なつきちに心を震わされたものです
本当はいっぱい声を出して応援したかったんですがかなり序盤で涙腺が決壊してしまい…
と言うわけで涙腺の弱い作者のお気に入りキャラ今章のボス、-泣き虫-の登場です
また後書きにちょろっとおまけもあるかも?
静かな夜。
住人達は幸せな明日を夢見て眠りについている頃だろう。
その闇の中で何が行われているかなど考えもせずに。
腕を組み闇夜を睨む神楽はこの街のそんな住人達を心底嫌っている。
自分以外の誰も信用しない。彼女にとってこの世界の全てが憎悪の対象だ。
神楽の記憶は-恐怖-の目から始まった。
幼い頃に人ならざるモノを呼び出す力を発現させた神楽は周囲から奇異の目を向けられた。
それは神楽を産んだ結果、妻を失った父親からも例外ではなかった。
愛する妻を喪った悲しみが、娘に対する敵意に変わったとき、
神楽は自分の肉親の血でその手を染めることになった。
以来彼女はこの街で孤児として生きてきた。
誰よりもこの街を毛嫌いしながら、それでもここで生きてきた。
世を憎み、人を憎み、力を憎み、自分を憎み、生きてきた。
自分の憎悪がいつかこの世界の災禍となるであろうことを神楽は理解していた。
親から望まれぬ子、世界から望まれぬ子。
この街の闇にはそんな子供が身を寄せ合って生きていた。
「…私の復讐はまだ始まってもいないわ…誰にも邪魔はさせない。」
「本当にそれでいいの?」
「?!誰!!」
背後からかけられた声に振り向くと自分しかいないはずの屋上に一人の少女がいた。
年のころは10代の半ば、立羽と同じぐらいだろうか。
長い白銀の髪と白衣がその理知的な顔立ちと合わさり落ち着いた雰囲気を持った儚げな少女。
しかし神楽の直感が叫んだ。
この女は同類だ!
危険な魔物をその殻の中に巣食わせている。
敵は排除する。懐から三枚の式符を取り出すと同時に少女へと投げつける。
「式符・封光陣!!」
左右と正面から少女に迫る式符は少女の間合いまでは届かなかった。
少女の前方に半球状に揺らめく透明な壁が出現すると式符の進攻を阻み、霧散させた。
「憎しみは力を増幅させるけれど、心の眼を曇らせる。
曇った眼では力の矛先を見失って、
最後には貴女の守りたい大切なものまで傷つけてしまうわ。」
「…クッ!!アンタに何が分かるっていうのよ!!」
吐き捨てた神楽が再び式符を取り出すと同時に少女から目に見えない衝撃を受けて吹き飛ばされてしまった。
睨み付ける神楽に向かいゆっくりと近づく少女の体が重力から解き放たれた様にふわりと浮きあがる。
「…それはこれから教えてもらうわ。
私達を狙った理由と一緒に…ね。
私の名前はウルスラ。貴方に力を持つことの意味を教えてあげる。」
~~~~~~
額から冷たい汗が流れ落ちる。
闇から現れたような美女、パーセフォニーと対峙してからどれだけの時間が流れたのだろうか。
一瞬とも永遠とも思える重圧の中で龍丸は己の中の何かが首を擡げるのを感じていた。
「リードが出来ないのは頂けないわよボウヤ。」
均衡を破ったパーセフォニーが此方の間合いに入ったと同時に刀を横一文字に振った龍丸、しかしその切っ先は何も捉えられなかった。
「此処は少し狭いわね。フロアを変えましょう?」
壁と天井を蹴って龍丸の背後へと降りたったパーセフォニーが後ろ回し蹴りを放つ。
それをまともに受けた龍丸は大きく吹き飛ばされて壁へと叩き付けられた。
呻きながらも刀を手放さなかった龍丸だが次に繰り出された一撃を避ける隙はなかった。
「グ?!ヌグォオォォォ!?!?!」
壁に背をあずけた形の龍丸に一瞬で肉薄したパーセフォニーはシンプルな右ストレートを放った。
