Historia~彼女を救う彼女の物語~   作:瞬く陰と陽

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MGS3編エンディングです


タイトルはカップリングながら大好きな曲なのでぜひとも聞いていただきたい






ゆきゆきて青し

chi chi chi

 

鳥の鳴き声に紫苑は目を覚ました。

 

 

 

見慣れた木目の天井。

 

穏やかな朝日がカーテンを透かして差し込む。

 

ぼんやりとした頭のまま、寝起きの体を解し、

 

ベッドから起き上がり台所へ向かう。

 

 

 

いつもの習慣だ。

 

 

台所には無精ひげを生やした男が咥え煙草で朝食を作っている。

 

 

「おはよう、文治兄さん。」

 

「おう、紫苑が寝坊とは珍しいな。」

 

 

器用に卵を焼きながら文治が答える。

 

 

「十二はもう出てったぜ。」

 

「なに?彼女とデート?」

 

「シスコンのあいつにそれはねぇよ。」

 

 

笑いながら文治は三人分のコーヒーを準備していた。

 

 

「どの面下げて寝言言ってんだクソ兄貴。」

 

 

紫苑が振り返るとジーンズにTシャツ姿の目つきの悪い男がコンビニの袋を下げて立っていた。

 

 

「テメェが俺に煙草買いに行かせたんだろうが!」

 

「ジャンケンの弱ぇオメェが悪いんだよ。」

 

「朝から元気ね二人とも。」

 

 

紫苑と文治が笑い、十二が悪態をつく。

 

穏やかな朝の風景。

 

三人同じ食卓を囲み朝食をとる。

 

 

ふと紫苑の箸が止まった。

 

 

「どうした紫苑?兄貴の飯が不味いか?」

 

「朝からお盛んだな十二。」

 

「兄貴と違って枯れてねぇからな。」

 

 

憎まれ口をたたきあう二人の兄を眺めて紫苑がつぶやく。

 

 

「なんだか…二人に会うのがすごく久しぶりな気がするの…」

 

 

二人の兄は紫苑を不思議そうに見やっている。

 

 

「「何言ってんだ家族(ファミリー)だろ?」」

 

 

二人の兄は当然のように言った。

 

 

(…そっか…そうだよね。)

 

 

紫苑は静かに立ち上がった。

 

 

 

 

「ありがとう…二人とも…

 

 

 

 そして、ごめん。

 

 

 

 

 

 私行かなきゃ…

 

 

 

 

 

 大切な人が待ってるの…」

 

 

 

 

 

 

 

「…おう、行って来い。」

 

 

文治が笑って言う。

 

 

 

「…幸せになんねぇと承知しねぇぞ…」

 

 

 

十二も照れくさそうにそっぽを向いて言う。

 

 

 

「…また…会えるかな?」

 

 

 

 

「「当然だ、家族(ファミリー)だろ。」」

 

 

 

 

 

 

「…!九頭紫苑、行ってきますッ!!!」

 

 

彼女を待つ

 

新しい家族の元へ

 

紫苑は踏み出した。

 

 

 

 

 

 

徐々に覚醒した紫苑。

 

どうやら自分は花畑の隅の倒木の上に横たえられているようであった。

 

 

 

花畑の中心部にはザ・ボスとスネークが対峙していた。

 

ぐらりとザ・ボスの体が揺らぐ。

 

彼女はゆっくりと天を仰ぎ白い花弁の中に沈んでいった。

 

 

 

『ッ!ボスッ!!!』

 

 

 

走りよると紫苑はザ・ボスの元に膝をついた。

 

 

 

『これを…離すな…』

 

『パトリオット…なぜこれを。』

 

 

自分の魂の象徴をスネークに渡すザ・ボス。

紫苑はザ・ボスの左手を握り自分の胸に当てた。

 

 

 

『紫苑…わたしに後悔はない。

 

 

 お前に出会えて本当に良かった…』

 

 

 

『…ボス…私も良かった!

 

 

 貴女に逢えて幸せだったよ!!』

 

 

 

ザ・ボスの右手が紫苑の頬を伝う涙を拭う。

 

 

 

『…私よりずっといい戦士になる…』

 

 

『…ありがとう…-お母さん-…』

 

 

 

 

ザ・ボスは嬉しそうに微笑んだ。

 

紫苑も止まらない涙もそのままに微笑んだ。

 

 

 

『…紫苑…』

 

 

 

スネークから静かに名前を呼ばれると紫苑は立ち上がる。

決して目はそらさないと決めた。

 

 

 

 

『ボスは二人もいらない…蛇は一人でいい。』

 

 

 

稀代の英雄の最後の言葉だった。

 

 

 

舞い上がる‐アカイ‐花弁

 

愛弟子と愛馬、そして異界の少女に見送られて

 

白い蛇は去って行った。

 

 

 

 

 

脱出機に乗り込んだ紫苑とスネークをEVAが出迎えた。

座席に紫苑を座らせるとスネークは外の景色を眺めている。

 

 

 

『行くわよ!スネーク!』

 

 

 

出発した後も紫苑は自分の手を眺めていた。

握った手のぬくもりは永遠に忘れないだろう。

 

 

 

 

 

GaaaaN!!

