嵐の夜に飛び立とう   作:月山ぜんまい

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2022年09月15日改稿


 4、制約と誓約

   4、制約と誓約

 

 念獣達に授ける能力は、大体決まった。

 結局、完全攻撃タイプの能力は一つだけになった。

 私は、タイプが具現化で、強化系は六性図でも遠いし、オマケに、まだ当分子供だ。

 力業は、なにそれ美味しいの?状態で、放出系は更にダメダメだから、能力は近接の格闘技や何かと相性の良い、有ると便利な対応力重視の物で埋める事にした。

 当面の方針は、避ける、逃げる、先に見つけてどろん(煙)、で決まり!

 

 当たら(見つけられ)なければどうと言う事はない、の精神で、極力接触事案を潰して行くスタイル。

 

 とりあえず、あんま、ガチで殴り合いは勘弁。逃走こそ我が闘争。

 

 いい事言った。

 

 基礎的な強さが上がれば、対応力=手数なので、負けなくなると思う。

 すぐ成長して、デカくなる予定・・・だし。

 

 何より、身体の各部位に宿らせる能力だから、近接=射程距離短め、の方が強い能力になる気がした。

 

 

 何となくそんな気がした。

 

 

 これ、超大事。念は、フィーリングが大切だと、作中で主人公の師匠が、じっくり説明していたし、同じくフィーリングで指を切り落として、指先から発射される念弾の威力がマシマシになったキャラも居た。

 ・・・遠距離は、余裕が有ればもう一つ“発“を作るか、武器でも持とう。

 弓に投げナイフ、鋼線にブーメラン。

 デカイ銃とか憧れる。

 

 鎖とトランプ・・・は、NGかな。

 

 さあ、いよいよ制約と誓約、そして

“発“だ。

 

 最も重要なのは、今の生存状態の継続。

 

 生きたまま生き続ける事、つまり、その為の能力が最重要。

 さらに、多少時間がかかっても、飛びきり強くなる方が良いと決心した。

 せっかく転生したのに凡人のままなんて、つまらないし、このハンターハンター世界、強くならないと死んでしまう、しかも猟奇的に。

 緋の眼も在るしね。

 

 どこまで強くなれるか判らないが、一応原作キャラに舐められない辺りが目標。

 

 制約作りのルールは多分ない。

 気を付けるのは、寿命を削るような制約と誓約を作って、蝉みたいな短命で終わることと、“発“の目的を邪魔しないこと。

 使用のルールが厳しくて、戦い辛いのでは命に関わる。

 実を言うと、制約と誓約については、“発“を思い付いた時に、ほとんど同時に思いついていた。

 しかし、此れを使用するのは出来れば避けたかった。

 何となく、フィーリングで解るのだが、此れをやれば、この“発“は、ほぼ何のリスクもルールも無しに自由に使えるようになるだろう。

 面倒な制限や限界は無くなり、ただ己の技量的限界が、唯一の枷になる。

 

 つまり、それだけ重い制約と誓約を、作成の段階で積み重ねる、という事だ。

 

 作中のキャラが、指を切り落としたように、主人公が、強敵相手に全てを懸けて力を欲したように、より命を磨り減らし、死に近づく事で、それは成される。

 

 その行為は、正しく生みの苦しみであり、制約と誓約によって、作業を偉業にかえてしまう、あっと驚く大どんでん返しである。

 

 死ななければ。

 

 他に手は無いし、そんな気もしちゃってるし、どうせ一回死んだ身だし、やるしかないかぁ・・・・。

 しかし、何でこういうフィーリングみたいなものが解るんだろう?

 いや、助かるけど念や系統の感覚なんて、普通は水見式とか経験者に相談しながら探り探り身に付けるんじゃないのか?

 

 ・・・でも分かっちゃうしなぁ・・・それとも此れが普通? 

