Historia~彼女を救う彼女の物語~   作:瞬く陰と陽

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組曲その2

この曲は雪女をテーマにして作られた曲です


私はこのMGS3が大好きで特にザ・ボスが好きです


私にはザ・ボスがこの曲で表現された雪女に思えてならなかったのでこのタイトルにしています



話を読みながらこの曲の事を思っていただけると嬉しいです


氷の楔

『そして私は奴の手を取った…』

 

 

『グリードさんとそんなことが…でも…』

 

 

呪い(かしり)っていったい?)

 

 

 

『…私は奴の言葉を額面通りに受け取ってしまった。

 

 …私は愚かだった…

 

 

 …自分一人を捧げることに何の抵抗もなかった。

 

 

 だが奴の欲望はそれだけでは満足しなかった。

 

 

 

 私が積み重ねた過去も、

 

 

 

 私が選んだ現在も、

 

 

 

 私が歩む未来までもを欲した。』

 

 

 

(未来…え、まさか未来って…)

 

 

目を見開いて口を覆う紫苑。

 

 

 

『…彼は私の子どもを要求したの。』

 

 

『そんな⁈どうしてそんなひどいことを…』

 

 

 

『…いや…ある意味では助かった部分もあった。

 

 

 彼がいなければあの子は戦場で死んでいた。

 

 

 彼の周囲は治外法権が適用される。

 

 

 彼が庇護している限り、

 

 

 あの子の命は保証されている。』

 

 

 

『でも…家族(ファミリー)が離れ離れなんて寂しいよ。』

 

 

 

『…戦士の魂は常に…共にある。』

 

 

 

『え?』

 

 

 

『離れていても、私達は繋がっていた。』

 

 

その顔はとても穏やかな、

 

-母-の顔をしていた。

 

 

 

(…あぁ…やっとわかった。…貴女の強さ。)

 

 

 

『-特殊部隊の母-…か…

 

 

 -お母さん-だから強いのね。』

 

 

 

『え?』

 

 

 

 

『貴女の子ども()たちが世界中にいる。

 

 

 

 血は繋がっていないけれど、

 

 

 

 

 あなたの心を受け継いだ子どもたちが。』

 

 

 

紫苑の言葉に不思議そうな顔を見せるザ・ボス。

 

 

『貴女は世界中に子どもを持つお母さん。

 

 

 母は強しって言うでしょ?

 

 

 だから貴女は強い、それもとびっきり!』

 

 

 

『…フフッ…変な娘ね…』

 

 

 

思わず薄く口角をあげたザ・ボスにつられて紫苑も笑う。

 

 

 

『ねぇ…私もお母さんって呼んでいい?』

 

 

さしものザ・ボスも少し面食らったようだ。

 

 

 

 

『いぃ~話じゃないですか~♪』

 

 

『…ザ・グリード…』

 

 

 

二人の間に流れる空気を裂いた揶揄する男の声。

ザ・ボスが彼に向ける視線は先ほどよりも厳しくなっているように見える。

 

 

『貴女によく似た可愛らしい娘さんですよ。

 

 

 ねぇ紫苑?君もそう思うよねぇ?』

 

 

 

『…一体何の用なのザ・グリード?』

 

 

 

 

咎めるザ・ボスの言葉に大袈裟に肩を竦める男。

 

 

 

『Oohhh…つれないねぇ…

 

 

 まぁ…いいでしょう…

 

 

 

 

 

 …彼が戻った…もう此処へ来ている。』

 

 

 

 

『…⁈…そう…戻ってきたのね…』

 

 

 

 

ザ・グリードの告げたことが意味することは一つ。

 

 

二人に決着の時(クライマックス)が近づいたということ。

 

戦いの場へと向かうザ・ボスとすれ違いざま、

 

ザ・グリードがその眼を閉じる。

 

 

 

 

『これで僕らの契約(コントラクト)は完遂された。

 

 

 

 報酬はきちんと払ってもらうよ?』

 

 

 

『……分っている……感謝する。』

 

 

 

 

立ち去るザ・ボスと背を向けたザ・グリード。

 

互いに振り返ることはなかった。

 

 

 

部屋を去るザ・ボスを止めることが出来なかった紫苑。

 

 

 

「…楽しいお話し…出来ましたか?」

 

 

「…どうしてボスの子どもを奪ったんですか?!」

 

