ソードアート・オンライン フェイタルバレットー切札の弾丸ー 作:トライダー
「こんのおぉっ!!」
おおよそ少女から出るとは思えない雄叫びの後、バシィンッ!と大きな音が響きパンチングマシンが凄い勢いで後ろへと倒れる。
「おー!クレハ凄いのです、ランキング1位ですよ」
「当然!でもまだまだ足りないわ。もう一発いくわよ!」
コインを投入してグローブを嵌めた右腕をブンブン回す、既に五回目もやってまだ殴り足りないのか……
「何でアイツあんなにイラついてるんだ?」
「どうやら元の世界で何かあったそうなのです」
「みたいだな…はぁ……長くなりそうだな……」
前の日曜、結局クレハは来なかった。
どうやらリアルの方が忙しく休みが丸々潰れてしまったらしい、個人で事務所をやっている俺としちゃ忙しいのは羨ましいぐらいだったがクレハはそうは行かない。
さっきまでエネミーやプレイヤー相手に大暴れ、手持ちの銃弾を全て撃ちきりグロッケンへと帰って来た後もショッピングへと来ている。
ショッピングは嫌いじゃない、それも女の子が一緒なら尚更、しかしクレハのストレス解消も兼ねているからか普通の買い物より何倍も疲れる。
「おんどりゃぁっ!!!」
「おー!またハイスコアなのです!」
「ふー……気持ちいいわ。リョウ、アンタもやらない?」
「やらねぇよ、んな汗臭いゲーム」
「なによボクシングやってたんでしょ?懐かしいと思わないの?」
「ボクシングは、んな砲丸投げみたいな殴り方しねぇよ!」
⭐︎
「ふー満足満足♪」
「そりゃあんだけ殴ればな……」
結局10回以上も繰り返し、マシーンのランキングがクレハ一色に染められている。
コイツの執念が産んだランキング……もしかしたら塗り替える者は現れないかも知れない。
「明らかにステータス以上の数字が出てたよな」
そう言えば師匠も言ってたっけ人の想いとは時に常識を超えるって、意外と有効なのか?
まぁあの形相を真似しようとは思わないけど……
「しっかしお前と言いこの前のお姉さんと言い、GGOってリアルに問題を抱えてる奴ばっかだな」
「マスター自慢じゃないですがこのGGOは『ストレス発散ゲーム』第一位を取ったゲームなのです!」
「本当に自慢じゃねぇな……」
それだけ現実でストレスを溜めている人間が多いって事だ。
もしかしてGGOって結構ヤバいゲームなのでは?
探偵としてはGGO関係の事件の依頼が来ない事を祈るばかりだ。
「何よその言い方、アタシだって色々大変なんだから。ねーレイちゃんは分かってくれるよね?」
「よしよし、クレハは頑張っているのです」
「あ〜、やっぱりレイちゃんを抱きしめるのが一番の癒しだわ〜」
「おいクレハ、あんまりベタベタすんなよ」
「なによ減るもんじゃあるまいし」
「減らなくても増えるんだよ、お前のせいで最近アイの抱きつき癖が酷いんだよ」
お陰で最近ホームに居ると何時でも抱きついて来る、せめて外でする事は禁止にしているが元々子犬気質な彼女はこう言ったスキンシップが好きなようだ。
「心配いりません、マスターとクレハ以外にはしないのです」
「ほら見なさい、レイちゃんはいい子ね〜」
「えへへ〜♪」
「だから甘やかすなって」
まぁ確かにアイはアホな所はあるが結構そういう所はしっかりしている、だから大丈夫だろうがマスターとしてはやはり少し心配だ。
せめてクレハがデレデレモードに入っている間くらいは俺が厳しくしないとな……
「てかアンタこそ何よその『お姉さん』ってのは……」
「ああ、この間同じアファシスを持つプレイヤーと会ったんだよ、その時に仲良くなってな」
「………なにそれ、そんな話し初めて聞いたんだけど」
「別に言うような事じゃ無いだろ?それに良い人だったぜ、プレゼントもくれたしな」
「………それって腰についてる光剣のこと?」
「え?ああ、まぁな……」
見せてやろうと思ったがそれよりも早くクレハは背中の腰に回している光剣に気づいたようだ。
上着で隠れてるのによく気づいたな
「ふーん………」
何だろう……クレハが怖い、気のせいだろうか先程から声が少し低いような……
⭐︎
「よし!今度はこの店よ!」
クレハの買い物はまだ終わらない、次にやって来たのはGGOでは珍しくオシャレなお店。
煌びやかや雰囲気がニュービーや女性プレイヤーから好評らしい、だがその分古参プレイヤーからは酷評らしい。
「思ったより人が多いな」
「最近のアップデートでプレイヤーが急増したらしいからね」
「アップデート?何かあったか?」
「アファシスよアファシス!新聞くらい見るでしょ?」
「あーそう言えば優秀なAIとしてギネス入りしたんだったな、今年の最優秀プログラミング賞も確実って話しだったか」
「いやー照れちゃうのです!」
(とてもそうは見えねえけど……)
最近の新聞の見出しを思い出す、大きな写真にザスカーの最高責任者であるメガネの男が表彰されているものだ。
(名前は……何だったか?)