 

 

 

 

突然機体に揺れが走った。

 

 

『何?!』

 

 

思わず紫苑が立ち上がり窓の外を見る。

 

 

『『オセロット!!!』』

 

 

スネークと紫苑の叫びが重なる。

 

 

『ダメ!紫苑!!座って!』

 

 

EVAの忠告と同時に再び機体に揺れが起こると、

バランスを崩した紫苑は機材に頭をぶつけてしまいそのまま意識を手放してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紫苑が目覚めるとそこはロッジのようだった。

 

 

『起きたか、紫苑。』

 

 

ソファーに横たわる紫苑に向かってスネークが声をかける。

部屋にEVAの姿はない。

 

 

『EVAはもう行った。』

 

 

部屋を見回す紫苑にスネークが告げる。

 

 

『スネーク…全部終わったんだね…』

 

『そうだな。』

 

 

『スn 『ジャックだ。』 …え?』

 

 

『俺の名前はジョン。

 

 

 …お前には、

 

 

 

 ジャックと…呼んでほしい。』

 

 

 

体を起こした紫苑の隣に座るとそう告げた。

 

 

 

『紫苑、お前はこれからどうするんだ?』

 

 

(…私は…)

 

 

『あなたに付いていきたい。

 

 …ジャックの隣にいたいわ。』

 

 

 

真っ直ぐに見つめる紫苑に、

 

一つ残された右目を静かに閉じると、

 

 

そっと唇を重ねた。

 

 

 

 

アメリカに戻った二人は会見場所へとスネークの運転で向かっていた。

軍服に着替えたスネークはやはり英雄の風格を持った別人のように見えた。

 

 

『ここで待っていろ。』

 

 

紫苑の頭を撫でるとスネークは一人で会見場所へ向かった。

後部座席に置いた鞄には大切な人への供え物を用意した。

 

 

(…私はこれからを彼と生きる。

 

 

 そしてあの人の意志を継ぐと決めたもの。)

 

 

しばらく待つとスネークが車へと戻ってきた。

少し疲れたようにも見える。

入り口付近には年配の男性と若い男女がこちらを見ているのが見えた。

 

 

(あの人たちがジャックの仲間たち(FOX)

 

 

『行くぞ。紫苑。』

 

 

 

無縁墓地の墓標の前に二人は立っていた。

 

 

名前の代わりに

 

IN MEMORY OF PATRIOT(愛国者の記憶に)

 

と刻まれた骸のない墓標。

 

 

 

 

これはザ・ボスのためのものだ。

 

たった一人心の中、

 

デブリーフィングを行うスネークの隣。

 

 

しゃがんで手を合わせた紫苑は語りだす。

 

 

 

 

 

『貴女のおかげで素敵な家族に出会えました。

 

 

 あなたは私の誇りです。

 

 

 

 …お母さん。

 

 

 

 この世界に来て私は幸せです。

 

 

 

 

 

 どうか見守っていてください。』

 

 

 

敬礼をスネークがやめると紫苑も立ち上がる。

 

 

 

 

 

『スネーク、お願いがあるの。』

 

 

『なんだ?』

 

 

『私にCQCを教えて。』

 

 

『それはいいが…どうした?』

 

 

『一つでも多く彼女の残した足跡を残したいの。

 

 

 私の、いえ人々の記憶に。』

 

 

 

 

ここに二人の英雄が生まれた。

 

 

‐伝説の英雄 BIGBOSS‐

 

‐戦乙女 ブリュンヒルデ‐

 

 

二人の英雄譚はここから始まった。

 

 

 

 

 

これは

 

 

 

~彼女が彼女を救う物語~

 

 

 

 

 

 

一人の男が電話をしている。

 

KGB局長との密談を終えたGRU所属、オセロットである。

 

次に男は別の顔を見せる。

 

中国‐EVA‐に偽の賢者の遺産を掴ませた上に、

 

新たな火種(メタルギア)を持ち帰ったADAM。

 

 

GRU・KGBそしてCIAとのトリプルクロス(三重スパイ)としての顔である。

 

 

CIA長官との電話会談を終えたオセロットに声をかける者がいた。

 

 

 

 

『お疲れ様でした♪オセロット君。

 

 

 いいえぇ、…アダムスカ。』

 

 

 

その男は最後のコブラ部隊員となった、ザ・グリードであった。

 

 

『あなたの脚本(シナリオ)通りとはいきませんでした。

 

 

 私はあの少女がいるとは聞かされていなかった。』

 

 

『確かに、言わなかったねぇ…

 

 

 

 だって何でも知ってたらつまらなかったでしょう?

