Historia~彼女を救う彼女の物語~   作:瞬く陰と陽

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私TUEEEEEタイム


VENOM STRIKE

 

 

 

真っ赤な瞳に嘲りの色を浮かべザ・フィアーを見据えている。

 

 

『!?お前…シオンなのか!?』

 

 

未だに信じられないといった様子のスネークがシオンと思わしき人物へ問いかける。

 

しかしまるで聞こえていないのかシオンは答えない。

 

 

 

 

『ふざけたコスチュームを着やがって…死にたいようだな…』

 

 

 

木の表面を這いながら尋常ではない長さの舌を出し威嚇するフィアー。

 

 

 

『フフッ…

 

 

 威勢が良いのは結構♪

 

 

 だけど…度が過ぎると惨めよ♪』

 

 

 

肩を竦め虚仮にするシオンに並みの兵士なら卒倒するような殺気とともにボウガンを取りだし、シオンへ向ける。

 

 

 

『小娘が!!』

 

 

 

THWIP! THWIP!

 

 

 

『ッ!?何!!』

 

 

 

シオンが右手をフィアーに突きだすと、手首から射出された蜘蛛の糸に絡めとられ、

 

瞬きの後にはボウガンが少女の手の中に収まっていた。

 

 

 

 

『乙女に物騒なもの突き付けちゃダメよ。

 

 まぁ先に一本喰らったんだから…

 

 倍返し♪…覚悟してよね。オ・ジ・サ・ン♪』

 

 

 

そういって弄んでいたボウガンを後方へと大きく投げ捨てるシオン。

 

 

 

 

『そういえば…自己紹介がまだだったわね♪』

 

 

 

笑いながら言うシオンに這い上がるように黒い、まるでバクテリアのようなものが顔を覆い隠す。

 

 

それはあまりにも邪悪なマスク。

 

 

 

口は耳まで裂け、血のように赤い舌が長く垂れ下がっている。

 

 

 

『私達はヴェノム(猛毒)シーヴェノム(毒婦)ってところかしら♪』

 

 

 

刹那、弾けるように飛び掛かると一撃でザ・フィアーを殴り飛ばす。

 

そこからは一方的な闘い、いやもはや制裁と呼ぶべきだろう。

 

 

驚異的な速さで空間を縦横無尽に動き、

 

フィアーの四肢を縫いとめるように糸で絡めた後、

 

 

『あはは♪It's clobberin' time!(鉄拳制裁タイムよ!)

 

BASH! BASH! BASH! BASH!

 

馬乗りになってパウンドを繰り出すシーヴェノム。

 

見る見るうちに顔面が変形していくザ・フィアー。

 

人間離れした怪力で放り投げたかと思うと糸で引き寄せ地面に叩き付ける。

 

 

 

最早ワンサイドゲームと化した闘いは、

 

シオンが飽きて大きく投げ出したフィアーがワイヤートラップで空中に静止したことにより終幕を迎えた。

 

 

 

 

恐怖(フィアー)!恐怖(フィアー)だ!

 

 

 見えたぞ!!恐怖(フィアー)が!!』

 

 

 

叫び鬼気迫る表情のフィアーを冷めた目で見つるシオン。

 

 

 

 

THWIP!

 

 

 

 

素早く大木を糸で引き寄せ盾にするのと同時、

 

 

 

フィアーは戦士としての最期を迎えた。

 

 

 

 

『…お前…本当にシオンなのか!?』

 

 

 

マスクを解除?したのか素顔になったシオンに銃口は向けないまでも警戒心を露にスネークが尋ねる。

 

 

 

『…半分は正解かしら…今はね…』

 

 

 

顔はシオンのはずなのにまるで別人のようだった。

 

するとおもむろにシオンが自身へと近付いてくると思わず身を固くしたスネーク。

 

 

 

『ただ久しぶりの実戦で少し疲れているの…

 

 -私達-をあなたに預けるわ…』

 

 

 

その言葉と共に倒れこんだ少女を抱き留めたスネーク。

 

 

意識を失った小さな体を背負いとにかく安全な場所を求め倉庫へと足を向けた。

 

