Historia~彼女を救う彼女の物語~   作:瞬く陰と陽

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彼女とすれ違う運命 追憶編

ジーンがこの男、Dr.トキオカについて知り得ていることは極僅かだ。

 

 

あるものは稀代の天才科学者。

事実彼は工学、物理学、医学、とあげればキリの無いほどの分野において実績をあげることができると言われている。

最も、それら全ての-表の-学会ではあまりにも異端で追放されてはいるが。

しかし彼が関わったおかげで絶対兵士計画は勿論、相続者計画も成果をあげることができたのだ。

 

あるものは歴史的謀叛者。

第二次世界大戦中、連合国から選び抜かれた兵士の部隊-コブラ部隊-において数少ない枢軸国側の人間。彼は日本人だと言われている。そしてコブラ部隊においての最高戦果を記録した男。

余りの戦果に勲章を用意できなくなった連合国側に彼が言ったとされる言葉、

 

 

『名誉-勲章-はいらない。ただ私に戦場を与え続けろ。そうすれば貴様等は殺さずにおいてやる。』

 

 

シンプルにして常軌を逸したその強欲さに人々は戦慄した。

 

 

人呼んで、無垢なる欲望-ザ・グリード-

 

 

 

暗黒に彩られた戦いの歴史における最強の称号を欲しいままにし続けた男である。

 

 

 

 

初めて出会った時の戦慄は今も忘れられない。子供のような微笑みの中に高い知性と残虐性を湛えた男。

その知識と培われた戦闘技術、ESPを歯牙にもかけない強靭な精神。ザ・ボスをも凌駕していると感じられたその男は笑いながら私に尋ねてきた。

 

 

 

『あなた…カミサマは好きですか?』

 

 

 

あの笑顔を向けられた時、悲鳴をあげなかった自身を褒めてあげたいとジーンは思っている。

その男がいつの間にかヘリの操縦桿を握っていたのだ。

 

驚くのも無理はない。

 

 

『何故ここに…』

 

『あれ?プレゼントをあげると言ったじゃないですか♪』

 

『何を…』

 

『まぁまぁ。積もる話はお立ち台に着いてからということで。』

 

 

そういうと鼻歌を歌いながら男はヘリをサイロへと向かわせた。

楽しいプレゼントに、口元を歪めながら。

 

 