 

 

 知らぬが仏…ってね。

 

 

 

 でもまぁ一番大事なものはきちんと…

 

 

 

 

 

 ()()してくれたじゃないですか♪』

 

 

 

 

そういって二人はその部屋に置かれたベッドを見やる。

 

 

 

そこには安らかに眠る女性、

 

 

 

真の愛国者(ザ・ボス)が横たえられていた。

 

 

 

 

 

『あぁ、なんと美しいんだ。』

 

 

 

 

愛おしげにベッドに寝かされたザ・ボスの頬に手を添えるグリード。

 

 

 

 

『確かに…遺体は回収しました。しかし…』

 

 

 

 

『ネクロライズ計画。

 

 死者への冒涜とでも言う気かい?

 

 

 若いねぇ♪』

 

 

 

おどけて笑うグリードに苦虫をかみつぶしたような顔のオセロット。

 

 

 

 

『彼女のスペックは常人の域をはるかに超えている。

 

 

 死人を超えた超越者(スペリオール)となりうる、

 

 

 

 いやなるべき存在なんだよ!』

 

 

 

目を見開き叫ぶグリードはオセロットには狂人のように映ったかもしれない。

 

 

感情を表に出さないオセロットは黙って立ちすくむしかなかった。

 

 

 

『…あぁ…すまない。少し熱くなってしまったようだ。

 

 

 君には感謝しているよ、アダムスカ。』

 

 

 

穏やかな顔で礼を言うザ・グリードに敬礼を返すオセロット。

 

 

 

『…それでは失礼します。

 

 

 トキオカ博士…いえ…

 

 

 

 

 

 父上(отец)。』

 

 

 

 

 

オセロットが立ち去るのを見送りもせず、グリードはザ・ボスの頬や髪を撫で続けていた。

 

 

 

 

 

「よろしいんですか?大将。」

 

 

 

 

部屋の隅にはいつからかそこには幽鬼のように無精ひげの男が立っていた。

 

くたびれたコートに身を包んだ男はさながら世捨て人のようであった。

 

 

 

 

「それは、彼が意図的に紫苑を見逃したこと?

 

 

 それとも僕を(アチェーツ)と呼んだことかい?」

 

 

 

 

男の存在に驚きもしなかったグリードはザ・ボスから決して目を離さない。

 

 

 

 

 

「君には本当に苦労を掛ける。

 

 相変わらず義理堅く、

 

 優しい男だね…文治。」

 

 

 

 

「苦労だなんて…水クセェ

 

 

 大将には感謝してもしきれない恩を受けてる。

 

 

 それに…紫苑の事も…」

 

 

 

 

 

「…正直…君は反対すると思ってた。

 

 

 君…シスコンでしょ?」

 

 

 

 

「シスコンって…そいつぁ心外ですぜ…

 

 

 あいつは放っといても首突っ込んでた。

 

 

 だったら…鍛えてやったほうがいい。」

 

 

 

「…彼女の意志を継いだ彼女は、

 

 

 

 戦士として起ち上がった。

 

 

 

 ‐我々‐と同じ戦士としてね。

 

 

 

 ならば選ぶ道は勝利(VICTORY)の他には何もない。

 

 

 

 

 

 俺たちの勝利とは…」

 

 

 

 

 

 

「「運命への報復。」」

 

 

 

 

 

 

異口同音の言葉は新たなる時代(とき)を告げるもの。

 

 

 

 

 

 

 

煙草を一本取りだしてグリードに渡した(文治)は、

自身も銜えると火を点けて燻らせる。

 

 

 

 

「…しかしザ・ボスには度肝を抜かれました。

 

 

 

 こんな女がいるとは…なぁ大将…

 

 

 

 彼女に一体、何ィやらせるつもりなんで?」

 

 

 

問いかける男の口元は弧を描く。

 

 

 

「彼女は真の愛国者だ。

 

 

 しかし‐国‐だけに彼女はもったいないんだ。

 

 

 もっと大きなものに彼女は自身の愛を注ぐべきだよ。」

 

 

 

尋ねた男と同じ表情でつぶやくグリードは静かに募らせていた。

 

 

 

穢れのない

 

 

 

無垢な欲望を。

 

 

 

 

 

「彼女には率いてもらう。

 

 

 僕の、いや俺たちのチーム。

 

 

 運命への報復を望む者達(ディスティニーアベンジャーズ)旗手(キャプテン)となるんだ。」

 

 

 

 

 

もう一つの戦いが今動き出す

 

 

 

 

「…キャプテン・パトリオット…」

 

「ネーミングセンスは相変わらずだね♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   その(明日)の色は

 

 

 

 

 

    ゆきゆきて青し




この曲の歌詞の通りヒロインとスネークに相継がれたものは一体何なのか




時代と戦う男と



時代を超えた女



BIGBOSSの最後はMGSファンなら知っての通りでしょう



ならばこのヒロインはどこへゆくのか



ヒロインは「夢見てなどいない 只 成した丈」です
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