様々な疑問は解決されていないが先を急ぐしかスネークには選択はなかった。

 

~~~~~~

 

 

ゆらり、ゆらり。

ゆりかごのなかのようにからだがゆれている。

 

 

真っ暗な空間のなかに紫苑は一人立っていた。

 

 

(ここはどこだろう…)

 

ひたひた…

 

何かが這い寄る音がした。徐々に姿が見えてくると紫苑は息を呑んだ。

 

 

黒いスーツに身を包み、

 

耳まで裂けた口からは血のように赤い舌が長く蠢いている。

 

目の前に迫った異形は静かに語りかける。

 

 

「愉しかったか?」

 

(たのしい?なにがたのしいの?)

 

「チカラだ。チカラを奮うのは愉しいだろう?」

 

口をさらに吊り上げ嗤いながら異形が尋ねる。

 

 

「…それは違うわ…」

 

 

紫苑の否定の言葉にわからないと首をふっているのを見て、

 

何故か大型犬のように見えた紫苑はクスリと笑う。

 

 

 

「力は何のために奮うかが重要なのよ。

 

 

 目的を果たすために全力を尽くす、

 

 

 その為に全ての力は有るんだと私は思っているわ。」

 

 

 

幼い子どもに言い聞かせるように話す紫苑。

 

 

「GRR…目的…それがないと力は使えないのか?」

 

 

「少なくとも私はしたくないわ…ねぇところで…」

 

 

BWWWN!

 

 

 

突然空間に皹が入ったかと思うと、

 

世界が砕ける感覚に襲われた紫苑。

 

 

『ううん…ここは…』

 

 

紫苑が目覚めるとそこは何かの倉庫のようだった。

 

ふらつく頭で扉を開けると深いジャングルであった。

 

ふらふらとジャングルをさ迷う紫苑。

 

ZAAAK!

 

強烈な気配を感じて振り返る紫苑。

 

 

ガァ

 

 

『…オウム…?』

 

 

しばらく見つめあう二人?の時間はなにかに呼ばれたオウムが飛び立っていくことにより終わりを告げた。

 

 

DOOOMMM!!

 

 

 

突然(ソクロヴィエノ)全体が揺さぶられるような爆発が巻き起こった。

その突風に煽られて紫苑は尻餅を着いてしまった。

 

強かに打ち付けたおしりを擦りながら立ち上がり、

 

辺りを見回した紫苑は木々の隙間に見つけた。

 

 

『スネーク!!』

 

 

駆け寄る紫苑に気づいたスネークは目を見張り、すぐに厳しい顔になった。

 

 

『そこで止まれッ!!』

 

 

鋭い声と手で制された紫苑は驚きながらも足を止めスネークを見る。

 

 

『お前…本当にシオンか?』

 

 

冗談には思えないスネークの様子に頷く紫苑。

 

 

『…シオン…あの黒い姿はなんだ?』

 

 

黒い姿と言われた紫苑は徐々に思い出してきた。

 

毒矢に襲われ意識を失った後、

 

バッグに入れた筈のスーツに身を包み、

 

ザ・フィアーを襲撃したこと。

 

 

その姿の名は…

 

 

『…ヴェノム…あの子ヴェノムって言うのね…』

 

 

一人独白する紫苑を見て危険はないと判断したのか、

 

スネークが銃をしまい両手を広げる。

 

 

不思議そうに見ていた紫苑。

 

だが徐々に笑顔になった紫苑は助走をつけてスネークの胸に飛び込んだ。

 

しっかりと紫苑を受け止めたスネークは小さな頭を幾分乱暴に撫でると語りかける。

 

 

『無事でよかった…さぁ先に進むぞ。準備はいいか?』

 

 

再び二人は歩き出す。結末(エンディング)に向け動き出している。

 

 

 

長いはしごを登り終え、山岳地帯にでた二人は哨戒するヘリや兵士の目を掻い潜り廃墟前へとたどり着いた。

 

 

 

 

 

『後ろから離れるなよ。』

 

 

忍び足で階段を登っていくスネークに張り付くようについていく紫苑。

 

と、突然止まったスネークの背中に顔をぶつけた紫苑。

 

ぶつけた所を撫でさすりながら恨みがましくスネークを見上げたが、

 

『あら 早かったのね。』

 

部屋の奥から聞こえた女の声に声が漏れ出た。

 

 

『EVAさん?』

 

 

ひょこっと顔を出した紫苑に女、EVAが飛び付いた。

 

 

『あぁ!!シオン!!怪我はなかった!?

 

 スネークになにもされてない!?

 

 貴女のきれいな肌に傷がついたらと考えると…ッ!?』

 

 

あられもない姿の美女に全身をまさぐられる。

 

(はわわ…きょ、胸部装甲がぁ~…)

 

顔を真っ赤に染めていたがEVAの体についた傷が目につくと

 

 

『EVAさん!?傷が!?』

 

 

