そしてJAMprojectのライブツアー初参加お疲れ様。
もうじき陰陽座のツアーも始まっから体調には気を付けるんだぞ?
予定ではこの章はあと2~3話のはず。
年内に終わらせてPW編に入りてぇっす…
ウワァァぁぁアぁアぁぁァぁぁぁぁぁ!!!!
「今夜の獲物は誰だぁ!!」 「最高のショーを見せてくれ、
「黄色いサルを殺せぇ!!」 「ア~~~便所行っとくんだった…」
「なんかいっぱい居ない?」 「しかもちっちゃくね?」 「っていうか女だろ。」
「1…2…3…4…4対1かぁ⁈」 「日本人はSAMURAIなんでしょ?」
喧々囂々、己の欲望をさらけ出す者や、意味のない奇声をあげる者もいる。
「…精々数百人ってところなのにこの熱気…
それに客層を見ても…全く…これだから人間は…」
「あら?こういうのには人間もミュータントも関係ないでしょ。」
「…あまり…愉快な空間じゃないわね…」
周りの観衆に各々の感想を呟く三人の女。
だが彼女の目にはそんなものは映らない。
彼女に見えるのはただ一つ、リングの中央でこちらを見つめる男だけ。
引き寄せられるようにすっと前に出る。
リングの下から見上げる。
彼女の立つ地面からキャンバスまで約一メートル。
キャンバスに立つ男は二メートルを超える大男。
対する彼女は一六〇センチにすら届かない、欧米では子供に間違われても不思議ではない。
ニィ
男が嗤った。
「…フフッ…」
彼女、九頭紫苑も嗤った。
ヒュォッ‼
閉め切られたホールに風が起こる。
観客には紫苑が浮いたように見えただろう。
地面からトップロープまで約2.2メートル、それを助走なしのその場飛びで超えてしまった。
シュタッ
膝を屈め右手を軽く地面につけたまま顔をあげた紫苑。
「待たせたかしら?」
その顔には不敵で好戦的な笑みが浮かぶ。
「私はこの日を数十年待ったんだ。
いつか来ると信じていた、今日この日を。」
男の顔が紫苑と同じモノへと変わる。
サングラスのその奥から確かに紫苑は視線を感じた。
「逃げずによく来てくれた。」
「えぇ。友達の為ですもの。」
紫苑は安心させるように笑った。
彼の向こうに見えた少女を安心させるために。
「…君はとても愛に溢れた人だね。
そして悲しみも知っている。」
「貴方もそうでしょ。」
笑みを深めたサクラは右手を差し出す。
「…ベストを…」
差し出された右手を紫苑は握った。
大きな、大きな手が紫苑の手を包み込む。
ミ…シ…
サクラの左手が紫苑の手首も覆う。
「わたしの内にあるキャンバスに描かれた、
未完成のシオン・クガシラ。
シオンよ……
その未完成だった腕部が…
今、
シオンの腕を掴んだまま、手首を返して紫苑の体を揺らす。
グラ
クラ
よた
ふらついた紫苑がよろめく。
「スバラシイ、見事な下半身だ。」
「サクラさん、それセクハラ。」
「フフフ…これはすまない。
確かに…レディにかける言葉ではなかったね。」
手を放したサクラが素直に謝ると紫苑は肩を竦める。
「いよいよ大詰め。君の姿も完成間近だ。」
じっと紫苑とサクラが見つめあう。
「残るは眼。」
あれほど騒がしかった会場がいつしか静まり返っている。
「眼を…触らせてくれるかね。」
「…アイツ…絶対殺す…」
「はしたないわよ、ミスティーク。」
サクラの手が紫苑の顔へと伸びる。
「
動かないッッッ⁈」
サクラの指が紫苑の眼球に触れ、
「紫苑ッ…⁈」
瞼の裏に入り込む。
ニィ
「
できたーーーーーーーッッ!!!
」
体の内から沸き上がる歓喜に絶叫するサクラ。
「愛する我が子達よッッ!
シオンはエクセレントだ!
キミ達はスバラシイファイターを
プレゼントしてくれた!」
サクラが他よりも一段高い
そこにいたのは陽炎、神楽、龍丸、
紫苑達には直接の面識は無かったが立羽とベルガ―の姿もあった。
その誰もの表情には驚愕の色が浮かんでいた。
(…わ、我が子…ッ!!)
「
今 夜 は 哭 け る ッ
私は今夜、大声で哭くぞッッ」
夢中で宣言するサクラとは真逆に紫苑は冷静だった。
彼が我が子と呼んだ集団の中に『芸術品』のような少女の姿を見つけたからだ。
「…
「…勿論よBOSS。」
不敵に笑うアイリーンは
最初に動かす手は、
「~作戦は奇を以ってよしとすべし~。
私たちの
その異変に気付いたのはサクラだった。
(…!)
背後にいた紫苑から感じた異変。
(!!?)
生けるもの、死せるもの
(!?)
万物にはそこに存在するだけで
(?)
発する匂いがある
(!!!)
忽然としてそれが
(消えた!!?)
振り向いたサクラの目前、
消えたと感じた紫苑は依然そこにいた。
「
THWIP!
