『助かったわ。どうもありがとう。』
アイリーンが声をかけると二人の兵士は美しい敬礼を残して歩き去っていった。
『…トラックを譲ってくれるなんて、随分と親切な兵士だこと…。』
呆れた様にトップが言うとアイリーンはシニカルに笑う。
『何なら男の扱い方をレクチャーしましょうか?』
なぜか妙に牽制しあう二人の間に紫苑が割って入る。
『やめてよ、二人とも。今は空港に急ぎましょう。』
紫苑が説得すると途端に険悪な空気は霧散する。そのうえなぜか二人とも紫苑の頭を撫でていく。
子ども扱いをされているようで不満げに頬を膨らませると後ろからパーセフォニーがつついてくる。
戦場とは思えない程和気あいあいとしながら、エルザ達と別れた一行は譲ってもらったトラックに乗り込むと空港を目指して走っていた。
『-空港-ねぇ…脱出しろってことかねぇ。』
『それは難しいわね。今の情勢では悪手も悪手、鎮圧か少なくとも武装蜂起の目的は掴まないといけないわ。』
『…スネークと合流せずに帰るなんてできないよ…』
寂しげにこぼした紫苑にそっと寄り添うパーセフォニー。
『……アイツ…近すぎないか?』
『…後で厳重注意しとくわ……』
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SNAKE side
港に潜入したスネークは死んだと思っていた、かつての戦友の姿を見た。
さらにゴーストと名乗る人物からの情報によりFOXの目的が歩行式の核搭載戦車、メタルギアによるソ連への核攻撃であると知ったスネーク達はその暴挙を阻止するために行動していた。
彼らは核弾頭の搬出を防ぐため貯蔵施設の爆破を画策した。
厳重な警備をくぐりぬけ機械室の破壊を試みたスネーク達の前に再びあの男が現れた。
かつての戦友、数少ないスネークの親友。
男の名はパイソン。
『何故だ、パイソン。あんたほどの男が何故ジーンの反乱に加担する?』
『…救いだよ、スネーク。』
そこで男が語ったのは、死に限りなく近づいた自分をCIAが生かした理由、自分達‐CIA‐をスネークが裏切ったときの刺客として自分を生かしたという業。暗殺任務ばかりを与えられ、悪夢にうなされる日々からの解放を望み、敵同士として戦場で会うことを願ったことを。
パイソンの体から放たれる冷気によって著しく視界の悪い戦場での戦闘は壮絶なものとなった。
冷気の鎧をまとうパイソンには触れることすらできず、かといって親友を殺すことはスネークにはどうしてもできなかった。明確な殺意を持ったかつての親友の攻撃に身を隠し続けることしかできなかった。
『懐かしいなぁ…ハハッ…』
『…あぁ…訓練の日々を思い出す。』
『フフッ…俺はあのころよりも‐強く‐なったぞ…』
かろうじて致命傷は避けているものの全身に傷を負ったスネークはパイソンの言葉に思い出していた。
あれは確か…
(…ねぇ、知ってる?スネーク。「強さとは何か」)
(…なんだ。なぞなぞか?)
(「強さとはわがままを貫き通す力」…あのころよりも私は強くなったけど…ザ・ボス‐お母さん‐に勝てるかなぁ…)
(さぁな…)
そう…
一度だけ、手合せの後に紫苑がこぼした事があった。
俺の心の傷は深い。同様にあの子にも…
俺はわがままを貫き通せるだろうか…
またあきらめるのか?