 

~~~~~~

 

 

『…あの~宜しいでしょうか…?』

 

『…え?あ、はい。』

 

レイブンと抱き合ったままだった紫苑は後ろから申し訳なさそうに掛けられた声に振り向いた。

そこには所在なさげに佇む一人の若い兵士の姿があった。

 

『貴方は確か…ゼルさんのところの…』

 

『ハラムです、アーロン・ハラム。あなたにこの場の指揮権を譲渡するように隊長から指示を受けています。』

 

そう言われて工場内を見渡すとジーンの配下の部隊はおろかスネークやその仲間まで膝をつき頭の後ろで手を組み武装解除されているところだった。

 

 

『……え?』

 

目が点になっている紫苑を面白そうに見たハラムは隊長からの伝言を伝える。

 

『後の事は全てあなたの判断に委ねる。隊長はそうおっしゃってました。』

 

『ゼルさん…本当にありがとうございます!ゼルさんにもよろしくお伝えください!!』

 

勢いよく頭を下げる紫苑にハラムはかろうじて笑いを抑え込み一枚の紙を紫苑に渡す。

 

『我々が調べたこの地の重要拠点の場所が記されています。ぜひ役立ててください。』

 

そう言ってリストを渡したハラムは、部下を纏めて出て行った。

その背中に向かって、紫苑は再び頭を下げる。

 

 

拘束していた部隊員がいなくなったことで解放されたジーンの部下たちだが、抵抗する気力は誰もないように見える。

事態を静観して大人しく捕まっていたスネークが紫苑へと近づいてくる。

 

 

 

『…紫苑。無事で良かった。』

 

『スネーク…凄い爆発音がしたけど…あれがひょっとして…』

 

二人の視線の先には爆発炎上していたメタルギアRAXAの姿があった。

 

『…あぁ、俺が破壊した。…残念だが乗り込んでいたエルザは…』

 

『…?!そう…あの子が…』

 

沈黙が二人を包む中、わざとらしい咳払いとともにレイブンが二人の間に割って入る。

 

『-久しぶり-ねスネーク。無事に紫苑を守り通してくれたみたいで安心したわ。』

 

『…あぁ…』

 

見つめあう二人に親しげな空気は微塵もない。

 

 

 

『ふざけるな!!よくも俺たちの夢を壊してくれたな!!』

 

拘束されていた一人のソ連兵士が大声をあげて暴れ出した。

 

『俺たちの国を創れば、もう誰かに使い捨てにされることは無くなるはずだったのに!!どうしてくれる!!』

 

 

一気に不穏な空気が爆発しようとしていた。

 

 

『バカ言わないで!!!』

 

 

 

暴れる兵士を取り押さえようと動き出したジョナサンも、険しい表情をしていたスネークも、沈んだ顔をしていたソ連軍兵士達も、騒いでいた兵士も含めて…少女の叫びに動きを止めた。

 

 

 

『どんな国を創ったところで…あなたの心は満たされはしない、そこにあなたの-忠-は無いわ!!』

 

『-忠-だと…』

 

ゆっくりと兵士に近づく紫苑に制止の声をあげるスネークとジョナサン。

ジョナサンにより膝を折らされ、腕を捻りあげられながらも、歯を食いしばり睨み付けてくる兵士を真っ直ぐに見つめる紫苑。その顔に怯えは無く強い意志だけが宿っている。

 

『…私は紫苑。あなたの名前は?』

 

『何?』

 

『あなたの名前よ、自分の名前も言えないの?』

 

誰がお前なんかに…と小さく吐き捨てた兵士に紫苑は小さな笑みをこぼす。

 

 

『あなたには…誇りたいもの、守りたいもの、大切なものはありますか?』

 

 

優しげな声に兵士の体から少し力が抜けた。

 

 

『-昨日までの隣人が、戦友が、家族が…お前に銃を向けるかもしれない。-』

 

 

 

紫苑の言葉に再び兵士が体を強張らせる。ジーンの恐怖が甦ったからだ。

 

 

 

『銃を向けられるかもしれないから…隣人・戦友・家族に先に銃を向けるの?』

 

 

 

問いかける紫苑に兵士は目を伏せる。

 

 

 

『私はね…危ないからとか損得とかで生き方を決めたくないの。』

 

『ならばどうやって決める?』

 

 

 

 

『昨日の自分に恥じない生き方。』

 

『…昨日の…自分?』

 

 

顔をあげた兵士の前には変わらず微笑む紫苑がいた。

 

 

『苦しい時や悲しい時に肩を抱いてくれて、迷った時や怖い時に背中を押してくれるのは、昨日までの-自分-。自分が正しいと信じて、尽くして、貫いた日々の積み重ね。そんな昨日までの自分に胸を張って明日の自分にバトンを渡すために、自分の忠を尽くすの。』

 

『…綺麗事だ…』

 

『それでも諦めないわ。…明日の朝、鏡の中の自分の目を真っ直ぐ見たいから。』

 

 

 

兵士は唇を噛みしめて心の中を吐きだした。

 

 

『俺だって…俺だってそうやって生きたかったさ!!』

 

『……生きている限り、何度だってやり直せる。明日の自分の為に…今日のあなたが変わるのよ。』

 

 

紫苑は兵士の頬に両手を添えてその瞳を覗き込む。

 

『俺は…変われるのか?あんたの様に…』

 

『もちろん。あなたの意思があれば今すぐにだって。』

 

『…い、今すぐに…?!』

 

驚く兵士の目の奥を見据え、告げる。

 

 

『あなたの名前は?』

 

『な…まえ…?』

 

 

 

『胸を張って、自分の名前を叫んでみて。ここに自分はいるんだ!って。』

 

兵士の心の中で何かがストンと落ちた。

 

 

 

『教えて!貴方の名前は!』

 

 

 

『…!!!お、俺の名前はアレキサンダー・ミルコフだ!!』

 

 

紫苑はクスリと笑うと立ち上がって周りの兵士を見渡す。

 

 

 

『教えて!!貴方達の名前を!!』

 

 

 

沈んでいた兵士たちが覆面を脱ぎ捨て立ち上がると口々に自身の名前を叫びだす。

 

それは荒れ狂う希望の大波だった。

 

 

 

 

紫苑は両腕を広げると大声で宣言する。

 

 

『忘れない!!あなた達の名前を!!あなた達がくれたかけがえのない時間を!!その忠魂-こころ-を!!』

 

 

涙を流しながら雄叫びをあげる男達の中心で、紫苑は彼らの心を導いたのだ。

 

 

 

 

 

『如何かしら?私のBOSSは?』

 

『凄い…ジーンを超えているかもしれない…』

 

呆然と事態を見守るしかったスネークとジョナサンに誇らしげな笑みを浮かべレイブンが問いかける。

 

 

『ボス…あなたはこの事を…』

 

 

 

紫苑の背中に今は亡き恩師の姿を見て、スネークは拳を握りしめた。

 

 

 

