嵐の夜に飛び立とう   作:月山ぜんまい

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 5、“発“発動、一月~三月

   5、“発“発動、一月~三月

 

 は、ふ、・・・息が出来なきゃ最後の深呼吸も出来ないか、当たり前だな。

 

 埋められてから大体六時間、いや六時間半という所か、何でか時間感覚や方向感覚が鋭い、月の位置や地磁気の流れまで感じ取れる気がする。

 

 ある種の、野生のケモノ並み。

 

 いや、本当の野性のケモノの感覚なんか知らんけど・・・。

 これ多分、全部肉体の基本スペック。

 

 クルタ族って優遇され過ぎ!

 

 若しくは個人的資質?

 

 

 それでも一月以上もの単位は無理だろうから、時間感覚も念獣に覚えさせよう。

 

 

 さあ、始めよう、いよいよ初めての“発“ の発動だ。

 

 一体目、まず最初の念獣は『腎臓』腰のちょい上、背骨の左右に一つずつある拳程の空豆みたいな臓器だ。

 身体の奥深くに有り、地味で狙われ難くサイズも小さめで守りやすい。

 

 小便を作るだけじゃなくて、わりと体調管理の要となる臓器なので、予備があるという確実性も含め最初の念獣は『腎臓』を選んだ。

 名前は一月だから『カプリコーン』。

 山羊座、どんなに困難な道でも、我慢強く越えて行く地に足の着いた岳人のイメージ。

 

 与える能力は、≪生存≫そして、やがて目覚めて欲しい能力として、≪存在≫を付与。

 ただひたすら生かしておく事に特化した能力。私や念獣達を身体的に安定させ、命の危機には生命活動を一時的に制限してでも、命脈を繋ぐ。

 大体そんな感じ。

 

 時間感覚は、能力の仕様の一部として組み込む。

 何処をどうすればどれだけ生きて居られるのか、時間感覚は必要な技能だ。

 

 問題は、“発“の発動法がさっぱり解らない事だな。

 まあとりあえず、やってみよう。

 

 原作の事を考えるに、オーラその物をコントロールして、何かをする他の系統と違い、具現化系統の能力は訓練が難しい。

 とりあえずイメージ優先で造形に集中するか、機能優先で理想が勝手に具現化されるか、その二択だった気がする。

 

 キモは、()()()()()()()()()()ってやつだ。

 

 要は気合いと根性、発動するまで集中し続けるだけだ。自転車やペン回しと同じ、出来るようになる迄やるしかない。

 

 ・・・じゃあやるか。

 

 簡単な事じゃないか、出来なきゃ死ぬだけだ。

 

 よし!とりあえず、“練“、そして集中!

 

 ・・・・・お?熱っ!

 

 ・・・・・・・・・・え?

 

 ・・・・うん、ある・・・・ちゃんと腎臓の位置だ。

 

 ・・・出来ちゃったよ・・・。

 

 えらいあっさり出来たな。

 

 大丈夫か?

 

 あの『緋の眼』の時の、オーラがぐるぐる不安定に揺れる感じが、高い圧力と完璧なバランスで無理やり安定させられ、『絶対時間』が発動した!と思ったら終わってた。

 何でだ?

 やっぱ念獣が、ちっちゃいからか?

 この状況のせいで、身体の防御本能的な何かが現れたのか?

 制約と誓約?

 

 まあ結果オーライ。

 

 細胞より大分大きいが、髪の毛の細さの十分の一位、感覚的にやっと認識出来るサイズの念獣だ。恐らく史上最小の念獣だろう。

 予想より、ずっとしっかりした存在感。

 ちゃんと眷族っぽいオーラの繋がりと、設定した機能の、

 『我らは一人』、

 『自分を磨け』、

 『生身の身体』、

 そして与えた『権能の力』、≪生存≫と、やがては得て欲しい能力≪存在≫も有るようだ。

 

 よし次の段階、念獣に二十四時間以内に十二時間の“凝“だ。

 

 

 でも何か眠いので、ちょっと休憩。

 中身は大人だが身体は子供、眠気に勝てん。

 おやすみなさい。

 

 ・・・・・・・・・・

 

 目、覚めた。

 

 視界無し、肉体感覚ほぼ無し、しびれ有り、やっぱ現実だったか・・・・。

 さすが子供、睡眠時間十時間、念能力使用で疲れてたから仕方ないな。

 眠くなるってことは、脳は活動してるってことかね。

 

 

 仕方ない仕方ない、さあ再開だ。

 今度は長丁場になるから睡眠取ったのはいいタイミングだった。

 

 そんじゃ育成パートを始めよう。

 

