14、念の使い手
私の念の系統が、判明したり、しなかったりしてから一週間程が経った。
未だ、新しい
定番として有りそうなのは、よくある地水火風の基本四大元素のヤツ。水や砂、他作品で既出だが、捻って水銀や砂鉄、だろうか?
火は建物内等で使いづらいし暗いと目立つ、熱は原作に誰か能力者がいた。
風系、気体系は見えない分、イメージしづらいので、念能力化するハードルが高い、私は無理。
あとは、微粒子関係、霧、煙、塵?ありふれた物に、変な効果を着けるのがキモだネ。
候補は幾らも有るのだが、何かしっくり来ない。
本当は雷を使っていろいろやりたかったけど、原作の主要人物の一人がドヤ顔で使っていた。
ちくせう・・・無念。
・・・・・・あれ?電気使いには、何か使用上のリスクが在ったような・・・。
えーと・・・うっ、たしか拷問のような電撃の刺激に幼い時からさらされ続けなきゃいけない・・・とか・・・・・それは流石にちょっと。
・・・いや残念。
とっても残念だが真似っこはいけないよね。私は、もっといいのをきっと見つけてみせよう。
さぁて、今日もいい日だ。
新しい念能力の事を頭の片隅に置いて、午後の探索に出た。
徐々に暑さが増して行く中、生き物達の活動も、ごちゃごちゃとうるさいほどに、その勢いを増している。
ほぼ毎日新しい土地に入り込んで行動範囲を拡げているのだが、同時に念獣達の“発“と
まず、気配を消して森の中に降り立ち、全感覚を総動員して気配を探る。
『
さらに、『
ここまでが基本。
そして、ゆっくりと慎重に、ではなく、ごく無造作に森へと入る。
音を立てない事も、気配を感じる事も重要だが、緊張や捜索意欲を周りに放っていては、ここでの探索は覚束無い。
森や周囲の気配に同化出来なくては、行き当たりばったりに狩ることは出来ても、
それでは自分が弱者になった時、生き残れない。
もっと心を鎮め、呼吸するように、飲み込むように世界を受け入れる。
理屈は後から着いてくる。ただ、そんな風に成りたいと修練を重ね、出来るようになってから『ああ、そうか!』と、わかる事の方が多い。
元は漫画知識だが。
気配を殺し、情報収集と分析の訓練をしながらほとんど光の差さない巨木の森を進む。
活発な小動物や虫、さまざまな気配が、森の営み、夏の生命力の高まりとなって、全体の空気を形作っている。
さらに根底を形作る、姿を現さない何モノかの気配。
私もやっと最近になって、その空気を乱さずに森の中を動けるようになった。
たまに、見かけない植物や行けそうな実、茸を見つけたら、とりあえずパクリと食べてみる。
いろいろ試行錯誤した上で、食べられる物を発見するのに、この方法が一番効率が良いと判明した。
更に、『
問題が一つ在るとしたら、内臓系に負担を掛けすぎたのか、≪強化≫の効果が身体能力より各機能強化に偏重していて、その能力をあまり実感できない事だろうか。
オーラ使用時にオンオフしてもらったが、元の身体能力が高すぎるせいか、今のところ「微妙に強くなった」程度だった。内臓強化も身体能力強化に含まれるとは言えちょっと残念。今後に期待。
森の中を進んでいると視界が開け、小さな泉と苔むした岩の点在する野原を見つけた。暗い森とのコントラストに水面が眩しく光り、絵のように美しく見える。
だが、不用意に駆け寄ったりはしない。
気配の探知も途切れなく続けている。
こちらから見えれば向こうからも見える。油断こそ大敵。
水場には狩りの獲物が来るかもしれないし、それを狙う危険な生き物が付近に潜んで居るかもしれない。
しばらく観察を続け、森の空気に危険なものが無いことを読み取って、そっと空き地に踏み込んだ。
足跡や足音、痕跡をのこさない訓練のため、森の中で≪甲殻≫による空中歩行は使っていない。たまに、自分が通った道を
泉には小魚が泳ぎ、湧き出す水で底に堆積した砂が踊っていた。
