ソードアート・オンライン フェイタルバレットー切札の弾丸ー   作:トライダー

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 vs バザルト・ジョー

 

 

 

「待てコラっ!」

 

 塀の上の細い足場、そこを道路として俺は駆け抜ける。

 俺の足のサイズよりも細い足場は少しでも気を抜けば俺を奈落の底へと叩き落としてしまうだろう。

 

 ここはGGOでは無く現実世界、俺はとある依頼でターゲットと鬼ごっこ中だ。

 

「逃すか!」

 

 ターゲットはポリバケツを踏み台にし壁を蹴り3メートルはある壁を越える。

 だが俺だって伊達に鍛えてはいない、ダッシュの勢いのまま飛び上がり壁の上部を掴み乗せ、懸垂のように体を持ち上げ乗り越える。

 ターゲットは素早いがこの街の地理は完璧に理解しているため見失う事はない。

 

「おっちゃんゴメンちよっと通らせてくれ!」

 

「おお遼ちゃんかい、精が出るねぇ構わないよ」

 

「サンキュー!」

 

 ターゲットは私有地へと入ってしまい、追うために許可をもらう、もう何年とやって来たやり取りにおっちゃんは笑顔で答えてくれる。

 私有地を抜けそのまま追いかけているとターゲットは商店街へと投げ込む。

 

 いいぞー!頑張れー!

 

 八百屋のおばちゃんや魚屋のおっちゃんに行きつけの喫茶店のマスターなどの近所の皆んなから声援が聞こえる。

 

 もう少し、もう少し………ここだっ!

 

 皆の声援を背に受けながら思いっきり飛び込む。

 両手に手応えを感じそのまま持ち上げる、その瞬間皆の声援が歓声へと変わる。

 

 おおー!!

 

「うっし!捕まえたぜ子猫ちゃん」

 

「ニャー!」

 

 両手でがっしりと捕まえ抱き上げる、悔しいのかネコパンチをして来る。

 そう俺が受けた依頼は猫探し、本来こんなハードボイルドじゃない依頼は断る所なのだが依頼人が依頼人だからな。

 

「兄ちゃん!」

「遼兄ちゃん!」

 

 猫を抱き上げている俺のもとに二人の少年と二人の少女がやって来る。

 

「おう!お前らか、ほれミーコは捕まえたぞ」

 

「さっすが兄ちゃん!」

「ありがとうございます遼お兄ちゃん」

 

 足元にやってきた少女に猫を渡すと子供達は眩しい笑顔でお礼を言って来る、決してカッコいい仕事では無いがコイツらの笑顔を見るとつい許してしまう。

 

「あ!そうだ遼兄ちゃんにお礼……」

「そうそうお兄さんにお礼しないと……」

 

「やめろやめろ、ガキから依頼料なんか貰わねぇよ。いつも通り出世払いで良いさ、お前らが大人になって稼げるようになったら払いな。良いな?」

 

 俺がそう言うと子供達はもう一度笑顔でお礼を言うと去って行く。

 金を貰うのは大人だけで良い。

 子供から貰うのは笑顔と約束だ。

 こう言った小さな約束を守ってくれるだけで、もしかしたら将来凄い大人になるかも知れないのだから。

 

「流石だね遼ちゃん!」

 

「カッコ良いもんだよ」

 

「はっはっは! そうだろうそうだろう!」

 

 その様子を見てたおっちゃん達が褒めてくれる、子供の頃からの付き合いである彼らに褒められつい調子に乗ってしまうが少しぐらい良いだろう。

 

「遼ちゃん、うちの魚もってってよ!」

 

「うちの野菜もね」

 

「良いの!サンキュー!」

 

 おばちゃん達が選別として色んな食材をくれる、これで今日の食費は空きそうだ。

 

「おいコラ遼!」

 

「ん?」

 

