2021年10月26日改稿
13、明るい生活
朝の修行を終えたら生きるための活動。
いつもは食事か探索なのだが、今日は水見式をやってみようと準備をしてきている。
肉体に残っていた記憶から、身体の前の持ち主が、特質系だったことは判っているが、転生してきた私がどんな系統かは、まだ確かめていない。
ずっと、同じに違いないと思い込んでいたが、こっちの世界に馴染んでくると、むしろ違うのが当然では、と思えてくる。
系統の違いは、個性や性格の違い。人格が入れ替わっていて、系統が変わっていないのは、不自然だ。
既に、強力でキャパシティーを多く使用する“発“
自身の得意系統によって修行内容が変化するのもそうだが、ぶっちゃけ目標がある方が修行も集中しやすい。
より正確に言うと、めっさ気になる。
この日のために用意した石のコップに水を張り、小さな葉っぱを浮かべ水見式の準備をする。
シャベルやコップ、道具類は硬い岩を≪消滅≫を使って削り取って作っている。
大雑把に髪でくりぬき、指で微調整する。洞窟の拡張も同じ。いい修行になる。
最近の常識。髪は、凶器である。
これで、両の手のひらの間にコップを置いて、“練“をすることで、水や葉っぱが変化し、本人の持つ系統を知ることが出来る。
確か、水が増えると強化系、色が変わると放出系、味が変わると変化系、不純物が混じると具現化系、葉っぱが動くと操作系、それ以外は特質系だ。
何でも覚えてて思い出せるのも、もう慣れた。
性格診断も有って、強化系が単純、変化系が気まぐれで嘘つき、放出系が短気、操作系が理屈屋、具現化系が神経質、特質系が個人主義者。
大まかな傾向ぐらいだが、私は、どうだろう。変化系じゃないといいな。変なヤツが多い気がする。
・・・・・“練“!
「うおっ」
“練“をした瞬間、コップの中身が強烈に発光し、直視出来ずに目を瞑る。
閉じた目蓋の裏が、まだ明るい。一時的なものではなく“練“をしている間ずっと光りっぱなしの様だ。
薄目を開けて、コップの何が光っているのかを確認する。
念獣のお陰で、すぐに瞳にフィルターが掛かり、視界が明瞭になった。
水だ、水が光っている。それだけじゃなく、コップの底から小さな泡が、炭酸水のように幾つも水面まで上り、次々弾けている。
とりあえず“練“を止めると、光は消えた。
“練“を止めても、水の中の泡の発生は止まらない。
なんか、水も減った。縁まで注いだ筈が、八分目ほどになってる。
少し口に含んでみると、炭酸の刺激が舌を刺す。無添加の普通の炭酸水の味だ。
ウイスキーが欲しい。フルーツシロップでも可。
見た感じ、木の葉自体には変化が無いようだが・・・いや、端っこに虫食いのような小さな欠けが出来ている。こんなものは最初は無かった筈だ。
「・・・変化が多すぎる」
先ず、光ったのは色の変化で放出系、味が変わって変化系、炭酸の泡のせいか葉っぱが動いていて操作系、二酸化炭素が不純物扱いなら具現化系、水が減ったから強化系の印しは出て無い・・・いや減るのも強化系のサインだったような・・・葉っぱの欠けも有るしまあ特質系か。
特殊な生い立ちを持ってると、特質系になりやすいって記述が有ったから、異世界転生者が特質系じゃ無い訳ないよな。
“発“に関しては、今回は時間も有ることだし、ゆっくり考えるとしても、ここまで訳のわからない結果になるとは思わなかった。
もう一回、今度は詳しく観察しよう。
・・・コップを濯いで水をもう一度縁まで注ぎ、再度新しい葉っぱを浮かべる。
気分を換えるため、立ち上がって身体を軽く動かしリラックスさせる。
そんじゃ行きますか・・・“練“。
新たな“発“を構築するにも情報が要る。
なるべくなら得意系統で創りたいし、オタク知識で候補は幾らでも思い付くが、ある程度目安や傾向が在った方が発想しやすい。
光を発するコップを、今度は五感を駆使して観察する。
光ってる。
水が、いや、フィルター越しの光量を抑えた視界には、水の表面と、底から浮かび上がる泡が水面に出る前から光を発しているのが解かる。
つまり・・・なんだ?
