ソードアート・オンライン フェイタルバレットー切札の弾丸ー 作:トライダー
「〜〜♪」
ホームの中で鼻歌を歌いながらパーツを弄る。
アイはデイジーに会いにツェリスカのホームへと行っている為、今ホームの中は俺しか居ない。
「アイツがいると銃のメンテナンスも出来ないからな〜♪」
これはチャンスだ。
銃とは女のように繊細に扱うべし、騒がしいアイが居るとどんな邪魔をされるか分かったもんじゃ無い。
銃を弄っていると昔を思い出す。
まだ事務所に師匠がいて弟子入りする前、俺はあの人に認められたくて助手まがいな事をしていた。
事務所の書類の整理や掃除などの雑用から愛銃の手入れ。
初めの頃は勝手に触った事を咎められぶん殴られたりもしたがそれでも諦めずに手入れをしていると師匠に気に入ってもらえた。
それが何よりも嬉しかった、思えばあの日から俺の探偵の助手兼弟子としての一歩が始まったのだろう。
「よし!完璧だ」
くるくるっと回し手入れを終えた愛銃をしまう、現実世界でも何度となく行った整備はこの世界でも通用するようだ。
GGOの銃にも耐久力があり使っていると徐々に疲労していくし無茶な使い方をすれば壊れてしまう。
だがこうやって細かく手入れしていればそれだけ長くもつらしい、チョウさん曰く殆どのプレイヤーはやらないらしいが……勿体無いよな。
「んじゃ次はコイツをやるか」
左のホルスターからUFGを取り出す。
現実世界には存在し無い銃、その為構造がイマイチ想像できず手を出して来なかったが、スキルを上げた今の俺なら出来るかもしれない。
「うひひ、楽しませてくれよお嬢ちゃん……」
未知の銃に胸を躍らせながら少しずつ分解していった。
⭐︎
「ではレイちゃん、また来てくださいね」
「はいなのです!」
デイジーと別れてホームへと帰ります、とってもたのしかったのです。
ツェリスカはリアルが忙しくて居ない時が多いのです。
わたしのマスターはリアルが暇なのでわたしには気持ちが分かりませんが一人はきっと寂しいのです、だからこうやってツェリスカがいない時はわたしが遊びに来てるのです。
デイジーとはお菓子を食べてお話をします、お洋服の事やGGOのイベントの事、特に一番話すのはお互いのマスターのお話しなのです。
デイジーはツェリスカの事が大好きなのです。
ツェリスカは色んな事を知っていてわたしに教えてくれるわたしの先生なのです。
でもわたしのマスターも負けてません、わたしの優秀なサポートのお陰でレベルもどんどん上がっていますし、優しくてカッコよくてわたしを大事にしてくれるのです。
だからわたしも、もっともっとマスターのお役に立ちたいのです。
今日デイジーから教えて貰った情報を生かして、より優秀なサポートでマスターをお助けするのです。
「マスターただいまなのです!」
⭐︎
「ねぇクレハちゃん俺たちのスコード・ローンにおいでよ、うちは前大会の入賞者がいるから今度の《BOB》の為のいい情報があるよ」
「いえ、結構です」
「そうそう、そんなケチなところに行っても良い事ないよ。俺たちのスコー・ドローンなら今度でかいクエストに行こうと思うからレアアイテムが見つかるかもよ」
「興味ありません」
グロッケンの中を歩いていると久しぶりに面倒くさいのに絡まれた。
最近増えては来たがGGOには女性プレイヤーが少ない、そのせいかこうやって誘われる事が多い。
でも彼らが求めているのはアタシのアバター、自分で言うのもなんだけどアタシのアバターはかなり当たりだろう、たまに自分でも嫉妬してしまうぐらいだし。
GGOを始めた頃は喜んだがこう言う事が多くなると少し後悔する。
「誰の所がケチだとぉ?お前らの所なんか、モンスター狩りしてるだけの雑魚プレイヤーだろうが!」