 商店街のおじさん達と交流を深めていると野太い男の声が聞こえ一腹の男がこちらへとやって来る。

 やって来たのは左眼に眼帯をしたカタギとは思えないぐらい厳つい顔面の警察官。

 初めて見たら驚いていたかも知れないが、子供の頃からの知り合いににビビる事はない。

 

「なんだ丈二のオッサンか……」

 

「何だとは何だ!問答無用で街中を走り抜けやがって、怪我人が出たらどうするつもりだ」

 

「それぐらい気をつけてるって、この街は俺の庭みたいなもんだ、人の多い所と少ない所はわきまえてるよ。現に今まで怪我人を出した事は一度も無いだろ?」

 

「今までは無くてもこれから出すかも知れないだろ?そうなってからじゃ遅い、それに猫を追いかけるために一々私有地に入るんじゃ無い!」

 

「それだってちゃんと許可取ってるっての、俺だって探偵だぜ?なのにいつまでもガキみたいに扱いやがって……」

 

 この人は馬場丈二(ばば じょうじ)、この街の警察官であり昔から何かと俺の世話を焼いてくれるお節介なおじさん。

 

「オレからすればお前なんか今でもペーペーの半人前だ!それにオレは『ダンナ』からお前の事を頼まれてんだ。もし何かあったら二度と顔向け出来ないっての」

 

「それって高校の時のことだろ?もう良いっての……」

 

 帽子に手を当てやれやれと首を振る。

 

 オッサンの言う『ダンナ』とは俺の師匠の事、詳しくは知らないがオッサンは昔師匠に助けられたらしく返せない恩が有るらしい、その為か師匠の弟子である俺にも何かと気をかけてくれる。

 

「ちゃんと飯は食ってるか?少し痩せたんじゃ無いか?」

 

「食ってるよ!? 体重も体型も変わってない!」

 

「やっぱり一人暮らしなんてまだ早いんじゃないのか?何だったらうちに来ても良いんだぞ?うちの家族だって歓迎して………」

 

「あーもう!止めてくれよ!」

 

 まるで親のように心配をして来る、ありがたい話だが一人の男としていつまでもおんぶに抱っこでいたく無い。

 オッサンは良い人だが少し面倒見が良すぎるのがたまにキズだ、そのせいか悪い意味でお節介になる事も多い。

 

 この面倒見の良さが誰かに迷惑をかけないといいんだが………

 

 

 

 

         ⭐︎

 

 

 

 

 SBCグロッケンを散歩しながら情報を探す、集めているのはアイのパーツの情報だ。

 デイジーから一つ目の情報を貰えパーツを手に入れたが、残り二つの情報が全くと言っていいほど集まらない。

 元々アファシス持ちにしか伝わってない情報な上に、いつ起こるかわからないイベントの情報だ、苦戦するのも仕方ない。

 

 探偵としてはこう言う時は情報屋とかに頼るところだが

 

「ようお前さん!久しぶりだな」

 

「ん?アンタは……」 

 

 頭の中で考えを巡らせる俺へと、左眼に大きな傷をつけた厳つい男が話しかけて来る。

 

「確か……バザルト・ジョーだっけか?」

 

「覚えていてくれて嬉しいぜ」

 

 よく一度会っただけのしかも男の名前を覚えていたものだ、自分でも珍しく思う。

 この人の雰囲気が誰かさんに似ているからだろうか?

 

「まぁアンタには前に世話になったしな」

 

「また騙されそうになったりしてねぇか?何かあったら言えよ」

 

「大丈夫だよ、あれから気をつけてるしな」

 

「金とかは?苦戦してるクエストとか無いか?」

 

「いや今のとこは無いな……」

 

 パーツの情報の事は話さない、イベントの為の貴重な情報だし安易に他のプレイヤーに流す訳にはいかない。

 しかし元々面倒見が良い人なんだろうけど今日は妙に馴れ馴れしいな、どちらかと言うと機嫌を伺っている様に感じる。

 

 何を企んでるんだ?

