『というわけなのよ。ジャック。』
『いや、という訳と言われても納得出来るわけないだろう。』
紫苑曰く、町に買い出しに出たときにあまりにも自分にそっくりだったので声をかけた。よくよく話を聞くと実は遠い遠い親戚だった! しかも悪いやつに騙されて家を追い出されたところで、じゃあうちにおいでよ♪
『ってそんなわけないだろうが!』
『ジャックがノリツッコミ!』
とぼける紫苑に頭を抱えるスネーク。
『わたしメイク落としてくるわね♪』
我関せずといった態度で部屋を出るレイブンを忌々しげに見送ると、スネークは紫苑に言い聞かせる。
『紫苑。この際、怪しい人物かどうかはおいておく。何故俺に隠し事をするんだ!!』
『…ごめんなさい。隠すつもりはなかったの。ただ何て説明すれば良いのか…でもレイブンは大切な友人なの。』
腕を組み眼を閉じて黙りこんだスネーク。
『ありがとう紫苑。後は私が彼に話すわ。』
メイクを‐落とした‐レイブンが部屋に戻ってきた。
赤い髪を肩の上程度、丸いたれ目な紫苑と比べると切れ長な目つきで純日本人というよりは欧米よりの顔だちをしている。冷静によくよく見れば紫苑とは違うように‐思えてくる‐
見事な変装だ。
『それでは、はじめまして‐BIGBOSS‐。私は、レイブン。特技は変装で職業は…そうね、コンサルタント諜報員ってところかしら。昔はイスラエル諜報特務庁にいたの。』
『‐モサド‐か。目的はなんだ。』
『伝説の英雄の命…って言ったら?』
『レイブン!?何を!?』
蠍のような毒のある言葉に驚いて立ち上がる紫苑をスネークは片手で制した。
『二人で話したい。ついてこい。』
心配げな紫苑を残して二人は部屋から出ていった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~
『もう一度聞こう。目的はなんだ。』
テラスに出たスネークは葉巻に火をつけながらレイブンに問う。
先程よりも落ち着いた口調ではあるが全身から放たれる空気は研ぎ澄まされている。
僅かな虚偽も許さない蛇の睨みに怯む様子はレイブンには見られない。
むしろその眼には残酷な冷静さが宿っている。
『-モサド-に居た頃、とある任務に失敗したの。いいえ、-させられた-。』
『外務省スパイの反乱-内部抗争-か。』
『居場所を失った私に紫苑は-友達-という居場所をくれた。あの子は私の全てになったわ。』
うっとりと陶酔した様子のレイブンは続ける。
『紫苑は私が守る、この世のありとあらゆる苦痛と悲哀から。そして断言するわ。』
見惚れるような笑顔をレイブンはスネークに向ける。
『世界は必ず彼女を悲しませる、その時が来たら私はあの子以外の全てを-更地に変えるわ(Onslaught)-』
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しばらくすると部屋に戻ってきた二人。
スネークからは微かに煙草の煙がした。
『お前を信じよう紫苑。この女がお前に危害を加えることはない。』
『スネーク…ありがとう。-私達-を信じてくれて…』
『ようやく仲間認定ってところかしら?』
『違うわ…-家族-よ。』
にっこりと笑う紫苑に自然と微笑みが広がっていく。
たとえ-蛇と蠍-のような二人でも、彼女がいれば-家族-になれる。
彼女自身の忠が傷を負った戦士たちを引き寄せていく。
彼女のヴァルハラ-宮殿-へと。
次の戦いの為に。
『そうだ、レイブン。ジャックが帰ってきたから寝室を増やさないといけないわね。』
『わたしはいいわよ。紫苑と一緒のベッドに寝るから問題ないわ。』
『!!だめだ!!そんなことは俺が許さんぞ!!』
『あら?伝説の英雄さんは女性を床で寝させるおつもり?』
『?!だめよジャック!!そんなのひどいわ!!』
『いや…そういうわけでは…』
『よかったわね紫苑。‐お父さん‐の許しが出たわよ。』
『なんだか修学旅行みたいね!』
『~~~ッッッ!お前は少し危機感を持て!!』
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『お久しぶりです、DR.T。』