最も残像が見えるようなスピードで振るわれた右腕がただのパンチと呼べるならばだが。
決して薄くは無い壁を紙細工のように粉砕しながら突き破った。
威力は常人ならば即死しても不思議ではない代物だったが、龍丸は違う。
この男の強靭さは生半可なものではない。比喩でもなんでもなく龍丸のタフネスは野生動物のそれに匹敵するだろう。
そうでなければ-彼-のトレーニングパートナーなど務まるはずもない。
事実数メートルの高さからコンクリートの地面へと落下したが激突までの間に鍵縄を庇に引っ掛けて減速、ダメージを最小限に抑えていた。
壁の大穴からその様子を見ていたパーセフォニーの口角が上がる。
その美しい微笑みからは親愛とはかけ離れた、あえて言うならば肉食獣が牙を剥いた威圧感を放っていた。
ふらふらとはしながらも立ち上がった龍丸が見上げるとパーセフォニーと目があった。
互いの闘志を感じ合った二人。
パーセフォニーはゆっくりと足を-壁-へと踏み出すと散歩にでも行くかのような軽やかさで歩いていく。
「…壁を…-歩く-だと?」
駆け降りるわけでもなく突起に掴まっているわけでもない。
何かのトリックか幻覚か。だがそんなことはどうだっていい。
奴は敵だ。排除せねばならぬ敵なのだ。
ならばすべきことはひとつ。
「…斬るッ!!!」
この-待宵-の錆にするまでだ。
壁を歩く超人に一直線に駆け寄った龍丸は闇を切り裂かんばかりの鋭さで、両手で握った刀を振るった。
僅かに首を傾けてそれを躱したパーセフォニーが壁を蹴って体を捻り、足刀で龍丸の首を狙う。
「やるな!だが甘い!!」
振り切った刀を瞬時に切り返すには人間離れした筋力と卓越した技量が必要となる。
そして龍丸は双方を持ち合わせていた。
刀の峰を返してパーセフォニーの攻撃を弾き返した龍丸は既に室内での奇襲や叩き出された際に負ったダメージをある程度回復し始めていた。
ふわりと宙返りで距離を空けたパーセフォニーは重さを感じさせない着地を魅せると不敵に笑う。
「なかなかやるじゃないボウヤ。…貴方に興味が湧いてきたわ。」
あれだけ派手に動いていたにもかかわらず汚れやしわが一切見られない白いパーティドレスに手をかけると一瞬で脱ぎ去った。
「…ようやく本気という訳か。」
そこにいたのは真っ黒の背広に身を包んだパーセフォニーだった。
真四角に近い黒のサングラスをかけたその顔からは一切の表情が抜け落ちまるで精巧に作られたろう人形のようだ。
「この格好はあまり好きじゃないの。不愉快な思い出しかなくて…でも。」
最後まで聞かずに龍丸が投げつけた八方手裏剣を残像が残るほどのスピードで上半身を反らしてかわしたパーセフォニーが高らかに宣言する。
「重要なのは、何事も理由があって起こるということ。」
~~~~~~
その日もいつもと変わらない日だった。
従軍していた彼が退役して故郷に戻ってきて間もなく一年が経とうとしている。
働き口に苦労するかと思ったが彼が町を出た後に台頭した-パラダイム社-のおかげで彼は守衛として日々の糧を得ている。
此処に勤め出して3か月、今は夜勤巡回の時間だ。彼は誰もいなくなったオフィスを見回っていた。
ふとデスクの陰で何かが動いたような気配がした。
懐中電灯の明かりを向けるとともに腰の拳銃に手を伸ばす。
「誰かいるのか?!」
知らず強張った口調で闇を睨むと気配の主が姿を現した。
「…か、陽炎筆頭秘書官?!」
そこにいたのはこの会社の幹部の一人でもある陽炎だった。
「…遅くまでご苦労様。」
「は?!あ、あの…あ、ありがとおございましゅ?!」
パラダイムの顔ともいえる秘書軍団の中でも群を抜いた美女である陽炎と深夜に二人きりという現実に先程とは別の意味でドキドキし始めた彼は彼女からかけられた労いの言葉に上ずった声を返すので精いっぱいだった。
