エルザ達には心を読み、未来を予知する力がある。その力を人は畏れ、利用する。
自身を戦争の道具にされることに嫌悪しながらも抗うことはできなかった。
また彼女にも恐るべき存在が二人いる。
ジーン。
FOXの中心人物でウルスラをも凌駕するESP能力を持つ男。その力には歴戦の兵士も膝を折るだろう。
そしてもう一人。
相続者計画や絶対兵士計画に携わる謎の男。若くして一流の科学者と言われる自身ですら遥かに及ばぬ知識、戦闘能力はあのジーンの教育を担当したことからもその高さがうかがえる。
彼について知っている事は他の人間と変わらない。
彼の、トキオカ博士のことはウルスラはおろかあのジーンですら読み取ることができない。
そしてまた、彼から予期せぬ事を告げられた。
スネークから聞いた少女、紫苑の存在。
『まさか貴方の関係者だとは思いませんでした。』
『おやぁ?紫苑ちゃんの事を知ってるんですか~!』
『…スネークからお名前だけは…』
この男に対して隠し事は無意味だと理解しているエルザは素直に答える。今の質問もどうせ自分が知ってることも分かった上でしているのだから。
『あらぁ~!世間は案外狭いものですね~!』
…いちいち癪にさわる男だ…
『…それで…彼女を私に紹介するとは?貴方ほどではありませんが私も忙しいんです。ご用件は手短にお願いします。』
『つれないですね~。しかしお手間は取らせませんよ。実は彼女達を半島の東側に連れていって欲しいのです。』
『!?…十分手間です!!私がどうやって連れていけると言うのですか!!』
『大丈夫。私に名案があります♪』
…私はこの男が大嫌いだ…
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『おい、知ってるか。あちこちで爆発騒ぎが起きているらしいぞ。』
『あぁ。鉄橋から増員を出すんだろう。そのうちここでも起きるんじゃないか。』
『そのお話、詳しく聞かせていただけるかしら♪』
談笑していた二人の兵士は、親しげにかけられた声に振り向くと妖艶に微笑む女-アイリーン-がすぐそばにたっていた。
『聞こえなかった?私は-貴方達の話が聞きたいと言ってる-のよ。』
『…ッ!?か、各地の輸送トラックや武器庫が次々と爆破されているようなんだ。』
『そ、その対応に一番警備が厳重な鉄橋から増員が派遣されるらしいんだ。』
『そう。どうして鉄橋が一番警戒されているのかしら?』
『そりゃ、鉄橋は川で分断されている半島の東西を繋ぐ唯一の通路だ。殆どの重要施設が東側に在るんだから警備が厳重なのも当然だな。』
ペラペラと重要機密を-自ら-話し出した兵士達を満足げに見るアイリーンは続いて鉄橋の詳細な所在地を聞き出した。
『ありがとう。あなた達、もう帰ってもいいわよ。それと…このことは他言無用よ。』
『『了解!!』』
一糸乱れぬ敬礼を残し二人の兵士は去っていった。
『『…今の何?…』』
『親切なのよ。』
アイリーンの情報収集を見ていた紫苑とトップが目を開いて驚いているとアイリーンはイタズラ気にウィンクをよこしてくる。パーセフォニーはそんなやり取りをぼんやり眺めていたが彼女たちの向こう側から向かってくる人影を捉えた。彼女の気配に残りの三人も近づく人物に気が付いた。
『あなたたち、こんなところで何をしているの?』
紫苑たちに声をかけてきたのは白衣を着た少女だった。
慌てたように紫苑が言い訳をする。
『え?!あ、いやその…』
『研究員は-半島の東側にある工場-へ移動を命じられているはずよ。』
『そ、そうでしたね!!』
呆れたように少女は肩を竦めた。
『大方サボっていて置いて行かれたんでしょう?私で最後だから…車を運転してくださる?』
『わかった。あたしが運転するよ。』
トップが答えると少女は満足そうに頷く。
彼女は六人乗りの軍用車へ紫苑達を案内した。
『とりあえず鉄橋に向かってちょうだい。場所はわかる?』
『えぇもちろん。さっき-聞いた-わ。』
アイリーンの蠱惑的な微笑みを冷めた目で受け流すと少女は車へと一人で乗りこむ。
『…いったいどうなってんだい?』
『わからないけど…東側に行けそうだし…』
『あなたは何があっても-私-が守るわ。』
『-私達-よ、パーセフォニー。』
『とにかく…行きましょう。』
4人は車へと乗りこむと鉄橋へと車を走らせる。
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『港には俺たちの探しているものがあるらしいな。』
『まぁ現時点では何もわからないが、油断はするなよ。女のあまい言葉には何度も痛い目にあってきてる。あんたもだろ?』
『フフッ…お前と一緒にするなロイ。』
陽動作戦のおかげで無事に鉄橋を突破したスネークとロイは港へとやってきた。
彼らに賛同する数名のソ連軍兵士もその後ろに付き従う。
『スネーク。周囲の敵兵はすべて無力化した。中に潜入しよう。』
おそらくリーダー格であろう男がスネークに声をかける。