『…いや。俺はあきらめない!』
物陰から飛び出したスネークはパイソンに向けて引き金を引く。
英雄の気迫に押されたパイソンも一瞬遅れて引き金を引く。
決着には一瞬あれば十分だった。
冷却スーツに亀裂の生じた為に行動不能に陥ったパイソンは崩れ落ちた。
『さすがだな、スネーク。…これでもう誰も殺さずに済む…』
死を覚悟したのか静かに語りだす。
『俺に真の救いを与えてくれるのは、やはりお前だったようだ。』
『もういい、喋るなパイソン。』
そういうとスネークは亀裂の入ったスーツに両手を押し付けた。
腕が凍りつくと制止するパイソンにスネークは不敵に微笑む。
『負けが込むとすぐに熱くなるのは、昔と同じだなパイソン。』
『なに?』
『あんたには払ってもらってないぽーかーのつけが貯まってる。まだ死なれちゃ困る!』
スネークの言葉にパイソンは笑い出す。
『やはり、お前は世話の焼ける男だ。』
そういうと親友は語る。
『国家の正義も、敵に対する憎しみも、俺たち兵士の救いにはならない。
兵士には英雄が必要なのだ。
命を懸けて忠誠を尽くすに足る兵士の英雄が。
仲間たちの命を預かり、その重さに耐えられるか。
スネーク。
…それができなければ…
お前はジーンに勝てない…
何も守れないぞ…』
スネークはその問いには答えず負傷したパイソンを抱えると施設を後にした。
貯蔵施設から脱出したスネーク達はロイと次の作戦の相談を行っていた。核の動きを見失った今、本体その物-メタルギア- の捜索に切り替えたのだ。
『確か政府高官がメタルギアの輸送に関わっていると言っていたな。奴ならメタルギアのありかを知っているんじゃないか?』
『確かゴーストはそいつが-空港-で怯えているとか何とか…だが肝心の場所が…』
『場所ならわかるぞ、スネーク。』
『パイソン?!もう起きて平気なのか?』
『本当に手のかかるボスでね。おちおち寝てもいられない。』
『フフッ…本当に空港の場所が分かるなら…教えてくれパイソン。』
Side out
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『まったく…いつまで奴のお守をしなきゃいけないんだ。』
『そういうなよ。奴は俺たちの計画を知りすぎている。だからここに隔離しているんだろう。』
『…妙なボディガードも勝手にぞろぞろ連れてきやがって…』
『まぁ政府高官だからな。俺たち下々の人間とは住む世界が違うんだよ。さぁ交代の時間だ、管制塔に戻るぞ。』
コンテナの陰から二人のFOX隊員の会話を盗み聞いていた紫苑達は彼らが持ち場に戻ると静かにその場を離れた。
『こりゃまたいいことを聞いたね。』
『えぇ。どうやら重要な情報を持っていそうな人間がここにいるみたい。』
空港に辿り着いた紫苑達はあまりの警備の厳重さを見て、ここに何かあると睨み探りを入れていたところへ重要な情報を手に入れた。ここに軟禁されている人物に接触するために潜入を開始した。
『アイリーン、何か作戦はあるかい?』
『そうね…私のマインドコントロールはFOX隊員には効きにくい可能性があるから説得は難しいわ。しかも管制塔はかなりの警備がなされている…彼らを何とかしないといけないわね。』
『…二手に分かれましょう。一方が電源を落して、もう一方がそれに乗じて管制塔を制圧するのはどうかしら?』
紫苑が提案するとアイリーンは少し思案して頷いた。
『強引だけどそれしかなさそうね。それならチーム分けは私とトップで電源を、紫苑とパーセフォニーで管制塔の制圧に向かってちょうだい。トップ、紫苑に無線と銃を渡してあげて。』
『了解したが…二人は銃は使えるのか?』
『紫苑は相棒以外、あまり好きじゃないわ。私が持っておくわ。』
無線を持った紫苑と銃を受け取ったパーセフォニーが頷くと四人はそれぞれ夜の闇へとその身を踊らせていった。
~トップ・アイリーン組~
《こちらトップ。周辺の敵兵士を無力化、機械室へ潜入するよ。》
《了解。こちらはもうすぐ管制塔に辿り着きそうよ。》
《気を付けとくれよ。なんだかやけに静かな気がする。》
《トップもなの?パーセフォニーも同じことを言っていたわ。》