「そっちこそ!偉そうな事言ってるが、モンスター用装備のプレイヤー狙ってるだけのハイエナどもだろうが!」
アタシが何か言う前に喧嘩を始める二人、本当に嫌になる。
「大体何が入賞者だよ、18位だろうが!しかもただ運が良かっただけの癖に!」
「テメェ『ダイン』さんディスってんじゃねぇぞ!」
互いに胸ぐらを掴む程の喧嘩へと発展するが興味ない、その騒ぎに便乗してさっさと退散する。
「はぁ……ほんっと最悪……」
自分のホームへと戻り一息つく、まだニュービーの頃は何度かお世話になった事もあるが正直言ってあの二つは地雷だ。
話していたようにモンスター専門とそのモンスター専門の専門。
人のプレイスタイルに文句を言うつもりはないがアタシはそんな事を求めてGGOにいる訳じゃ無い。
アタシは本気で強さを……上を目指している、唯のハイエナプレイや金策に興味は無いしマスコットになるつもりも無い。
「誘われ無いようにするには、適当なスコード・ローンに入るのが一番だけど……」
正直そろそろBOBが近い、GGOのトッププレイヤーを決める大きな大会、情報収集の為にもスコード・ローンに入るのも悪く無いが問題はリョウとレイちゃんの事だ。
変なスコード・ローンに入ってしまえばどんな目に遭わされるか分かったもんじゃない。
だからと言ってアタシだけ入って二人を放っておくのも心配だ。
「あーもう!イライラする〜こんな時は思いっきりブッ放すに限るわ」
リョウを誘ってフィールドに行こう、アイツも最近レベルが上がってきてるしそろそろ大きなクエストに行っても良いかも。
……アイツは凄いと思う、アタシがニュービーの頃よりもずっと成長速度が早くセンスもある。
まるでこう言った世界に慣れているかのように……
………リョウもアタシを放って行っちゃうのかな。
「ダメダメ、こんな暗い雰囲気で行ったら心配させてしまうわね」
少し心が暗くなるのを感じると頬を叩いて気合を入れる。
「よし!行くわ………おっと」
気合を入れてホームを出ようとすると大きな姿鏡が目に止まる。
「…………よし大丈夫ね」
髪が跳ねていないか、服におかしいところが無いかとしっかり確認してホームを出る。
さっきはこのアバターに後悔してるって思ったけど、今はまた『クレハで良かった』って思う。
アイツも可愛いって思ってくれてるのかな?
⭐︎
「うわーん!クレハーーー!!!」
「ち、ちょっと!どうしたの?」
「マスターが酷いんですぅ!」
リョウのホームに入った途端、泣きべそをかいたレイちゃんが飛び付いて来た。
これには驚いた、リョウは普段からレイちゃんを小馬鹿にしたりイジったりする事はあっても泣かすような事は絶対にしないはずだから。
「いやだから違うんだって!クレハからも言ってくれ……」
だから何かの勘違いだろうと思い、案の定リョウもレイちゃんの泣きぶりに困っているみたいだ。
「とにかく何があったのか教えて?」
「マスターがわたしとの思い出を壊しちゃったのですぅ!」
「だから壊してねぇって!分解してるだけだよ!」
思い出?分解?一瞬意味がわからなくなる。
考えるよりも見た方が早いと思い、そっと部屋の奥を覗いて見ると大きく広げたシートに大量のガラクタが散らばっていた。
その中には見覚えのあるパーツも見える。
なるほど……大体察したわ、リョウがUFGを分解してるのを見たレイちゃんがショックで混乱してる状態って事ね。
素人のアタシから見ても元に戻るのか不安になるぐらい、バラバラになっている。
UFGはレイちゃんとリョウが初めて会った日の思い出のアイテムだもの、それをあそこまでバラされてショックを受けちゃったのね。
