Historia~彼女を救う彼女の物語~   作:瞬く陰と陽

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お待たせしました
あんまり進んでませんがとにかく続きです

ついでに今回の章の黒幕さんも登場(においだけ)


あんないいキャラなのにちょっとだけ出すのはもったいないよね


金色の螺旋―コンジキノラセン―

千日手という言葉がある。

 

ボードゲームにおいて同じ手を双方が繰り返し行うことにより局面が進展しなくなることをいう言葉だ。

 

夜更けに始まったウルスラと神楽の攻防はまさにこの状況に陥ろうとしていた。

 

 

 

「クッ…?!これならどう!

 

式符 -五星呪炎槍-!」

 

神楽の放つ燃える式符が宙に浮くウルスラに向けて真っすぐに飛んでくる。

 

 

「…ハァッ!!」

 

しかしウルスラの放つPK(サイコキネシス)に軌道を逸らされて有効打を与えることができないでいた。

 

 

「今度はこちらの番よ‼」

 

両手の中で発生させた球体のフォース・フィールドを神楽へと打ち出した。

 

 

 

「…‼式神召喚-烏天狗-‼」

 

先に放った式符が弾かれることは織り込み済みだった神楽は既に自身の切り札を切った。

 

人型の式符を取り出して宙に浮かせると素早く印を組んだ。

 

 

神楽のESP(シキガミ)はいわゆる召喚魔術と付与魔術の中間と言える特殊技能だ。

 

人型の式符を媒介として妖を憑依、現世に顕現させることができる。

 

しかしそれは神楽自身の精神力に大きく依存する。

 

 

そして今の神楽に呼び出せる戦闘に特化した式はこの烏天狗だった。

 

山伏の格好に烏のような巨大な嘴を持った顔をした150cm程の大きさの小男は背中に生えた翼で宙を舞っていた。

 

 

「キシャアアァァッ!!!」

 

 

耳障りな奇声をあげてウルスラに襲い掛かる烏天狗。

鋭い爪を白い肌に突き立てるべくウルスラに飛来したが強固に張られた彼女のバリアを破ることができない。

 

 

「ハァッ!!」

 

再び打ち出された攻撃をひらひらと翼をはためかせ躱す烏天狗。

 

 

(…まずい…長期戦は私に不利ね。)

 

額を流れる汗を拭う余裕もなく心の中で零す神楽。

 

烏天狗を召喚するために消費した精神力は多い。

少なくとも撤退のために残しておくべき精神力を考えると無駄にはできない。

 

短期決戦を挑もうにもウルスラのフォースフィールドを打ち破るほどの力がないことは先ほどの攻防で分かってしまった。

しかしこのまま召喚を維持し続ける時間もそれほど長くはない。

 

 

(…龍丸…)

 

キリッと奥歯を噛んだ。

 

 

 

一方のウルスラには致命的な弱点があった。

 

ウルスラは強力無比なESP能力を有している。

これはFOX時代の(ウルスラ)に勝るとも劣らない強さだ。

 

だが、それを行使するのは感情(こころ)を失ったウルスラ()ではない。

 

 

他人の幸せを自分の事のように喜び、

 

他人の不幸に涙を流すことができる、

 

慈愛に満ちた一人の普通の女性(エルザ)なのだ。

 

 

 

(…姉さん(ウルスラ)…)

 

 

人格(エルザとウルスラ)が統合され、

 

強力な能力を自分の意志で使えるようになった。

 

だからこそ、その力で命を奪うことが、

 

 

 

どうしてもできなかった。

 

 

 

 

(ウルスラ)に罪を重ねさせることが(エルザ)には耐えられなかった。

 

 

 

 

 

好機でありながら攻め切ることができないウルスラ。

ウルスラの弱みに付け入るほどの力を持たない神楽。

 

 

結果、二人の戦いは完全な膠着状態に陥った

 

 

 