その男の名は忘れてしまった、と言うのも俺はその男よりもその後ろにいる部下らしき人達に目がいった。
自分の上司が表彰されているにも関わらず誰一人として笑っていなかった、作り笑顔を使っている者もいたが俺には偽物だと分かったし、よっぽど嫌われてるのか何だったら殺意のある様な目で睨んでいる人もいた。
さっきの話しじゃ無いけど何らかの事件に発展しなきゃいいが……
「あ、そうださっき使った分の弾補充しとかないと」
「クレハ、それぐらいならわたしが行ってくるのです」
「え、大丈夫レイちゃん?」
「心配いらないのです」
クレハからお金を預かるとすぐ隣の店へと入っていく、クレハは心配そうに見つめているがまぁ大丈夫だろう。
二人だけで店の中を見て回る、話に聞いていた通りオシャレな服やアクセサリーがメインで売られている。
その為か店全体がキラキラしている、こう言う所が古参プレイヤーから嫌われている理由だろう。
「……今日はありがとうリョウ」
「何だよいきなり」
「ほら、アタシの我が儘に付き合ってもらっちゃって悪いなって」
「別に気にすんなよ、お前の我が儘なんて何時ものことだろ? それに俺も昔を思い出せて楽しかったしな」
気を使ったわけでは無く本心だった、昔はこうやってクレハに引っ張られるように色んな場所に遊びに行ったものだ。
俺は本を読んだり機械を弄ったりなどが好きで最初は嫌々だったが今では彼女に感謝している。
………本当に楽しかった。
「そ、そう」
「………………」
「………………」
「そ、それにしても久しぶりよね! こうやって改まって二人で話すの」
「考えてみればそうだな」
ここ最近何かあれば大体三人一緒に居た、二人っきりで話すなんてもしかしたら大会の日まで遡る事になるかも。
「そう言えば今度アンタの家の近く……ああ家って言ってもリアルのよ? 用事があって行く事になったのよ、だから良かったら現実世界で会わない?」
「本当か!そりゃ良いな、俺バイク持ってるし迎えに行くよ。久しぶりに一緒に色々見て回ろうぜ」
久しぶりにクレハが俺たちの街に帰って来るらしい、その事についテンションが上がってしまう。
「そ、そんなに喜ばなくても」
「なに言ってんだよ嬉しいに決まってんだろ! あの時から何時も会いたいって思ってたんだからな!」
「わ、分かったからそんな大声出さないでよ」
「おっと、すまん」
つい声が大きくなってしまい、周りのプレイヤーの視線が痛い。
クールな探偵である俺とした事がらしくない所を見せてしまった、でもそれだけ俺にとっては嬉しい事なのだ。
「クレハー!マスター!」
そんな俺の声以上に大きな声が俺たちを呼んだ。
「どうしたアイ!」
「どうしたのレイちゃん!」
何かあったのかと俺たちも心配になり同時に大声をあげる、しかし当の本人はのほほんとしている。
「向こうの方で変なものを見つけました、撮影して来たので見て欲しいのです!」
そう言ってアイが見せて来たのはレバーのついたプラスティックの箱。
「これってカプセルトイじゃない?昔よく店の前とかに置いてあった」
「あーアレか、懐かしいな」
今でこそ数は減ったが昔はよく見かけたものだ。
あれ?……何か嫌な思い出があったような………
「ふふふっ、そう言えば昔はよくこういうカプセルトイで遊んだっけ?」
「クレハとマスターの昔の話しですか?」
「そうそう、リョウってば普段は運が良いくせにこう言った時だけは運が悪くてザコキャラばっか手に入れてさ。ふふっ泣きべそかいてたときもあったわね」
「そ、そんな事あったか?」
「あったわよ、それで仕方ないからアタシのと交換してあげたりしてさ、そしたら鼻水垂らしながら喜んでさ〜」
「おー!あのマスターがそれは珍しいのです!」
「あーもう!やめろやめろ!」
思い出さなきゃ良かった、自分の赤裸々な過去をバラされ顔が熱くなる。