右手首から伸ばしたウェブをサクラの足に取りつかせる事に成功した紫苑。
勢いよく引っ張ると足元を掬われたサクラはひっくり返る。
「お足元にご注意を!…お次は…っと…」
観客には子供にしか見えない紫苑が行った行動は目を疑うものだった。
天を突くような大男、怪人サクラの身長は2mを超え体重は150㎏以上。
「そぉぉれっ!!!」
サクラの足に引っ付けたウェブを手繰り寄せた紫苑はハンマー投げの要領で自身を中心に振り回し始める。
二回
三回…
ブォンブォンと風を切る音が会場に響く。
リングもギシギシと悲鳴を上げる。
「ほぉぉらぁぁっ!高ぁいっ!高ぁいっ!!」
遠心力が最高速度に達すると紫苑はサクラを真上に放り投げる。
GASSHAAAAN!!!
リングを煌々と照らしていたステージライトに叩き付けられたサクラに向けて両掌を向けた紫苑の口角がサディスティックに上がる。
「夏休みの宿題は終わったかしら?」
THWIP! THWIP! THWIP!
大の字にステージライトに埋もれたサクラの両手足をウェブで拘束した紫苑。
それはまるで磔にされた聖人のようにも見えたが紫苑はそうは思わなかったらしい。
「昆虫採集、一丁上がりっと。」
誇らしげに胸を張る紫苑。一瞬の出来事に誰も声が出せない。
天井に縫い付けられたサクラの顔からサングラスがポロリと重力に引かれ零れ落ちた。
上から落ちてきたサングラスは導かれるように紫苑の片手へと収まった。
高級そうなそのサングラスにちらりと見た紫苑。
微かにぬくもりも残っているように感じたその高級そうなものをしげしげと眺める。
クス
クスクス
静寂の訪れたアリーナに笑い声が落ちる。
それは当然凡人の数十倍に感覚を強化された紫苑の耳にも届いている。
「…ま、この程度じゃやっぱり無理か。」
言葉の内容とは裏腹に、残念さよりもむしろ高揚感すら感じさせる声で紫苑がつぶやく。
BAKIBAKIBAKIBAKIBAKI!
貼り付けられたステージライトを文字通り
GASSYAAAAAAAANNNN!
会場に響くガラスの割れる音に観客が悲鳴を上げる。
DOOOOOMMM!!!
かなりの高さから大量の破片と共に落下したにも関わらずその肉体には傷一つなく、キャンバスに聳えていた。
天井のステージライトが破壊されたため、薄暗くなったリングを照らすために予備のスポットライトに火が灯る。
「なっ?!」「エェッ?!」「…成程、確かに
サングラスを無くしたサクラの貌を見たミスティークとウルスラは思わず声をあげ、アイリーンも表情を険しくつぶやいた。
観客の誰かが叫ぶ。
「
眼球が ない!!?
」
まるで
「おい…あれって…」 「ウソォッ!」 「あ…ああ、眼がない……」
「眼球が抜け落ちて…」 「眼窩がそのままなんだ!」
「キャアアア!」 「うわァッ!」 「眼がないッ!」「……ッ」
騒然となる会場を尻目に紫苑はその手に持ったサングラスに目を落としスッとサクラへと差し出す。
「…これ、落ちて
天然なのかワザとなのかにこやかに差し出してきたソレに
「わたしは試合で眼鏡を外したことがない…」
首を傾げる紫苑だが、サクラは一人つぶやく。
静かに
「外す必要もなかった。」
強く
「そんな私が----」
はっきりと
「生まれて初めて眼鏡を外してもよい相手と出逢った。」
その名を
「
シオン 君だ。
」
サクラは笑う。
「君にその眼鏡を捧げたい。」
自分の玩具を初めてできた友達に送るかのようなキラキラとした少年の笑顔でサクラは笑う。
「ありがとう。大事にするわ。」
紫苑も笑った。
奇妙な友情。
二人の間にもう言葉はいらない。
カンッ
闘いのゴングがなった。
~~~~~~
「えんちょうせんせ~!続きは~!」
「…ハハッ…この続きはランチの後だ。」
メトロシティの郊外にある森に大柄の老人と一人の幼い少女の姿がある。
彼らは街の孤児院の春のイベント、ピクニックをしていた。
は~いと少し残念がりながらも切り替えの早い少女はお弁当を広げ始めていた
その後ろ姿を見て老人は在りし日を幻視する。
あの日、
互いの全てを賭けた死闘を経て、
無二の親友を自分は得た。
そして気づかされたのだ。
―ママ―を失ってから、-
止まっていた時間と涙。
それが流れ出したとき、私の周りには私を慕う―家族-がいたことに。
「…君の言葉は正しかった。」
空を見上げる。
きっとあの子は今も
相も変わらず何処かで
誰かのために闘っているのだろう。
「ママはいないが私の周りには家族がいた。
心の目の曇っていた私に君が気づかせてくれた。」
そして
「サクラ園長~!!こっちでランチだよ~!!」
「…あぁ。今行くよ。」
新しく迎えることもできる。
私に生きる理由を再び与えてくれた。
ママを安心させるため完成した
暖かな家を作ることができると示してくれた。
サングラスの奥で失ったはずの涙腺に熱いモノがこみ上げる。
…いかんな…これでは本当に
さてランチを済ませたらあの子にせがまれた話をしなければな。
私を変えた運命の闘い。
あの日のことを君も忘れないだろう?
なぁ
次はなるべく早く書こう…