Historia~彼女を救う彼女の物語~   作:瞬く陰と陽

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アベンジャーズ2を見に行ってきました!!

これぞお祭り映画!!

これは10月のファンタスティック4も見逃せません!!



それでは本編どうぞ


Ride a firstway

この日を私は随分と待っていた。

 

レイブンと別れてもう一月が経とうとしている。

 

数日前の手紙でようやく今日彼女が合流することが分かった。

 

合流場所は新たな家族のホームとなった-アマデウス-。

 

ここでレイブンには内緒でサプライズパーティをするつもりだ。

 

 

 

「飾り付けはこんな感じでいいかな?」

 

「なんだかバースデーパーティーみたいね。懐かしいわ。」

 

「アイリーンはいいとこの御嬢さんっぽいからね。アタシにはとんと縁のない話だよ。」

 

「あら?インストル君には祝って貰わなかったのかしら?」

 

「な?!だからそんなんじゃないって!!」

 

「それならハガー君?子持ちとはなかなか刺激的ね。」

 

アイリーンとパーセフォニーにからかわれているトップはまるで昔からの友人のように仲がいい。

 

才気煥発なアイリーン、享楽主義のパーセフォニー、高尚潔白なトップはそれぞれ異なるカラーを持つものでありながら不思議な調和を見せていた。

 

困ったことがあればアイリーンに相談し、パーセフォニー共に遊んで、度が過ぎればトップが叱り最後は甘えさせてくれる。

 

私には頼れる姉貴分たちだ。

 

 

「紫苑、この料理の味をチェックしてみて?」

 

「どれどれ…ん~…美味しい!!また腕をあげたね!!」

 

 

バリバリの理系女子だったウルスラは今花嫁修業の真っ最中。クッキングを化学の実験だといっていた大人びた少女は、鬼教官…もとい稀代の美食家の指導もあって日々その女子力の向上に磨きをかけていた。

可愛くて、頭が良くて、料理も上手。もういつでもお嫁にいけるだろうが私達の御眼鏡に適う相手となるとそうはいないだろう。

 

 

「娘を嫁に出す父親の気分…」

 

「…なにそれ?」

 

「ウルスラの成長を実感してたんだよ。…こうして雛鳥は巣立っていくのか…って…」

 

「感慨深そうなところ悪いんだけど私が家庭に入れるわけないでしょ?」

 

「むぅ…親心ってものを理解してないなぁ。」

 

「はいはい、バカなこと言ってないで盛り付けのお皿を出してちょうだいBOSS。」

 

 

私には二人の兄がいたが同年代の同性の友達というのはいなかった。

 

ウルスラとの他愛もないやり取りは私には何物にも代えがたい安心感を与えてくれる。

 

まるで自分が-普通の女の子-になったかのように感じるからだ。

 

私の新しい家族達は気高く美しい。自慢のファミリーだ。

 

 

心穏やかな日々は唐突に破られるものだ。

 

異世界に呼び出され突然戦場へと放り出されたり、

 

デートの途中に武装組織に拉致されたり…

 

私は否が応にも争いに巻き込まれる。

 

そしてまた…

 

 

