ソードアート・オンライン フェイタルバレットー切札の弾丸ー   作:トライダー

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 本物の世界

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「ん?メール……アイツからか」

 

 日曜日の昼間、仕事の依頼も入っていない遼はGGOにログインしようと用意していると一通のメールを見つける、クレハからだ。

 

『ゴメンね、今日一緒にプレイする約束してたけど学校の用事で遅くなりそうなの。アタシに気にせず楽しんで、レイちゃんによろしくね♪』

 

「…………そうか、まぁたまには良いだろう」

 

 少し寂しさは感じるが別に遊べなくなった訳ではない、後で合流するだろうと考え先にログインする。

 

「おかえりなさいマスター!」

 

 プレイヤー専用のホームにログインすると同時にアイが笑顔で飛びついてくる。

 抱き着いてくるアイの頭を軽く撫で挨拶を交わした後、SBCグロッケンへと出掛ける。

 

 

 

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「そうですか、クレハは来れないのですね……」

 

「そんな顔すんなって、アイツも学校の用事を終わらせたらすぐに来るさ」

 

 クレハからのメールを伝えてもらい寂しそうにするアイを励ます。

 

「はい……そう言えばマスターは普段何をしているのですか?」

 

「ん?リアルの事か?俺は探偵だ」

 

「探偵……?とは何ですか?」

 

 GGOの世界感には探偵と言うものが無いらしくアイは首を傾げる。

 

「探偵ってのはだな。困っている依頼人の為に命を賭け働き、依頼人の笑顔を守る、男の中の男の仕事だ」

 

「おー! なんだかカッコいいのです!」

 

「よく分かってるじゃないか! アイは良い子だなぁ、お菓子を買ってやろう」

 

「やったー!さっすがマスターなのです! 最高です、カッコいいのです、チョロいのです!」

 

「はっはっはーっ!そうだろうそうだろう!」

 

 ブレーキ役のクレハが不在の中、休日の昼間に道の真ん中で馬鹿笑いを続けるリョウは色んな意味で注目の的となっていた。

 

 

 

 

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 日曜の昼前と言う事もあってかグロッケンのなかはかなりの人数でごった返していた。

 激流の川のような人に流されそうになる。

 

「凄い人混みだな……アイはぐれるなよ?」

 

「〜♪モグモグ」

 

 アイの手を掴みはぐれないように注意を促すが、リョウに買って貰ったドーナツに夢中なアイに届いているかは分からなかった。

 既に中に入ってしまった以上引き返す事もできない、このまま突き進もうと力を入れた。

 それからしばらくアイの手を引っ張り、何とか人混みの少ないところへと移動する事が出来、ひと息つく。

 

「ふぃ……やっと抜けれたぜ」

 

 体力に自信があるとはいえ人混みは得意では無い、寧ろ経験上人気のない場所の方に行くことが多い。

 スーと深呼吸をする、GGOの世界の空気は決して綺麗な物では無い、だがそれはあくまで設定の話、VR空間でありながら美味しい空気がリョウの肺を満たす。

 

「ほんと不思議な世界だよな…… これがファンタジー世界のALOならもっと気持ち良くなるんだろうか?」

 

 手すりに掴まり空を見上げながらそんな事を呟いていると

 

「やぁこんにちは」

 

「ん?……あ!テメェは!」

 

 突然声をかけられそっちの方を見て見ると爽やかな笑顔を見せるイツキが居た。

 

「テメェ何のようだよ!」

 

 顔を見るや否や今にも噛みつきそうに唸りながら距離を取る。

 

「今日はアファシスは一緒じゃ無いのかい?」

 

「は? 何言ってんだここにい……………る???」

 

 イツキの言葉の意味が分からず自分が繋いでいるであろうアイの手を見て観るがそこにあったのはすっぽ抜けたマネキンの腕であった。

 

「あれえぇ!? アイつどこ行ったの?!?!」

 

 直ぐに当たりを見渡すがアイの姿は無い、そこでハッと思い出す。

 アイの手を引いているうちに一瞬だけ繋ぎ直した事を、特に抵抗もされないので当たりだと思ったのだが……

 

「あの時か。俺とした事が……マネキンと間違えるなんて……」

 

 探偵でありながらこんなベタな事に気付かない自分が悔しくて仕方がなかった。

 

「まぁVR空間だと感覚が鈍くなりやすいしね」

 

「うるせぇ!お前の情けなんか受けるか!……でも礼は言っとく、ありがとう」

 

「ああうん、どういたしまして……」

 

 分かりやすく落ち込んでいるリョウにイツキも気の毒になる。

 

「あ! こんなことしてる場合じゃねぇ早くアイを探さないと、きっと今頃寂しがっているはず!」

 

「ボクも手伝おうか?」

 

「イケメンの施しは受けねぇ! 今に見てろ、いずれお前の地位を奪ってやるわっ!」

 

「ははは、随分嫌われてるんだねボクは」

 

「当たり前だ。俺は俺よりモテる男が嫌いなんだよ!」

 

「ボクがモテる……ね………」

 

 意味深な言い方をするイツキに少しイラッとするリョウ。

 

「あ?実際モテてるだろあんなに女の子に囲まれて……GGOって女性プレイヤーが少ないんじゃねぇのかよ!」

 

「彼女達が好きなのはボクじゃ無いよ」

 

「はぁ?」

 

 イツキの言っている意味が分からず首を傾げる。

 

「彼女達が好きなのは、この世界の『イツキ』であって、僕の事じゃ無いだろ?」

 

「何言ってんだよ、どっちも同じだろ?」

 

「ははは、ならGGOの君とリアルの君は同一人物なのかい? 現実でもそんな格好をしてるのかい?」

 