~~~~~~

 

 

『そうね。貴方達にも良い主君が現れることを祈ってるわ。』

 

無線機の向こうの男に告げるとアイリーンは通信を切った。

アイリーンとトップは工場から少し離れた場所へと移動していた。アイリーンの-戦利品-とともに。

 

 

時間は少し遡る。

 

 

 

 

〈エルザっ…脱出しろ!〉

 

爆発するメタルギアの操縦席で炎に襲われながら必死で呼びかける声を彼女は遠く聞いていた。

 

ここで死ぬわけにはいかない…

 

彼女は全ての力をかき集め瞬間移動-テレポーテーション-を行う。しかし気力の限界だったのか工場のすぐ裏手の上空までしか転移できなかった。

 

一瞬の浮遊感。自身の体を浮かせる能力を使おうとしたがうまく行使できず、重力に従い落ちていく感覚に死を予感する。

 

 

『あら?空から女の子。』

 

 

掬い上げられた腕に電子と策謀の鼓動を少女は感じた。

 

 

 

 

《お姫様を確保したわ。…?……どこかで見た子供ね。》

 

『まったく…彼女はエルザよ。一回会ってるでしょ…』

 

無線の向こうで首を傾げるパーセフォニーの姿を幻視してアイリーンはため息を飲み込んだ。

 

『近くで落ち合うわよパーセフォニー。』

 

《あら?紫苑と合流しないの?》

 

『まだその場面-シーン-では無いわ。そこから小屋が見えるでしょう?そこに10分後よ。』

 

パーセフォニーの疑問を打ち切るアイリーンにトップが尋ねる。

 

『…エルザってあのエルザかい?…全く。』

 

『意外と驚かないのね?』

 

少し驚いたようにアイリーンが言うとトップは苦笑いを浮かべる。

 

『十分驚いているさ。でも…まだ始まったばっかりなんだろ?』

 

トップの言葉にアイリーンは僅かに口角をあげるだけだった。

 

 

合流した三人は空からの-戦利品-を小屋のソファーに寝かせるとしげしげと眺める。

 

 

『『『子どもね(だな)』』』

 

失礼な感想を三人同時に漏らすと意識を取り戻した少女が跳ね起きる。

 

 

 

〝ジーンを止めなければ!〟

 

『…クッ…?! 大人しくなさい!!』

 

目を見開き、力を行使しようとするエルザ-ウルスラ-の上にアイリーンが馬乗りになって押さえつける。

遅れてトップも確保に参戦するが少女とは思えぬ力に跳ね飛ばされそうになっている。

その様子を眺めていたパーセフォニーがつかつかと少女に近寄るとアイリーンとアイコンタクトを行う。

 

『……いいのね?荒っぽいと思うけど。』

 