この辺りの森の下には巨大な岩盤が層をなして有り、その隙間にたっぷりと地下水を蓄えていて、各地でその割れ目から水が湧き、大小の湖や河川を造り出している。
ためしにやった『
手で掬って飲むと、冷たくてうまい。
使える水場として視界のマップに記す。
気になっていたのは、むしろ泉よりもその向こうの森の木々だ。泉を隔てて少し植生が代わり、まだ青い実をいくつも付けた巨木が、ずらりと並んでいる。
≪観測≫のタグにも、【食用可、未熟】、の文字がある。多分、最近他で齧った事のある木の実なのだろう。名前は知らないので、表示されない。
何にしても、ある程度まとまった食料の供給地は有益な情報だ。
近付こうと踏み出したところで、≪結界≫が反応。右目の視界が潤んでぼやけ、≪天眼≫が発動、森の奥から飛んできた銃弾が、一歩動いて身をかわした私の方へ弾道をねじ曲げて襲って来る映像を幻視する。
─現実復帰─
狙ってきていた頭の位置を中心に、≪甲殻≫で透明な壁をばら蒔きながら岩の陰へと移動しようとした所で狙撃。
目を離さなかったので、弾の出所は≪天眼≫の予知と同じと判明。刹那の時間だが、集中しているおかげで反応できる。
≪観測≫の働く左目視界には、“凝“の付随効果で弾丸がオーラに包まれているのを確認。銃弾に、追尾効果を附与していると思われる。
≪結界≫の効果で、毛髪がうねるように踊り、手を振って≪甲殻≫の盾をばら蒔きながら、咄嗟に体を動かし、僅かに直撃コースから身をずらすと、微調整するように弾丸の軌道がずれ、吸い寄せられるように私の頭へと向かってくる。
目の前まで弾丸が来たとき、上手く『
ギリギリまで待って、≪瞬転≫を発動。現在の最大距離、約二歩分、一メートルほど左に瞬間移動し、弾丸を避ける。
込められているオーラ量から見て、これ以上の軌道変更が出来るとは思えない。
この弾丸に関しては、これで終りだ。
≪加速≫が発動している為、まだ視界の端に見えていた通り過ぎようとしている弾丸を、≪結界≫の効果で自律可動している『
『はぁっ?』
即座に近くの岩影に隠れながら、私はこの違和感のある攻撃に戸惑っていた。
おかしい、隠形の見事さに対して、攻撃の質がショボ過ぎる。
発射音が全く無いのは、そういう“発“なんだろうが、誘導できるとはいえ死角からでは無く、前方の視界内から撃って来たのがまず謎。
まあまあの貫通性能以外、速度も弾丸の強度も“発“として使えるギリギリのレベル。
私の基準が高すぎるのか?いや、私の身体の元の持主を狩った念能力者や、原作知識の分析からすると、このような人里離れた僻地に現れる念能力者が、新人ハンターに毛が生えた程度の未熟者であるとは、考えにくい。
しかも、初撃が失敗した後の追撃の気配すらない。
虫の声が鳴り響く池の畔に、水面と岩達を撫でるように、そよ風がゆるゆると吹き抜けていく。
私は、初めての襲撃でパニクった心を鎮め、気配を殺し、襲撃者の違和感について考え続けていた。
付近に他に隠れられるような大きさの岩は無い。これ以上≪瞬転≫で安全に移動できる先はなく≪
≪甲殻≫があっさり破られたのは、あまり気にしてない。現在の硬度が安い木製の簀の子や数枚重ねた段ボール程しかないのは、確かめて知っていた。下手をすると、私が強めに踏み込んだだけで割れるのだ。
現在の、足場としての利用には何の問題もない。『
あのままでも≪瞬転≫は可能だったが、今回はタイミング良く≪加速≫も発動した。『
一回目が、≪甲殻≫の足場を踏み抜いて、結構な高さから落下したとき。ビックリして何もできず(≪加速≫に驚いた)、そのまま普通に落下した。岩場に落ちて痛かったが、≪再生≫と素の頑丈さで何ともなかった。
二回目は、鹿角ナイフ(初めての獲物の鹿のナイフっぽい角をちょっと加工した物)で熊の皮を加工中、手を滑らせてナイフを足の甲に落とした瞬間。この時は、ギリギリでナイフを掴み取った。『
二次権能が使えるかどうかは、今のところ全くの運次第で、各念獣達も制御できていないし、全く発動していない能力も多い。自信と確信は有るらしいので、今後に期待だ。