無言でうなずいたスネークは停泊中の船内へと潜入を開始する。
そこで彼は探し物に出会う。
そして…
-彼を探す人達-にも…
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時は少しさかのぼる。
鉄橋に差し掛かった紫苑達は鉄橋の検問に止められていた。
『そこの車!止まりなさい!』
銃を携行した二人の兵士に呼び止められた一行は静かに停止する。兵士の一人が運転席に近づいてきて、窓をたたく。
『こんなところで何をしている?所属は何処だ?』
『彼女たちは私の部下です。』
後部座席から聞こえてきた声に兵士が視線をやると少女が身を乗り出して顔を見せてきた。
『…?!エ、エルザ主任!!こ、これは失礼いたしました。』
『…それで…私たちはここを通っても?』
『は、はい!おい!主任をお通ししろ!!』
慌てたように兵士たちが検問を解除すると紫苑達は悠々と通過した。
『あなた、FOXの一員なの?』
鉄橋から離れると紫苑は少女、エルザにそう尋ねた。
『…何の事かしら?』
『あら、とぼけなくてもいいじゃない?紫苑やトップは変装しているからまだしも私とパーセフォニーは軍人や科学者には到底見えない‐ドレス‐服装よ。…大方、誰かに指示でもされたんじゃないかしら?』
今まで黙って助手席にいたアイリーンが面白そうにエルザをからかう。
トップは運転しながらも何か動きがあれば即座に対応できるように神経を研ぎ澄ます。
『それでも…私たちを助けてくれたわ。ありがとう、エルザ。』
後部座席でエルザの隣に座る紫苑がその手を取って感謝の言葉を告げる。
力‐ESP‐を使うまでもなく心から言っていると伝わるその言葉にエルザは驚いた。
彼女の言葉に自分達‐ESP能力者‐とは違う不思議な魅力の存在を感じ取ったからだ。
そこでエルザは初めて正面から紫苑を見つめた。
自分と同年齢くらいの少女の眼に自分が映っている。
それがたまらなく…
ZAAAAAAAK!!!
突如エルザは冷水を浴びせられたように背筋が凍った。それは隣に座る紫苑も同じようだった。
『『…止まって!!!!』』
二人の声にトップが前方を見ると道路の真ん中に男が立っていた。
慌ててブレーキを踏むと巻き上げられた砂煙で視界が塞がれた。
『全員降りろ。』
運転席の窓から突き入れられたライフルとともに響いた声は凍るような声だった。
『これはこれは。今日は客人の多い日だ。ねぇエルザチーフ。』
車両から全員を降ろした男は頭に無数の針を刺し、全身から冷気を立ち上らせていた。
『……パイソン…』
ポツリと呟いたエルザにニヤリとパイソンは嗤う。
『ジーンにあなたを連れてくるように言われている。ご同行願いますがよろしいかな?』
慇懃に問いかけるパイソンにエルザは苦々しく表情をゆがめる。
『…そちらの方々はあなたの御客人でしょうかね。』
車から離れて手を挙げさせられていた紫苑達に目をやると静かに銃口を向ける。
『…?!…そうよ。友人たちを‐空港‐まで送るところだったの。』
『そうですか。しかしジーンには「最優先で。」と言われている。寄り道をしている暇はありませんな。』
『それなら仕方ないわ。‐ここから空港までは一本道‐。歩いてもたどり着けるわ。そうよね、紫苑?』
何かを訴えるエルザの言葉に紫苑は頷く。
『そうね。‐仕事‐なら仕方ないわ。エルザ、私達なら気にしなくていいよ。』
挙げていた手を下ろしながら紫苑はにっこりとエルザに笑いかける。
『……いいご友人をお持ちだ。さぁ行きますよ。』
そういうと意味ありげな視線を残し、紫苑達の乗ってきた車でエルザとパイソンは去って行った。
二人が去るとトップは一つ息を吐き体を弛緩させる。
『…まったく。とんでもない奴にあっちまったね…』
『足も取られちゃったことだし…さぁこれから如何されますか?紫苑。』
『…エルザは‐空港‐に行かせようとしてるみたいだった…とにかく行ってみましょう。』
『紫苑が行くなら私は何処だっていいわ。』
4人は顔を見合わせると長く続く道を歩き出した。
再会の時は近い。
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けたたましいサイレンが鳴り響く。
国内トップクラスの厳重さで知られるその空軍基地は前代未聞の大混乱に陥っていた。
政府が極秘開発中だったステルス戦闘機F/A-28が何者かにより強奪されたのだ。
国家機密の塊をたった一人の‐侵入者‐に奪われたのだ。
『今行くわよ、紫苑。』
青い鴉が漆黒の闇に消えていった。
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O★HA★NA★SHIタイム
ちなみにアイリーンは黒のカクテルドレス
パーセフォニーは赤のぼんてーじです
科学者(笑)さすがに無理がありますね
それでも兵士は上司に言われたらそんなもんかとなります
まぁFOXには変人しかいないからセーフ