 

「………ところで、今日はあのチビっこは居ないのか?」

 

「アイの事か? あいつならホームでクレハと話してるんじゃ無いか?」

 

「そうかそうか……なら良いんだが……」

 

「そうかなら「いや!良くねぇ!」うおっ!?」

 

 話を切り上げホームに戻ろうとした俺の肩をすごい勢いで掴む。

 かなりビックリした、声がデケェよ。

 

「何だよオッサン!ビックリしたじゃねぇか!」

 

「こう言うまどろっこしいのはオレの趣味じゃねぇ、だからハッキリ言わせてもらう!」

 

「あん?」

 

「頼む!アファシスを譲って欲しい!」

 

 物凄い勢いのまま頭を下げてくる。

 そう言う事か……別に驚く事じゃ無い、最近はめっきり減ったが少し前まではこう言う奴は多かった。

 

「はぁ……ジョーのオッサン、あんたの事は先輩プレイヤーとして尊敬してたんだけとな………」

 

 この人には前回アイを欲しがるプレイヤーから助けられたことや気の良い性格もあってかなり良い印象を持っていたのだが、結局はこの人もレアアイテムの誘惑には勝てなかったか

 別に悪い事じゃ無いが少し悲しい気持ちになる。

 

「いやお前さんの言う事は分かる。前に助けておいてこんな事を言うのも悪いと思う。だから言い訳はしない、金やアイテムなら欲しいだけやる、他にも欲しい物や困ってる事があったら何でも言ってくれ!」

 

 最早こちらが気持ちよくなるぐらい潔く頼み込むジョー、そのおかげか先程の悲しい気持ちが吹っ飛んでしまった。

 

「悪いがあいつを渡すつもりはない、少なくともアイが俺のそばに居たいっていう限りはな」

 

「だろうな、お前さんが金や物に釣られる男じゃ無い事は分かってた。そうでなきゃこのGGOで三ヶ月もアファシスを守れてねぇよな」

 

「だが俺も男だ一度言った言葉は飲み込まねぇ、そしてここはGGO!強い奴が正義の銃の世界」

 

 俺の答えがわかってたかのように頷いているが、その目は諦めているようには到底見えない。

 ………俺の経験上、こういう目の奴は大抵めんどくさい。

 

「決闘だ!」

 

「やだよ」

 

「いや、やだよじゃ無くて!? そこは男らしく正々堂々受けるところだろ?」

 

「そもそも俺に得が無いだろ?」

 

 やっぱりめんどくさくなった。

 決闘……男としてその言葉に何か来るものが無いわけでは無いが、大事な相棒がかかっている以上は安請け合いはしたく無い。

 それにアイを物みたいに賭けの対象にするのは気が引ける。

 

「そう言うだろうと思って、お前さんにとって良い条件を持って来た。聞きたいだろ?」

 

「いや、興味無「アファシスのパーツの事だ」………何?」

 

 ハッキリと断ろうとしたがジョーの一言につい反応してしまう、俺の反応を見た瞬間ジョーはニヤリと笑った。

 

「じゃあな、残影の荒野で待ってるぜ。クレハだったなそいつも連れて来な、こっちも三人でいくからよ」

 

 それだけ言うとジョーはフィールドの方面へと去って行った。

 

 

 

         ⭐︎

 

 

 

 俺はホームに着くと直ぐにクレハとアイに先程の話をする。

 

「ジョーがですか……?」

 

「ほんと最低!前に助けてくれたって聞いたから良い人かと思ったけど結局レアアイテムが欲しい奴らと同じじゃない!」

 

「クレハ、ジョーは良い人ですよ?この前もお菓子をくれましたし」

 

「あーもう!レイちゃん、そんなの貰っちゃダメよ」

 

「でもジョーは知ってる人ですし、お菓子美味しかったですよ?」

 