とにかくまずはレイちゃんを落ち着かせないと……
「落ち着いてレイちゃん、あれは壊してる訳じゃ無いの、きっとメンテナンスしてるだけよ」
「でもメンテナンスならあそこまで分解しなくても良いはずです……」
「まぁ確かに……何でこんなことになってんのよ?」
「いや〜思ったより構造が面白くてさ、スキルのおかげかどんどん進んで気が付いたら……って」
そう言えば最近リョウは《メカニック》と《エンジニア》のスキルを取った、そのスキルのお陰で分解するのが楽しくなっちゃったのね。
GGO経験者としては気持ちが分からなくもなく、少し責めづらい。
「気持ちは分かるけど、レイちゃんを驚かせちゃったんだから謝っときなさい?」
「え?いやでも俺は………」
「レイちゃんはね怖かったのよ、思い出のアイテムを捨てられるんじゃ無いのかって。アンタは忘れてるかもしれないけどレイちゃんも一応アイテムなのよ?それでUFGに感情移入しちゃったんじゃ無いかしら?」
「う、それは………いや確かにそうだ。悪かったなアイ、気が回らなすぎた。せめて一言いうべきだった」
「い、いえ!わたしこそすみません……マスターがそんな事をしないって分かってるのにUFGをみたら途端に怖くなっちゃって……」
「気にするな、どんな理由であれ女の子を泣かせる男は最低だ。今回の事は俺が……」
「いえ!マスターは最低何かじゃありません!わたしが……」
「はい!ストップ! どっちも悪くて、どっちも悪くない!それで良いでしょ?仲直りしたらこれ以上は止めておきなさい」
このまま堂々巡りになりそうなのを強引に止める。
「クレハの言う通りだ、仲直りしようアイ」
「はいなのです!」
笑顔で抱きついたレイちゃんの頭をリョウが撫でる事でこの小さな騒動は収まった。
これにて一件落着!……なんてね♪
⭐︎
リョウは散らばったパーツを集め元のUFGの形へと戻す、少し複雑だがスキルのお陰なのかあっという間に元に戻してしまう。
「でもマスター、どうしてUFGを分解していたのですか?」
「UFGって現実に無い面白い武器だからな、この前とったスキルと組み合わせればより面白くなると思ってな」
「そう言えばアンタ、スキル取ってから変な物いっぱい作ってるわね」
ホームの倉庫に置かれている大量のガラクタを指差す、作ったは良いが実戦で使えない物も多く、しかし愛着もある為に処理に困っているのか散らかっている。
今度掃除でもしないとレイちゃんの教育に悪いわ。
「いや〜色々作ったり考えんのが面白いんだよな〜」
「こんなに作って商売でも始めるつもり?」
「商売か……それも良いかもな。でもどうせやるなら………」
『商売』と言う単語に何か考え込んでいる、もしかして本気で何かするつもりだろうか?
まぁその時は幼なじみとしてお得意さんになってあげよう。
「………?、それで改造の方は出来そうなの?」
「んー……出来ない事は無いけどパーツが足りないな、今ある素材じゃ少しな……」
「パーツ……っあ!そう言えば思い出したのです!」
「ん?どうしたアイ?」
「実はマスターにお願いがあるのです」
「「アファシスのパーツ……?」」
レイちゃんがデイジーちゃんから聞いたらしき情報を伝えてくれる。
「はいなのです。わたし達アファシスはいずれ来るGGOの超大型イベント《SBCフリューゲル》を攻略する為のカギになります」
「カギって……持ってない奴はどうするんだよ?」
「アファシスが手に入らなかった人用にレンタル用アファシス、タイプAが実装されます」
「タイプA……でもレンタル用だしやっぱりタイプXを持ってるプレイヤーの方が有利よね?」
「はい!マスターやツェリスカみたいなタイプXを持っているプレイヤーは最高のチャンスと言うわけです」
