パイソンから齎された情報により核発射施設の外観や警備状況が明らかになった。地下サイロ式の発射施設はその入り口を巧妙に隠蔽されており侵入ルートが不明なことと、絶対兵士をはじめとした精鋭部隊が配備されていることが分かった。
『とりあえず潜入してみて、入り口を探ってみるか?』
なんとも豪快?なロイの作戦にアイリーンがため息をつきながら首を振る。
『貴方よく今まで生きてたわね?…もう少し臆病-チキン-になりなさい。』
呆れたように言うアイリーンに頬を引きつらせるロイ。
『…彼らが隠しているなら彼らにその場所を教えてもらえばいいのよ。』
『教えてもらう?片っ端から尋問するのか?』
『少し黙ってなさい鳥頭。…まず隊を二つに分けるの。一つは襲撃チーム、もう一つは潜入チーム。一方が施設を襲えば彼らは増援を-地下-から出すわ。…そこが入口よ。』
『…しかし警備は厳重だ。絶対兵士が出てきたらどうするつもりだ?』
パイソンが懸念を口にすると自信ありげに答える。
『目的はあくまでおびき出すこと。彼らが出てきたのなら引き付けるように尻尾巻いて逃げるのよ。』
『なるほど。陽動も同時に行うわけか。』
納得したようにスネークが言うとアイリーンは微笑む。
この作戦を決行するために話し合いを始めた一同だが、
ある問題に直面した。
BAN!
『どうして私が行っちゃいけないの?!!』
机を叩いて立ち上がった紫苑がスネークに食って掛かる。
『何度も言わせるな。危険な場所にお前を連れて行く気はない。』
『私は戦えるわ!!分かってるでしょ?!』
『………お前ではジーンに勝てない。』
信頼していたスネークからの言葉に唇を噛んでテントから走り去ってしまった。
トップやロイは紫苑を呼び止めたが、足を止めることはなかった。
『ちょっとアンタ!!そんな言い方無いんじゃないのかい?!』
『そうだぜスネーク。だいたいあんたが鍛えたんだろう?』
『…とにかく紫苑は戦場に出さない。潜入チームは俺が、陽動隊はパイソンが率いろ。メンバーはそちらで決めていい、2時間後出発する。』
そう言い残しスネークもその場を立ち去った。何とも言えない沈黙が空間を支配する。
静寂を破るように男が立ち上がった。
『ジョナサン、紫苑と話してこい。スネークの方は俺が行く。』
そういってパイソンはテントを出ていき、指示を受けた兵士もそれに続いた。
ロイも出発の指示を部隊に伝えるために出て行った。
残されたアイリーンとトップは顔を見合わせて深くため息をつく。パーセフォニーはフラッと出かけてしまったので会議にそもそも参加していない。
『悪い予感が当たっちまったのかねぇ…』
『…さぁどうかしら…』
二人が立ち上がろうとするとテントにパーセフォニーが入ってきた。
『もう終わったの?それなら一杯やらない?』
どこから手に入れたのかその腕にはワインのボトルが三本抱えられていた。
二人はもう一度深くため息をついた。
~~~~~~~
俺は祖国に見捨てられた。
生きる意味を見失った俺たちは与えられた-正義-に飛びついた。
だがそれが間違いだと気付いた。
気づかせてくれた男がいた。
その男は英雄、
BIGBOSS。
正義の意味は時の流れによって変わる。だからこそ、正義でもなく、国家でもなく、自分に忠を尽くせと。