何かおかしい・・・攻撃の瞬間の殺気は有ったが、それ以後また敵の気配は消え去った。
≪観測≫で、オーラが見えないのは、“絶“か物陰に隠れているからだろうが、たかだか数十メートルの距離で『
何だ、何を見落としている・・・
冷静にもう一度・・・どうせ記憶力は良いんだ。全部思い出し、全体の流れの中から違和感を感じる部分を拾い出す。
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・
もう一度、違和感の在った飛んできた銃弾の様子を、細かく思い出してみる。
・・・左目の≪観測≫の視界に入るのは、何度も思い返した赤っぽいオーラに包まれ、ジャイロ回転しながら突き進んで来る、底部の平たい流線型の銃弾の姿。
右目の視界はこの時、≪天眼≫を使った制約と誓約で潤んでボヤけていた。
いや、もう一つ最初に≪天眼≫の未来予知が示した予見の中で、視力が良いだけの右目が見た銃弾の映像が有る。
こちらは、オーラが無い分、弾体がどんなものだったか、良くわかった。
・・・・・「そう言う事か」
私は、一つため息をつくと、ちょっと疲れたように岩蔭から立上がり、狙撃手の居る森へ向かって歩き出した。
近づくほどに次々飛んでくる弾丸を、オーラを纏った手で、気だるげに端から掴み取り、弾体を放り捨て、果樹の森へと足を進める。
冷静に良く感じ取れば、この念の使い手の狙撃に私を害するだけの威力は無い。
当たっても、“纏“状態の皮膚で止まる。≪再生≫が有るから、痣にもならないだろう。
もう見切ったとばかりに森から目を離し、辺りを見回すと、白骨化した幾つもの動物の死骸が、点在している。
大分昔からここは、森に潜むスナイパーの
ある程度まで森に近付いて、“纏“を発動したまま『
何本かの木々を高速で跳び回り、フカフカで頭と背と尻尾に銀色の縞の有る三匹程の
私が思い出した映像に映っていた椎の実型の銃弾は、椎の実製、というか、まんま椎の実、ドングリでできたドングリの
それを確認して私は、ようやく狙撃犯が栗鼠、最初から森の中をうろちょろしていた、この栗鼠自身であることに、やっと気がついた。
原作でも、動物や虫にも念は存在すると、言っていた。
驚いたことに、ここの栗鼠達は、種族特性としてドングリを投擲する念能力を、先天的にか後天的にか、自然発生的に獲得しているらしい。
今も、周辺には沢山の栗鼠がいて、何匹かは木の実を持っている。
そして、少し離れた枝から一匹の栗鼠が、念を込めたドングリを頭上に掲げ、そのまま反り返ってから全力で前方に一回転、全身にオーラを纏った大回転の勢いをそのままに、驚くほど高速で正確なドングリ念弾を私の頭に向かって放ってきた。
正確な着地でクリクリお目目をこちらに向け、移動対策の誘導準備にも余念がない。
飛んできたドングリを、素早く動いて歯で挟み取り、攻撃が効かないことを見せた後で口に含み、噛み砕いて飲み込んだ。
同時に“練“をしてオーラ量を増やし、軽く殺気を放って威嚇してみる。
殺気を放つのは、狩りをしていて覚えた戦闘回避技能。獲物の横取り対策に便利。
一瞬の間があって、すごい速さで周囲に居た栗鼠は消え、逃げ出そうと暴れていた手の中の栗鼠たちも、目を閉じて硬直し気絶していた。
謎の殺し屋も、未知の念能力者もいなかった。全部私の一人相撲だったのだ。
誰にも見られなくてヨカッタ。
いや、今回の件は良い教訓になったと思おう。実際この場は、多数の放出系能力者が居るようなものなのだから、さっきの
なお、捕まえた栗鼠はちょっと頬ずりしてモフモフを堪能した後、放してやった。
毛皮にするには小さすぎるし、無益なモフモフ殺生はしない。
・・・ちょっと、帽子にどうかなって思ったけど、『
去らばモフモフ。よかったネ。
命名、『
お腹の中はきっとギャグ漫画状態。
≒リョーツGPX。