「でもそれとパーツがどう関係するの?」
「もちろんただ所持しているだけでは有利にはなりません。アファシスの性能を100%にする必要があります。その為にパーツを集める必要があるのです」
レイちゃんにしては珍しくすらすらと質問の答えが返ってくる、多分デイジーちゃんからの受け売りだろう。
「パーツって一体幾つ必要なんだ?」
「はい、わたしの完成度はおおよそ40%です。パーツ一つにつき20%……なので後三つのパーツが必要になります」
「つかお前40%だったのか、通りでエイムが下手なわけだな」
「む〜下手じゃ無いです! わたしの優秀なコンピュータが爆発物でのゴリ押しが一番良いって導き出しただけなのです」
そう言い胸を張るレイちゃん、確かにレイちゃんはAIにしてはエイム力が低く、この前仕方なくロケットランチャーを装備させて少しマシになった。
そう言う意味では本来の性能を引き出せて無いのかも
「でもイベントの事なんて聞いた事ないわよ?いつ始まるの?」
「まだイベント自体は正式に決まっていませんから、少なくともBOBよりもずっと後になりますね」
「逆に言えば時間は沢山あるって事か」
「はい、パーツがあればより優秀なサポートが出来るのです!」
「まぁ良いんじゃないか?少なくとも損する事は無さそうだ」
「そうね、レイちゃんのパーツを探してあげましょ!」
まだアファシスを持ってるプレイヤーにしか伝わっていない、超限定的な情報。
もしかしたらイベント自体が無くなる可能性もある、でもレイちゃんに必要な物なら集めてあげたいもの。
リョウも乗り気なようで直ぐに準備をする。
「ん?それは何?」
ふとリョウの装備が少し増えているのに気づく、その中でも一層目立つベルトのように腰に巻いたカラフルな弾帯を指差す。
渋いファッションを好むリョウにとっては珍しく派手な物だった。
するとリョウはキザったらしく帽子を指で弾くと含みを持たせた笑みを見せる。
「ん?コイツか?……『切り札』さ」
⭐︎
リョウの放ったマグナムの弾が機械人形の頭部を撃ち抜く。
「はぁっ!」
リョウの後方からの援護に合わせてクレハが突っ込む、適正な射程距離へと入ると愛用しているUZIの引き金を引く。
バババババっと軽く連射の効いた射撃がエネミーを倒す。
四体のエネミーを倒したクレハへと高所に居た別のエネミーが銃口を向ける。
「ドッカーンなのです!」
しかしそれは想定通り、クレハにカーソルを合わせるエネミーへとアイの放ったエネルギー弾が直撃し三体纏めて吹き飛ばす。
「エネミークリア、お疲れ様」
「お疲れさん」
全てのエネミーを倒した事を確認すると一息つく。
「回復しますね」
そう言いながらアイがスキルを発動しロケットランチャーをクレハとリョウへと向ける、放たれた弾丸が地面へと当たると緑色のサークルが発生してその場所に入った三人の体力を回復する。
アイは幸運と知性のステータスに多く振っており、《衛生兵》のスキルも取っている。
なので攻撃よりも回復やバフと言ったサポートをメインにしている。
デイジーからの情報通りリョウ達は残影の荒野の端の方にある《管理施設跡》へと来ていた。
限定的なクエストのせいかエネミーのレベルは高いが成長したリョウとアイのサポートのもあり難なく来れている。
でも油断出来はない、超大型イベントを有利に進められる程の超重要クエストだ、どんな初見殺しが来るか分かった物じゃ無い。
「そう言えばパーツ集めたらどんな事が出来るんだ?」
「詳しい事は分かりませんがわたしは優秀なタイプXです、きっとミサイルを出したり戦車へ変形ぐらいは出来る筈です!」
「マジか!? 直ぐに行こうぜ!」
「いやそうはならんでしょ………」
