嵐の夜に飛び立とう   作:月山ぜんまい

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 10話までは、毎日更新。


 2、記憶

 

   2、記憶

 

 

『私、転生者、今お墓の下に埋まっています・・・・』

 

 

 ・・・・・・・・・・

 

 

 『神様~、助けてくださ~い』

 

 

 ・・・・・・・・・・

 

 

 『あの・・・誰でもいいんで、助けてくださ~い・・・は、早めにお願いしま~す』

 

 

 ・・・・・・・・・・

 

 

 返事なし・・・あまりのショックでちょっと呆けてたから、おそらく三十分は経ったはず、外には、いや地上にはもう誰も居ないだろう。

 そして、誰も居ないのに助けが来る気配もない。

 いくら私が元引きこもりの高校中退とはいえ、これはひどい。スマホもネットも無くては、助けも呼べない。

 駄目だ、これは駄目なやつだ、全身痺れて芋虫状態で墓に埋められる。

 難易度マックス!いや、アルティメット!ナイトメアモード!

 

 ドナイセーちゅうんじゃ!

 

 ・・・・・・・

 

 エセ関西弁で、突っ込み入れたら一寸落ち着いたな。

 どうせ、前世じゃ飛行機ごと太平洋にばらまかれて魚の餌になってた訳だし、今生は、墓に埋められているだけましだと考えよう。

 

 よしよし。

 

 じゃあ次にどうするかだ。

 諦めるのもひとつの手だが、せっかくの異世界転生!しかも、私もわりと好きなハンターハンターの世界だもんな・・・・できれば見学したい、関わりたい、修行して謎の拳法身に付けて、バトってみたい!

 ・・・いや、運動や修行は好きな方だから、武術を身につけるのは出来そうだが、よく考えると、メインキャストは化け物揃いだから、あんま近寄らない方がいいのかなあ。

 それでも、身を守れる程度は強くならないとな、なにせ、死亡フラグ満載の世界だもんな。

 今も、墓の下で死にかけてるし。

 

 ・・・情報を纏めよう。

 私を埋めたチンピラたちの話によると。

 

 

 

 新年である。

 

 町?から少し離れた墓に埋められた。

 

 私の身体は、子供である。

 

 私の身体は、かなり欠損が激しい。

 

 私の身体の一部が、売却された。

 売ったのは、マフィアンコミュニティーっぽい。

 

 死ぬはずなのに、ハンターの念能力で死んでない。

 

 あと三日は死なないが、あと三日で死ぬ。

 

 ハンターハンターの世界である。

 

 原作でも有名な希少種族、クルタ族である。

 

 あとは、念の素養が有ったような事を言ってたか?

 クルタ族っていうのは良いな、勝ち組だ、眼はもう無いけどな・・・

 

 よし!今のところこんなもんか。

 

 さて、転生直後の情報収集で、よく在るやつだと残ってるのは私自身の記憶か?

 いや、私が乗り移ったこのクルタ族の子供の記憶と言うべきか?

 憑依のショックのせいか、居た筈の子供の意識も感じないし、その記憶が、どっと押し寄せる様な事案も無い。

 なんか、前の持ち主が居なくなった後に、すっぽりはまった感が半端無いんだよなあ。

 身体の前の持ち主が、意識が、魂が、既に居ない。

 身体が生きてるのに精神だけ死んじゃうなんて、有り得るのかねえ。

 

 ・・・いや、まずは記憶、ちょっと集中してみよう。

  

 えっと、なんだ?

 ・・・・・変な感じ・・・今まで思い出した事もない、体験したことのない映像が、頭の中に在る。

 短い数秒のものが幾つかと、ちょっと長いものが二つ、あと、無音だ。音が無い。

 まとめると。

 

 1、石造りの、中世風の街並みを、襤褸を着て路地から眺める、かなり頭身の低い自分。(おそらく幼児期、雰囲気から孤児かホームレス)

 

 2、窓際の、古い作業机で銀細工をする髭の老人と、机の上に頭を出し、それを見つめる自分。(老人の目は優しそうだし、貰われたか拾われたっぽい)

 

 3、板張りの広めの部屋で、老人と並んで座禅を組む、もう幼児ではないが、まだ小さな自分。(念の修行?)