でも懐かしいな、昔からクレハは俺が泣いていると手を差し伸べてくれた。
本当に優しい奴だよ。
「ふふふ、二人とも楽しそうなのです。もっと二人の話を聞きたいのです、他にはどんなお話があるのですか?」
「おー!教えてやるさ、どんな話が聞きたい? 色々あるからな、なぁクレハ?」
「そ、そんなの他の事は忘れたわ」
「クレハ……?」
俺たちの話に興味を持ったアイに話してやろうかと思ったがクレハは話を遮るとサッサと別の場所へと向かってしまう。
その時の彼女の横顔はどこか悲しみを帯びているように俺たちは感じた。
⭐︎
「よし買い物も済んだし、今度は二人へのお礼ね」
「気にしなくて良いって」
「アタシがしたいのよ、アンタにはそうね……コレあげるわ」
「なんか悪いな………………なぁクレハさん?」
クレハが渡してくれた袋に入っていたのは見覚えのある筒状の物。
「ん、何?」
「何で……『光剣』?前に貰ったって言ったよね?」
前にツェリスカから貰った光剣に似た物だった、スイッチを押すと赤い刃が生成される。
「別に良いじゃない」
「いや、二つあっても困るだろ?」
「じゃあアタシがあげた方使えば良いじゃない、もう一つは予備でさ」
「いやまぁ別に良いけどな……」
相手はクレハでも女の子からのプレゼントだ、大事に使おう。
でも何でクレハは光剣を……?さっき貰ったって話をしたばかりなのに?
「レイちゃんにはお洋服買ってあげるわ」
「本当ですか?やったなのです!」
そう言うとアイを連れて女物の洋服エリアの方へと向かって行く。
俺は別の場所でじかんを潰す事にしよう、流石に女同士の買い物に横槍を入れるのは無粋だろう。
「お!この帽子良いな、これと合う服は……」
「やぁこんにちはリョウくん」
「あん?……んだよイツキかよ」
服を見て回っている俺に話しかけて来たのは気に入らない優男、イツキだった。
いつもならサッサと離れようと思うところだが、前の笑顔とは違い今日の顔からは少し感情を感じる。
仕方ない少し相手してやるか……
「何しているんだい?」
「見たら分かるだろ?服選んでんだよ」
「アファシスはどうしたんだい?」
「クレハと一緒に女物エリアで服選んでるよ」
「そうかい、ボクはスコード・ローンの皆んなと来ていてね。今は別行動中さ」
「知るか興味ねぇよ」
「そう言えば君は「あー!もう鬱陶しいな!」」
「何なのお前!俺嫌いだってハッキリ言ったよね?何で絡んでくるわけ!?」
前言撤回、思った以上にグイグイくるイツキに腹が立ちキレる。
「それはボクがキミに興味があるから……かな?」
「はぁ?」
背筋がゾワッと来た、何言ってんだコイツ、とにかく距離は取っておこう。
「俺にそっちの趣味は無いぞ?」
「ボクにだって無いさ、まぁキミに絡むのは聞きたい事があったからさ」
「あん?ったく、サッサと言えよ回りくどい」
本当だろうなコイツ、妙にグイグイ来るんだよなぁ。
「聞きたい事ってのはこの前の大会の話さ、キミがアファシスを手に入れる過程を記録映像で見てね、一つだけ気になる事があったんだ」
「気になる事?」
「あの時キミはアファシスを庇っているようだった、何故あんなことをしたんだい? 確かにアファシスは超レアアイテムだ、でもそれでも唯のアイテムだ、君がデスしたら意味がないんじゃ無いのかい?」
「初心者でありながら二人のプレイヤーを倒したキミの戦いぶりは凄いけどあの行動だけが分からなかった。既に登録してるのが分かってたのかい?それとも………」
「何だそんな事かよ、別に大した理由は無い。そもそも俺はレアアイテムがアファシスって事すら知らなかったしな」
「知らなかった?……ならキミはアファシスをプレイヤーだと勘違いしてたって事かい? ならそれこそ何故見ず知らずのプレイヤーを庇ったんだい?」
「だから大した理由じゃ無いって、体が勝手に動いたんだよ。それに助けを求められたから助けた、それだけさ」