どう考えてもそんなバランスブレイカーな事になるわけがないとクレハは呆れるが、ロボットや機械の好きなリョウは興味を持ち歩みを進める。
そうこうしているとボス部屋の前へと辿り着く、三人はアイコンタクトを取るとボス部屋の扉を開いた。
四本の柱があるだけの開けた空間、中へと進むと後ろの扉が閉まり部屋の中央から巨大な影が現れる。
5メートルを超える人型の巨体、全身を甲冑のような鋼鉄の装甲で包み、ゴツい両腕に巨大な斧が握られ、真っ赤なモノアイが三人を睨み付ける。
ボスエネミー、《アングリーバーサーカー》が出現した。
『ーーーーーー!!!』
「来ます!」
「避けて!」
ボスエネミーは見た目以上に速いスピードでアタシ達へと突っ込んでくる、三人はローリングで斧の一撃を回避する。
「一箇所にいるのはマズイ、散らばるぞ」
リョウの言葉に頷くと三方向へと別れる。
するとボスは一瞬迷いつつもアイの方へと向かって行く。
「させない!」
サポーターのアイをやらせる訳にはいかない、クレハがスキルを発動するとボスの動きが一瞬止まり、クレハの方へと標的を変えて向かって行く。
クレハが発動したのは《プロボークシャウト》と言うエネミーのヘイトを自分へと向けるスキルだ、そのまま振り下ろされる斧を焦らず避けUZIの引き金を引く。
「くっ!きゃあ!」
しかしクレハの攻撃では怯まず、横薙ぎの攻撃で吹き飛ばされる。
体力が減るが伊達に速さと防御に振っていない、そこまでのダメージでは無く体勢を立て直そうとする。
『ーーーーー!!』
だが逃がさないようにと体制の崩れているクレハへと斧を振り下ろそうとする。
「やらせるかよ!」
それを遮るようにリョウが放ったマグナムがモノアイへと直撃する。
その衝撃にボスの動きが一瞬動きが止まる。
「きゃっ!」
その隙にリョウはUFGをクレハへと放ち、手首をスナップさせ投げ縄のように輪っかを作り、クレハの体を括り付け自分の居る方へと引っ張り抱き止める。
「あ、ありがと!」
「油断すんなよ」
照れながら礼を言うクレハの肩を叩き元気付けると互いに体制を立て直す。
「分かりやすいが奴の弱点は頭部の目だ。速さと手数でかく乱するぞ」
「分かったわ」
「アイ、回復とスピードのバフを頼む」
「了解です!」
回復弾は既に用意していたのか直ぐに飛んで来る、その後撃ち込まれた青い弾丸が地面へと当たると青いサークルを作り出す、その中に入った二人は足に力が入るのを感じる。
「行くぞクレハ!」
「任せなさい!」
再び斧を振り下ろしながら向かって来るボスエネミー、クレハとリョウは二手に別れて避けるとボスを中心に回りながら攻撃をする。
撹乱するように足や腕を撃ちながらも頭部をメインに攻撃を仕掛ける。
更にアイのランチャーの援護によって巨体がグラつき狙いを定めることが出来ないようだ。
『ーーーーージジジ…!』
鬱陶しそうにノイズの混ざった機械音を鳴らすボスは斧を構え薙ぎ払うように振り回しながら三回転する。
しかしそう来る事は読んでいた、斧を振りかぶった瞬間にクレハとリョウは後方へ飛び攻撃を回避する。
それどころかリョウはその回転に合わせるように弾丸をモノアイへと叩き込んだ。
『………ジジジ…』
そう言った攻防が数分続く、リョウが出した弱点への三連続の《クリティカル》に動きが止まり腕をダランとしている、しかしクレハはその姿に見覚えがあった。
「油断しないで!第二形態がくるわ!」
ボスの中には一定のダメージで攻撃力が上がったり攻撃パターンが変わったりなどする個体も多い。
『ーーーーーーー!!!!!』
クレハの想像通りボスの体が紅く染まり、再起動を始め先程以上のスピードでリョウへと斧を振り回す。