あっ、つまり、水の表面上と、中の泡に触れている、空気に接触した部分が発光しているのだ。
さらに観察を続けると、水中の泡がコップの底から螺旋状に渦を巻きながら浮かび上がり、揺れる葉っぱをくるりくるりと回転させている。もしくは回転する葉っぱが水に流れを作り、それに合わせて泡を踊らせている。
一旦“練“を中止し、これがどういう意味か考える。
葉っぱが動いたのは、泡に揺らされたからなのか、葉の方が動いてコップの中の水に渦を作ったのか。
炭酸の風味は、味なのか不純物扱いなのか。
発光は、色変化と言えるのか。
・・・“練“を止めると発光が収まるのは、色の変化とは言えないかもしれない。現に、発光が修まった水は泡を除けば無色透明だ。
もし、発光が水を光らせているのではなく、水を変化させる、もしくは消失させる折の反応の現れや、副次的な現象なら、水見式の系統を表すサインとは関係無い事になる。
もう一度確認しようと、コップに両手をかざし“練“を発動しようとして、はたと気がついた。
私のオーラに、『
私と繋がっている時限定とは言え、オーラを自力で発生させることが出来るのだから、各念獣達にそれぞれ個別の得意系統が存在していても、おかしくない。
いや、十分考えられる。光はともかく、水が減ったのではなく、消滅したと考えると、葉っぱが欠けたのを含めて、『
・・・それより問題は、どこまでが私自身のオーラの反応で、どこからが念獣達のオーラのモノなのか、見分けがつかないことだ。
いろいろ考えて、私は、コップを再び濯ぎ、水を注いで葉っぱを置き、今までより低い台に設置し、その前に腰を下ろして両の足で慎重に挟み込んだ。
常識には反しているが、手ではなく足で水見式を行い、両手のオーラが混じるのを阻止しようという苦肉の策だ。
もちろん手の代わりに両足のオーラが混ざってしまうが、少なくとも、もし本当に手のオーラが混ざっていれば、足を使った場合に何らかの差異が出るだろうし、共通部分があれば正しくそれが私自身のオーラ系統である。
・・・水見式って、足で出来るのか?
とりあえず、手でするのと同じようにオーラを高め、“練“を行う。
・・・・・“練“。
「うっ」
・・・今度も光ってる。光ってるが水量は減ってない。
しかし、水が白い。
放出系のサインだ。
そして、にわかにコップが泡立ち、浮かび上がった大きめの泡が水面で割れて、白い煙が吹き出し、コップの外側を伝って台に降り、そのまま押し出されるように広がって、空気に溶けた。
それが、あとからあとから繰り返される。
“練“を止めても、光は消えたが泡立ちは収まらない。
白い煙に触れると仄かに涼しい。
・・・どうやらコップの中に、ドライアイスが生成されているらしい。小学生の頃、理科の実験で見た光景だ。
掴むと、自然石から削り出したコップは結露するほど冷たくなっている。
適当な木の枝で、飴玉ほどのドライアイスをコップから全て掻き出し、再度残った水を調べる。
ドライアイスの分を除き、水は減ってない。
ドライアイスの泡に押されるまで、葉っぱは動いていなかった。欠けも無い。
水は真っ白になっているが、絵の具のような白ではなく、細かい泡粒が沢山集まったような透明感と艶の有る白だ。
ドライアイスを除いても、小さな泡の発生は収まらず、指で舐めると炭酸の風味が在った。
・・・私の水見式の、二酸化炭素
とはいえ、
水が白くなったのは『
≪甲殻≫用の具現化系だろう。
想定通りに手足の影響を抜いて、私自身のオーラ系統について考えると、残るはソーダ味の水、つまり変化系か、二酸化炭素の混入による具現化系の可能性が少し、といったところか。
光ってんのを無視すれば、だが。
・・・なぜ光る。
結論としては、特質系。
・・・情報が出揃ったはずなのに、悩みが増えた気がするのはどういうわけだ?