 

~~~~~~

 

 

ドムッ

 

「ぐはぁぁぁっ?!!!」

 

 

血の混じった吐瀉物をまき散らし崩れ落ちる龍丸。

それを無感動な瞳で見下ろすパーセフォニー。

 

実力差は圧倒的だった。

 

 

龍丸の格闘術の力量はおそらくFOX隊員ですら一目を置くものだろう。

 

しかし相手が悪かった。

 

このパーセフォニー(怪物)の身体能力は人間の範疇を凌駕していた。

彼女は人間が発揮することが可能であろうポテンシャルを100%引き出すことができた。

格闘技の技量においてもその道を数十年単位で歩んだ達人に比肩しうるものだ。

 

 

 

(…おのれぇ…化け物かこの女…)

 

 

 

倒れ伏す地面から見上げる龍丸の顔めがけパーセフォニーのピンヒールが振り下ろされる。

 

 

 

ビッシィィィッッッ!!!!!

 

 

隕石が衝突でもしたかのようにアスファルトがクレーター状に陥没する。

間一髪、転がって避けた龍丸の額を冷たい汗が伝う。

 

 

 

すぐさま立ち上がるとパーセフォニーに拳を突き出す。

 

 

右 直突き

 

左 クロス

 

右 エルボー

 

左 膝蹴り

 

次々と繰り出される龍丸の攻撃を眉一つ動かさず捌き続けるパーセフォニー。

最後に龍丸がパーセフォニーの顔面へ繰り出した右ストレートを躱しざまに諸手を突き出すパーセフォニー。

 

そのあまりの威力に5~6メートルも吹き飛ばされた龍丸が地面を転がる。

 

 

 

同じような光景がすでに何度も繰り返されている。

力の差は歴然としていた。

 

 

決して届かぬ高い壁。

 

 

 

「…認めよう、この実力差…だが…」

 

それでも(龍丸)は立ち上がる。

 

 

「俺には…退けぬ理由がある!」

 

 

 

既に肉体の限界は超えていた。

 

 

 

動かないものを動かす。

 

その原動力は…

 

 

 

 

「…(スピリッツ)…か…」

 

 

ぽつりとこぼすパーセフォニー。

 

表情の変化に乏しい彼女ではあるが今はその顔に僅かにウカブモノ。

 

 

 

 

それは羨望。

 

 

 

 

 

エグザイル(放浪者)

 

 

 

かつて彼女は、()()()はそう呼ばれていた。

 

それらは目的のために生み出されながらも、

自身の役割(ロール)を放棄した存在。

 

 

 

このセカイにも、私の居場所はない。

 

 

誰も必要とはせず、

 

誰にも必要とはされない。

 

 

 

「はぁ、この感じ…昔は知っていたのに…」

 

 

 

 

人と同じ姿を持つ彼女達はプログラム(完成品)であった。

 

役目(崇高なる使命)と、人智を超えた能力(越権行為)を、

 

 

 

(デウス・エクス・マキナ)から与えられた。

 

 

だが彼女達にはたった一つだけ持ち得ないものがあった。

 

 

 

進化(アップデート)

 

 

 

パーセフォニーは龍丸よりも優れた戦闘技術と驚異的な身体能力を有している。

 

だがどれ程鍛えたとしても肉体の強化はされず、技量の向上も望めない。

 

ここが彼女の終着点(エンディング)なのだ。

 

 

 

だからこそどうしようもなく焦がれるのだ。

 

 

 

「…私は見てみたい…」

 

 

 

人の可能性を、選択の結果を、

 

 

 

 

九頭紫苑が描く未来を。

 

 

 

 

 

あなたたち(人間)は強い。そしてまだ強くなる。

 

 

 それが…たまらなく愛おしく羨ましい。」

 

 

 

 

だからこそ

 

 

 

 

「…だからこそ…

 

 

 貴方にはここで削除(消えて)もらう。」

 

 

 

猛然と龍丸に駆け出したパーセフォニー。

 

 

右 直突き

 

左 クロス

 

右 エルボー

 

左 膝蹴り

 

 

先ほど龍丸が仕掛けたラッシュをそっくりそのまま繰り出す。

攻守が逆転してもパーセフォニーとは違いかろうじて防御はしている様子の龍丸。

 

最後に繰り出された右ストレートはガードの上から龍丸を吹き飛ばすには十分すぎる威力を持っていた。

 

 

 

 

 

「龍丸ッ!!」

 

 

 

 

倒れ伏す龍丸に駆け寄る神楽。

その顔には僅かな泥と疲れが見えた。

 

 

 

「パーセフォニー…私…」

 

 

「…気にすることはないわ…

 

 その優しさは貴女(ウルスラ)の美しさそのものよ。」

 

 

 

ふわりと隣に降り立ったウルスラの浮かない顔を見てそっと頭を撫でるパーセフォニーの口元には笑みを浮かべて、そして消えた。

 

 

 

 

「あとは私がやる。」

 

 

 

 

いつの間にかその右手にはデザートイーグル(.50 Action Express)が握られていた。

 

 

 

 

 

 

「…神楽…()()を俺に使え…」

 

「な?!…お断りよ!今使ったらアンタは確実に…」

 

「…このままでは二人とも死ぬ…

 

 俺が時間を稼いでいる間にお前は皆のところへ行け。」

 

 

 

覚悟を決めた龍丸の言葉、しかし頷く訳にはいかない。

ここでそれを選択すれば神楽は永遠に自分を許せなくなる。

誇り高い神楽にそれは耐え難い屈辱だった。

 

 

 

 

終わり(フィナーレ)よ。」

 

 

 

 

銃口を向け、引き金に指をかける。

 

 

パスン

 

 

軽いエアーの音がして龍丸が崩れ落ちる。

その首筋には小さな麻酔弾が刺さっていた。

 

「たつm パスン …うッ?!…しまっ…」

 

驚いた神楽の首筋にも同じ麻酔弾が刺さっていた。

 

 

「成程…Mk22(ハッシュパピー)の麻酔弾発射用改造モデル。

 

 なかなか悪くないわ。連射は利かないけれど殺さず無効化できるのは利点ね。

 

 

 

 流石はCIA(ラングレー)ね。いい仕事してるわ。」

 

 

「アイリーン…」

 

 

闇から浮き出るように現れたアイリーンは興味深そうにその手の中のピストルを観察している。

 

 

龍丸たちに向けていた銃口を下したパーセフォニーにアイリーンが微笑む。

 

 

 

 

「さぁ…もうすぐ夜が明ける。

 

 この子たちを運んで頂戴。

 

 

 

 まだ使い道があるから…ね?」

 

 

 

 