クレハよりもスピードの遅いリョウを狙ったのだろう。
「おっと!」
速さは上がったが動き自体は単調であり、UFGを使い巧に躱す。
リョウは無事だが斧が振り下ろされた床へと深く突き刺さっている、スピードだけでは無くパワーも上がっているのが見て取れる。
(あの破壊力、まともに受けたらアタシでも危ない)
「クレハ、ああ言ったタイプに何か他の特徴は無いか?」
「そうね……あそこまで極端にパワーとスピードが上がってるなら、その分防御は下がっているんじゃないかしら?」
ボスのステータス上昇値は基本的に決まっていてここまで極端に上がる以上何らかのデメリットもあると読んだ。
「つまりピンチの今こそが絶好のチャンスって訳か……面白れぇ、俺好みの展開じゃねぇか!」
ニヤリと笑いながら愛銃をくるりと回す。
「俺がメインでやる、クレハはヘイトを上げて回避に専念してくれ。アイはクレハにスピード、俺にパワーのバフを掛けてくれ、クレハの体力が少しでも減り次第回復するんだ!」
「分かったわ!」
「了解です!」
斧を振り回しコマのように回転しながら向かって来るボスの攻撃を躱すとクレハは再びプロボークシャウトを発動しボスの攻撃を自分へと向ける。
クレハが床を走り囮になるのに対して、リョウはUFGを使い立体起動でボスの周りを飛び回る。
その折に試すように6発全てをボスへと叩き込む。
(クレハの言う通り、さっきよりも数ミリ深くめり込んでいるな……)
先程まではマグナムでも深くは埋まらずボスが動く事で簡単に振り落とされていたが今放った6発はボスの装甲に深くめり込んでいた。
(ならコイツだ)
リョウは弾帯のベルトから抜き取ったのは水色の弾丸、真ん中にCと言う文字が描かれている弾を6つ装填する。
「クレハ!こっちに来い!」
リョウの指示を聞いて彼の方へと駆け出す、そんなクレハを追うようにボスも追いかけて来る。
その巨大から恐ろしい迫力を感じるがリョウからすれば良い的だ。
全く焦る事なく、6発全てを両腕両脚胴体頭部へとお見舞いする。
(よし……)
それでもボスは勢いを止めず突っ込んでくるが、すぐさまUFGで天井へと離脱する。
そして今度は腰から黄色いPと描かれた弾丸を一発抜き取り、自分を通り過ぎたエネミーの後頭部へと撃ち込む。
「プラズマ弾(バレット)!」
『!!!ーーーージジジ…………』
リョウが黄色い弾丸を撃ち込むと同時にエネミーに異変が起きる、先程リョウが撃ち込んだ水色の弾丸が発光し青白い電流がながれ出しエネミーの体を鎖のように縛り付ける。
「な、何これ……」
初めて見る現象につい驚きの声が漏れるクレハ。
先程リョウが撃ち込んだ水色の弾は《コネクト(連結)弾》、強い電流と電磁場で弾同士を連結させる特性のある特殊弾である。
もう一つの弾は《プラズマ弾》、強い電気のエネルギーを混ぜた特殊弾であり、これを撃ち込んだ事で連結弾がボスを拘束できるレベルの強力な物へと変化したのだ。
『ジジジジジジ………』
体全体から現れる電気の鎖、そこから現れる電流にボスエネミーは全身をスパークさせながら苦しんでいるように見える。
「随分と効いてるな、肩こりでもしてたのか?」
そんな皮肉を効かせながらゆっくりと腰から同じく黄色いEと描かれた弾丸を1発装填する。
「これで決まりだっ!」
弱点であるモノアイへ撃ち込れた瞬間、ボスエネミーの体を流れる電流がより強くスパークし全身が発光し出す。
リョウが撃ち込んだのは《エネルギー増幅弾》光学系の兵器や装備などのエネルギーを増幅させ威力を上げる弾
大量の電気によって体内のエネルギーが急上昇している機械型エネミーに撃ち込めばどうなるかは明白であった。
『ーーーーー!!!!』