 

紫苑の非難にワザとらしく驚いた表情をつくったザ・グリード。

 

 

「…おやおや…そんなことまで聞いていたなんて…

 

 

 仲良くなることは成功したみたいですね~♪」

 

 

「ふざけないでッ!」

 

 

髪を逆立てて怒る紫苑が拳を振り上げ殴りかかる。

 

 

 

「ハハッ…そういうとこ。

 

 

 嫌いじゃないねぇ…」

 

 

楽しそうに頬を緩めるザ・グリードは首を振るだけで掠らせもしない。

 

 

 

「なんで⁈家族を引き裂いたの⁈」

 

 

 

それでも負けじと拳を振う紫苑の叫びを聞いたとき、

 

 

 

 

「…知った風な口を利くなよ…」

 

 

 

 

 

ZAAAAAAAK!!!!!

 

 

 

突如、紫苑のスパイダーセンスが最上級の警報を鳴らす。

飛び退いて距離を取ろうとする紫苑の眼前からザ・グリードの姿が消えた。

 

(…⁈迅い‼…グッ…⁈)

 

背後から湧き出た両腕に有無を言わさず拘束された紫苑は指一本すら動かすことができなくなった。

 

 

 

「…今の君に何がわかる…

 

 英雄であるが故に、

 

 戦い続ける事を運命(さだめ)られた

 

 雪のような女の悲哀を。

 

 

 愛する者たちをその手で抱きしめる事はおろか…

 

 

 剰え愛しき人をその手で殺める事を強いられ、

 

 

 

 自ら命を絶つ事さえも許されず、

 

 

 

 

 

 今は、ただ…

 

 

 

 

 

 

 

 地獄に落ちる事だけを欲望(のぞ)んで…

 

 

 

 

 

 哭き続ける女に…

 

 

 

 

 

 氷の楔を突き立てる、そんなクソッたれな運命がッ?!!」

 

 

 

魂の慟哭。

 

この瞬間だけ、ザ・グリードの軽薄な仮面が剥がれ、

 

 

人間染みた男の叫び、

 

 

愛した女を失うことへの後悔。

 

 

 

(…このぉ…ッ…)

 

 

「…そんなに好きならちゃんと守りなさいよッ!!」

 

 

 

「…⁈」

 

 

(□□□?大事なものは手放しちゃだめだよ。)

 

 

 

 

 

「…あぁ…もう…

 

 

 アンタほんっとに、

 

 

 

 

 -変わんない-なぁ…」

 

 

 

懐古、親愛、望郷、

 

 

 

何れでもあり、そうではないかもしれない。

 

それらを判別する前に紫苑の意識は遠のいていく。

 

 

男の言葉は今の紫苑には理解はできない。

 

彼女が知るには早すぎる…

 

 

 

「…君は争うことに痛みを抱える優しい子だ。

 

 

 それでも君は起ち上がらねばならない。

 

 

 君をもとめる人々の為に。

 

 

 そして彼らの代わりに闘う以上、

 

 

 君が選ぶ(運命)はただ一つ…

 

 

 

 

 勝利(VICTORY)だけだ。」

 

 

 

 

気絶した紫苑を抱えたザ・グリードのつぶやきが虚空に舞って消えていった。

 

 

 

 

 

 

~~~~~~

 

 

『私に任せなさい。』

 

ヴォルギンに痛めつけられたタチアナ(EVA)にしか聞こえない声で囁いたザ・ボス。

彼女を歩かせて立ち去る間際、ザ・ボスはヴォルギンを振り返る。

 

 

 

『大佐、戦士らしく闘いなさい。』

 

 

『勿論だ。』

 

 

不敵な笑みを浮かべるヴォルギン。

 

ほんの一瞬オセロットと視線を交わすとザ・ボスは今度こそ背を向けた。

 

 

血気に逸るオセロットが決闘を主張したがヴォルギンは認めなかった。

 

 

 

バチバチと放電しながら拳を握るヴォルギンが叫ぶ。

 

 

 

 

『いくぞ!ザ・ボスの弟子!!』

 

 

 

二人の男の意地の力比べはこうして始まった。

 

 

不機嫌そうに眺めるオセロットの他にその戦いを見つめる男。

 

 

 

 

『…ほぼ互角…いや僅かにスネークが優勢か。

 

 

 本当に成長している。

 

 

 ソルジャー遺伝子…超人兵士化計画(スーパーソルジャー実験)に応用したかったねぇ…』

 

 

 

 

玩具を見つけた子供のような目でスネークを眺めていた男は踵を返した。

 

 

 

『…まぁ今回は欲張らないでおきましょう…

 

 

 

 とっておきの為に…ね?』

 

 

 

フフッと嗤った男は白衣を翻し闇に消えた。

その手にプラプラと古いウサギの人形を携えて。

 

 

 

 