『もう十分荒っぽいわよ!!いいからやりなさいパーセフォニー!!』

 

珍しく激しい口調のアイリーンに軽く肩を竦めると両手を暴れる少女の頬に当てて目をつぶった。

 

 

『…二つの人格が混ざり合おうとしてる。分離は無理ね。』

 

体を無理やり寝かせられた少女の頭上に移動すると、お互いの額を合わせる。

 

『歪に裂かれた二つの精神、これを一つに統合していくわ。』

 

〝…?!やめろ!!-私達-を壊すな!!〟

 

体を震わせ悲鳴をあげ始めた少女を二人掛かりで押さえつけながら、トップが思わず漏らす。

 

『…ちぃ!!全くエクソシストかいあたしらは!!』

 

『…エルザ…ウルスラを認めなさい…あなた-エルザ-はアナタ-ウルスラ-、アナタ-ウルスラ-はあなた-エルザ-よ。』

 

トップの呟きを気にせずパーセフォニーが彼女達に語りかける。

心の奥底、二つに隔たれた心の宮殿に侵入したパーセフォニーはその中心に降り立つ。

中心には古い鉄の扉が浮かんでおり、彼女は何のためらいもなくその扉を開ける。

 

 

 

〝来るな!!!〟

 

突如吹き荒れる暴風の中、冷めた目でその中心を見据えるパーセフォニー。

そこには敵意を向ける女とその奥に膝を抱えた幼い少女がいた。

 

 

 

〝誰にも傷つけさせはしない!!!〟

 

『…ウルスラ…貴女がずっとエルザを守っていたのね。』

 

強烈な突風に晒されながらも平然とその場に立ち続けるパーセフォニーは感心したように言う。

 

〝世界は私達を傷つける!!そんな世界、私が壊してやる!!〟

 

『…感情と引き換えに力を得たそうだけど…?随分と血の気が多いわね。』

 

凄まじい圧力を放つ女に対してゆっくりと歩み寄るパーセフォニーには揺らいだ様子はない。

 

 

『世界はね…

 

 

 残酷で、

 

 

 無慈悲で、

 

 

 孤独よ。

 

 

 

 だからこそ美しいの。紫苑といればきっとそれがわかるわ。』

 

 

 

〝紫…苑…〟

 

 

女が一瞬、逡巡する間にパーセフォニーは睫毛が触れ合うほどの距離へと接近していた。

 

 

『この醜くも美しい世界は、貴女を退屈させないわよ。…だから…』

 

 

 

 

さぁ…起きなさい…

 

 

 

 

 

『……うまくいったみたいね…』

 

体の下からの抵抗がなくなり穏やかな表情で眠り始めた少女を見てアイリーンは安堵の息を吐いた。

 

『目覚めれば人格は一つに統合されているはずよ。』

 

『…全く…考えるのが嫌になってきたよ。』

 

『考えるんじゃなくて感じればいいんじゃない?』

 

パーセフォニーが仕事は終わったとばかりに何処からかワインボトルとグラスを取り出すと一人で呑み始め、訳のわからない展開に頭を抱えるトップに無責任なアイリーンの言葉が更に追い討ちをかける。

 

 

 

 

…はぁ…紫苑が恋しいよ…

 