 

 4、ちょっと長いやつ一個目、小さな葉っぱを浮かべた水の入ったコップに、両手をかざす自分。

 水の中には、白い欠片が生まれ、みるみる大きくなって、卵形、と言うか卵になる。

 コップの縁まで水が入っていたのに、何故か溢れず、卵の体積分水が減った。(間違いなく水見式!変化が派手!特徴的でユニークだが、水に不純物が混じるのは、具現化系の特徴のはず、六性図で隣になる特質系寄りの具現化系か?)

 

 5、長いやつ二個目、前のやつと同じ水見式のシーン、初めは同じ記憶かと思ったが、ちょっと、いや大分違う。

 葉っぱの浮いたコップに手をかざしている処までは同じだが、今度は浮かべた葉っぱがゆっくりと回転し始めた。(操作系!これは、原作に出てきたあれか?)

 回転が徐々に速くなっていくのに気を取られていると、突如コップの水の表面張力が破れ、水が溢れ始める。(強化系!)

 溢れる水の色が、無色透明から綺麗な青色に変わってゆく。(放出系)

 コップの向こう側に居た老人の手が動き、青い水に指を突っ込んでペロリと嘗め、驚いた顔をした。(変化系、なに味?)

 最後に、前回の記憶と同じように水の中に卵が出来上がってゆく。

 卵が出来て終わりと思ったが、終わらない、続きがある。

 コップの底に、二つ目の卵が出来て、続けて三つ目、四つ目が、あとからあとからコップの底に生まれてゆく。

 コップから溢れ、縁を越えて落ちた卵は割れてしまい、中から青く染まった、おそらく何か味のついた水がこぼれた。(やっぱあれだ、原作のクルタ族出身者が持ってた公式チート。

 感情が昂り、眼が緋色に光ると、短時間だが全系統を百パーセント自分の得意系統に変えてしまうクルタの異能!

 

 絶対時間!

 エンペラータイム!

 

 ・・・私、眼、無いじゃん!)

 

 6、これが最後、ちょっと鬱。

 薄暗い路上、血だまりの中にうつ伏せに倒れ込む老人と、サーベルのような曲剣を持った黒い影。

 視界の隅、震える小さな手に持つ銀細工のナイフに、自分の二つの緋眼が映り込んでいる。(時系列的にも、この記憶が最後。

 今、この状況に繋がっているっぽい)

 

 

 ネット動画を見せられたようで、あまり現実感は無いが。

 

 

 ・・・・・合掌・・・・・

 

 

 この身体に、念の素養があるのは間違いないらしい。

 しかも、修行の段階が水見式まで進んでいたなら、“発“の能力をどうするか選ぶ直前だったはず。

 無論、既に選んで作ってキャパシティーすっからかん、の可能性もあるが、念の醍醐味!必殺技である“発“を作る為の容量、キャパシティーは、魂が入れ替わった時リセットされた、と考えよう。

 ・・・・だといいなぁ。

 

 うん?・・・・・・・念が使えるなら、前の身体の持ち主は、痛みや苦しみ、現状の混乱と恐怖から逃げようとして、無意識に、そういう“発“を作り、精神だけ肉体から抜け出してしまった可能性が有るんじゃね?

 そんで、そのまま帰ってこれず、オーラが尽きてポシュッと消えてしまった・・・・とか?

 無意識の“発“なら条件も曖昧だろうし、戻れる前提なら残った肉体に、気配が無さすぎる。

 そういうの、今敏感だからね。

 外部の情報、物理的に遮断されてるし。(自虐)

 まてよ・・・私自身、彼の魂が消える時、復讐の為やらなんやらで“死者の念“で呼び出された可能性も・・・・無いな。

 それなら何か、縛りか、恨み節のお知らせやらが残っていそうなもんだ。

 

 まあいい、転生の礼だ、復讐はするとしよう・・・・強く、十~分に強くなったらな。

 誓おう、ゲッシュだ。

 今の、無様に埋められている現状ではただの寝言だが・・・・。

 

 とにかく、上手く肉体のスペックを発揮出来れば、私にも、それなりの“発“が作れるはず。

 

 集中!集中だ!