 仮に、私の魂が念能力の無い異世界から来たから、そういうのに敏感になってるだけだとすると、時間が経てば消えてしまうのか、それともこのまま便利機能として残るのか。

 ちょっと気になるな。

 

 まあ今は制約のことだ。

 考え方としては、そう難しくない。

 自分の、今のこの状況を其のまま制約と誓約に組み込むのだ。

 パッと思い付いた二、三個と、あとから足した物を合わせて、全部で十個。

 ちょっと多いが、私のせいではない、言うなれば、奴等がやったのだ。

 分かりやすいよう、順に並べると。

 

 

 1、発動後、念獣によって補完される部位が、発動時存在していてはならない。

 

 2、発動から完了まで、一歩も動いてはならない。

 

 3、発動から完了まで、地下に、埋められていなくては、ならない。

 

 4、発動から完了まで、水も食物も摂取しては、ならない。

 

 5、発動から完了まで、呼吸をしては、ならない。

 

 6、発動から完了まで、心臓が、鼓動していては、ならない。

 

 7、発動後、誕生した念獣には、二十四時間以内に、トータル十二時間“凝“をして育てなければ、ならない。

 

 8、発動後、二体目以後の念獣作成には、

毎回二十九日の、インターバルを設けなければ、ならない。

 

 9、発動後、念獣の誕生時には肉体が緋の眼時と同じ状態となり、全系統が得意系統状態、『絶対時間』化するが、完了後、その『絶対時間』化する能力は念獣達に系統別に受け継がれ、失われる。

 

 10、完了後、念獣を作り出す能力が、失われる。

 

 

 多いな。

 

 いや、いろいろおかしいのは判っている。(セルフ突っ込み!)

 まず、最初の念獣の能力は、制約と誓約を維持するために、身体を生かしておく能力に、振らなくてはならない。この時点で既にかなりのリスク。

 以降は、何はともあれ、それ頼みになる。

 次に、パッと見て解るように、一番から六番までは、現状の追認でしかない。

 つまり、これらが、制約と誓約として適用されるのか?という疑問が浮かぶが、私は、適用されると思う。

 なぜなら、寧ろ、とても死に近い今の私の状況は、念を扱うのに、もってこいだからだ。

 全感覚は閉ざされ、音の無い地下に生き埋めにされ(おそらく現在、外耳は無く、内耳は残っていると思われる)、邪魔が入る心配もない。

 まるで、その為に、あつらえたように。

 

 有る意味、今の私は、“死者の念“そのものと言っても過言ではない。

 

 この、無理やり背負わされたリスク全てを己の『ギフト』に変えるため、制約として、積み重ね、誓約として受け入れる。

 まるで、意図してこの状態が作り出されたかの様に捉える事によって、絶対絶命の危機は裏返り、強力無比な“発“を作り出す為の嚆矢(こうし)となる。

 いや、する。

 

 

 続く、七番目の育成の為のルールは、小さく生んで大きく育てる最初のプランから思い付いた。

 小さな、産まれたばかりの念獣に、成長パートでどんな能力を与え、どんな風に成長してほしいか、オーラと情熱を注ぎ、馴染ませ、能力の発展すべき方向性を指し示す。

 手順としても、必要な重要事項なのだ。

 

 

 八番目の、インターバル二十九日と言うのは、一体の念獣に、七番目と合わせて三十日程度の、手間としての日数を掛けたかったからだ。

 命が持つか、というリスクは有るが、自分の感覚では、一つの命(念獣)に、一ヶ月すら、掛けられないのでは、とても今の私の求めるスペックの念獣を作り出す事は出来ない。

 最初の一体目には適用されない様に見えるが、これは逆で、最後の念獣が誕生した後、二度と念獣が作られない事でその、最後の念獣の為の対価としている。十番目がそれ。創ると三十日間の苦行に耐えなくてはならない。というシステム。

 

 尚、インターバル中は、眠って過ごすつもり。ほぼ一年一人で眠る事になるが、やるしかない。

 

 念獣の数が増える毎に、目覚めるか、生命力とオーラが尽きて其のまま死んでしまうかどうか、の危険は大きくなるが、念の可能性を信じて、やるしか・・・ない

 

 

 九番目、能力としての『絶対時間』の使用と喪失。

 これは、けっこう悩んだ、事実上の公式チートだし、クルタ族御用達のアイデンティティーみたいな能力だし、なにより、実際に使った時の強キャラムーヴが格好いい!