俺は今…一人の兵士として彼に従っている。
そんな彼が話してくれたことがある。この地に共に攫われた、大切な少女の事を。
〈スネーク、あんたに家族はいるのか?〉
〈…家族かどうかはわからないが…一人いる。紫苑という女の子だ。〉
〈何だ彼女か?へぇ~あんた意外と年下趣味なのか。〉
〈フッ…やめてくれジョナサン。…あいつは特別なんだ。紫苑がいるから…俺は今日まで生きてこれた。紫苑は俺を…救ってくれる。〉
照れたように笑う英雄のそんな一面を見てジョナサンは安心した。彼の人間臭いところが共に戦う戦友としての絆を強めた気がした。だからジョナサンにはわかるのだ。危険な戦場にそんな大切なものを追いやりたくないと、願う気持ちが理解できた。
隠れ家近くの小高い丘の上に少女、紫苑の姿を見つけた。膝を抱えて夕日を見つめる紫苑に近づいたジョナサンは声をかける。
『紫苑…君はスネークの気持ちが分かっているはずだ。…俺だって大切な人を戦場に追いやりたくない。』
優しく声をかけるジョナサンを紫苑が振り向き見つめる。意外にもその顔は大人びていた…実際大人な訳だが。
『…もちろん。でもそれは私も同じ、スネークは私の気持ちを分かる必要はないの?』
ジョナサンは驚いた。てっきりふてくされていたり、泣いているものだと思っていたが彼女の眼には強い光が宿っている。この子はいったい…
『私は自分に忠を尽くす。』
『…?!それは…』
『…私は…誰も死なせない。今度こそ自分で戦って、救って見せる。』
『…一体誰を…』
『大切な人。スネークだけじゃない、ここで出会ったすべての命を救いたいの。そのために力を得たの、そのために強くなりたいの、私は………そのために…ここにいるの。』
綺麗事…
そう片付けるには余りにも眩しい答え
ジョナサンは繭の中の英雄を見た
~~~~~~
『まったく…ガキかお前は。』
『……紫苑は俺の全てだ…あの子がいたから…』
『ならきちんと伝えろ。ダメだダメだの一点張りじゃ納得しない。…本当に世話の焼けるやつだな。』
呆れるパイソンにスネークは返す言葉がなかった。戦う力があるのはわかっていた。なんせ自分が鍛えているし単純な戦闘技術ならFOX隊員ですら相手にならないだろう。しかし戦場に絶対は無い。命の保証などどこにもないのだ。あの子の身に何かあったら自分は生きていけないだろう。
思いつめた表情のスネークにため息をついたパイソンは背中を向けた。
『…紫苑は…俺たちとは違う…ここじゃなくても生きていけるんだ。』
一瞬足を止めたパイソンはそれでも何も言わなかった。
~~~~~~
日が落ちると行動を開始したスネーク達。
襲撃隊となったパイソンが率いるチームは先に出発しスネークはジョナサンを含めた数名の隊員と装備の確認をしていた。
『……スネーク…』
『……………紫苑…』
自身を呼ぶ声にスネークが振り返ると紫苑が真っ直ぐにこちらを見ている。
あんなに愛おしかった紫苑の目が-彼女-の目と重なってしまい、思わず顔を背けてしまった。
『スネーク…どうか無事に帰ってきてね…』
『…!!あぁ、おとなしく待っていろよ。』
紫苑の頭を一撫でしてスネークは戦場へ向かっていった。
力強い言葉と手の暖かさとは裏腹に紫苑の胸には不安がよぎった。
(…ねぇ…どうして?…どうして私の目を見てくれないの?)