 

~~~~~~

 

 

『…?』

 

『どうしたの紫苑?』

 

突然工場のほうを振り返った紫苑にレイブンが声をかける。

しばらくぼぉっと見つめていた紫苑だが何でもないと頭を振るとトラックへと乗り込んだ。

 

彼らは現在、ゼルの情報を頼りにサイロ地下施設への侵入を行うため変電所への破壊工作を狙っていた。

今回の作戦チームにはスネーク・ジョナサン・紫苑・レイブンが選ばれた。

スネークとジョナサンが内部へと潜入し時限爆弾をセット、紫苑とレイブンはその援護である。

前回の襲撃作戦では紫苑の参加を認めなかったスネークだが今度は付いてくるように言った。

これはロイがスネークだけにアイリーン達の姿が見えないことを報告したためである。

 

 

(紫苑は…だれにも渡さない…)

 

カリスマ性を帯びた戦士としての紫苑、彼女がスカウトしてきた謎の女兵士達、そして本国にいるはずの同居人。それら全てが自分から愛おしい少女を奪い去るように感じたスネークの胸の内には、静かに黒い霧がかかっていった。

 

 

作戦チームは無事に変電所へと到達し、紫苑とレイブンは屋上からスネークとジョナサンが敵に遭遇しないように誘導したり予め無力化をして援護していた。二人が施設内に入ろうとしたとき、スネークは一瞬紫苑を見上げて建物の中へと消えた。

 

『…なんだか…スネークの様子が変だった…』

 

どこか心配げな声を出す紫苑の肩をレイブンはそっと抱き寄せる。

 

『大丈夫よ。もうすぐ全て終わるわ。』

 

力強い言葉に紫苑も頷く。

 

 

 

『ぐぁぁぁぁぁ?!!』

 

聞こえてきた悲鳴に二人は顔を見合わせ声の上がった方を見下ろした。

そこには一人の青年が刃物を持ちソ連軍兵士を切り殺している光景があった。

 

『何だろう?仲間割れかな?』

 

『というより…-暴走-って感じね。』

 

次々と超人的な動きで死体の山を築く青年。

 

『絶対兵士を使うなんて、聞いてないぞ!?』 『ま、まだ調整の途中だったはずだ!』

 

驚く兵士達をなおも切り伏せる青年を見てレイブンがつぶやく。

 

『あの子…何か、いえ誰かを探しているのかしら?』

 

『…止めないと!!』

 

飛び出そうとする紫苑をレイブンが制する。

 

『…?!レイブン?!』

 

『心配しなくても彼がなんとかするわよ。』

 

そういってレイブンは眼下を指さす。その先には爆弾のセットを終えたらしいスネーク達の姿があった。

 

 

 

『知っているぞ。人は皆死ぬ。犯罪・病・事故・戦争…どんな高潔な人間でも、どんなに優れた兵士でも例外ではない。』

 

虚ろな瞳で言葉を並べる青年。

 

『俺が殺さなくても必ず死ぬ。この世界は人の死で満ちている。…なのになぜおまえだけが死なない?』

 

伽藍の眼でスネークを見つめる青年は続ける。

 

『なぜ生きる?生き延びて何がしたいのだ?!』

 

 

まるで泣き叫ぶように躍り掛かってくる男の動きにスネークは見覚えがあった。

 

『俺はお前を知ってるぞ。』

 

『…名前…』

 

1966年、モザンビークで反政府ゲリラ組織にいた一人の少年兵。フランク・イェーガーと呼ばれたその少年こそが-無(ヌル)-だった。

 

 

『もう止めろ…お前を救う力強い腕は…仲間は別の場所にいる。』

 

『違う…俺は絶対兵士。俺が存在する場所に俺以外の兵士はない。』

 

武器を構えあう二人。

 

『だから俺に名前はいらない。俺はヌルだ。お前が死ねば俺は再びヌルに戻れる!!』

 

 

互いの存在をかけた戦いが始まった。

 

 

 

恐るべき身体能力を持ってスネークに襲いかかるヌル。スネークが放つ銃弾を、マチェットで切り落とすという神業で防ぐヌル。対するスネークも遮蔽物や経験の差が生み出す絶妙な間合いの取り方で致命傷を凌いでいた。

 

『何故だ?!何故死なない?!』

 

我武者羅に銃を撃ちまくるヌルから身を隠すスネークも声を張り上げる。

 

『止めろフランク!!俺たちが戦う必要は無いんだ!!』

 