 

 ・・・・・・・・・・

 

 ・・・・・?・・・・・

 

 あ?・・・と・・・解る、感じる。

 

 これがオーラ・・・・・ここから・・・

 

 “纏“!オーラを纏って・・・・・次は・・・

 

 “絶“!精孔を閉じ、オーラを断つ・・・・からの・・・・・・・

 

 “練“!精孔を広げ、オーラ放出量を増やす・・・・混ぜて・・・・・

 

 “凝“!オーラを一ヶ所に集める・・・・できる、できるぞ。

 

 慣れれば、結構安定してできる。

 “発“はともかく、他の修行も一通り出来るだろう、何度も通った道って感じがする。

 安定感ある。

 子供なのに。

 能力高過ぎ!

 転生特典か、肉体のスペックか、はたまた前任者の努力の賜物か。

 何にしても、ありがたい。

 ・・・そうだ、あれも試さねは。

 

 ふん!・・・・燃え上がれ、俺のコスモ的な何か!

 

 ・・・・・・!!

 

 おお!何かぐるぐるしてる。

 緋眼状態になると、オーラの系統が曖昧になって、偏りが出るらしい。

 記憶に有ったように、各系統を操る事もできそうだが、『絶対時間』キリッ!とは言い難い。

 一応、眼が無くても『絶対時間』ッポイものは発生するみたいだな。

 

 よし、やれそうだ。

 状況はかなり絶望的だが、足掻くとしよう。

 

 “発“、を作る上で、まず念頭に置かなくてはならない事は、回復系or再生系が必須!と言う事だ。

 ただでさえ子供で非力なのに、五体他、欠損部分が多すぎる。

 まず、回復系でパッと思い付くのは、『大天使の息吹』、作中の念能力を使ったゲームに出てきた最高の回復アイテムだが、反面キャパシティーを凄い喰いそう。

 具現化系だし、系統も合ってるが、これを今“発“にするには、一寸工夫が要る。

 あれだ、制約と誓約。

 ルールと誓い。

 最早、安定の原作知識、“発“の発動と行使に約束事を設け、キャパシティーやオーラの使用量を節約し、威力を高める、念能力者なら誰でも知ってる主婦の知恵。

 例えば、年に一度しか使えない、とか、まる一日集中して発動する。五割の確率で失敗する。語尾がニャになる。などだ。

 軽いものなら作用も弱く、己の命を賭す様なものなら効果は抜群、いや絶大だ。

 たしか、原作キャラのクルタ族出身者が、此れに依って遥かに格上の敵を倒したはず。

 ・・・・そう言えばかなり後になって、作中で『絶対時間』に、『秒間一時間寿命短縮』とか言う、とんでもない制約があるのが描かれていたような・・・。

 制約が在る・・・と、言う事は、『絶対時間』は“発“の可能性があるのか?

 恐らく、訓練次第で制約無しでも行けそうなんだが、手間と暇が掛かりそうだから時短の為に“発“にしたのかも。生き急いでたからな、彼・・・。

 何にしても『大天使の息吹』は、悪くない能力だが、戦闘には全く役に立たないのがネックだ。

 あと思い付くのは、ファンタジー定番の、『再生』。

 何度切っても、蛇の頭が又生えてくる、とかのあれだ。

 強化系は、高速で怪我を癒す事が出来るみたいだけど(治癒力強化)、流石に腕や足を生やす様な真似をするには専用の“発“が必要だろう。

 それに、強化系は、再生すると凄い腹が減りそう。偏見?

 

 具現化系で、ポーション造るってのは有りなのか?効果が今一でも、何度かに分ければ、内臓や手足、それに眼も治る・・・・

 

 

 ・・・・・・不味くね。

 

 

 回復能力を持った、クルタ族の子供。

 

 もし、捕まえて閉じ込めておければ、労せずして定期的に緋の眼が手に入る。

 そのスジの人、垂涎の、金の卵を産むガチョウの誕生じゃん。

 

 

 うん、回復能力は、戦闘用の“発“とセットで考えよう。あと当面、誰にも見つからない様にしないとヤバイ。

 いや、マジで。

 

 

  

 

 

 

 

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