「してるけど?」

 

「え?」

 

 リョウの格好を見て笑いながら試すように言うが、アッサリと返してくるリョウに気の抜けた声を出す。

 

「……その帽子もネクタイも靴も?」

 

「おう、全部俺お気に入りのファッションだ。カッコいいだろ?」

 

「な、ならGGOの君とリアルの君は同じ性格かい?」

 

「ん?ん〜どうだろうなクレハに聞けば分かるんじゃね?……あ、顔は現実の方がすこーしだけハンサムだけどな!」

 

「そう……なんだ……」

 

 珍しく驚いた表情を見せるイツキ、しかし今度は暗い寂しそうな表情へと変化しグロッケンを見渡す。

 

「………でも君みたいな人ばかりじゃ無いよ、VR空間では自分を偽ってる人の方が多い」

 

「まぁアバターだしな、そう言う奴もいるだろうな」

 

「……………」

 

「でもそれって偽ってるんじゃ無くて『本当の自分を解放』してるんじゃ無いのか?」

 

「自分を解放………?」

 

 リョウの言葉に反応し不思議そうに彼を見つめる。

 

「ああ、昔師匠に鍛えられたお陰でついた人の心を読む力のおかげでな」

 

「心を読む?そんな事が出来るのかい?」

 

「別に本当に読める訳じゃねぇよ」

 

 相手の声のトーンや口の動きや目の動きに後は勘。それらを駆使し相手が嘘をついてるかどうかを推理する。リョウが師と尊敬する男から学んだ探偵としての技術の一つである。

 

「そんな俺から見ればGGOのプレイヤーは現実の人間より輝いているように見えるけどな。それは嘘をついてるからじゃ無い。皆んなが理想の自分、心の奥底の自分で居られるからじゃないか?」

 

 仮想だからこそ誰に気を使うでもなく自分を解放出来る。

 もちろんそれは良いことだけでは無いが、それそのものを悪いこととは思わない。

 

「VR空間の経験はまだ少ないけどよ、俺から言わせて貰えばVR空間の人間の方が現実よりずっと『本物』だと思うぜ」

 

「…………本物?この世界が?」

 

 リョウの話を聞いた後イツキは再びグロッケンを見つめる。

 そんなイツキの口角が少し吊り上がっていた。

 

「そう……なのかもね」

 

「お、珍しく笑ったな」

 

「え?」

 

「今日のお前はコロコロ表情が変わって面白いな。人形みたいな顔してるより、そっちの方が良いんじゃねぇか? せっかくだし楽しめよこの世界を。小難しい事考えずに頭空っぽにしてよ」

 

 リョウがイツキを嫌っていたのはモテるからと言うのもあったが、一番は彼の笑顔が気に入らなかったからだ。

 一見笑っているように見えるが目が笑っていなかったり、声に心がこもっていなく感じたのが苦手だった。

 

「……そうだね、今日はありがとうリョウくん。君と話せて良かったよ」

 

「俺はつまんなかったけどな」

 

 不機嫌そうにぶっきらぼうに返すがイツキは嬉しそうに笑顔を見せる。

 

「ははっ!そうかい。………また話してくれるかい?」

 

「お前が張り付いた笑顔やめて本心で話すならな」

 

「うん、努力するよ」

 

 そう言ってイツキは人混みへと消えていく、最初話しかけて来た時とは違い少し付き物が落ちたように清々しい笑顔を見せながら。

 

「うし!俺も行くか、アイの奴どこに行ったんだ?………」

 

「マスター!」

 

 はぐれたアイを探す為、イツキが行った方とは逆の方へと歩みを進めようとするリョウの耳に探し人の声が聞こえる。

 

 声の方を向くと二人の少女が此方へと走って来る。

 一人はアイであったがもう一人の方は見た事のない少女であった、金色の髪をツインテールに編み左目に眼帯をつけた少女、GGOには不釣り合いな程上品な髪留めと服装から育ちの良さが見え、まるでお嬢様のようであった。

 

「もうマスター! ちゃんと付いて来ないと迷子になっちゃダメじゃ無いですかー!ちゃんとわたしの後をぉ…!?」

 

「お前がちゃんとついて来ないからだろうがぁ!」

 

「ご、こめんなしゃ〜い………」

 

 生意気な事を言おうとするアイのほっぺを掴み上げこねくり回す。

 

「悪かったなレディ、うちの子が世話になった」

 

「いえ、同じアファシスとして道端で泣いているのを放っておけなかったので」

 

「同じアファシス?」

 

「もう『デイジー』!何で言ってしまうのですか! わたしは泣いてないのですぅ!」

 

「いえ、貴方は確実に泣いていました。マスターに状況を正確に説明するのはアファシスとしての義務です」

 

「む〜!」

 

 泣いていた事をリョウにバラされ顔を真っ赤にしながら頬を膨らませむくれている。

 どうやら彼女もアイと同じアファシスのようだ。しかし機械的な喋り方や振る舞いを見るにアイとはかなり性格が違うようにみえる。

 

「貴方がその子のマスターね?」

 

「マスター」

 

「っ!」

 

 大人っぽい女性の声にデイジーが反応する。

 その女性の姿見たリョウの心臓は強く高鳴った。

 銀色の美しい髪、紫を基準とした大人の色気を感じる服装、男が見とれる抜群のスタイル。

 まるで神話の女神の様な絶世の美女であった。

 

「初めまして、わたしはツェリスカ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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第四部 誰のサイドケースから見たい?

  • キリト
  • アスナ
  • クライン
  • エギル
  • シリカ
  • リズ
  • リーファ
  • シノン
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