二酸化炭素押しの件は、おそらく念獣達が私自身の水見式のサインの影響を受け、みな同じ二酸化炭素系統のサインが出たのだと思う。
そして、
つまり、私は具現化系ではなくて変化系寄りの可能性が高い。
放出系なら話が早かったが、どちらかと言うとめんどくさい系。遠距離対策には一工夫必要だ。
残念だが、そういうのも嫌いじゃない。
私も、変人の類いなのだろう。
それでも何故か光る理由はさっぱり解らんが。
特質系の念能力者は、そのサインに作り上げる能力の傾向が現れる場合が多い。
人によっては、その人格の尋常でないところがそのまま出たりする。
原作中で、才能だけはある腐った性格の人物が水見式をしたら、浮かべた葉が水ごと腐り果てる。という衝撃的結果になった事があった。
・・・光るってのは、どう解釈すべきなんだ。勇者か?
あと二酸化炭素自体を、特質系のサインの一つと考えるならば特徴は、安定している、毒性はない、空気の構成要素の一つ、動物は呼吸できない、水に溶ける、炭素を燃やすとできる、燃えない。
・・・記憶に有るのはこの位だが。
どちらかというと、利用出来ない事後の物質というイメージが強いか?
・・・まさか、もう新しい“発“を創る為のキャパシティーが無いって意味じゃ無いよね。
墓から出るのにいろいろ使い尽くして燃え尽きた、とかそういう意味?
あ、いや、サインに出るのはオーラ的性格や資質の筈だ。
キャパシティーがどうのは関係ない。
光るのもある。
光は一般的に溢れるエネルギーの現れだ。枯渇とは正反対の意味になる。
・・・能力ではなく、私の出自を表しているのかも。
光は奇跡の転生を、炭酸は
・・・・・あれ、なんかコレっぽい。
ヤメヤメ、これ考えてもダメなヤツだ、現状情報が足りてない。
思考放棄して現状を受け入れるのが吉。
多分もう少し時間が経てば、勝手に答えが現れる面倒な
とりあえず光と炭酸は、
普通は、変化系の味の種類より変化系だと言うことの方が重要な筈だ。
とりあえず、変化系で一考かな。
特質系なのにちょっと勿体無いが、キャパ残量の事もあるし、
うまく言えないが、ラーメンの湯気のようなスカスカの感じがするのだ。
原作知識だが、特質系の“発“の成り立ちは、条件を重ねて練りに練った物ではなく、水見式のサインの出方のように、その人固有の物であることが多いと思う。
芽吹いた種がそれぞれ別の花を咲かせるように、初めからその個性によって出来上がる能力はある程度決まっていて、それに添って結実し、変えることは出来ない。そんな感じ。
要はつまり考えても無駄。
勝手に出来るものなら出来るだろうし、私が自分で考え出す“発“も、何か変な影響を受けるだろう。
特質系の資質っていうのはそういうものだと思う。
考えるのは変化系だが。
・・・・・六性図だと隣りあってないから、変化系寄りの特質系ではなく、変化系に似たような傾向の有る特質系かな?
元々変化系だったのが、異世界転生で特質系に変化したのかも。
得意系統パーセンテージがどうなってんのか知りたい所だが、これ以上は無理だ。
どのみちサブの“発“創りだと割り切ってやるしかないね。
条件は大体出たんだけど・・・結局変化系か。
結論。
光るのは無視して変化系の“発“を創る。
特質系の何かが混ざっても動じない。
以上。
おまけ
手足以外で水見式が出来そうだった『
コップの水は、光を発しながらコップから溢れ出したが流れ出さず、玉のようにコップを中心に膨らんだ。
玉がコップより大きくなると調理用ボールか丸いザルを被せたようなドーム状に形を変えながら尚も体積を増して行く。
“練“を止めると一瞬の後、ドームは崩壊し水は流れ落ちコップと中の水が残った。水は炭酸水だった。
『
・・・うむ、少なくとも今後炭酸水に困ることは無いな。
おしまい
水見式って地味にハンター世界の根幹に関わると思う。