今後のタイトルは自分のウォークマンの中に入ってる曲から選んでいこうかと思います。
そして最近ハマってる海外ドラマのクリミナルマインドのシーズン6まで追いつきました。JJがでらべっぴん。いずれこの作品にも出せるのか…予定はないですが。
LOVE, HOLIDAY.
「海風が気持ちいいね~トップ!!!」
長い海岸線沿いのハイウェイを駆け抜けるスーパーカーに乗る紫苑達4人。
特に紫苑はキャッキャッと騒いでいてまるで幼い子供のようだ。
本当に見るものすべてが新鮮なのだろう、目に映るものを指差してはアイリーンやトップにあれは何か、これは何だと訊ねている。車内は運転席にトップ、助手席にアイリーンが座り後部座席にはパーセフォニー、紫苑、ウルスラとかなり手狭だがそれすらも楽しげな紫苑だ。
「そう言えばこの車はトップのものなの?…その…随分とカスタムというか…派手と言うか…」
「だよね!!私もカッコいいな!!って思ってたんだ♪」
ずっと気になっていたのかアイリーンがトップに疑問をぶつけると紫苑も楽しそうに後部座席から身を乗り出す。
(…カッコいい…の…かしら?)
思わず心の中でアイリーンが思ってしまうのは無理はない。
ムスタングのような車体は赤色をベースとした塗装を施しており、ボンネットからはエンジンパーツが露出している。車体中央下部からは後方に向かって銀色のエンジンマフラーが後方に向かって伸びておりかなり周りの目を引いている。
アイリーンの様子から何かを察したのか、キラキラした紫苑の眼に対してなのか、苦笑いを浮かべたトップが答える。
「あのグリードってやつが餞別だって言ってくれたんだよ。まぁ一度は断ったんだけど…」
「グリードから餞別ねぇ…これまともな車なの?」
えぇ~かっこいいじゃ~んという後部からの言葉はスルーしたアイリーンがトップに訝しげな目を向けると困ったようにトップは笑う。
「よくは分からないんだが…こいつの力は私じゃないと引き出せないらしくてね。
向こうも扱いに困っていたらしいから貰ってくれるとありがたいそうだよ。」
特にグリードと関わりがあった訳ではないトップからしても怪しさ満点の贈り物だが、グリードの人となりを知っているアイリーンからすると最早罠としか思えなかった。
「…あ!『メトロシティまであと2km』だって!!そろそろレイブンとの合流地点じゃない?」
はしゃいだ様子の紫苑が外の看板を指差す。
いつの間にか彼女達は目的地へと到着しつつあったらしい。
「確か合流地点はウエストサイドにあるピアノバー『アマデウス』だったわね。」
「あぁ。店主が変わり者でね。荒くれ者どもの集まる繁華街の入り口にハイソな店を作ったのさ。」
「アマデウスってモーツァルトの事よね?トップのイメージからは想像つかないなぁ。」
「うるさいよ紫苑!…って言いたいとこだけどあたしもそう思うね。
…それでもあの街での数少ない、良い思い出の場所なんだ。」
何かを懐かしむような眼をしたトップはそれ以上言葉は重ねなかった。
ハンドルを切ると一行は町の中へと入っていった。
「なんかすごいところだね…」
煌びやかなネオンに照らされた通りは怪しげな活気に包まれており、男も女もまるで熱に浮かされたように夜を謳歌している。ウエストサイドはまさに歓楽街だった。こういった場所に縁の無かった紫苑にとっては少し刺激が強いのかもしれない。
「夜の雰囲気は苦手かしらプリンセス?」
「ムゥ…パスまで子ども扱いして…」
妖艶な笑みを向けるパーセフォニーの言葉に頬を膨らませて答える紫苑の姿は、自身より年上には到底見えない。
クスリと笑った少女の気配に気付いた紫苑が非難めいた目をウルスラに向けると少女は今度こそ声をあげて笑った。
「フフフッ…可愛いあなたは大好きよ、BOSS。」
「はいはい、おしゃべりはそこまで。目的地に着いたわよ。」
ウエストサイドをたまり場としていた不良少年ブレッドは見慣れぬド派手な車から降りてきた五人の美女たちに目を奪われた。そしてそれは思春期間近の少年だけではなく、その場に居合わせた老若男女総てが彼女たちの虜となっていた。最もそんなことなど意に介さず―気付かなかっただけの者もいるが―彼女たちは目的のピアノバー「アマデウス」へと続く地下への階段をトップを先頭にして下りて行った。
店の扉の前に立った時中から微かに漏れ聞こえるピアノの音に耳を傾けたアイリーンが感嘆の声を漏らす。
「素晴らしいソナタ…決して譜面に忠実という訳ではないけれど、
人間味に溢れていて音楽を心から愛し楽しんでいる。
とても譜面に誠実な弾き手だわ。」
文化的な教養など自分にはないと言っているトップだが、褒められてまるで自分の事のように頬を緩ませる。