「それでもダメ!直ぐに人から物を貰ったらダメよ!もう少し危機感を持ちなさい」

 

「はーい、わかったのです」

 

 俺と同じく騙された気分のクレハは怒り心頭、当の本人はのんびりとしてる為この空間の落差が凄い事になっている。

 

「てか、そんなの行かなきゃ良いじゃない。向こうが勝手に言ってるだけなんだから」

 

「まぁ俺もクレハと同意見だけど、どうやらオッサンはアファシスのパーツの情報を何か知ってるみたいだしな……」

 

「そんなのアタシ達を呼ぶ為のデタラメよ!」

 

「かもな、でも俺たちがパーツを集めている事は誰にも教えていない筈だ。その情報をどうやって集めたんだ?」

 

 この情報はアファシスを持っているプレイヤーにしか流れていない筈、俺たちが知ってる限り他にはツェリスカぐらいだし、彼女やそれ以外のプレイヤーがわざわざ流すとは思えない。

 

「た、確かにそうよね?」

 

「考えられるのはオッサンは何らかの情報源を持ってるんじゃ無いか?」

 

「情報源……情報屋ってこと?」

 

「ああ、優秀な情報屋が居るなら今後の事も考えて知り合っておくべきじゃないか?」

 

「それは……そうだけど……」

 

「アイお前はどうだ?」

 

「わたしですか?わたしはマスターに従いますよ?」

 

「いや、お前にとって大事な選択だ。お前のしたい方を選ぶんだ」

 

「わたしの……選択……ですか?」

 

「『人生の八割は選択、後はおまけみたいなもの』俺の師匠がいっていた言葉だ」

 

 俺はアイの頭を撫でながら優しく師匠の言葉を聞かせる。

 

「俺はな、アイにはただ俺の後ろをついて来るだけのアファシスではいて欲しく無いと思ってる。時には自分の理性で考え、時には自分の感情に従う。そしてここぞと言う時に自分で大事な選択が出来る。そんな子に育って欲しいと思ってるんだ」

 

 だから俺は彼女自身に選択して欲しい、自分の考えと感情で

 

「わたしはマスターを信じています、マスターならジョーに勝ってくれるって。そしてわたしはそんなマスターをもっともっとサポート出来るようになりたいです!」

 

 俺の難しい注文にもアイは笑顔で応えてくれる、なら俺がマスターとして出来ることはこの笑顔に応える事だ。

 

「よし、決まりだ残影の荒野に行くぞ!オッサンから情報を聞き出す!」

 

「はいなのです!」

 

「はぁ、わかったわ。言っておくけどアタシも行くからね。絶対にレイちゃんを守って見せるんだから!」

 

 気合を入れた俺たちは準備を終えるとジョーが待つと言うフィールドを目指した。

 

 

 

 

          ⭐︎

 

 

 

「お!来やがったな」

 

「うわマジで来たよ」

 

「来ないと思ったのに……」

 

 場所は前回ツェリスカと戦った場所から少し離れた荒野、その真ん中にジョーは腕を組み立っていた。

 仲間らしき他の二人は地べたに座っていたが……

 

「うわっ!本当に待ってるなんて……あれから三時間も経ってるのに」

 

「ふん、宮本武蔵スタイルで来るとはな、やるじゃねぇか」

 

「ふっ、まぁな」

 

 決闘の場所は教えられていたが時間は聞いていなかったので俺はワザと遅れて行くことにした。

 まぁいきなり決闘を申し込んで来たジョーへの小さな仕返しだ。

 文句の一つも言われるかと思ったがどうやらジョーは気に入ったらしいので乗っておく事にする。

 

「てか時間かけすぎじゃね?」

 

「オレたちの都合も考えてくれよ」

 

 後ろの二人が文句を言っている、まぁそうだろうな。

 

「テツ、トモ!だからお前等は未熟者なんだ、一流のガンマンにはそれだけ準備が必要なのさ」

 