 落ち着いて・・・リラックスして・・・このままゆっくり・・・“凝“。

 

 ・・・・・・これけっこう疲れる。

 

 一時間経過。

 

 二時間経過。

 

 ・・・くっ、つっ、・・・とりあえず一休み。

 今ので二時間くらいか・・・ちょっと休んで再開だ。

 

 ・・・・・・・・・・

 

 二十時間後。

 

 ・・・・・よ、よし、大分へろへろだが、何とか予定通り“凝“終了だ。

  『腎臓(カプリコーン)』の気配も最初と比べて大分しっかりして、強力になっている。

 “凝“を使いすぎでへろへろになってる私より、よっぽどオーラが漲って元気だ。

 自分の意識と密接につながった、念獣の意識も感じる。

 ようやく一体目、完成。

 

 眠気がヤバイ。

 意識をつうじて『腎臓(カプリコーン)』に自分がもう寝る事。

 二十九日の念獣作成インターバルが過ぎる迄、起こさないで欲しい事。

 現状を維持している誰かの念がじきに消え、自分の肉体が死にかけている事。

 その後、肉体を仮死状態にして生かす必要がある事、等を伝える。

 「あとは、頼む」

 何かよく解らない念獣の了承を感じ取ると共に、私の意識は途切れた。

 

 

 おはよう諸君、と言っても誰も居ないが・・・・あ、いや居る!念獣 『腎臓(カプリコーン)』が居るのを感じるぞ。

 何かちょっと嬉しいな。

 

 幾分、頭が重く軽い嘔吐感はあるが、身体のしびれは無くなった。

 死にかけてるんだから、体調が良くないのは当然だ。

 どうやら、私を捕まえた謎の念能力者の状態保存の念の効果は切れたらしい。

 にもかかわらず、まだ生きている。

  『腎臓(カプリコーン)』が頑張った、いや頑張って居るお陰だ。

 一ヶ月前に比べると少し消耗しているが、まだ大丈夫そうだ。

 頼もしいぞ。

 ただ生かす事に絞って、防御とか全く考えなかったのが良かったな。

 

 しびれは無くなったが、相変わらず身体の感覚はあまり無い。

 生きていても、身体はボロボロのままだから、『 腎臓(カプリコーン)』が仮死状態を保っているのだ。

 そういうお知らせが来ている。

 念獣は、話しかけて来るわけではないが、意識の繋がりを通して()()を送ってくる。

 何か楽しい。

 

 

 よし、じゃ二体目、行くか。

 

 二体目は『肝臓』、お腹の上の方胃の右隣にある臓器。いわゆるレバー。

 『腎臓』の件もそうだが、昔見たおぼろげな人体解剖図が、何故か鮮明に思い出せる。相変わらずボディスペックがおかしい。

 いや、もしかすると人生の最後に見る走馬灯的なものかも知れん。

 脳自体違うのに、記憶がどうの言うのもあれだが。

 

 基本セット以外の能力は≪再生≫、発展希望能力は≪長生≫。

 

 いろいろ治しておかないと、 『腎臓(カプリコーン)』の負担が大きいし、念獣と体組織との融合も≪再生≫が有ればスムーズに進むだろう。

 

 名前は二月だから『アクエリアス』。

 水瓶座、水瓶からこんこんと無限に湧き出る水を、再生の力と結びつけ、イメージを強化する。

 肝臓は肝臓で、手術で七割切除しても回復する元々再生力の強い臓器だったはず。

 酒好きの叔父が、昔そんな話をしていた。

 この能力の付与にぴったりだ。

 

 ≪長生≫は『ながいき』ではなく『ちょうせい』と読む、どっかの地名だ。確か占いの用語にも有ったはず。

 意味は、同じで長く生きる事。

 こんな状況だからあえて突っ込んだ、寿命が多少延びればOK。

 

 腎臓もそうだが、内臓三つ(残りは心臓)には、効果が早めに身体全体に広がって欲しい基礎的な能力を集めている。

 以下、両足には移動系統二種。

 両手には攻撃と防御。

 首から上は情報系統で、両目と髪がプラスアルファ、になる予定。

 

 さあ、集中して!・・・“練“

 

 ・・・・・くっ!・・・来た。

 

 ・・・・・ふう。

 

 難易度高い筈なのに、何故かあっさりデキんだよなぁ・・・。

 制約と誓約をきつくしたせいで、想定より負担が小さいのかしら?

 場所も合ってる。

 胃の脇辺りに、小さく新しい念獣の気配と繋がりを感じる。

 

 『肝臓(アクエリアス)』の卵?幼生?誕生。

 

 次、続けて“凝“行けるか?