次の瞬間、エネミーの体はオーバーフローを起こし巨大な爆発が部屋全体を包み込む。
エネミーの断末魔のような機械音が爆発によって掻き消される。
⭐︎
「爆発させるなら先に言いなさいよ!このバカ!」
「わ、悪かったって、つい新作の特殊弾を使いたくてさぁ」
アタシはリョウの頬を思いっきり引っ張る。
あの爆発によってボスエネミーは跡形も無く吹き飛んでいた、爆発の前に破壊不可能オブジェクトである柱へ隠れたお陰でアタシ達は無傷で済んだけど一歩間違えば巻き込まれて全滅の可能性もあった。
正直言ってめちゃくちゃ怖かった。アタシは引っ張る力を強くする。
「クレハ、マスターを虐めてはダメなのです」
「良いのよこれはお仕置きよ、これぐらいやっとかないと同じ事するわよ」
「確かにそれは嫌なのです」
「そんな〜……」
レイちゃんの同意に情けない声をあげる。
全く、さっきまではカッコ良かったくせに変なところで締まらないんだから、まぁこれぐらいにしてあげよう。
アタシはパッと手を離す。
「てかその弾帯全部特殊弾なの?見た事の無いやつもあったけど……」
特殊弾は一発一発が貴重で高額、リョウの資産でここまで揃える事は不可能だろう。
それに麻痺させたり毒を与えたりする特殊弾は見た事があるし使ったこともあるけどリョウが使ったのは見た事の無い奴ばかりだった。
「ああ俺のオーダーメイドだ、凄いだろ?色と頭文字に分けていてそれぞれ特性が違うんだ。今日使ったのは三種類だけどな」
そう言ってアタシに三種来の弾丸を見せてくれる、水色にCと黄色にPとEと言った不思議な弾丸。
流石に何種類あるのかまでは教えてくれなかった、まぁ当然だろういくら幼なじみでも自分の手の内を晒すような事はしない、アタシだってまだ見せてないスキルとかあるし。
やっぱりリョウは強くなっている、アタシよりも早い速度で……
リョウが強くなる事は純粋に嬉しい、でもそれ以上に怖い、リョウがアタシを置いて行ってしまうのじゃ無いかと思ってしまう。
『あの人』のように
「マスター!クレハー!見たかったのです」
アタシ達が話をしているとレイちゃんが小さなメモリーチップを持ってこちらへとやって来る。
どうやらアタシ達が話しているうちにパーツを見つけたようだ。
「お!見つかったのか、早速試してみろよ」
「はいなのです。いっただきまーす!………ムグムグ」
元気な声と共にメモリーを口の中へと放り込む。
………食べるんだ。
「どうだアイ?」
「お、おおーーー!!来ました!」
「どうなった!?」
「頭が良くなりました」
「は?」
まぁそんな所だろう、パーツがメモリーチップの時点で大体察せた。
「え?ミサイル出たり、変形するんじゃ無いの?」
「そんな訳ないのです、そんなこと出来たらバランスブレイカーですよ?」
至ってまともな回答、確かに頭は良くなってるみたいね………少しだけ。
「はぁ楽しみだったのに……」
「すみませんマスター、でもありがとうございます!マスターのおかげで三つのうち一つが手に入りました!」
「まぁお前の笑顔で十分割は取れるわな」
「えへへ〜♪」
少し落ち込んではいたがレイちゃんの眩しい笑顔を見た瞬間リョウはふっと息を吐き頭を撫でる。
アタシもこの笑顔の為に頑張って良かったと思う。
もしかしたら一番強いのはレイちゃんの笑顔かも知れない。
⭐︎
特殊弾
さまざまな特性を兼ね備えた特殊な弾、グロッケン内でも販売しておりかなりの高級品で一発がレア武器一つに該当する。
弾は柔らかく素材で出来ており、弾そのものには威力は無い。
第四部 誰のサイドケースから見たい?
-
キリト
-
アスナ
-
クライン
-
エギル
-
シリカ
-
リズ
-
リーファ
-
シノン
-
ユウキ