 

~~~~~~

 

 

まだ日も高い時間、酒場の周りには当然人影は少ない。

 

それはこのバー-アマデウス-でも変わらない。

 

このバーを拠点とする紫苑達を除けば出入りする者は無い。

 

 

バーへと降りる石階段の上にこんな時間に見かけるはずもない高級そうな白スーツに身を包んだ老紳士が杖を手に立っている。

 

少し急な階段を注意深くゆっくり降りると彼はその扉を開けた。

 

店は営業時間ではなかったが何人かの女性たちが楽しそうに飾り付けや料理の準備をしていた。

 

そのうちの一人が老紳士の来店に気付いたらしく声をかけてきた。

 

「申し訳ありません、Sir。今日は臨時休業させて頂いてるんです。」

 

見事な営業スマイルを見せるアイリーンは老紳士の顔を見てふと気づく。

 

(…?どこかで見た顔ね…あれは確か…)

 

「あれ?ウェインライトさんじゃないですか!」

 

とてとてと近づいてきた紫苑が親しげに声に記憶が繋がったアイリーンはすっと目を細めた。

 

(パラダイムの科学者の一人、確か機械工学の権威ね。…また紫苑がひっかけたのね…)

 

「こんにちは紫苑、そしてご友人の方々。大切なイベントの前にお邪魔して申し訳ない。」

 

「こんにちは、ウェインライトさん。私達に何かご用ですか?」

 

「…あぁ…実は君達に依頼があって探していたんだ。」

 

手近な椅子を一脚引き寄せるとウェインライト博士は腰を下ろした。

 

紫苑達も同じように椅子を用意すると彼を囲んで座った。

 

 

「それで…ご依頼とはなんでしょうか?」

 

口火を切ったアイリーンはその内心はともかく表情は非常に好意的だった。

 

「私にはドロシーという孫娘がいる、紫苑とそこの御嬢さんは一度会っている子だ。」

 

サングラスに隠されて表情は見えず、声は平坦。だからこそアイリーンは感じ取ったのだ。

 

(…これは面倒なことになりそう…)

 

 

 

「君達に依頼したいのはパラダイム社からドロシーを奪還することだ。」

 

 

「奪還?随分と物騒なご依頼だことで…

 

 誘拐事件ならば我々よりも公的機関、

 

 ようは警察の出番ではありませんか、Dr.ウェインライト?」

 

 

「警察?…この街にそんなものは存在せぬ…

 

 もはやこの街のもので

 

 奴らの思い通りにならぬものなどない。」

 

 

「この街の経済を完全に掌握する彼らならばあり得る話ね…でもなぜドロシー嬢を?」

 

 

「あの子の存在は世界のパワーバランスを崩壊させかねない。…紫苑…君と同じだ。」

 

 

「私と同じ…それはどういう意味なんでしょうか?

 

 もしや…それが私に依頼をする理由ですか?」

 

 

思わず声を漏らした紫苑の疑問の声。ウェインライト博士は首を横へと振った。

 

 

 

「私が君に依頼するのは彼女の…

 

 

 かつて伝説の英雄と謳われた、

 

 

 ザ・ボスの後継者だと知っているからに他ならない。」

 

 

「…?!どうしてそれを…」

 

 

 

「君は…いや君達は既に奴らに目をつけられている。

 

 

 この世界のどこに居ようとも君達に平穏は訪れないだろう。

 

 

 …それに…君には成すべき使命があるはずだ。…違うかね?」

 

 

歴史の表舞台から葬られた伝説の英雄、ザ・ボス。

いまや彼女を識る者はごく一部となり、彼女の死に九頭紫苑が関わっていたことを識る者は更に少ない。

そのごく少数にウェインライト博士は含まれていたのだろう。

 

「はっきりと言わせてもらうなら、私は君やザ・ボスの意志には興味がない。」

 

 

「…正直な爺さんだ…」

 

 

呆れたように洩らしたトップの事など博士は意に介さない。

 

 

「だが…私の…いや、ドロシーの-意志-を君に救ってほしい。

 

 一方的に君達に危険を押し付ける、…これは老人の我儘に過ぎない。」

 

 

ウェインライト博士は紫苑へと深く頭を垂れた。

なぜパラダイム社にドロシーが攫われたのか、ザ・ボスと紫苑の事をどこまで知っているのか。

問いたいことはある、だが目の前の老人は助けを求めている。

他でもないこの九頭紫苑に。

ならば彼女の答えは決まっている。

 

 

 

「私とドロシーは友人です。彼女が危険に晒されているのなら

 

 

 私達は駆け付けましょう。…それが…私の意志です。

 

 

 ウェインライト博士、私達に任せてください。」

 

 

再び戦乙女は戦場に立つ

 

ただしかつてと大きく異なるのは

 

今度は自らの意志で闘争を選び赴くという事

 

絶望でも不可能でも出来ることはただ一つ

 

彼女の物語は進みだす

 

 

 

~~~~~~

 

 

「それではDr.ウェインライト、

 

 ドロシー嬢の居所が掴め次第救出作戦を決行いたします。

 

 それまでは貴方も十分に気を付けてください。

 

 なんならボディガードを手配いたしますが?」

 

 

「お気遣い痛み入るよアイリーン女史。

 

 だが私の事は気にせずとも良い。

 

 研究成果を手に入れた以上、私に価値は無いだろう。」

 

 

「そうおっしゃるならば仕方ありませんわね。

 

 出口まではお送りさせていただきますわ。」

 

 

小さく笑いながら立ち上がった博士は出口へと歩いていく。

その顔には悲壮感はなく安堵の表情が見て取れた。

博士の見送りのために紫苑達も後へと続く。

重厚な扉を開け、階段を上る。辺りはうすぼんやりとして徐々に夜の顔をのぞかせている。

 