~~~~~~

 

 

 

『緊急事態。爆弾が発見された。

 

 爆発物処理(EOD)要員以外は総員退避せよ。』

 

 

部屋に響く警報アナウンスに紫苑の意識は徐々に覚醒した。

 

ザ・ボス、ザ・グリード、そして最後に浮かんだ顔は、

 

 

 

(…スネークだ!!)

 

 

 

部屋を飛び出した紫苑は避難する人の波を掻き分け走り出した。

 

 

 

 

 

『待ちなさい。』

 

 

 

 

掛けられた声に振り向くとそこには二人の女性が立っていた。

 

先ほど別れたザ・ボスとEVAだった。

 

 

『シオン!!』

 

 

 

『ボス、EVAさん!!』

 

 

 

思わずEVAの胸に飛び込む紫苑。

そんな紫苑を強く抱きしめるEVAは初めて出会った時のパイロットスーツに身を包んでいた。

 

 

 

『この子は私が連れていく。

 

 

 貴女はジャックを…お願い。』

 

 

 

ザ・ボスがEVAに告げ、EVAは頷く。

 

EVAは紫苑の頭を名残惜しそうに撫でて走り去っていった。

 

 

残された紫苑をザ・ボスはついてくるように促す。

 

 

二人は歩き出した。

 

 

 

 

『スネークは無事でしたか?』

 

 

 

『…えぇ。』

 

 

 

『良かった…。

 

 と言っていいんでしょうか…

 

 

 貴女の命を奪うために、

 

 戻ってきた訳ですから…。』

 

 

 

 

『…そうね。』

 

 

 

 

ポツリと溢したその言葉に紫苑は胸が締め付けられた。

 

 

 

 

『貴女の命を奪うことで(スネーク)は何を得られるんですか?』

 

 

『…』

 

 

 

 

歩みを止めた二人の前には一頭の馬がいた。

 

アンダルシアンと言う名の馬の背に紫苑を抱えて乗せるとその後ろにヒラリとザ・ボスが飛び乗った。

 

 

風のように走り出したアンダルシアン。

 

 

乗馬の経験のない紫苑は少し驚いたようだったが、

背中から暖かく包み込むザ・ボスの存在に次第に落ち着きを取り戻していった。

 

 

 

その温もりに紫苑は運命を感じた。

 

 

自分を突き動かす激情を、

 

心のうちに広がる使命に身を焦がし、

 

熱く静かに選択した。

 

 

 

 

『私は、スネークが好きです。』

 

 

 

 

前を見据えて紫苑が言う。

ザ・ボスは何も言わない。

 

 

 

『…私は、あなたも好きです。』

 

 

『私も?』

 

 

『えぇ。だからどちらも失いたくない。どちらも死なせたくない。』

 

 

 

一呼吸置くと紫苑は宣言した。

 

 

 

『死なせたくないから、

 

 

 

 あなたと闘います。

 

 

 

 わたしの…全てをかけて。』

 

 

 

 

紫苑の決断をザ・ボスは止めなかった。

 

互いの想いをかけた珠艶なる饗宴の序曲が始まる。

 

 

そこには幻想的な光景が広がっていた。

 

真白な花に覆われた穢れを知らぬキャンバス。

 

その中心、二人は降り立った。

 

 

 

 

『何故かはわからない。

 

 年端もいかぬ少女に闘いを挑まれて…

 

 これは…任務ではない。

 

 闘う理由もない。

 

 

 それなのに…』

 

 

 

『伝説の英雄…

 

 私は、そう呼ばれるあなた(ザ・ボス)を知らない。

 

 でもあなたを失いたくない。

 

 そう思ったのは…

 

 それは好きだから。

 

 

 人を好きになるのに時間も理由も要らないわ。

 

 

 だって…』

 

 

 

 

 

 

『『こんなに楽しい。』』

 