『元気そうですね~ジーン君♪FOXには慣れましたか?』
怪しげな地下の一室に二人の男がいた。
軍服を着こみ威風堂々とした男と白衣を羽織りひょうひょうとした態度の男。
『偉大な英雄を-相続-するんです。すでにFOXは私の意のままです。』
『フフッ♪相変わらず自信家ですねぇ~。』
『…あなたは変わりましたね。THEBOSSが死んでからあなたの心が分からなくなった。』
詰問するような声にも白衣の男は笑みを深めるだけだった。
『あらら。幻滅しちゃいましたか?』
『いいえ。むしろ英雄たるカリスマ性を隠さなくなった。この私が膝をつきたくなるほどに。』
突如空気が変貌した。
二人の間に重苦しい奔流がおこる。
白衣の男はゆっくりと口を開く。
先程までとはまるで別人のように。
『…俺は戦士以外は必要としない。貴様にその資格があるかはいずれわかるだろう。』
『裏切らないと約束しましょう。あなた方、-怪人連盟-の期待をね。』
鉛のような空気は霧散し再び平穏な空気が流れ出す。
『…頼もしいですねぇ~。そのうち君にプレゼントを用意しましょうか。』
軍服の男はその言葉には答えず、部屋を退出していった。
入れ替わるように二人の男が部屋に入ってくる。
『お呼び立てして申し訳ない。教授(プロフェッサー)、博士(ドクター)。』
教授と博士と呼ばれた二人の初老はにこやかに返事を返す。
『気にしないでくれ。手のかからない生徒に頼られるというのは存外気分のいいものだ。』
教授が優しげな笑みをこぼすと
『Wow!全く同感だ!君は何でも自分でやりたがる。たまには友達‐homy‐を頼ってくれてもいいだろう?』
肩を竦めて博士がおどけてみせる。
フッと空気が和らいだ気がした。
『今回二人をお呼びしたのは紫苑についてです。彼女にミスティークが接触しました。』
『?!…そうか…君の力で彼女にレイブンを引き合わせたということか。』
教授は一瞬驚いたようだが悲しいような、安心したような複雑な感情を見せた。
『お互いの存在が必ず必要になると感じたからね。あなたに相談をしなかったことは謝罪します。』
『いいや。私ではあの子を救えなかった。彼女にチャンスをくれたことを感謝したいくらいだよ。』
『Hell Yeah!(やったな!)ところで私への用事はなんなんだい?』
パンと手を打って自分を呼んだわけを尋ねる博士。
『…実は近々紫苑は新たな試練を迎え入れます。しかしそれを切り抜けるにはあまりにも力が足りない。』
『Okie Dokie!(いいじゃないか!)私に新しい生徒を紹介してくれるのかい?』
『博士は彼女にはまだ早いです。しかしあなたの秘蔵っ子にもそろそろ出番が必要ではないでしょうか?』
瞬間、時空が凍った。
先程の重圧とは比べ物にならない圧倒的な圧力。それはもはや質量すら伴なっているように感じられた。
『あの子を奪おうというのかね?』
『それは違う。彼女は自分で御旗を選択すべき時期なのです。』
『あの子の中にはミーシャもいる。私に彼女は必要だ。』
『だからこそです。俺とて紫苑を失う気はない。彼女の試練は俺たちの試練でもある。我々はコインの表と裏なのだから。You know what I'm saying?(わかるだろう?)』
目をつぶり黙り込んでしまった博士を真っ直ぐと見つめる白衣の男。
『Oops…私もまだまだかな。』
博士が短く息を吐くとにやりと笑う。
『エリックとのチェスにも飽きてきたころだ。あの子ともう一度やりあうのも一興か。』
『ありがとう博士。しかしそうなると彼女にも名前をあげないと…』
するとそこまで静かに見守っていた教授が静かに口を開く。
『アイリーン。‐アイリーン・アドラー‐は如何かな?』
『『Erik RULEZ(エリック最高)』』
エリックと呼ばれた男は照れたように口を釣り上げる。
『ハンニバルほどの感性の持ち主に褒められるとは、恐縮だよ。』
そして新たな歯車が回りだす。
BIGBOSSとミスティークの相性は最悪間違いなし
特にエリックに捨てられた後は共通点多すぎで絶対無理だろう
そしてパーティ追加