《そうなのかい。とにかく慎重にね。》
別働隊との無線連絡を終え、電力遮断のために動き出した二人は空港の機械室へと侵入していた。数人のソ連兵士が巡回していたがトップが気絶させて捕縛、一ヶ所に集めておいた。
『見事な手際。さすがはグリーンベレーね。』
『そういうあんたは少し働いたらどうだい?』
『私は頭脳労働担当なの。体を動かすのはあなたに任せるわ。』
軽口を叩きあう二人はまるで古くからの友人のようになっていた。
大小さまざまな機械がある機械室の中で二人が目を付けたのは配電盤だった。
『どうやらこれのようね…』
『あぁ。こいつを破壊して…ン?これは…』
トップの目線の先には配電盤の隙間から伸びる小さな違和感。
キラキラと光るそれは、
『…?!まさか?!伏せろアイリーン!!』
『え?』
トップが配電盤に触れようとしたアイリーンを地面に押し倒した瞬間、配電盤が突如爆発を起こした。
『…?!これは…ワイヤートラップ…』
アイリーンが衝撃で朦朧とする頭で呟くと自身に覆いかぶさるトップに気付く。
『…トップ?!起きてトップ!』
『…だ、大丈夫…ちょっとくらくらするだけだ。』
爆発自体は小規模なものだったのかトップは小さな切り傷をいくつか作ってはいるが作戦行動には支障はなさそうだった。
『それにしてもこんなところにトラップだなんて…よく気付いたわね。』
自身に付いたほこりを払いながらアイリーンが立ち上がるとトップが苦み走った顔で銃を抜き放つ。
『あれはよく知ってるトラップだ。あいつがここにいるなら…必ず…殺す…!!』
敵意をむき出しにしたトップに驚くアイリーンの鼓膜を不快な男の声が刺激する。
『吾輩を殺すとは不敬罪だ!トップ少尉!!』
二人が声のするほうに振り向くと暗闇の中にロッドを携えたカーキ色の軍服に赤いベレー帽姿の男が立っていた。
『トップ少尉!貴様に問う! 真の統率者とは誰かッ!……即答せよッ!!』
傲岸不遜な態度で声を張り上げる男を殺意に満ちた目でトップが睨む。
『…少なくとも…あんたじゃない!…ロレントォ!!!』
Top・Irene VS Rolento
fight!
~紫苑・パーセフォニー組~
トップとの無線を終え、管制塔を目指す紫苑とパーセフォニーは危なげなく目的地へと近づいていた。何故なら二人はただの一度も敵兵に遭遇していないからだ。その代わりに数台の監視カメラが仕掛けられていたが、感の鋭いパーセフォニーが全て早期に察知し破壊していた。
『パーセフォニー達の言う通りやっぱり変ね…』
気味の悪い静けさに辺りを見回しながら紫苑が不審に思う。
『こちらを見ている…』
『え?』
唐突に足を止め、一人で呟いたパーセフォニーに紫苑が声をかける。
『ここに入ってからずっと…あれを通して。』
そう言ってパーセフォニーが指をさしたのは、
『監視カメラ…また?いくらなんでも多すぎない。』
『目を増やしたの。私たちをここへ間違いなく招待するために。』
『その通りだ、御嬢ちゃんたち。』
威厳と品位に満ちた声が響くとグレーの迷彩服の上からコートを羽織り、赤いベレー帽をかぶった男が悠然と姿を現した。不敵な笑みを浮かべながら乗馬鞭のようなものをその手で弄んでいる。男がその鞭をひと振りすると音もなく表れた同じ色の迷彩服と帽子を纏った五人の武装した兵士が紫苑達を包囲してしまった。
『…あなた達、FOXじゃないわね。』
『私はゼル・コンドルブレイブ。彼らは私の選りすぐりの部下だよ。』
男、ゼルが誇らしげに自分の手勢を見回す。
『彼らは傭兵…金で雇われたようね。』
男たちを観察していたパーセフォニーがそう評するとゼルは肩を竦める。
『さるお方からの依頼でね。君たちを保護しに来たのだよ。』
『保護?誘拐の間違いじゃないの?』
『フフッ…とにかく…我々はプロだ。相手が誰であろうと最善を尽くすのみ。…行くぞ!』
手にした鞭を紫苑へと向けるゼル。
戦いの火ぶたが切って落とされた。
KICK THEIR ASS!!
中ボス戦。一つはもう終わっちゃったけど
軍人フェチにはたまらない悪役三人。
タイプが違うのに胸が高鳴ってしまう不思議。
かませ?いいえ、愛です。