そんな彼の様子に顔を綻ばせた陽炎はゆっくりとその距離を縮めた。
「こ、こんな時間にどうされたのでしょうか?」
「…オフィスに忘れ物をしてしまいまして。」
「そ、そ~だったんですね!もうお帰りですか?」
ニコリと微笑み背を向けて立ち去る陽炎を恍惚とした表情で見送っていたがふと思い返したことがあったので声をかけた。
「あ!陽炎筆頭秘書官、申し訳ありませんがIDを確認させていただいてもよろしいですか?」
ピタリと足を止めた陽炎が此方に振り返ると今度はこちらから近づいていく。
「すいません、一応規則なもので…」
その表情は本当にすまなそうだったがほんの少しでも彼女との時間を増やしたいというささやかな願いも含まれていたのも否めなかった。
そんな彼の心を知ってか知らずかクスリと笑った陽炎は彼に告げた。
「そう…なら-彼女-に見せてもらって?」
陽炎の言葉を理解する間もなく職務に忠実な警備員は背後から忍び寄った少女によって頸動脈を塞がれ、意識を明日の朝まで取り戻すことは無かった。
力を失った警備員をオフィスのロッカーに担いで隠した少女、もとい九頭紫苑はそっと陽炎の元に近寄った。
「あのお兄さんには申し訳ないことしちゃったね、レイブン。」
「まぁ仕方ないわ。IDまでは準備する時間もなかったし、ここまで見つからずに来れただけ御の字ってことよ。」
変身を解いたレイブンことミスティークは肩を竦めて近くのデスクに腰かけた。
目撃者を出してはしまったが彼女にとってそれ程気にすることではなかった。
むしろ永遠に口を封じてしまっても良かったが…それは紫苑が許さないだろう。
そんなことをミスティークに思われているとは気付いていないのか、辺りをきょろきょろとしていた紫苑がふと何かに呼ばれた気がして後ろを振り返った。
暗いオフィスの奥、重厚な扉の向こうに何かを感じた。
スパイダーセンスに反応は無い。危険は無いという事だろうか。
でもあの扉を開けたいという気持ちが高まっていく。
自然と踏み出した足の赴くまま、いつの間にやら扉の前に立っていた紫苑がノブに手をかける。
様子の変わった紫苑に気付かないミスティークではなかったが、あえて何も言わなかった。
たとえ何が出ようと構いはしない。邪魔なものは叩き潰すまで。
観音開きの扉を二人で押し開けた。
明りのない部屋だ。
だが、そこに確かにそれはいた。
それは大きく
それは重く
それは歪で
余りにも圧倒的だった。
「ステキな夜だ…
静かで……………
優しくて………」
机の上のキャンドルに火が灯された。
ほんの僅かな光の中に浮かび上がった男。
彼こそがこの部屋の、いやこのセカイの主なのだ。
そう紫苑は直感した。そしてこれは避けられぬ戦いであるということを。
ギィ…
高級な革張りの椅子から腰を上げた男が入り口から動けない二人を見ながら一歩、二歩と近づいてくる。
「君に会うのをどれほど待ちわびていたことだろう。」
身長は優に2メートルを超えている。
「あの英雄と名高いBIGBOSSの薫陶を受けた一人の少女。」
派手な柄シャツを着ているがそれを下から盛り上げる肉体のなんと厚いことか。
「己の死さえも乗り越えた-超越者-」
暗い室内にも拘らずサングラスをかけたその顔には無数の皺が刻まれており彼の生きてきた年月を物語る。
「眉唾物の与太話かとも思えたが中々如何して…実に素晴らしい。」
(人類-ヒト-と戦うという気すらしない‼)
おそらくはこの男よりも長く生きているはずだろうミスティークは自分の内側を駆け巡った寒気にギリッと奥歯を噛んだ。
(誤った!紫苑をここへ入れるべきではなかった!)