スネークの必死の呼びかけもヌルには届いた様子はない。

 

『…クッ…仕方ない!』

 

気合を入れ直し、遮蔽物から飛び出して銃を向けるスネーク。しかしそこにヌルの姿は無い。

 

『…もらったぁ!!!!』

 

コンテナの上から飛び掛かるヌルに意表を突かれたスネークは回避が間に合わない。

 

(これまでか…)

 

 

 

 

『朽葉流…砲砕!!』

 

横合いから飛んできた気功にヌルは飛ばされコンテナへと叩き付けられた。

 

『紫苑!!』

 

『ゴメン!!我慢できなかったの!!』

 

乱入してきた紫苑にスネークが驚く。

紫苑はスネークのほうを向いて謝ったが立ち上がろうとしてきたヌルを視界の端に捉え構え直す。

 

『…お前…何者だ…なぜ俺の邪魔をする?』

 

『…何かほっとけないのよ…あなたには…兄さんたちと同じにおいがするの。』

 

 

ガァァァァッッ!!!

 

理性を失ったように吠えだすヌルを見て説得をあきらめた紫苑は拳を握り、スネークは銃口を向ける。

駆け出そうとするヌル。

 

 

BAN!!

 

一発の銃声が響きヌルの右膝を撃ち抜いた。

 

 

『私の紫苑に盛ろうだなんて100年早いわよボウヤ。』

 

屋上でレイブンが構えるライフルの銃口からは硝煙が昇っていた。

 

 

『紫苑!!』   『了解!!』

 

膝をついたヌルに勝機と見た二人は左右から同時に接近する。

 

最初に接近したスネークに向けてマチェットが振るわれると、すかさず紫苑がウェブを飛ばして軌道を変える。懐に潜り込んだスネークはヌルが紫苑に向けようとしていた銃を奪い取り放り投げると勢いそのままに投げ飛ばした。背中から地面に叩き付けられたヌルは転がるようにして距離を開けようとしたがコンテナを足場にした紫苑が空中から胴回し回転蹴りを打ち込むとそれを両腕でブロックせざるをえなかった。

 

『…グッ?!』

 

ヌルはガードしたものの撃ち抜かれた膝からは鮮血が噴き出す。攻撃を防がれた紫苑は糸を後方のコンテナへと飛ばし、浮き上がるように間合いを取ると入れ替わるようにスネークが左右の連打と負傷していない方の足へとローキックを繰り出してきた。連打は防御したものの蹴りでもう一方の膝を壊されたヌルはついに両膝をついたが握っていたマチェットを振り上げる。

 

BAN!!

 

マチェットをレイブンの狙撃で吹き飛ばされるとついに地に這うこととなった。

 

 

 

『…思い出した…BIGBOSS…あの時もあんたは俺を止めてくれた。』

 

正気を取り戻したヌル…いやフランクはスネークに感謝を述べる。戦いの最中、彼は記憶を取り戻していたのだ。‐賢者たち‐の暗躍を悟ったスネークにフランクは抱えられて救出された。彼は再びBIGBOSSによって生を与えられたのだ。

 

 

 

 

『…なぁ…あんたが紫苑なんだな?』

 

キャンプへと退却するトラックの中で横たえられ衛生兵の治療を受けているフランクが紫苑に話しかけた。

 

『えぇ。傷は大丈夫?』

 

『…あんたのことも思い出した。BIGBOSSが俺に言ったんだ…「お前より強い女の子がいるぞ」って…』

 

フランクの言葉にじと目でスネークを見る紫苑。その当人と言えば素知らぬ顔だ。

 

『…どんな奴なんだろうと思ったが…思ったより小さかった。』

 

随分と率直な物言いに青筋を笑顔で浮かべた紫苑。

 

 

『小さいのに…凄く暖かくて…まるで太陽みたいだった。』

 

 

 

思わぬ言葉に固まる紫苑にフランクが儚げな笑顔を向ける。

 

 

『…会えて嬉しい…紫苑…』

 

 

 

変わらぬ率直な物言いに紫苑はその頬が太陽のように熱くなったのを感じた。




今回は時間かかった…

フランクとジョナサンは天然ジゴロと信じて疑わない



あ、フラグは立ちません。怖いお姉さんが全力で折ります
完膚なきまでに(特に描写はしないけど)
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