんだお前の事、本当の兄弟みたいに思ってないわけじゃ無いしよ……」

 

 はっきり言って昔は嫌いだったが、今では信頼できる兄貴分であり、二人で事件を解決した事も一つや二つでない。

 そんな対等以上な関係であり、兄弟の居ないリョウにとっては家族も同然だったからだ。

 

「それにまだ完全勝利って訳じゃ無いからな! 今度は現実で決着つけてやるから覚悟しとけよな!」

 

 照れくさそうに大声を出すリョウの姿に、ふっと微笑んだエースが小さく頷いた後。

 SJの終了を告げる花火が打ち上げられた。

 

 

 

 

 

 

 

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「リョウさんっ!」

 

 再び待機室と思われる空間に転送されると、リョウの姿を確認したレンが飛び込んでくる。

 

「リョウさん、わたしやったよ!」

 

「ああ、よく頑張ったなレン」

 

 レンの頭を両手でこねるように撫でる。

 子供扱いみたいで恥ずかしいが、それよりも嬉しさが上回り受け入れる。

 レンと勝利を祝っていると、遠くで座り込んでいる男の姿が目に入る。

 

「ようエム、死んでないって事は無事だったみたいだな」

 

 無言なまま気まずそうな顔で頷く。さっきのやり取りもあって合わせる顔が無いのだろう。

 

「リョウさん、エムさんが助けてくれたんだよ」

 

「そっか、ありがとうな」

 

「え、ああ……はい……」

 

 まさかお礼を言われるとは思っていなかったエムはどもってしまう。

 

「でもどうしたんだよ。死ぬのは嫌だった言ってたじゃねぇか」

 

「そ、それは自分は安全だと思ったし……それに男は女の子の笑顔と約束を命懸けで守るものだって……」

 

「え?」

 

 それは去り際にリョウがエムに言った言葉。

 死ぬ事に恐怖心を見せるエムだが、それでも守りたい笑顔と約束を持つ人が居るのだろう。

 

「そっか」

 

 恥ずかしそうでありながら真剣なエムの想いを、リョウは一切茶化さず短く頷くと、それ以上は何も言わなかった。

 

 三人の前にあるウィンドウが表示される。SJの終了と酒場へのジャンプを示すものだ。

 

「えー酒場なの? 絶対絡まれるじゃん……」

 

「拍手喝采は苦手だし、僕も落ちるよ……」

 

「だな、俺も疲れたし今日はあがるわ」

 

 決して長い戦いではなかったが、それぞれが死闘を演じすっかり疲労困憊だった。

 反省会なども後日にして今日は解散という事になった。

 

「それじゃ……あの、迷惑かけてごめんなさい……」

 

「良いってことよ。けど今度同じ事があったら、先に相談してくれよな」

 

「わたしも最後は助けて貰っちゃったし、ありがとうエムさん」

 

 二人の好意を受けながらログアウトするエム。その表情はどこか嬉しそうであった。

 エムが居なくなり、控え室に残ったのはレンとリョウだけ。

 

「ごめんね。リョウさんから貰った帽子も、ピーちゃんも壊されたちゃった……」

 

 レンを見ると服装全体がボロボロに汚れ、チャームポイントの帽子も愛銃であるP90も無くしていた。

 せっかくのプレゼントを無くしてしまった事に申し訳なさそうにし、小さい体をより小さくする。

 

「それだけ激しい勝負だったんだろ? ほんと、よく頑張った」

 

「うん……」

 

 しかしリョウは気にした様子もなく、寧ろそんな戦いを生き抜いたレンの頭を優しく撫でながら褒める。

 

「わたしも正直不安だったんだよ? 最後のプレイヤーを倒して、いつまで経っても終わらないんだから。もしかしてって……」

 

「悪い悪い、やっぱ手強くてよ」

 

「てことはやっぱりあの人と戦ったんだ」

 

 リョウが苦戦するほどのプレイヤー、そんな相手はあの男以外には考えられなかった。

 

「でも勝ったんだね、リョウさん!」

 

「ああ、"約束"したからな」

 

「うんっ!!」

 

 指切りするように小指を見せるリョウをみて、嬉しくなります笑顔で頷いた。

 このまま二人で勝利を讃えあうのも悪くはないが、そろそろログアウトしないと強制的に酒場へと飛ばされてしまう。

 

「じゃあリョウさん、わたしも行くね」

 

「ああ、夜も遅いし夜更かしせずに寝ろよ」

 

「えっ?」

 

 行っている意味がわからず時計を見る。時計の針は九時過ぎを指していた。

 

「もうリョウさん! わたしもう19なんだから、そんな早く寝ないよ! じゃあね!」

 

 夜更かしが肌に悪いのは知っているけど、小学生じゃ無いのだからそこまで早く寝るつもりはない。

 プリプリと頬を膨らませて帰るレンの姿はなんとも微笑ましかったが、そんな事を考える余裕はリョウにはなかった。

 

「へぇ〜…………………え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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第四部 誰のサイドケースから見たい?

  • キリト
  • アスナ
  • クライン
  • エギル
  • シリカ
  • リズ
  • リーファ
  • シノン
  • ユウキ
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