嵐の夜に飛び立とう   作:月山ぜんまい

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 初投稿、どうせ書くなら人気作品にあやかった方が人の目に触れるかと思って、書いてみた。連載再開祈願込み。

2022年03月08日改稿
2024年03月26日改稿



 1、プロローグ

   1、プロローグ

 

 「・・・正月早々何ヤってんすかね、おれら・・・」

 

 

 ボンヤリとした頭に、まだ若い男の声がした・・・誰?

 記憶が混乱して、なにが何だかよくわからない。

 

 

 「何って墓掘りだろうが、オヤジにたっぷり小遣い貰っただろう・・・」

 

 

 ガタゴトと、よく揺れる。

 車の中・・・だろうか。真っ暗で見ようとしても光すら感じられず、全身が麻痺したように感覚が無い。

 まったく、身動きがとれない。

 

 

 「それっすよ」

 

 「・・・それってなにが?」

 

 

 どうやら、しゃべっている男は二人のようだ・・・いや他にも二人、いるような・・・、それに動物・・・馬?

 ・・・気配?を感じる。

 

 ・・・特に、それらしい音や匂いが有るわけではない。だが分かる。

 まったく馴染みのない感覚だ。

 何だこりゃ?

 ・・・何で私にこんな事が分かる?・・・私はただのオタクサラリーマンで、今日は・・・さっきまで・・・。

 何だ?なにが、どうなっている。此処はどこだ?

 ・・・確か、最後の記憶は・・・

 

 

 

 ・・・・・・・・・・・・ああそうか。

 

 

 

 私は思い出した。

 

 

 出張中の私の乗ったジャンボ機が太平洋上で突如爆発四散し、空中に投げ出されてあっという間に意識を失った事を。

 

 目の前を横切ってお茶のペットボトルが濃い青空に消えていったのが、最後の記憶だった。

 ポイントシール、集めてたんだが・・・・・と、いうことは、だ・・・・・・・・転生・・・ですか?

 

 ・・・・・・・・・・

 

 ・・・・・・フッ、・・・フッ、フッ、フッ・・・ッ!

 

 ・・・・・・・・・クッ!

 

 

 

 ヨッシャー!!!

 

 

 

 いやいや、まてまて・・・ふー、ふー、ビークール、ビークール・・・抑えて抑えて・・・。

 あれ?私、息してる?全身痺れてて良くわからん。

 ・・・いや違う!そうじゃなくて・・・・あ、そうか情報!

 せっかく現地の(たみ)が貴重な情報を只でくれようとしているんだから、傾聴しないと。

 

 

 「・・・いつもならガキの死体なんか其処らの路地かドブにでもうっちゃって、地回りの警邏隊か物乞いどもに小銭をヤって終いにするじゃねーすか。

 何で今回はわざわざ金と人手かけて、墓に埋めるんすか?わざわざ上物の棺桶まで用意して」

 

 パンパンと、何かを軽く叩く音がした。

 話し手の片方は、かなり若い男のようだ。かすかな苛立ちが声に混じる。

 

「・・・こいつは、信賞必罰ってやつだ」

 

「・・・しん・・・ばつ?」

 

 若い男は、アホの子のようだ。

 

「・・・まあ簡単に言うと、ジンクスみたいなもんだな。

 組織を儲けさせたやつにゃ褒美をやって、損を出したやつはシメる。

 そうやっていくと、組織が、上手く回って行くってわけだ・・・」

 

 

 ・・・ど、どうやら彼らは堅気のみなさんでは無さそうですね。

 子供の死体を埋葬しに行くようですし、身体の痺れが取れ次第上手いこと抜け出したいとこですね。

 しかし、私はどういう状況なのでしょう?

 何で、この車に乗せられているのでしょう。

 しかも、聞くからに子供の死体と一緒に!

 割りとハード系の世界なのかね?

 

 

 

 「・・・・・・?」

 

 「・・・チッ、わかんねーか・・・そーだなぁ、うちの組織は其処のガキのおかげですげー儲かった。そこまでは分かるな?」

 

 「はあ、・・・人体収集家、とか言う胸糞悪い趣味の連中ですよね、年末に集まってた」

 

 「・・・上流階級の高尚な趣味。だそうだ・・・幹部の前じゃ口を閉じてろよ・・・お前が埋められちまうぞ」

 

 空気に、かすかに重いものが混じる。

 

 「わ、わかってますよアニキ・・・」

 

 若い男がビビる。

 

 「でだ、年末のオークションで、そのガキの手足やら目鼻、内臓や頭皮の金髪付き、あと耳もか?・・・なんかが、べらぼうな金額になった。

 それこそ、ちょっとしたモンだったらしい」

 

 

 いや、そんなに細かい情報は要りません。

 アニキ几帳面すぎ。

 

 

「だもんでボスは、ガキをきちんと埋葬してやることにした」

 

 「・・・ボスが儲けさせてくれたガキに、駄賃か祝儀を出したって事ですかい?」

 

 何か半笑いの疑わしげな口調で、若い男が言った。

 

 

 彼らのボスはかなり吝嗇で、かつ酷薄らしい・・・さすがボス。

 

 

「もちろん違う、ジンクスだって言ったろ?まあそれだけじゃ無いんだが・・・」

 

 

 あ、やっぱ違うんですか。

 

 

 「・・・なんか、昔ボスの会った凄腕のハンターが、『良い獲物にたびたび出会うには、狩った収獲物を大切に扱うことだ』って言ってたらしい。

 そうすることで其の獲物が死んだ後、また生まれ変わって戻ってくる。

 ・・・・んだ、そうだ」

 

 「・・・・ヨタ話じゃネんすか?」

 

 パシッ

 

 誰かが叩かれた音がした。

 

 「・・・オレ相手なら好きに言っても構わない、信じる信じないは好きにしろや、だがな、ボスは其れなりに信じてる様だぞ、循環思想?とか言うらしい」

 

 

 四字熟語マニア?