小さな歯車の軋む音が聞こえた
~~~~~~
隠れ家で待つ紫苑達の元にロイが駆け込んできた。
『スネークとの連絡が途絶えた…』
動揺の走る兵士達に静かな声が響く。
『スネークが死ぬはずないわ。』
『…俺も同感だよ紫苑。BIGBOSSは伝説の兵士だ。そう簡単に命を落としたりしないと俺は…俺たちは信じている。』
二人の言葉に兵士たちも口々に希望を口にする。
スネークの探索に向かおうとする彼らを一人の女性が押しとどめる。
『捜索の必要はないわ鳥頭。』
ロイの背後から現れた女性、アイリーンはその美しき相貌をほんのり赤らめて言い放つ。
その全身から放たれる妖艶さと何とも言えぬ威圧感に気圧されながらもロイが聞き返す。
『何故そう言える?早急に捜索すべきじゃないのか?!』
『何故?それはすでに彼の行方を掴んでいるからよ鳥頭。』
事もなげに発せられた女の言葉に絶句しているロイを尻目にアイリーンは紫苑に近づく。
『貴方にお客様よBOSS。』
『私に?』
アイリーンが部屋に呼び込んだ男はあの時と変わらぬ軍服にベレー帽、そしてあの時よりも子供っぽい、いたずら気な笑顔で紫苑に近づいた。
『約束通り、借りを返しに来たぞ。紫苑。』
『…?!ゼルさん!どうしてここに?』
『彼の部隊がスネークの連れて行かれた場所、迎賓館を探ってくれたのよ。』
事情を説明してくれるアイリーンの言葉にゼルの手を取ると上下にぶんぶんと振って喜びを表す。
『ロイ!!スネークを助けに行くよ!…今度は私も行くよ!!』
凄まじい勢いの紫苑に降参とでも言いたげに両手をあげたロイは救出の準備をするため他の兵士を連れて部屋を出て行った。
『ありがとう、ゼルさん!』
『…なぁに、借りたものを返しただけさ。』
『それでも…本当にありがとう!!』
とびっきりの笑顔を残して紫苑も部屋を出ていき残されたのはゼルとアイリーンだった。
『…なるほど…彼女は君の目的を知らないという訳か…』
『えぇ。当然…紫苑には気取られないようにね。』
『BIGBOSSの-監視-。奇妙な依頼だとは思ったが…』
『…追加の依頼もいいかしら?』
怪訝な表情のゼルが先を促すとアイリーンの目が暗く淀んだように見えた。
『チャンスがあればでいいわ…BIGBOSSを…始末しなさい。』
軋みは静かに広がっていく。
~~~~~~
『おねがいスネーク。…信じて。』
エルザから心強い占いをもらったスネークは再び牢獄に一人取り残された。
『…紫苑…』
静まり返った部屋に小さく響いた言葉は冷たい鉄の扉の開く音に掻き消えた。
そこには見張りであろう兵士が立っていた。
『…何か用か…?』
兵士はその言葉には答えずつま先で顔を蹴り上げると倒れたスネークの髪を掴み自分の顔に近づける。
『紫苑は今どこにいるの?』
それは予想に反した女の声。
目を見開くスネークの目の前で覆面を脱ぎ捨てた。
その顔は大切な少女にどことなく似た燃える緋色の髪の女。
『レイブン?!!』
驚くスネークを冷たい金の瞳でレイブンは無感動に見つめていた。
『無様ねBIGBOSS。やはり男なんてみんな同じ。大切なものを何一つ守れやしない。』
『…お前…どうしてここに?』
その言葉には答えず掴んだ頭を地面に叩き付けたレイブン。
予想もしなかった痛みに呻くスネークに独り言のようにレイブンは続ける。
『…あんたになんて任せなければよかった…男なんて信じるべきじゃないのに…』
『…ぐっ…いったい何を…』
どうしてみんなあの子を苦しめるの?
どうしてみんなあの子を傷つけるの?
どうしてみんなあの子を悲しませるの?
どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?
狂ったように繰り返すレイブンにスネークは背筋が凍った。
するとぴたりと怨讐の唄がやんだ。
『そっか…私が守ればいいんだ…』
ポツリと零したレイブンは薄ら笑いを浮かべながら立ち上がる。
幽鬼のように女は牢獄を後にした。
『…紫苑…』
呟きはやはり虚空に消え
軋みは広がり続ける
なんと言う体調不良ww
夏バテって先取りしすぎww
こんなテンションの結果が二人の被害者を産むことに( ´△`)
余りにも急な高低差で耳キーン(以下略