~~~~~~

 

 

同時刻、パラダイム本社前。

 

 

派手なスポーツカーの運転席にはトップの姿があった。

自身も元特殊部隊(グリーンベレー)だったトップ。

だからこそ彼女は紫苑とレイブンを送り出した。

ミッションにおいての脱出経路確保の重要性をよく理解していたからだ。

 

最も、己の能力に絶対の自信を持つミスティークとそもそも潜入工作の訓練を積んでいない紫苑はそういう準備を任せられなかったのだが。

 

「…ふぅ…」

 

とはいえ緊張は隠せない。既に夜明けも近い時間。

そろそろ撤収しなければ人目に付く。

 

 

ふとボンネットになにかが落ちたような気がした。

 

「雨?…いや、違う。」

 

 

パラパラと上から落ちてきたのは小さなガラスの破片だった。

 

 

BOOON‼

 

 

次に落ちて、いや降りてきたのは黒いスーツ(シンビオート)に身を包んだ紫苑とその腕に抱えられたミスティーク。

 

 

 

終わったよ(任務完了)。…決戦は来週に持ち越し。」

 

「ねぇ紫苑…もうちょっとお姫様でいてもいい?」

 

「~~~ッ?!…アホなこと言ってないでさっさと乗んな!」

 

 

肩を竦めた二人を乗せて車が夜明けの街へ消えていく。

 

 

 

ガラスの割れた窓から大男(サクラ)がその光景を見送っていた。

 

 

 

「「お館様?!」」

 

 

 

 

騒ぎを聞きつけて扉を蹴破らん勢いで入ってきたのは陽炎と立羽だった。

 

 

「ちょ?!なんなんこれ?!」

 

 

部屋に吹き込むビル風。無残に砕け散った巨大なガラス窓。

高級な調度品に彩られた社長室が台風でも過ぎ去ったかのような惨状に思わず立羽が悲鳴にも似た声をあげる。

そんなことは意に介さずサクラが呟く。

 

「…陽炎。先ほどシオンと言う少女と友人になったよ。」

 

「あ…それは…」

 

夜が明けていくメトロシティを眺めながらサクラが嬉しそうに笑う。

 

 

 

「私へのサプライズプレゼントは成功だよ、陽炎。

 

 

 アレほどエクセレントなファイターは-見た-ことがない。

 

 

 彼女ならば私は思う存分、哭けるだろう。」

 

 

 

「…?!ま、まさか彼女と闘うお積りですか?!」

 

 

 

声を荒げる陽炎に振り返ったサクラの口元には笑み。

 

 

 

 

 

「アブラナの香り。」

 

 

 

「…ア、アブラナ?」

 

 

 

「少し前、君やヘルガーからその香りがした。」

 

 

 

 

 

朝日が部屋に差し込む。

 

逆光となってサクラの顔が見えなくなる。

 

 

 

 

だが、

 

 

 

 

 

「君たちを嗾けたのは一体誰かな?」

 

 

 

 

その-言葉-は重い質量を伴って陽炎の耳に届いた。




それではまたおまけをお楽しみください



アメリカ合衆国にあるとある芸能プロダクション社長室にて


「~♪~♪」

「フフッ…クワイエットは今日もご機嫌ね」

「あぁ。-あの子たち-の新曲が余程気に入ったらしいな。」

「今を時めくチームアドラー制作の楽曲ですものね。

 きっと世界中でヒットするわ。」

「-幸運の女神-がそういうなら我が社も安泰だな。」

「貴方が組織を潰し過ぎなんですよ、英雄さん?」

「…耳が痛いな…」


「~♪~♪」

「…ん…分った、確かにそろそろ日本に着く頃だな。」

「~♪~♪」

「…あぁ…あいつなら大丈夫だ、紫苑がついてる。」

「~♪~♪」

「…そうだな…あいつは人間として生きるべきだ。

 それが彼の遺志でもあるしな。

 紫苑ならば導けるだろう。」

「~♪~♪」

「…そうか…なら昼は肉を食おう。」

「…どういう意思疎通方法なのよ…」




はい、デレマス関係ありません

ただの爺と半裸の秘書の可愛いやり取りが書きたかっただけです。

幸運さんは幸せになってほしいですね
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