 

 ハ、ハンター・・・・冒険者じゃなくてハンター・・・・ま、まさかね。

 

 

「・・・・ジャン・・・ケン?・・・え、よくわかんねーけど分かりやした、要は、ボスの験担ぎっすね」

 

 「あー、まあ取り敢えずはそれでいい、ボスもそんなマジってわけじゃねえし。

 お前ら下っぱは、上に言われた事をすんのが仕事だからな」

 

 アニキは、説明をあきらめた。

 

 

 どんまい!

 

 

 「ウッス!  ん、ああ・・・、ところであれっスか、やっぱ内臓が一番高く売れたんすか?」

 

 若い男が、露骨に話題を変えようとしている。

 

 「・・・たしか、心臓ばっか集めてる、すげえ金持ちが来てたっ・・・」

 

 

 ガクン、と揺れて車が止まった。

 辺りが、一瞬静かになる。

 目の利かない痺れた身体に、少しの慣性がかかる。

 ボソボソとアンちゃん達が何か喋っているが、良く聞こえない。

 かわりに、なんか馬のいななき?のようなものが微かにきこえた。

 

 

 ほんとに車か?

 

 

 「・・・え?本当にアニキが墓穴掘りするんすか?」

 ざわつく騒ぎと共に、若い男の声が先程と違った位置からする。

「けっこう雪積もってますし、下の地面なんかきっとカッチカチッスよ?オレらでやりますよ!」

 焦った声だ。

 

 

 雪?そういや新年とか言ってたような・・・それにしても、アニキ分が労働するのか?

 

 

 「お前らに任しといたら日が暮れるわ、俺がやれば"周"で直ぐ終わるんだよ。

 ・・・おい、シャベル何処だ?」

 

 

 ・・・・・・周!

 

 

 「あぶねえから、近寄って来んなよ」

 

 アニキは、わりと面倒見がいい。

 若い男達が、熱心に返事を返している。

 

 

 ・・・ほぼ確定ですね。

 

 近づくな云々は、オーラに接触させない為かな。

 

 ・・・・・大分ハードな世界に来ちゃったなあ。

 

 

「ああそれと、そろそろ凍死してるはずだから棺桶の蓋被せて釘打ちしとけよ」

 

 アニキが、ついでのように呟いた。

 

「・・・え?こいつ生きてたんすか!・・・・・・たしか心臓も取っちまったんじゃ・・・」

 

 若い男が驚いている。

 

 

 子供、生きてたのか。

 あ、いや、もう凍死してるのか。

 

 

 ・・・・生きてる・・・・

 

 

「心臓だけじゃない、肝臓と腎臓もだ。

 ガキを持ち込んだハンターが、そういう『能力』の持ち主で、あと3日はこのまま死なずに生きてるそうだ。

 確実に殺しておきたいんだが、ハンターの能力の効果が残ってるせいで呼吸もしてねえし、燃えもしねえ。

 なんとか引導を渡してやろうと、夕べから棺桶の蓋開けさしといたんだが・・・冷えもしねえ、無駄かもしれねえな」

 

 ガスガスと道具を雪に突き刺し、具合いを確かめる音がした。

 

「そ、そうなんすか」

 

 若い男はポカンとしている。

 て言うか、ちょっと引いてる。

 

「『死者の念』って言ってな、ごく稀にだが強い恨みを持ったまま死ぬと、生き返って襲ってくる勘違い野郎がいるんだよ。滅多にねえがな」

 

 

 死者の念ね、なるほどなるほど。

 

 ・・・・死んでない子供って、やっぱり・・・・

 

 

「い、生き返るんすか?」

 

 若い男のビビった声がする。

 

「ごく稀にだ、こいつは種族が特殊で心得があったからな、まあ念のタメだ」

 

「ね、『念』スか!」

 

「馬鹿!ちげえよ、その念じゃねえ」

 

 アニキは苦労人。

 

「お前らも、一応埋めちまうまえに止めさしとけ、やらねえよりましだろ」

 

 

 まったく感覚は無いが、嫌な振動とにぶい音だけが何度か響いた。

 

 

 はい確定。かわいそうな子供=自分でしたぁ・・・・・・

 

 

 気のいいチンピラどもだが、やってることは相当酷いな。

 

 ハンターハンターの世界だもんな。

 

 ・・・・・あれ?このままだと私、埋められちゃわない?

 

 

「・・・ああそうだ、心臓じゃない、一番高く売れたのは目だってよ、」

 

 アニキが、車?から離れながら言った。

 

「そのガキはクルタ族っつう少数民族で、奇妙なことに目玉が緋色に光るらしい、そのせいで高値が・・・」

 

 徐々に離れて行くアニキの声は、棺桶の蓋が閉じられる音と共に途切れた。

 

 

 クルタ族!

 

 

 

 




 
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