と思わず紫苑が傷に触れると悩ましげな声をあげる。

 

『その傷は?』

 

『…大佐に…』

 

EVAの答えにスネークが目を開く。

 

『まさかばれたのか?』

 

『だったら生きてはいないわ。彼の趣味よ。

 

 人をいたぶる。人を痛めつけて快楽を得る。

 

 

 最低の男…』

 

『…ひどい…赦せない…』

 

 

『優しいのね。シオン…』

 

と艶っぽく紫苑の頬をなでて顔を近付けていくEVA。

 

『その辺にしてやれ。』

 

あわあわとあわてている紫苑を見かねてスネークが助け出してくれた。

 

『今の状況は?』

 

二人が互いの確認をしている間手の空いた紫苑はごそごそとバッグから即席ラーメンを取り出すとみんなで食べようと作っていた。

 

 

『あなたとキスしたら――

 

 きっと獣の味がするわ。』

 

 

ふと二人を見るとまるで口づけをするような体勢でずきりと胸が痛んだ。

 

 

視線を感じたのか二人がこちらを向いたのでラーメンを二人に差し出す。

 

『あら。ありがとうシオン。』

 

食べながらスネークたちは話の続きをしだしたので紫苑はフゥと息をついた。

 

静かにラーメンをすすっている紫苑の耳にスネークの言葉が響く。

 

 

 

『俺の半分はザ・ボスのものだ。』

 

 

 

『好きなの?』

 

 

 

『そういう感情じゃない。』

 

 

 

『嫌いなの?』

 

 

 

『好きか嫌いか…

 

 そのどちらかでないといけないのか。』

 

 

 

『そうよ。男と女の間がらはね。』

 

 

 

(…男と女…)

 

 

 

 

『10年生死を共にした。

 

 とても言葉ではいえない。』

 

 

 

 

(スネークとすごく深い関係にあった女性…)

 

 

 

『そんなザ・ボスを――』

 

 

 

(そんな人の命を…)

 

 

 

『殺せるの?』

 

 

 

(奪いにいく…)

 

 

 

抱きついていた腕を解くEVA。

 

 

 

『ザ・ボスの暗殺。

 

 それがあなたの任務でしょ。』

 

 

 

EVAの問いに答えることができないスネークは背を向けてしまった。

 

 

(スネーク…)

 

 

 

『恋人は?好きな人はいるの?』

 

 

 

『他人の人生に興味を持ったことはない。』

 

 

 

 

スネークの言葉に顔を俯かせる。

 

 

(私にも興味無いのかなぁ…)

 

 

『ザ・ボスには興味を持った?』

 

 

『彼女は特別だ。』

 

 

『そう。私は?

 

 私はどうなの?』

 

 

『君こそどうなんだ!』

 

 

強い語気でいい放つスネーク。

 

 

『私は任務のためなら人を好きになれる。

 

 あなたのことも、シオンのことも。』

 

 

妖艶に微笑みながら紫苑にしなだれかかるEVA。

しかし身動ぎひとつしない紫苑に違和感を覚えたのかEVAが俯く紫苑の顔を覗きこむ。

 

 

『ッ!?シオン!?どうしたの?』

 

 

紫苑は声もなく涙を流していた。

 

慌てる二人だが部屋にまで届く鈍い音に顔を見合わせる。

 

動こうとしない紫苑を残すことに不安を隠せないが二人は部屋を飛び出していく。

 

 

 

 

眼下に広がるは大要塞、グロズニィ・グラード。

 

バイクに跨ったEVAがスネークに声をかける。

 

 

『スネークそれじゃ気を付けてね。

 

 あと…シオンの事もお願い…』

 

『あぁ…君は?』

 

『もう一人の私を演じないと…急いでるの。』

 

『大丈夫なのか?』

 

『それが…さすがに彼らもスパイが居ることを疑い始めてる。

 

 あなた一人でここまで来られるはずはないもの。』

 

 

 

一抹の不安を抱えながらもバイクに活を入れると飛び出していくEVAを見送ったスネーク。

彼は遠くに見える決戦の地に思いをはせていた。

 

 

 

~~~~~~

 

 

一人残された紫苑。辺りは暗い闇に包まれている。ひたひたと這い寄る音がする。

 

 

「目的はできたか?」

 

 

尋ねる影に紫苑は答えない。

 

 

「力を使う目的、叶えたい願いはできたか?」

 

 

静かに顔をあげた紫苑と影は見つめあう。

 

 

「何に力を使いたいんだ?」

 

 

優しく尋ねる影に紫苑は口を開いた。

 

 

 

私は…

 

 

 

 

影が嗤った。

 

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