 

「…紫苑。君達の協力に感謝を。ドロシーをよろしく頼む。」

 

 

「私達に任せてください。なんてったって私達は最強チームですから!」

 

 

足の不自由な博士を気遣う様に寄り添っていた紫苑が朗らかに笑う。

その表情にあるのは自信だけ。それはファミリーへの絶大な信頼の現れだった。

階段を登り切った博士は振り返るとその笑顔を目を細めて眺めた。

 

 

眩しい光を放つそれは、かつて彼が愛したものに重なった。

 

その胸に去来する在りし日の想い出。

 

 

 

 

久方ぶりに感じた温もりは冷たい銃声によって引き裂かれた。

 

 

Beeeeeeeep!!!!!!!

 

「…?!何…?!」

 

それに気付いたのはやはり紫苑、スパイダーセンスが反応したのだ。

 

BANG!!!

 

発射音とほぼ同時に回避行動に移った紫苑は逡巡した。

瞬間的に誰が狙われているのかを迷ったのだ。

一流と言って差し支えない戦闘技術を有し、常人離れした身体能力を誇り、2度の戦場を経験した紫苑。

しかし彼女は軍事訓練を受けたプロではなかった。

正面で敵と対峙することはあっても日常の陰から忍び寄る魔の手に関しては、言ってしまえば素人に近かった。

だからこそかつてはFOXに易々と拉致されてしまったのだろう。

 

己が相棒からの警告に従い、博士を押し倒すように庇う紫苑。

しかしほんの一瞬の迷いが回避行動に致命的なタイムラグを生んでしまった。

 

「グゥッッ?!!」

 

「博士!!」

 

倒れこんだ博士の白いスーツの右肩のあたりが真っ赤に染まっていく。

突然の事態に、しかし冷静に対処する者もいた。

 

「スナイパー!!!」

 

鋭い声で叫んだのはアイリーンだ。姿勢を低くしながら警戒を呼び掛ける。

 

「3時方向、屋上に敵!!」

 

次に動いたのはパーセフォニー、銃声と飛んできた弾丸の軌道を計算し素早く狙撃手の位置を割り出した。

紫苑達が一斉にそちらを向くと何軒か先のビルの屋上にレンズの反射光が見えた。

発見されたことを悟った狙撃手は追撃を諦めると即座にライフルを投げ捨てて身を翻した。

 

「アイリーン、博士をお願い!」

 

言うが早いか駆け出した紫苑は近くに停めてあった車のボンネット、ルーフを足場に飛び上がるとシンビオートスーツをその身に纏った。

ウェブスイングであっという間に上空へと舞いあがった紫苑はみるみる小さくなっていく。

 

「おいバカ!!突っ走るんじゃないよ!!」

 

「…トップ!こっちは私とパスに任せて、紫苑を追って!!!」

 

パーセフォニーと協力して博士を抱えあげたアイリーンからの指示にあぁ‼と頷いたトップは辺りを見回すとたまたま通りがかったバイクの前に飛び出した。

 

「悪いね‼ちょいと借りるよ‼」

 

急停車したライダーを引きずり下ろすとサッと跨がったトップが前方を睨めるとビルの陰へと紫苑が飛び込むように消えるところだった。

エンジンを吹かし、紫苑を追おうとするトップの後ろに飛びつく小さな影。

 

 

「ちょ?!何やってんだいウルスラ!!」

 

「私が紫苑のところまでナビゲートするわ!!」

 

「バカなこと言うんじゃないよ!!遊びじゃないんだ!!」

 

「そんなこと判ってる!!」 

 

「だったら「私だって紫苑のファミリーよ!!」ッ?!…ったく…」

 

諦めたように首を振ったトップは前を見据える。

無駄にしている時間は無い。アイドリング状態だったバイクに喝を入れるように空ぶかしをして声を張り上げる。

 

 

「振り落とされないようにしっかり掴まってなァ!!!」

 

 

煙をあげて走り出した二人は全速力で紫苑を追いかける。

 

今ここに戦いの火蓋が切って落とされた。

 

 

 

"CAST IN THE NAME OF GOD, YE NOT GUILTY."

 

(我、神の名においてこれを鋳造する。汝ら罪なし)

 

12世紀ドイツの死刑執行人が持つ刀剣に刻まれた言葉




余りにも長くなったのでここで一回切りました

9月までにPW編まで到達したい…
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