まぁ俺はVRの経験が少なかったから余計に助けなきゃって思ったんだろうな、あの時はゲームって事も忘れてしまってたし。
「やっぱりキミは変わってるね……」
「んだとコラァ!」
「褒めてるんだよ。そうだこれから「あらリョウじゃない」」
何かを言おうとしたイツキの声に被さるように女性の声が聞こえる、聞き覚えのある声に俺は顔を向ける。
そこに居たのは麗しのお姉さんツェリスカだった。
「お、ツェリスカ!ご機嫌よう、久しぶりだな」
「うふふっ、ご機嫌ようリョウ。リアルの方が忙しくてね」
「お久しぶりですリョウさん」
「おう、デイジーちゃんも久しぶり。お!髪飾り変えた?」
「あらよく気付いたわね、この間見つけてね、デイジーちゃんにプレゼントしたの。よく似合ってるでしょ?」
「ああ可愛い可愛い! でもその服とはあまり合ってないな。もう少し落ち着いた色の方が良いんじゃないか?」
「ええ、だから今日は服を見に来たの。この髪飾りに似合う服貴方にも選んで貰おうかしら?」
「構わないぜ、丁度クレハも居るし紹介するよ」
「あら噂の幼なじみちゃん?そうねわたしもあって「ちょっと良いかいツェリスカくん」」
俺たちが楽しく話していると珍しく機嫌の悪そうなイツキの声が遮った。
「あら居たのイツキ?」
「ああ、キミより『先』にね」
「あらそうなの、それで?わたしに何か用?」
「キミには無いよ、でも彼とは『ボクが』先に話していたんだ。横入りは下品じゃ無いかな?」
「そうかしら?少なくとも彼は『わたしと』話がしたいみたいだけど」
そのまま二人は口論を始めてしまう、温厚なツェリスカがここまで強い口調になるのも珍しいがイツキが怒りを表しているのも珍しい。
俺が呆気に取られているとクレハとアイが戻って来る。
「お待たせ…って何この状況! イツキさんに……ツェリスカさん!?」
「あ!デイジーなのです。お久しぶりです!」
「はい、お久しぶりですレイちゃん」
「え?え?本当にこれどう言う状況?!」
「いや俺に言われても……」
俺たちの繋がりを知らないクレハは混乱している、だが当の俺にも何が何やら
するとそんなイツキの元にメガネの男がやって来る、確かイツキの仲間の……パイソン……だったか?
「イツキさん、そろそろ皆とクエストのお時間です」
「あらお迎えが来たみたいよ」
「くっ、パイソンくんか、良いタイミングなのかどうなのやら……まぁ丁度興が削がれたところだ。またねリョウくんクレハくんそれと《無冠の女王》様」
一瞬悔しそうな表情をしながらも、すぐにいつもの悠々とした表情へと変わりパイソンと共に去って行った。
「ごめんなさいね、いきなり見苦しい所見せちゃって」
「い、いいえ!でも何でツェリスカさんが?」
「その前にちゃんと自己紹介しましょ。わたしはツェリスカ、この子はデイジーちゃんよ」
「よろしくお願いします」
「あ、え、えっとあ、アタシはクレハって言います! ツェリスカさんの活躍は何時もネットの記事や噂で聞いていて、あ、あの!握手しても良いですか!」
「あらあら可愛いわね、握手とは言わずにハグでも良いわよ?」
「え!マジで?! じゃぁ俺も再会の証として……」
「貴方はダ〜メ」
「ちぇー……」
クレハの握手を快く受け、悪戯っ子のように言うツェリスカ。
羨ましい……今だけは女の子に生まれたかった………。
「で、でも何でツェリスカさんがリョウと……?」
「彼とはこの間会ってね、同じアファシスを持つ者同士って事でフレンドになったの」
「じゃあリョウが言ってた『お姉さん』って……」
「ツェリスカの事だよ、いつか紹介しようと思ってたけど丁度良いや」
「わたしも会いたかったわ、よろしくねクレハちゃん」
「は、はいっ!」
まるで有名人にでも会ったかのような様子のクレハ。
初めてイツキに会った時もこんな感じだったな、もしかしてツェリスカって有名人なのか?