震える己を見透かしたのか男がニィと笑った。
(差し違える‼何としても紫苑を守る‼)
動き出そうとしたミスティークの前に紫苑が一歩男の前に踏み出した。
「Dr.ウェインライトの令嬢、ドロシー・ウェインライトを頂戴しに参りました。」
まっすぐ。愚かなまでのまっすぐ。
そうだ、何をおびえているレイブン・ダークホルム。私はスーパーヴィラン、ミスティーク。
そして、九頭紫苑と肩を並べるものだ。独りじゃない。
「エクセレント…素晴らしい。」
男が人差し指を立てる。
「一つ条件があります。それを受けていただければお姫様を貴女方にお返ししましょう。」
紫苑とミスティークは瞬きもせず男を見続ける。
バチィッ!!!
それを肯定と取ったのか男がスナップを鳴らす。
「ジャスト・ワン・ウィーク。一週間の時をあげます。
来週の今日、私が主催する地下リングで私と真剣勝負をしなさい。
君に 哭かされたい 」
キュ…
ベチィッッ!!!
もう一度スナップを鳴らした男から紫苑は目を逸らさなかった。
「私の名前は九頭紫苑。貴方の名前は?」
「 サクラ
人呼んで -泣き虫サクラ- 」
ベチィッッ
というわけでおまけタイムです
いっつもお待たせしてますが少しでも楽しんでくれれば幸いです
某国 格納庫にて録音
「よし、みんな忘れ物はない?」
「紫苑こそちゃんと着替えとパスポートは持った❓
これは潜入任務じゃないんだからね❓」
「ち、ちょっとE.E.‼人聞きの悪いこと言わないでよ‼」
「だ、大丈夫。わ、私も一緒に…準備した…から…」
「ハハッ‼サニーにまで言われてら‼」
「キャサリー‼…もうみんなして私をからかうんだから…」
「仕方ないわよ。兄さんから紫苑は無茶するって聞いてたけど本当だったもの。」
「そうそう。急に日本でデビューだなんて…しかもアイドルだなんてなぁ…」
「き、キャサリーのギター…好きだよ…」
「あぁ~サニー‼そんな可愛いこと言って‼
…もうアンタはアタシらのトップアイドルだよ‼」
「…ハァ…キャサリーったら騒々しいんだから…」
「ふふ~ん。アタシとサニーの仲がいいから妬いてんのかい、エマ❓」
「はいはいそこまで。とっとと飛行機に乗ってちょうだい。
日本人は時間に厳しいのよ。-待たされる-のは嫌いなの。」
「フフッ…そうね。兄さんも同じこと言ってたわ。
キャサリーのお父様もそうだったのかしら❓」
「…あ~…ミラーさんは…その…」
「紫苑…言わなくても大体察したから。」
「が、頑張ったら…お母さんも見て…く、くれるかな?」
「…えぇ…オルガさんも忙しそうだったけどおっきいイベントにはきっと来てくれるよ。」
「アタシもグランマのお墓参りに行きたいな。…ダディのこと…ちゃんと伝えてあげたい。」
「キャサリー…」
「お~~~い!!!!もう出発の時間だから早く乗ってくれ!!!」
「アキバさん❓!どうしてここに❓」
「あ、私が呼んだの。パイロットに良いかなっと。」
「ちなみに僕が操縦するから。」
「「ハル兄さん❓!!!」」
~~~~~~
この後秋葉のメイド喫茶に行ったことをメリル達に嗅ぎ付けられてオタク2名はお仕置きされました。
思ったより長い小話でしたがいかがでしたでしょうか❓
デレマス編に突入すると主人公の活躍の場がほとんどなくなっちゃうのが悩みどころ
そんなことよりデレステ難しすぎません❓