「ふっ、そういう事だ」

 

 本当は遊んでただけだけどな。

 

「よう!アファシスちゃん、オレのスコード・ローンに来ないか?」

 

「お断りします」

 

「レイちゃんも嫌がってるじゃ無い、てかアファシスが欲しいなら自分でクエストなりボスなりドロップを目指しなさいよ!」

 

「いいや、オレが欲しいのはアファシスじゃ無くて、『その』アファシスなんだよ」

 

「?、何でそんなにアイに拘るんだ?」

 

 今の台詞を聞く限りアファシスでは無くアイ個人に興味があるようだが、何故だ?

 確かにコイツはかわいいがAIとしてはアホだぞ?

 

「そんなの決まってるのです!わたしが優秀だからです!」

 

「いいやオレが欲しいのはそいつが『アホ』だからだ!」

 

「「「………え?」」」

 

 腰に両手を当て胸を張るアイ、しかしジョーから返ってきた答えは真逆のものだった。

 

「そいつはかなりのアホだ、この前も何も無い所で転んでいたしな」

 

「う……」

 

「だがそんな姿を見てると放っておけなくてな、オレの手でコイツを一流のアファシスに育ててやりたいって思ったんだよ。アホで良い!いやアホだからこそ良い!」

 

「………まぁ気持ちは分かるけどよ」

 

「なるほど、つまりわたしは魔性の女なのですね!」

 

「………まぁ、間違ってないんじゃね?」

 

 そう言うことでは無いのだが当の本人が喜んでいるようなのでそう言うことにしておく。

 ……てかどこでそんな言葉覚えたんだ?

 

 

「と言う訳だ!随分と待たされたが、アファシスちゃんを賭けて決闘だ!」

 

「その前に一つ条件がある」

 

「ん?何だよ?」

 

「俺たちが勝ったらパーツの情報、そしてその情報をどうやって手に入れたかを教えて貰う」

 

「おいおい、賭けるのは一つだろ?」

 

「急な決闘を申し込んで来たのはそっちだ、これぐらいは呑んでもらわないとな。それに俺から言わせて貰えばこれでも足りないぐらいだ。俺たちにとってアイの存在はな」

 

「えへへ〜♪」

 

「まぁ良いぜ、お前さんの言う事にも一理ある。約束してやる、もし勝てたらパーツの情報とその情報源をお前たちに教える」

 

「オーケーなら始めるぜっ!」

 

 その一言を皮切りにして全員が銃を取り出し決闘が始まる。

 

 

 

 

       ⭐︎

 

 

 

(やっぱり一筋縄ではいかないな……)

 

 現在リョウは岩に身を隠し機を窺っている、流石ランキングに名が載る程のプレイヤーだけはあってジョーの実力はかなりのものだった。

 個人の実力もだがそれ以上にチームワークが凄い、彼の我が儘で三時間以上待たされたにも関わらず彼の指示に合わせ立ち回っている、その姿から彼が相当信頼されているのが分かる。

 

(アイの方にはクレハが居るし大丈夫だろう、問題は………)

 

「見つけたぜ!」

 

「っ!!」

 

 気配を感じ飛び退くとリョウのいた岩が軽機関銃の連射力により蜂の巣へと変わる。

 

「逃すか!」

 

 構えた軽機関銃から照射されるバレットラインがリョウを追いかけるように向かってくる。

 

「…………ふっ!」

 

 UFGと高い身体能力を生かしアクロバットな動きで射撃を回避する、それと同時に頭部と胴体を狙い3発弾丸を放つ。

 

「おっと!やるな」

 

 しかしジョーは左腕の盾で弾を受け止めてしまう。

 3発の内1発が胴体へと直撃するが大したダメージにはならない。

 ジョーの戦闘スタイルは左腕に大盾を持ち右手一本で軽機関銃を連射するという豪快なスタイルだ。

 更に胴体に受けても大したダメージにならない辺り服の下にプロテクターを仕込んでいるのだろう。

 