 

 

 

二人は見つめあったまま静かに笑いだした。

 

 

 

『ソローさんには悪いけど、私達はベストカップルね。』

 

 

 

眼を紅く染め上げ、黒い猛毒(ヴェノム)に身を委ねた少女が嗤いかける。

 

 

 

『確かに昔から同性には好かれる質だな。』

 

 

 

苦笑いを浮かべながらザ・ボスは自身を覆うマントを取り払う。

 

 

再び見詰めあう二人。

 

 

 

 

 

『私は、あなたを救います!!』

 

 

『お前の忠を見せてみろ!』

 

 

 

 

 

フィールドの中心で黒と白が激突した。

 

 

 

紫苑は荒れ狂う暴風の如くザ・ボスを攻め立てた。

 

朽葉流の呼吸法により活性化された肉体に加え、

ヴェノム(シンビオート)の力から繰り出される連撃は人間の認知速度を遥かに超えたものだった。

さらに体内にて生成された強靭な蜘蛛の糸は弾丸より速く四肢を狙い、打ち出されている。

 

 

しかし恐るべきは伝説の兵士である。

 

野獣の猛攻を交わし、いなしている。

 

コンクリートの壁すら砕かんとする一撃を避けるだけでなく反撃してすらいる。

 

むしろ素直な獣性を見せる紫苑は、数多の闘いをくぐり抜けている歴戦の英雄のザ・ボスにとってはあるいはあしらいやすいのかもしれない。

 

焦りから大振りになったところを絡めとるように地面へ叩き付けられた紫苑は追撃を避けるため糸を後方へ飛ばし滑るように距離を開ける。

素早く立ち上がり、半身に構えると気を練り上げ紫苑は拳を突き出す。

 

 

『朽葉流…砲砕ッ!』

 

 

放たれた目には見えない砲弾は真っ直ぐにザ・ボスへ肉薄している。

自身に襲いかかる不可視の弾丸をザ・ボスは確かに見切っていた。

深く体を沈みこませ渾身の一撃をかわすと紫苑に疾風のごとく接近するザ・ボスに対して紫苑もしゃがんで回転を始めた。

射程圏内に紫苑をザ・ボスが捉えた瞬間、凄まじい熱風がザ・ボスに吹き付ける。

いつの間にか紫苑の背に鬼の火柱がゆらりと立ち上ぼり回転に合わせて炎の竜と化してザ・ボスを吹き飛ばしていた。

 

 

『朽葉流…飢牙飢(ががかつ)

 

 

再度対峙する二人。

 

朽葉流の秘技を繰り出し続けた結果、

 

疲労の色が強い紫苑に対して

 

未だ有効な攻撃を受けていないザ・ボスは呼吸に乱れもなかった。

 

 

(すごい…すごいすごいすごい!!!

 

 スパイダーセンスも役に立たないくらいの戦力差!

 

 二人の兄とは比べ物にならない戦闘技量(コンバットスキル)

 

 ハハッ…勝てる要素が見付からないわね相棒。)

 

 

 

思わず半身に笑みを零す紫苑は血は争えない戦闘狂(バトルマニア)だった。

 

ふと目が合う。

 

 

『そろそろ終わりのようね…』

 

 

『仕方ないわね…こうなれば出し惜しみは無し!!』

 

 

 

最後の攻防。

 

 

紫苑は自身の切り札。

 

最終奥義を繰り出す体勢に入る。

 

 

 

自分が学んだ朽葉流の究極形、

 

しかし未だ未完成であるため諸刃の剣でもあるが。

 

 

紫苑は勝負を神に託した。

 

 

 

 

『朽葉流…奥義ッ!』

 

 

 

背中に背負った鬼火が両手に集まり火柱をあげる。

 

ふわりと宙空に浮き上がると高速回転を始め、巨大な火矢へと自身を変えた。

 

 

 

 

焔獄(ほむらごく)ッ!!』

 

 

 

 

 

熱い魂の熱波の如く打ち出された極炎の弾丸はザ・ボスへと猛進する。

 

 

 

 

着弾とともに大爆発が二人を包んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

『…ありがとう。紫苑。』

 

 

 




うちのヒロインは戦闘狂です


血は争えません



まだティーンなので血気に逸る部分が強いです




そんな少女を見てザ・ボスが何を思ったのか




次で一章完結となります
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