 前回は二十時間掛かった。

 今回はもう少し減らしたい。

 疲れは感じない、眠気は二十九日の寝溜めが効いて、まだ平気。

 オーラも回復した。

 

 では!

 

 “凝“・・・・・

 

 十九時間後。

 

 はあっ、はあっ、・・・

 

 はあっ、『肝臓(アクエリアス)』完成。

 息してないのに頭のなかで、はあっ、はあって言うと気分的にちょっと楽になるのは何故だろう?

 ・・・“凝“も何かコツが掴めてきた気がする。前より長く出来るし回復も早い。

 

 眠気はヤバイがやる事やっておかねば。

 

 『肝臓(アクエリアス)』に、念獣置換部位以外の全身の傷の治癒≪再生≫を、『腎臓(カプリコーン)』と相談して最低限だけ行うよう指示を出す。

 繋がった意識の中で、二体の念獣が一瞬のやり取りをし、全身が『肝臓(アクエリアス)』の暖かいオーラに包まれた。

 最低限にしたのは、死にかけていて残り少ない私の体力を、無駄な回復でこれ以上消耗しないため。そして、『腎臓(カプリコーン)』と連携させたのは、今後も回復と生命維持のバランスをいい感じにとって欲しいからだ。

 少なくとも、あと十一ヶ月ぐらい現在の状況が続く事も、もちろん考慮するよう伝えてある。

 

 『腎臓(カプリコーン)』の≪生存≫と≪存在≫、『肝臓(アクエリアス)』の≪再生≫と≪長生≫のように、基本の能力と発展希望能力はちょっぴり韻を踏むと言うか、言葉遊び的に繋がりを持たせている。

 これは、この方が発展能力が発動しやすいような()()()()からで、意図的にそうしてある。けっこう大変だった。

 

 回復が済んだ()()()()は来たが、自分の身体がどうなっているのか確かめる術はない。

 自分の念獣達を、信じるだけだ。

 

 さて、おねむの時間だ。

 念獣達よ、あとは頼む。

 起こすのは、また二十九日後にしてくれるよう二体に告げ、応答を感じながら意識は途切れた。

 

 

 

 おはよう諸君、うむ、応答有り。

 二体の念獣『腎臓(カプリコーン)』と『肝臓(アクエリアス)』からお知らせがくる。

 楽しい。

 しかし、二体の念獣は確実に消耗している。

 

 そろそろ念獣作成もルーティン化してきたし、定番なら余計な事を考えず専念してエネルギーロスの軽減に努めるべきか・・・。

 いや先は長い、ペースを乱さずこのまま淡々と進めよう、念獣制作のわくわく感を楽しみながらやらんと、絶対精神を病む。

 

 暗い事は考えない!

 拾った命だ、ポジティブに行こう。

 

 

 三体目は『鼻』。

 能力は、≪嗅覚≫発展先は、≪覚醒≫。

 

 ≪嗅覚≫は、鼻だからそのまんま、はっきり言って、今までの人生で鼻を生存戦略器官として役立てた事などほぼ無い。

 だから、念獣に丸投げにした。

 だが、展望は有って、将来的にオーラを匂いとして感じ取れれば、いろいろ役に立つだろうと思っている。

 それが≪覚醒≫、どんなふうに成るかは未知数、例によって念獣を信じるだけだ。

 

 覚醒という言葉を使った理由はもう一個有って、鼻が感じる臭いと脳の記憶に繋がりができやすい。と、何かで聞いた事があるからだ。

 各念獣は、身体の各部位に融合する折、その周囲の体組織をある程度その影響下に置く。

 『鼻』が≪覚醒≫に至るかは未知数だが、その概念とイメージが記憶力の向上、脳の覚醒に繋がることを期待する。

 

 何か、今は頭脳明晰だが、地上に出たらアホに戻りました。何てのは出来るだけ避けたい。

 

 念獣達にも言えるけど、記憶、記録、情報は大事、蓄積有っての成長だからね。

 

 名前は三月だから『ピスケス』。

 魚座、魚が水の世界を自在に泳ぎ熟知する様に、匂いの世界を我が物とするイメージ。

 

 三体目からの、念獣の作成は順不同、当月の該当星座のイメージに合わせて、部位に関係なくその星座のイメージで強化できそうな念獣を選んでいる。

 

 一月二月は偶然、わりとイメージに近い星座が割り振れた、まあだから星座にしたのだが。

 干支の方が良かったか?

 

 星座に詳しい?オタクなら、これくらい基礎知識でしょう。

 

 そんじゃ、作成して“凝“して寝るか!

 

 ・・・・・二十一時間後。

 

 『(ピスケス)』完成。

 

 おやすみ!また来月。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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