「そう言えばお前ら服はどうしたんだ?」
「はい、いくつか選んだのですがマスターにも選んで欲しいと思ったのです!」
「レイちゃんって何着ても可愛いから、全部買ってあげたくなるんだけど……」
「流石にそれは悪いのです。親しき中にも礼儀あり、ですよ」
「ふふっなら皆んなで選びましょうか、うちのデイジーちゃんの衣装も選んで欲しいし」
「良いですねそれ!ほら行くわよ」
「あ!おい引っ張るなって!」
「レッツゴー!なのです」
俺の手を引くクレハと背中を押すアイ、それを見て微笑みながら後ろをついてくるツェリスカとデイジー。
二人のレディが増えた事でまだまだ買い物は続きそうだ。
⭐︎
更にあれから三時間、ようやく買い物を済ませた俺たちは近くのカフェで一息付いていた。
ツェリスカは用があるとかで既に帰ってしまった。
「てかツェリスカってそんな凄いのか?」
「凄いなんてもんじゃ無いわよ! GGO初期からいるトッププレイヤーなのよ!」
「しかもかなりの実力なのに大会やイベントと言ったものには参加しない謎を秘めたミステリアスさでしかもあれだけの美人、その為ファンも多いの、ついたあだ名が《無冠の女王》よ!」
「へー」
なんか凄い言葉を並べているがGGO初心者の俺には凄さがよく分からん。
「ほんとアンタ知らない間にトッププレイヤーと仲良くなってるわよね」
「イツキとはなってねぇよ!? 何か知らねぇけど向こうが絡んでくるんだよ!」
「別に良いけどさ………でもそう言う事はさアタシに一番に話してよ、幼なじみ何だからさ」
(ん?)
一瞬クレハの顔に影が入ったように感じたが気のせいだろうか?
「よし!そろそろログアウトしましょうか」
「あのクレハ、一つ良いですか?」
「ん?どうしたのレイちゃん」
「さっきの二人の話の事ですが……」
「それって昔の話の事?それはもう忘れたって言ったでしょ?」
「はい、それはもう良いのですが一つだけ教えてくれませんか? 二人は何故会わなくなったのですか? 確かGGOで久しぶりに会ったんですよね?」
「あ、ああその事か……」
「クレハは引っ越したんだよ、家の都合でな」
「うん、引っ越した理由は色々あってね。親の仕事、借りてた部屋の事、あとお姉ちゃんの学校の事………」
「クレハの……お姉さん?」
「うん、アタシのお姉ちゃんは凄くてね。勉強も運動も何でも出来てさ、そのお姉ちゃんが名門の学校に受かって勉強に集中する為にも近くの方に引っ越そうって。だからとてもおめでたい事なの」
「クレハは……寂しくなかったのですか?」
「寂しくない訳じゃ無いけど……向こうで出来た友達もいるし………皆んな喜んでたから………」
「クレハ?」
今言ったのは本心だろう、だがそれと一緒に嘘が混ざっている、無理矢理笑顔を作ってはいるが悲しみを帯びているのがアイにも分かるようだ。
「それよりもさ! これからさっきのカプセルトイで遊んで見ない?」
「え?でも何か用事があったのではないのですか?」
「いいからいいから行きましょ!」
そう言い席を立つと直ぐに背を向けるクレハ、まるで表情を見られないように。
「ああ、行くぞアイ」
「あ! 待ってくださいマスター!」
俺は何も言わずに彼女の後ろをついて行く、もう少し彼女に付き合おう、せめて彼女の涙が止まるまで。
かつて彼女が俺にそうしてくれたように………
⭐︎
第四部 誰のサイドケースから見たい?
-
キリト
-
アスナ
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クライン
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エギル
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シリカ
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リズ
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リーファ
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シノン
-
ユウキ