(だがそれだけで受け止められる程マグナムは弱く無い、ステータスを防御面に多く振っているのか)

 

 職種はクレハと同じ《タンク》、しかしクレハのように囮となり回避するのでは無く、攻撃そのものを受け止める文字通りの《盾》

 現在ジョー達の見事なチームワークによってリョウはクレハやアイと分断させられている。

 

「やっぱ決闘の華はタイマンに限るよなぁ!」

 

 そしてジョーは一対一の戦いに拘っているのかリョウだけを執拗に狙ってくる。

 クレハほど速くは無いが攻撃を受け付けない威圧感がリョウへと向かう。

 

「そんな豆鉄砲じゃオレの防御は突破できねぇぜ?」

 

「上等だ、そのご自慢の盾に風穴開けてやるよ」

 

 腰のベルトから紫色のPと描かれた弾丸を取り出す、これは《ポイズンガス弾》、高級ではあるが実際に売っている特殊弾の一つ、リョウのは自分で作った特別製だが。

 素早い動作で弾倉へと詰めると向かって来るジョーへと放った。

 

「うおっ!?特殊弾か!」

 

 盾で防ぐがそれと同時に弾が砕け中から紫色のガスが充満し、ジョーを毒状態へと変える。

 

「もう一発いくぜ!」

 

 毒ガスに怯み今度はベルトから赤い弾丸を取り出す、描かれている文字はH。

 

「ヒート弾(バレット)!」

 

 赤い弾丸が真っ直ぐジョーへと向かって行く、避けられないことを察したジョーは再び盾で防ぐ。

 先程と同じく盾に着弾した瞬間、小さな爆発を起こし中から炎が現れブレイズ状態を追加する。

 

(うおっ!炎か、だが耐えられる!)

 

 継続ダメージはあるが小さなものである上に、体力の多いジョーは気にせず突っ込もうとする。

 

 だがその瞬間……

 

「うおぁっ!!」

 

 ジョーの周りが大きな爆発を起こす。

 爆発に吹き飛ばされ無いように踏ん張っているとその煙に乗じてリョウが光剣を左手に持ちながら突っ込んでくる。

 

「うぉらぁっ!」

 

「舐めるな!」

 

 突き出される光剣を盾で防ぐ、ジジジと火花を散らし盾に刺さり僅かに貫通するが宇宙船の装甲を素材に作られた盾は簡単には壊れずリョウのSTRが低い事もあってジョーまでは届かない。

 

(くっ……抜けない………)

 

「そらぁっ!」

 

 盾で防ぎつつ機関銃を構えて放つジョー、それよりも速くリョウは光剣を手放すとその盾を足場しにて前方に回転しながら飛び上がりジョーほ頭上を越える。

 

「うぉらぁっ!」

 

「ぐあっ!」

 

 そしてその回転の勢いのままジョーにもう一本の青い光剣を取り出し背中を斬りつけると一旦距離を取り弾丸を二発撃ち込む、それは先程の赤と紫の弾丸だった。

 

「うおっ!?」

 

 弾丸がジョーへと着弾すると同時に再び爆発が起きる。

 

 リョウが作ったポイズンガス弾には可燃性の高いガスを多く混ぜており炎によって爆発を起こすように作ってある。

 そのガス弾と炎の弾丸を同時に撃ち込むことで小さなガス爆発を起こす事が出来るのだ。

 

「そらっ!」

 

 爆発で動きを止めているジョーへと突っ込みその背中に光剣を突き刺す、しかしやはりステータスの差か深くは刺さらず致命傷には遠い。

 

「う……く! 残念だったな。ここはSAOじゃねぇんだ、銃で戦うガンマンの世界なんだよ!」

 

「……ああ、俺も同感だな」

 

 ジョーが軽機関銃を構える前に後ろへと跳び僅かに距離を取るとコルト・パイソンを構える。

 

 自分よりもリョウの方が早い、それを察したジョーは咄嗟に盾を構える、構えるのを焦ってしまったのかリョウの姿が見えなくなってしまう。

 だが彼のベテランとしての経験は、この一発を防ぎ自分の反撃をリョウへとぶつける計算が出来ていた。

 一秒にも満たない時間を視界の暗い盾の後ろで身を隠す。

 

(何……?)