 

 ・・・いや!モチベーションとしても、格好良さは重要。

 

 だが、結局これは諦める事にした。

 

 一つには、この能力をすぐに安定して使う為の制約と誓約が、重すぎること。

 普通の状況ならともかく、今の死にかけの自分に、使用一秒毎に、一時間寿命が縮まる、という原作のルールはキツすぎる。

 今喰らえば、本当に死んでしまう。

 原作のイメージを覆す新たなルール作りをするには、時間とリソースが足らない。

 そして、『絶対時間』という能力は、私の作る“発“に、どうしても必要だった。

 今回の、制約と誓約の為の『絶対時間』使用の対価は、最終的にこの能力と使用する為の才能が失われる事で支払われている。

 

 二つ目に、念獣達の能力面での強化。

 いくらなんでも、たかだか十数回の使用で、チート能力の消失、というのは、対価としては重すぎる。

 元々の能力が、群を抜いて強力だった事も含めると、上手く行けば、結構な確率で、念獣達の持つ予定の能力を、全て得意系統のまま定着させる事が出来るだろう。

 

 最後にそもそもの必要性。

 能力的には、念獣達が付いてる訳だし、『絶対時間』が使えなくても、別に緋の眼が発動しないわけではない。クルタ族としての証明は、何時でも示せる。

 

 あと、オマケだが、そもそも他の一般の念能力者たちは、そんなズル技無しで頑張っているわけだし、条件は同じになるだけなので、別に格別に損をするわけではない。

 五分(ごぶ)になるだけ。この時、念獣達の持つ念能力は、考えないものとする。

 

 もし全てが上手くいって、地上に出たあと、キャパシティーに余裕があったら、新たな“発“を作る事になるだろうから、気にするのはその時だな。

 ・・・鬼が笑うな。

 

 その時は、ただひたすらに訓練して、不得意系統でもきっちり身に付けよう。

 何か変なルールを作るのも良いかも。

 

 

 十番目は、念獣作成能力の消失。

 これは、具現化能力の内、念獣を作り出す能力だけを失う、というもの。

 以後も、キャパシティーが残っていれば、念獣以外、たとえば能力を設定した武器や小物、機械など非生物ジャンルなら、念能力によって、作り出す事が可能。

 

 水見式の記憶から見ても、恐らく自分は具現化系能力者として、念獣を生み出すのが一番向いている。多分。

 だからこそ、此れを制約と誓約にする意味がある。

 大きな代償を払うことで、“発“に注がれる力はより大きくなり、必要なキャパシティーは減ってゆく。

 私自身に対する念の負担が少しでも減れば、それだけ私が生命力を削る必要が減り、生き残る可能性が増えてゆく。

 必要な事は分かっている。

 しかし、この制約は個人的にとても残念だった。

 何故なら、モッフモフの念獣を持つのは具現化系能力者なら当然考えて然るべき事案だからだ(確信)。私も当然考えた。

 命は大事だが、それはそれ、モフモフも又大事なのだ。

 例え小さくても怪我の危険や迷子や寿命を気にせず、何時も清潔で柔らかい命有る毛むくじゃらに側にいてもらうのは、きっと人生を豊かにしただろう。・・・無念。

 だが仕方ない、この悔しさも又制約の一部となって私を強くしてくれると信じよう。(さらばモフモフ)

 

 当面、裏街道の人生を歩むつもりだし、普通のペットは無理だよなぁ。

 

 

 さあ、そろそろ勝負の時間だ。

 

 生まれ変わったこの世界、生きるか死ぬか(コインは右手か左手か)、賭けてみるとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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