扉を開けて中へ入ると店内は思っていたよりも広く、いくつかのテーブル席とカウンターがあるがどうやらお客はいないようだ。カウンターの中には初老の男性がグラスを磨いていたがトップの顔を見てほぅと息を漏らした。
「これは懐かしい顔だ。じゃじゃ馬のトップじゃないか!」
「やめとくれよ親父さん!…あれ?親父さんがここにいるってことは?」
「…フフッ…相変わらずですねトップ。」
ピアノの陰から現れたのは仕立ての良い燕尾服を着た線の細い男性だった。
その顔には優しげな笑みが浮かんでいる。
「ンッ?…まさか…アンタ、R・インストルかい?!」
「えぇ。‐女男‐のインストルですよ。」
「…勘弁しとくれよ…あの頃はガキだったのさ。みんな、こいつはインストル。アタシの幼馴染みだよ。」
困ったような笑顔を浮かべたトップは男、インストルを紫苑達へと紹介する。
美しいお辞儀を見せたインストルは貴族の子弟にも見えた。
「初めましてインストルさん!!私は九頭紫苑です!子どもの頃のトップってどんな子だったの?」
元気なお辞儀をインストルへと返した紫苑は興味津々といった様子でインストルに近づこうとしていく。
しかし思わぬ来客が旧友との再会に水を指す。
「邪魔するゼ~!!」
扉を乱暴に開けて現れたのは明らかに堅気ではない男達が4人。彼らは店にいた紫苑達を見て驚いたような顔を見せたが女ばかりと気付くと直ぐに下卑た笑みを浮かべた。
「おいおい、最後の営業日だからか随分と繁盛してるじゃないか!」
「…最後…?!」
「ひょっとして店の代わりにその上玉をよこすってのか?」
「やめろ!!その子達は関係ないだろう!!」
男たちの放った言葉に戸惑うトップと激昂するマスター。
「…ご説明を、-インストルさん―?」
「…父の友人の借金を盾にここからの立ち退きを迫られているんです…」
問いかけるようなアイリーンの言葉に苦々しくインストルが答える。
「さらに言えば今日がその最終期限という訳だよ美しいお嬢さん。」
男たちのリーダー格であろうがニヤニヤと笑いながら続ける。
「この店は貴様らなんぞに渡さん!!」
「威勢はいいようだが…あんたの息子のピアニスト人生を今日、終わらせてやってもいいんだぜ?」
マスターの一喝に笑みを消した男が片手をあげると後ろ手に隠していたのであろう日本刀やナイフ、鉄パイプを男達が取り出した。一触即発な空気が流れる中、アイリーンのため息がやけに大きく響いた。
彼女には理解できなかったがどうやらこの男たちは、自分たちが地雷原でワルツを踊っていることに全く気付いていないらしい。我らが-BOSS-の行動がたやすく予想できたアイリーンはとりあえず今すべきこととして机を引き倒し、動きの鈍いウルスラと共に机の陰に身を隠した。横目で確認するとパーセフォニーがインストルという若者をひっつかんで同じように避難していた。…だいぶ荒っぽかった事には目を瞑った。
とりあえずこれで邪魔にはならない、ここから先は…
「事情は大体分かった。あんた達の雇い主に伝えなさい。」
―BOSS-の時間だ。
「ここから先はこの九頭紫苑が相手になるわ!…ってね!!」
男たちの前に立ちふさがった紫苑がリーダーの男に向かって飛び上がるとその頭上を飛び越して日本刀を持った男の懐へと潜り込むと手首を上から握りこんだ。
「グァァァァ!!?!!」
少女とは思えぬ超握力で刀を握り続けることができなくなった男は痛みの余り膝をついたがそこを膝で打ち貫かれると意識を飛ばした。
「…?!こ、このガキがァ!!」
仲間がやられたことで我を忘れた男がナイフを紫苑に向けて突き出すが半身でそれを交わされると、カウンターで入った掌底で宙を舞った。男の手を離れたナイフは鈍い音を立ててアイリーンとウルスラが隠れるテーブルへと突き立った。
鉄パイプの男がそれを振りかざそうと思った時には紫苑が蹴り上げてその手に収めていた刀の切っ先がのど元に突きつきられており冷や汗と共に武装解除されていた。
街のチンピラと最前線で最高の戦いの遺伝子を受け継いだ戦乙女ではあまりにも役者が違いすぎていた。勝負に等なろうはずもない。
「…お、お前ら…こんなことをしてタダで済むと思ってんのか?!!」
「あんた達こそタダで済むと思わないこったね。…アタシの思い出を踏みにじろうなんざ、十年早いんだよ!!」
「ヒィ……お、覚えてろよ!!」
紫苑の戦闘力とトップの気迫に完全に飲まれた男は仲間を抱えて捨て台詞を残し、逃げ帰っていった。
ようやくこの店に相応しい-神に愛される―空間が戻ってきた。
「…久しぶりの再会だ…楽しい時間を過ごさせてやりたかったんだがな。すまないトップ「…おやっさんには世話になったんだ。水臭いこと言うんじゃないよ!」…ヘッ…全く年は取りたくねぇもんだな…」