 

 しかしその瞬間突然視界が明るくなった、盾へと突き刺さっていた光剣のエネルギーが切れて光の刃がなくなり銃弾一発分の小さな穴できていた。

 

 覗き穴のような僅かな隙間から彼の右眼が最後に見たのはこちらへと銃口を向けているリョウの姿。

 

「これで決まりだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

       ⭐︎

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……疲れたな」

 

「ほんとよ、油断の一つも出来なかったんだから!」

 

「はい強かったのです〜」

 

 決闘の終了と共にクレハ達と合流する、どうやら俺たちよりも先に決着はついていたようだが、よっぽど手強かったのか二人とも随分とお疲れのようだ。

 かく言う俺も危なかった、光剣のエネルギーが切れる時間を一秒でも間違っていたら勝てなかったかも知れない。

 クレハ達と合流しグロッケンへと戻る、するとデスルーラしたジョーが笑いながら迎えてくれる。

 

「よう!やるじゃ無いかリョウ。なかなかの銃の腕前だったな、特に最後の一発なんかオレの尊敬する人を思い出すぐらいの良い一発だったぜ!」

 

「ははっサンキュー。他の二人はどうしたんだ?」

 

「先にログアウトしたぜ、随分と付き合わせてしまったからな。当分はあいつらのご機嫌を取らないとな」

 

 豪快に笑いながら俺の背中をバシバシと叩く、少し痛いが不思議と悪い気分じゃなかった。

 負けたにも関わらず笑顔で相手を褒めている、やっぱりこの人は良い人何だと安心できる。

 

「しっかしお前さんを見てると、近所の生意気なクソガキを思い出すな」

 

「奇遇だな、俺もあんたを見てると近所の口うるさいオッサンを思い出すよ」

 

 そんな皮肉を返すとまた笑いながら背中を叩いてくる……流石に少しムカついて来た。

 

「さぁそんな事よりもこれで決闘はアタシ達の勝ちよ!約束通り情報を渡してレイちゃんの事は諦めてよね」

 

「ああ、分かってる。オレも男だ約束は守る、二つの情報は既にリョウのメールに送っておいた。そしてアファシスの事も今回は諦めてやる」

 

「ああ、確かにメールが来て………ん?『今回は』?」

 

「今回はってどういう事よ!」

 

 言葉の意味を詳しく聞こうとしたが既にジョーはログアウトの準備をしていた。

 

「またリベンジするからなーーーーー!!!」

 

 そう大声で叫ぶと直ぐにグロッケンから居なくなる。

 気の良い人だが、それ以上にめんどくさい人だ………

 

「「はぁ〜………」」

 

「またねーー!!!なのです!」

 

 呆れてため息をつく俺とクレハと対照的に元気な挨拶を返すアイだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ヒート弾

リョウが作った特殊弾の一つ、撃ち込む事で相手をブレイズ状態を与える。
しかし炎が出るだけで爆発がするわけでは無く威力は高くない。
特性が炎なので湿気の強いところなどでは使えない。

ポイズンガス弾

GGO内でも販売されている特殊弾、しかしリョウの作った物は可燃性の高いガスを使っており炎と混ぜる事で爆発を起こす。
その代わりの毒物としての特性が低く、危険性も高い。

第四部 誰のサイドケースから見たい?

  • キリト
  • アスナ
  • クライン
  • エギル
  • シリカ
  • リズ
  • リーファ
  • シノン
  • ユウキ
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