トップと店主のやり取りを見ていた紫苑は心が温かくなるのを感じた。
強い意志を宿したその眼を見たアイリーンが小さく笑って店主に声をかける。
「とにかくここから先は私達が預からせてもらうわ。差し当たって拠点となる場所が欲しいんだけど…」
「そうか…それなら此処の上を使うといい。元はアパートだったんだが…奴らが来て住人が逃げ出して無人なんだ。」
店主の提案にアイリーンが頷くと状態の確認の為、連れ立って扉から出て行った。
倒して盾にしていた机や椅子を立て直していたウルスラは店主に断りもなく店の酒を飲み出したパーセフォニーに呆れた視線を向ける。
「勝手に手を出すなんてまずいんじゃないかしら?!」
「あら?美味しいわよ、これ。」
そうじゃないだろう、と思ったウルスラだが言っても無駄だと白い目を向けるだけに留めておいた。
「…幻滅してしまったかなトップ。」
「…インストル。良いんだよ、そんなこと。」
「…私達の知り合いはこの街の変化と共に殆ど去っていったよ。…時機に-メトロシティ浄化作戦-が始まるからね。」
「浄化作戦?!」
驚く紫苑とは対照的にトップは何かを察したらしい。
「そうか…さっきの奴らはその手先ってことかい。」
「父はあの通り頑固者だからね。最後まで抵抗していたから搦め手できたってところだろう。」
「…ということはあの人達のボスはその作戦の立案者?」
「おそらくね。彼ら…パラダイム社はこの街を近代都市に変えようとしているんだ。」
「そんな…そこに住んでいる人たちの生活を奪うなんて…許せない!!」
憤る紫苑とは対照的にこの街の住人であるインストルと、かつてこの街の住人であったトップは複雑そうな顔を見せている。
「…アタシはこの街を捨てた身さ…偉そうなことは言えないよ。」
「トップ…」
義理堅いトップの性格はよく理解している二人にはその言葉の意味はよく分かった。
「私も実は…近々結婚することが決まってね。
彼女と一緒に住むためにヨーロッパへ行く予定なんだ。
父に一緒に行こうと何度も言っているんだけれど、首を縦に振ってくれなくて…」
「それは…親父さんらしいね。アタシはいい話だと思うけど…そっか…結婚か…」
インストルの報告にトップは驚いた顔を見せ感慨深そうにする。
そこにいたのは幼き日のままではない、成長した友人の姿だった。
「それにマイクも結婚したし「ハ、ハガーもかい?!」…フフッ…もう娘さんもいるんだよ?」
先程よりも目を剥いて驚いているトップに思わず吹き出しながらさらりと爆弾を追加していくインストル。唖然としたトップとついに声をあげて笑い出したインストルと釣られるように笑い出した紫苑。笑われたことに少しムッとした顔を見せたトップだがすぐに額に手を当てると口元を緩めた。
「あら、なんだか楽しそうねボス?」
店の扉を開けて戻ってきたアイリーンは笑い声に満ちたその空間に不思議そうな顔をした。
更に笑みを深めた三人に肩を竦めたアイリーンはウルスラとパーセフォニーに目をやるがどうにも当てになりそうにはない。さっさと思考を切り替えるアイリーンは手を一つ打つと全員を店の中央に集める。
「今上を見てきたけど少し―改装-をしようと思うわ。
調達が必要なものをリストにしたから紫苑とトップで買い出しに行って頂戴。
ウルスラとそこの酔っぱらいは私を手伝って。」
そう言うと紫苑にメモを握らせて二人を伴い再び扉から出て行った。
「よ~し!難しいことは後回し!!超出かけたい気分だったんだから。」
「了解さねボス。あんたとなら何処へでも行こうじゃないか!」
盛り上がる二人にかける言葉がインストルには見つからなかった。
久しぶりの旧友との再会と共に自分たちの窮地を救うと言い出した女性たち。
危険に満ちているであろう厄介事に首を突っ込もうというのに、
彼女達は…
「なぜ…そこまでしてくれるんだい?」
「…あなたはトップの友人、それだけで十分なの。」
「…お礼は何もできないよ。」
「お部屋を貸してもらえるんだから気にしなくても…あ、でも…」
なんでこんなに…
「またあのすばらしいピアノを聞かせて!!私気に入ったの!!」
楽しそうなんだろう…
はじけるような笑顔をインストルへと向けるとトップに呼ばれた紫苑は店を後にした。
インストルに胸がこんなにも穏やかなのは久しぶりの事だった。
今回登場した新キャラや語句
店主、インストル、アマデウス、パラダイム社・・・THEビッグ・オーより設定や名前のみ
トップが乗る派手な車・・・今は秘密ですが―変形-します
スーパーロボットに乗るMSパイロットがいたっていいじゃない?